仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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?+1ー26 問われる存在

「なん、で……どうして……」

 

 身体が震える。

 仮面の下は止まることない涙で濡れている。

 足下には自分と同じように制服に身を包んでいた少女が横たわり、目を大きく見開いている。

 まるで、私を睨みつけているかのよう。

 いや、彼女は私を睨みつけているのだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 なんで?

 どうして?

 どうして私が人を殺さなくちゃいけない。

 私はただ、普通に生きてきたはずなのに。

 この人を殺すような理由なんて私にはないのに。

 そもそも初対面の人だ。

 なのに……なのに……。

 

『デビュー戦勝利おめでとうございます! 千里の道も一歩から。新しい仮面ライダーの誕生です』

 

 私の心境とは裏腹の愉しそうな声。

 私をこんな戦いに巻き込んだ謎の少女アリスの声……!

 

「アリス……!」

『まあ怖い顔~。なんて、仮面のせいで分かりませ~ん』

「あなたのせいで私は……私は!」

『人を殺してしまった。そう言いたいんでしょう? けどもう既に貴女は契約してしまった。契約してしまった以上は、契約を守らなければいけませんよね?』 

 

 そんな契約なんて守る必要……。

 

『モンスターと契約したら力を得る代わりにモンスターに食事を提供しなければいけません。もし、それをしなかったら……食べられるのは、貴女ですよ』

「そんな……」

『それが嫌なら戦うしかありませんね。それでは、良き闘争を期待しています』

 

 待って!

 そんな叫びを上げる前にアリスは消えていた。

 そして、足下で絶命した少女もまた、消滅してしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎の中を歩く。

 御剣君と咲洲さんを探して。

 けれどどこにも見当たらなくて、よく知った校舎のはずなのにまるで迷宮で迷ってしまったかのよう。 

 変な疲れ方をしてしまっている。

 やっぱり、教室に帰った方が……。

 

「宮原さん?」

「日下部さん……」

  

 私に声を掛けたのは日下部伊織さん。

 優しい、穏やかな笑顔を浮かべる日下部さんにどこか救われた気がしました。

 

「どうしたのこんなところで?」

「その、友達を探していて……」 

「友達……。探すの、手伝おうか?」

「いえ、特別用があるってわけでもないので……」

 

 そう、ただ行けと言われたから御剣君を探しているだけで別に用があるというわけではない。

 でも、会いに行かなくてはいけないような気もして……。

 

「もしかして、好きな男の子でも探してる?」

「ち、違います! その、男の子というのはあってるんですけど……。好きとかそういうのでは……」

「可愛いリアクションをどうも。それで、その男の子の名前は? それぐらいは教えてくれるでしょ?」

「名前は……御剣君。御剣燐君です」

 

 御剣君の名前を教えると、日下部さんは目を見開き驚いた様子だった。

 御剣君のことを、日下部さんは知っている?

 

「日下部さん。御剣君のことを知ってるんですか?」

「まあ、少し、ね……」

 

 歯切れ悪く言う日下部さんに怪しいものを感じた。

 まさか……。

 

「あの、日下部さんってもしかしてライダー……ですか?」

 

 いきなり、直球の質問をぶつけてみるがある種の確信のようなものがあった。

 というのも、最近御剣君と関わりのある女子生徒はかなりの確率でライダーだからである。

 そして、私の思いきった質問は功を奏した。

 

「ライダーのこと、知っているんだ。ということは、宮原さんも?」

「いえ、私は違います。だけど、理由あってライダーのことを追っているんです」

「そう……。じゃあ敵ではないんだ、よかった。知り合いと戦うのは嫌だからね」

 

 悲しげな顔を浮かべる彼女からは知り合いと戦うということだけではなく、戦うということそのものに悲しみを感じているように思えた。

 もしかしたら……。

 

「あの、日下部さん」

「なに?」

「よかったら、私達の仲間になってくれませんか?」

 

 その誘いに日下部さんは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燐と金草遥を見送った美玲と津喜の内心は穏やかなものでなかった。

 

「……なあ、あれは人選ミスじゃないかい?」

「……実力は確かよ」

 

 ライダーバトルの始まりと同時にライダーとなった二人は何度か戦ったことがあった。

 実力は他のライダーと比べても高い。

 仲間……にするのは嫌だが、こちらと敵対さえしなければいい。

 これ以上、敵の勢力を増やしたくはない。

 

「だからといってだね……」 

「信じなさい。強いのは、燐も同じよ」

 

 その言葉は津喜に向けて言ったものでもあり、自分自身に言い聞かせるための言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ミラーワールドでは剣戟が繰り広げられていた。

 巨大なカッターのような剣、蛇毒刃を自在に操る仮面ライダー縁。

 美也と同門であった陽咲の繰り出す剣は剣道のそれではなく、型破りなものばかり。

 剣道というものを知っているからこそ生まれる奇怪な技はツルギを苦しめる。 

 とにかく攻めの一手を繰り出す。

 足も動きも止まらない。

 流動する剣は止まることを知らない。

 

「動きが悪いなぁ。美也の記憶の中の君はそんなじゃなかったんだからもっと本気で来なよ!」

「美也さんの、記憶……!」

「そう。この間の傷を治してる間に見たんだけど面白かったよ! 男の子には言えないようなこともあるけど聞きたい?」

「ふざけるなッ!」

 

 鍔迫り合いを制し、押し返しながら斬りつけるが紙一重のところで避けられてしまう。

 

「そうこなくっちゃ……!」

 

 蛇のように蛇行しながら駆ける縁。

 蛇毒刃をとにかく振るい続け、ツルギに迫る。

 スラッシュバイザーで受け続けるが果たしていつまで持つか。  

 

【闘いなさい……】

 

 声が、響く。

 僕を闘争へと誘う声が。

 

【闘いなさい……】

 

 やめろ……。

 僕は、闘いたくは……。

 

【自分に嘘をつかないで……。本当は、敵を切り裂きたくて仕方ないんでしょう?】

 

 剣を握る腕が震える。

 斬れ、斬れと言われている気がした。

 だけど……。

 

「違う! 僕は……仮面ライダーだッ!」

「なにをごちゃごちゃと……」

 

 

 そんな二人の剣戟を眺め続けている者がいた。先程までツルギと戦っていたカノンである。

 決着自体はひとまずついたのだが、縁の襲来により置いてきぼりを食らっていた。

 ツルギと縁は何かしらの因縁があるということは察したのだが、それでは自分はどうしようか。

 少し考え、カノンは銃口を二人に向けた。

 剣戟の最中、銃声を響かせる。

 カノンの放った弾丸は縁に直撃し、黒い血を流させた。

 

「乱入自体はよくあることだけどさ、流石に二人の世界に入り過ぎ」

「金草さん……」

「さっきの約束、とりあえず守るよ。作戦は単純に君が前衛、私が後衛。射線には入らないように。フレンドリーファイアしても君の責任ってことで。いい?」

「……はい!」

 

 即席ではあるが作戦を立て、縁に立ち向かうツルギとカノンの二人。

 傷を負った縁に何発もの銃弾が浴びせられ、その隙にツルギが距離を詰める。

 

「ぜああッ!!!」

「チッ!?」

 

 スラッシュバイザーが蛇毒刃を弾き、流れるような剣閃を刻み込む。

 刃についた黒い泥を一度振り落とし、更に一閃。

 

【SHOOT VENT】

 

 カノンが召喚した銃器はいわゆるバズーカと呼ばれるものに類似する。

 その名をヘッドカノン。

 カノンが持つ武器の中で最大火力を有するものである。 

 

「ふっ」

 

 肩に担ぎ、照準を合わせる。

 仮面の下で笑みを浮かべると同時に引き金を引き、弾はツルギと斬り結んでいた縁に直撃した。

 

 

 

 

 暗闇の中に光が射し込んだ。

 私を縛りつけていたものもなくなったようで、身体が軽い。

 行こう、今のうちに。

 暗い水底から浮き上がる。

 あの、光へと向かって……。

 

 

 

 

 爆発に巻き込まれないようにと間一髪後方へと飛び退いた。

 自分ごと倒す気だったのではないかと欺瞞の目をカノンに向けるが仮面の下にあっては伝わらない。

 だが、それよりもと煙に視線を戻す。

 

「今の一撃……。流石に効いただろうけど……」

 

 いや、効いたどころか最悪のケースも考えられる。

 果たして、奴は……。

 

「……うぅ……」

 

 煙の中から聞こえてきた呻き声。

 やはり、堪えているようだ。

 煙が晴れると、地面に倒れた美也さんが。

 しかし、まだ中身は……。

 

「っ……。あ……りん、くん……」

「美也さん!」

 

 今の声は、絶対に美也さんだ。

 元に戻ったのか……?

 だが、刃の話ではもう元には戻らないと……。

 ともかく、美也さんを抱き起こして無事か確認する。

 

「美也さん! 大丈夫ですか!?」

「陽咲、は……」 

「ヒナタ……?」

「私に取り憑いてた……。陽咲は、本当はあんな子じゃ……」

「今はそれより早くミラーワールドから出よう! 皆が……射澄さんも待ってる!」

「射澄さん……! ッ!? 離れて!」

 

 突然、突き飛ばされる。

 覚束ない足取りで後退る美也さんはホラー映画なんかで見るような、まさしくさっき美也さんが言っていた取り憑かれたかのような。

 つまりは……。

 

「……駄目だよ美也は寝てなきゃ……」

「そんな……」

 

 やはり、まだ美也さんは取り返せていないということ……。

 

「あの、二回目なんだけど二人の世界に入り過ぎ。なに、どういうこと? あいつ人間じゃないの? なんなの?」

「詳しい説明は後でします。今は……」

 

 また、美也さんを助けようと剣を構えるがタイムリミットが迫っていた。

 消滅が始まっていた。

 

「今日のとこは痛み分けってことにしようか……」

「待てッ!」

 

 逃がさないと追いかけるが美也さん。いや、ヒナタは影の中へと消えていった。

 美也さんを助けることが出来なかった……。 

 だけど、得たものはある。

 自分の考えが正しければであるが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遭遇した藤花の生徒が変身したのは白く、花を思わせるライダーであった。

 ローブを翻しながら、短剣で果敢に攻めてくる相手。

 しかし、パワーはないようだ。

 冷静に捌いていけば、反撃の糸口が見える。

 逆手で振るわれた短剣を回避しながら敵の懐へ。

 鳩尾に拳を打ち付けた。

 

「ガッ……!?」

 

 よろめく敵を蹴り飛ばし、藤花を囲う外壁に叩きつけた。

 だが相手はそれなりのダメージを食らったはずにも関わらず即座に動き出し、カードを切った。

 

【ADVENT】

 

 アドベント。自身の契約モンスターを召喚するカードであり、厄介なものである。

 どこから、どんなモンスターが現れるか分からないためにこちらも構える必要がある。

 しかし……。

 

『キュー!』

 

 出現し、私に飛び掛かってきたのは二足歩行の仔犬のようなモンスター。

 一生懸命に爪で引っ掻いてくるが痛くも痒くもない。

 ……これが、契約モンスター?

 

「ふざけてんの?」

「いいえ。ふざけてなんかないわ」

 

【SWORD VENT】

 

 更にもう一枚カードが追加される。

 しかし、何も起きない。

 普通ならば空から武器が召喚されるはずなのに。

 

『キュー…………。ガアァァァァァッ!!!!!』

「ッ!? な、なに!?」

 

 突如、小柄なモンスターが巨大化しその姿を変貌させた。

 鋭い牙と爪、尻尾が巨大な刃となっている四足歩行の獣に。

 小柄で脅威ではないと判断し放置していたのが間違いであった。

 その巨体に押し倒され、鋭い牙が迫ってくる。

 

『ガアッ!!!』

「なにがどうなってる……!」

 

 とにかく、この状況を覆せる方法を思い付かなければならない。

 そうしなければ、このモンスターに食い殺される……!

 どうすればいい私は。どうすれば私は生き残ることが出来る。

 答えは浮かばない。

 なら、ここで食い殺されて……。

 

『瀬那』

 

 懐かしい声が響いた。

 白い光の中、大きな手が私に向かって差し出される。

 ……それも、悪くないかもしれない。

 

「なわけ……ないだろ!」

 

 噛みついてきたモンスターに頭突きを食らわせ、怯んだ隙に逃げ出す。

 走りながらデッキからカードを引き、レイピアのようなバイザーへと装填する。

 

【ADVENT】

 

 クインビージョを召喚し、敵のモンスターにぶつける。

 モンスターの相手はモンスターに務めてもらおう。

 そして私は……。

 

「はあッ!!!」

「なっ!?」

 

 ライダーの相手はライダーがする。

 跳躍し、掴みかかる。

 そのまま地面を転がり、敵に対してマウントを取った。

 あとは殴る、殴る、殴る。

 だが、ただではやられまいと敵は私の背中を蹴りつけた。

 前方へよろめいた私を追撃してくる敵。

 短くも脅威である刃が迫る。

 追いすがる白いライダーの攻撃を交わし続け、反撃に転じる。

 

【STRIKE VENT】

 

 蜂の腹部を模した打撃武器を装備し短剣を弾き、渾身の力を込めて殴り飛ばす────!

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 確かな感覚。

 これは、勝った。

 だが、土煙の中に奴の姿は既になくトドメを刺すまでは至らなかった。

 こういうのが、一番腹が立つ。

 勝てるはずの戦いだったのに、敵に逃げられてしまった。 

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 壁を殴り付け、苛立ちをぶつける。

 だが、この苛立ちはそう簡単には消えるものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「燐ちゃぁぁぁぁぁん!!!!!!」

「うわっ」

 

 ミラーワールドでの戦いを制し、学校に戻ると北さんが猛烈な勢いで迫ってきたので回避した。

 そして北さんは金草さんに抱き付いてあれやこれやと繰り広げている横で美玲先輩にまずは報告。

 

「美玲先輩、勝ちました僕」

「そう。それじゃあ、約束通りこちら側につくのね」

「ああ、つくよ。約束は守るって」

「本当かい? 味方になったフリして寝首をかこうって魂胆じゃあないのかい?」 

 

 何かと北さんは金草さんに突っ掛かり気味だ。

 出来れば波風立たないようにしてもらいたいけれど……。

 

「寝首を掻くつもりはないけど……」

 

 そう言うと僕のすぐ目の前に立ち、僕を真っ直ぐに見つめる。その瞳は闘争心に燃えていて……。

 

「君との決着はいずれつけるよ。次は本気で戦おう」

「……僕は、もうあなたとは闘いません。僕が闘うのは、人を守るためです。殺し合うためじゃない」

「……ふぅん。ま、そんなこといつまで言っていられるか」

 

 確かに、難しいことである。

 それでも、僕は……。

 どうして、そう思うのかはまだ分からない。

 だけど、沸き上がるこの想いは正しいものだと信じて闘う。

 人を、守るために。

 それが僕の信じるもの……。

 

「ひとまず話は纏まったわね。それじゃあ放課後、また集まりましょう」

「分かりました……。あ、その前にひとつだけ」

「なに?」

「美也さんが、乱入してきました」

「……分かったわ。そのことについても、聞かせてちょうだい」

 

 こうして、長い昼休みは終わりを迎えた。

 美也さんを救出するための手立て。

 もし、僕の考えが正しいのであれば……。

 なんにせよ、正しいかを確認しなければならない。

 その証明するための方法も僕の中で決まっていた。

 刃に、会わなければ……。

 

 

 

 

 教室に戻ると、すごい勢いで鏡華さんが僕に近付いてきた。

 大きな瞳を更に大きく見開いて、僕の手を取り興奮気味に予想外のことを言ったのだ。

 

「聞いてください御剣君! 日下部さんが仲間になってくださいました!」

「え……?」

 

 僕には、なんのことやらさっぱり理解が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 学校は鐵宮達の陣営がどこで聞き耳を立てているか分からないと、一旦別々に帰ったように見せかけて後から鏡華さんの家で合流することに。

 

「というわけでよろしく燐君」

「あの、えっと……よろしく、お願いします」

 

 よもや、伊織さんが仲間に加わるとは。

 それも、鏡華さん経由で。

 全てが予想外であったが仲間が増えるのはいいこと。

 これで人数的には鐵宮の陣営とは充分に闘えるとは思うが……。

 

「燐。彼女とはどういう関係?」

 

 伊織さんとは初対面な美玲先輩がそう問いかけてくるが、伊織さんとの関係というと……。

 

「えーっと、一回戦って、そのあと共闘した関係? それより鏡華さんこそ伊織さんとはどういう関係なの?」

「私と日下部さんは……その、病院友達、です。そう、病院友達」

 

 病院、友達。 

 初めて聞く友人関係である。

 

「私も宮原さんと同じで記憶障害で主治医が一緒だから。だから、病院友達」

「記憶障害って……」

「去年、事故にあって。それから過去のことは何も思い出せなくなってしまった……」

 

 過去のことを何も思い出せなくなるとは、果たしてどんな感覚なのだろう。

 とても想像は出来ない。

 そして、伊織さんの願いというのはやはりその記憶に関するのだろうか。

 だが、今はその話をするべきではない。

 もっと重要なことがあるからだ。

 

「……とりあえず、私が仕切らせてもらうけど現在、鐵宮生徒会長がライダーバトルに参戦し徒党を組んでいるわ。ライダーバトルのルール違反をしているわけではないけど数には単純に敵わない。多くのライダーにとって邪魔な存在というわけで……」

「違うだろう咲洲さん」

 

 美玲先輩が話している最中に北さんが口を挟んだ。

 しかし、僕も北さんと同じ意見だ。

 

「建前はいいから、本当のことを話したまえ。別に恥じることではないだろう?」

「そうですよ。射澄さんを助けたいから手伝ってくれでいいじゃないですか」

 

 金草さんと伊織さんはまだなんのことやらさっぱりかもしれないが、それでもやはり本音を語るべきだと思う。

 

「……そうね。端的に言わせてもらえば、友達が鐵宮の手中に落ちた。だから、助けたい」

 

 そう、全ては射澄さんを助けるため、美也さんを救うため。

 本当は、僕達だけで解決するべきなんだろうけれど……。

 

「うんうん。美しい友情だねぇ! こういう戦いこそ私が望んだものさ! 正義のための戦いこそね!」

「詳しいことはまだよく分からないけれど……。けど、向こうにつくよりはマシってことだけは確かね……」

「理由はなんであれ約束は守るよ。勝負に負けた身だし」

 

 新たに仲間となった三人はそれぞれ共に戦ってくれるということに異論はないようだ。

 本当に、三人には全く射澄さんと美也さんを助けるという理由はないのに……。

 

「それじゃあまずは敵の情報共有から……。燐、お願い」 

「え」

「敵と戦ったのは燐だけなんだから説明出来るのも燐だけでしょう」

 

 なるほどそれもそうだな……。

 

「おっと咲洲さん。奴等となら私も戦った……」

「燐、お願い」

「分かりました」

「君達ひどくない?」

 

 北さんのお世話を鏡華さんに任せて鐵宮達の現在分かっている情報を伝える。

 とは言え、戦闘自体は短いものだったので他にどんなカードを所持しているか分からない。

 

「……ねぇ、今話した手裏剣持ったライダーなんだけど」

「なんですか?」

「……いいや、なんでもない」

 

 あの忍者のようなライダーについて、金草さんは興味があるようだったが果たして。

 何か、因縁があるのかもしれないけれど特に話すようなこともしなかったし聞くこともしなかった。 

 

 

 ひとしきり敵について話したところで、あの件について話すことにした。

 

「あの、美也さんについていいですか?」

「ええ、お願い」

「今日戦って気付いたんですけど、美也さん、いやヒナタと名乗っていたのでヒナタと言いますがヒナタに金草さんの攻撃が直撃したら一瞬、美也さんに戻ったんです」

「……つまり、攻撃すればそのヒナタという奴を取り除くことが出来る?」

 

 美玲先輩は僕の考えを汲み取ってくれた。

 正直、やり過ぎではないかとあの時は思ったがそれぐらいやらなければいけないのかもしれない。

 

「だけどまだ確証がなくて……。だから、確かめようと思って」

「確かめる? どうやって」

「刃……。黒いツルギに、会おうと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミラーワールド。

 美玲先輩達には少し別行動をしてもらって一人。

 心配はされたが、話すだけだから大丈夫なはず。

 さて、ミラーワールドに来たはいいがどうするか。

 日が沈み、空の色は赤と青が混ざりあい神秘的であるような、異様であるような。

 あの独特な音だけが響くだけで、それ以外はとても静か────。

 

「感傷に浸りに来たわけではないだろう」

 

 一分も待っていなかったと思うが、まさかこんな簡単に現れてくれるとは思ってもみなかった。

 

「刃。お前に聞きたいことがある」

「……」

「お前は美也さんを助けることは出来ないと言った。だけど本当はあるんじゃないか? 美也さんを助ける方法が!」

 

 刃を問い詰める。

 仮面が睨み合う。

 あの時の言葉が嘘であるなら、これから僕達がやるべきことは無駄ではなくなるが……。

 数秒が数分に感じる。

 何故黙っている。

 早く言ってくれ。

 こちらは時間が惜しいんだ……!

 

「……助ける方法は、ない。今のお前にも、俺にも」

「今の僕には……? じゃあ、助ける方法自体はあるんだな!」

 

 やはり、美也さんを助ける方法はあるようだ。

 だが、何故それを刃はあの時言わなかった……?

 

「助けて、どうする」

「え……」

「助けて、どうなる」

「助けてどうなるって……。美也さんは仲間なんだから助けて当然だ!」

「違う」

 

 何故、そう言い切った。

 何故、そう切り捨てた。

 何も知らないはずのお前が、なんで。

 

「あの時、助ける方法がないと言ったのはお前が影守美也を救うことが出来る力を手にするまでに影守美也はもたないと判断したからだ。だが、もしここでお前が力を手にしたいと言うならば……剣を抜け」

「そんな……。意味が分からな……ッ!?」

 

 一瞬で間合を詰めてきた刃が黒いスラッシュバイザーを繰り出してきた。

 逆手で咄嗟に抜いたスラッシュバイザーで防御するが、やはり、重い……!

 

「お前が戦う真の理由を思い出せ……!」

「真の、理由……?」

「そうだ、何故戦おうと思った。何故守ろうと思った。何故救おうと思ったのかを!」

 

 戦う理由を問われる。

 戦う理由なら既に決まっている……!

 

「人を、守るために……!」

「違う!」

「ガッ!?」

 

 鍔迫り合いに敗北し、押された僕を刃が襲う。

 痛い。

 これまでの戦いのどの攻撃よりも……。

 

『違う』

 

 違う……?

 

『そう、違う。お前が受けてきた痛みはこんなものではなかった』

 

 その声のあと、いきなり痛みが走った。

 強烈な、痛み。

 刃に斬られたわけでもない。

 この痛みは、なんだ。

 

「もしお前が影守美也を……。いや、この闘いに関わる全ての者を救いたいと願うのなら……。全てを思い出せ。剣も、戦う理由も、受けてきた痛みも、悲しみも!」

「ぐっ……!」

 

 この闘いに関わる全ての者を救う……?

 僕は、美也さんを助けたいから……。

 

『違う』

 

 何が、違う。

 今はそのために僕は戦って……。

 

『ライダーも、人間だ』

 

『お前が守りたいと言っている、人間だ』

 

 ────────。

 そうだ、ライダーだって人間だ。

 人間を守るというなら、ライダーだって守らなければ嘘だ。

 だけど、鐵宮達を守るのか?

 奴等のせいで射澄さんが……。

 殺しはしたくはないが、だとしても奴等を守ることなんて……。

 

『守れ』

 

『己に課された使命を忘れたのか?』

 

『お前は剣だ』

 

『人の護り刀である、剣だ』

 

『個人の善悪など問題ではない』

 

『お前はただ、人を守ればいい』

 

 ……そう、なのか?

 僕は人を……守る……仮面、ライダー……。

 

【けど本当は戦うことが好きな矛盾した存在。人の肉を斬りたくてうずうずしてる。そうでしょう?】

 

【自分をこんな風にしたものを憎んでいる。そうでしょう?】

 

【貴方はだって本当は人間を守ることなんてしなくてよかったはずだもの。違う?】

 

 唐突に割り込んできた雑音が何かを言っている。

 違う。

 僕は人を守る。

 ただ、それだけの存在……。

 

 そして、その終局は白き鎧を己が刃で赤く染めること。

 

 ()()()()()()()()()()()────。

 

「────ッ!?」

 

 なんだ、今のは。

 僕は何を見せられていた。

 僕は一体どうしてしまったというんだ……。

 刃と戦っていて、それで……。

 刃は何処に……!?

 

『大丈夫ですか燐君? 怖い目にあいましたね~。けど大丈夫です。とってもとってもと~っても強いこの私、アリスが来たからにはもう何も怖いことなどありません』

 

 目の前には衝撃の光景が広がっていた。

 僕を庇うようにして立つアリスと、今まさに処刑されようと、磔にされている刃の姿があった────。




次回 仮面ライダーツルギ

「もしかして、好きな男の子でも探してる?」

「……実力は確かよ」

「僕は……仮面ライダーだッ!」

「新しい仮面ライダーの誕生です」

願いが、叫びをあげている────。

ADVENTCARD ARCHIVE
SHOOT VENT(仮面ライダーカノン)
ヘッドカノン 3000AP

カノンの契約モンスターであるカノンリザードを模したバズーカ。
カノンの持つ銃火器の中で最も威力がある。
並みのモンスターならば一撃で葬ることが出来る。

放て、爆ぜろ、散れ。
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