戦いの場所を近くの森林へと移していた。
数刻前に戦った相手との第二戦。
難敵であることは理解している。
だからこそ、抜かりはしない。
もう既に、あの声高女との戦い方は頭の中で構築済みだ。
【GUARD VENT】
【STRIKE VENT】
両腕に装備される手甲と楯。
重くなる身体を振り回し、攻める。
「あは~! そんなノロノロな攻撃ィ、なっちゃんには当たらないよ~。そおら、こっちの番だッ!」
二本のナイフが迫る。
だが、手甲と楯がナイフを弾く。
「そんな軽い攻撃、あたしには効かねえぞ」
「ッ! ……なめやがってぇ!!!」
ナイフをがむしゃらに振るうが、今のあたしには全部避けきれて、防御も容易かった。
やけに、頭の中がクリアーだ。
沸騰した感情が嘘のように今は澄んでいる。
ああ、いや……。
なんとなく、分かっているのだ。
未来を見たとかそんなんではない。
ただ、直感で分かった。
こいつは此処で、あたしが殺すのだと────。
「でりゃぁぁぁ!!!!!!」
ナイフ二本が同時に振り下ろされる。
左腕に軽い衝撃。痛みではない。
楯で受け止めた、その衝撃。
左腕を押し上げて、敵の胴がガラリと開く。
そこへ、手甲を装備した拳をぶちこむ。
「ガッ!?」
よろける敵に追撃。
裏拳の要領で楯を仮面にぶち当てる。
更に手甲三発。
まだ攻撃は続く。
ただ、あたしではなくもう一人、バカの攻撃。
「おりゃあ!!!」
読めない軌道の鞭が襲う。
全身をくまなく打たれ、膝をついた敵を前に二人構える。
「っざけんなよ……なんなんだよ……!」
「お前はここで脱落だ。あたしが殺す」
「……ッ! ざっけんなぁぁぁ!!!!!!」
【FINAL VENT】
破れかぶれで発動されたファイナルベントを前にしても冷静であった。
隣のバカが、対処出来るからだ。
【CONFINE VENT】
マグロのようなモンスターの後押しを受けて、独楽のように回転し迫る敵であったがモンスターは消失。勢いも殺され失速し、前のめりに落ち葉達の中へと倒れ込む。
「そん、な……」
【FINAL VENT】
間髪入れず、バカが最大火力を放つ。
景色と同化していたタコ型モンスター『マジシャンズオクトパス』が現れ、触手で敵を縛りつける。
バカの鞭も同じく、首を締め付けた。
縛り付けられながら浮かぶその様は十字架にかけられたかのようだ。
「くっ……」
「やめ……い、いやぁ……」
……トドメだ。
【FINAL VENT】
手甲の先から針が出て、跳躍。
クインビージョと共に敵へ向かって……!
「パパ……ママ……!!!」
貫く。
そして、爆発。
着地と同時に地面に寝転ぶ。
今日一日でいろんなことが起こりすぎた。
だからか、全てが終わったいま、一気に疲れを感じた。
「瀬那!」
バカが駆け寄る。
仮面の下の表情が容易に想像出来る。
「なんでもない。帰るぞ……」
そう言った途端の出来事であった。
轟音が響き、空へ向かっていく大きな竜巻が視界に入った。
ライダーの、仕業……?
「だ、大丈夫かな……。向こうにいた奴等……」
「あんなの喰らえばひとたまりもないな。結構やられたんじゃないか?」
「そんな……」
「別にいいことだろ。ライダーの数は減るんだからな」
そう、これはライダーバトル。
最後の一人になるまで終わらない。
だから、自分以外を気にすることなんて愚かだ。
空を見上げる。
ひとまず、終わらせたんだという思いから。
星空を旋回する、あの子の契約モンスター。
あいつはこれからどうするのだろうか。
なんて。
モンスターなのだから、人を襲って食らうのだろう。
あたしの近くに現れたら狩ればいい。
だから、とりあえず、今は────。
そう、終わったんだ。
戦いが終わったかつての戦場には多くの少女達が行き場を失ったかのように立ち尽くす者、しゃがみこみ者で溢れていた。
共通しているのは、彼女達は絶望しているということ。
その絶望を与えたのは……僕だ。
「燐ちゃん! 咲洲さん!」
駆け寄る北さん達。
みんな無事でなによりだ。
「よかったみんな無事で……」
「一体何がどうなっているわけだい!? こんなにライダーが集まってそれをぶわぁって! ぶわぁって!」
「語彙力……」
北さんの圧に押されそうになるが、今はそれよりもだ。
抱えていた美玲先輩を降ろして、少女達の方へ。
「皆さん、デッキを渡してください」
全員に聞こえるように声を発する。
素直に聞いてくれると助かるが……。
「は……? ふざけないでよ……!」
一人の少女が立ち上がり、怒りに声を振るわせていた。
僕に向けられる視線も、憎悪が籠ったもの。
当然だろう。僕は、彼女達の願いを奪ったも同然なのだから。
「デッキがあるならまだ戦える……! 変身ッ!!!」
少女は無彩色のライダーとなり、僕に殴りかかる。
衝撃。
少女の下腹部、バックルをスラッシュバイザーツバイの柄の先、頭が捉えていた。
彼女が迫るのに合わせて半歩、右斜めに出て鞘を少しだけ突き出しただけ。
バックルに装填されたデッキに当てる一瞬だけ力を入れる。
それだけで、デッキは崩れ落ちて少女は生身を晒す。
「え……? あ……わ、私のデッキ……! 私のデッキ!? あ、ああ……!」
膝から崩れ落ち、デッキの欠片を集める少女。
目線を上げ、全体を俯瞰し再び言い放つ。
「再びモンスターと契約して戦おうとしても無駄だ! 何度だって
静まり返る庭園。
だが、一人の少女がデッキを投げ捨て逃げるようにして走り去るとそれに続いて次々と少女達がデッキを手放し、この場を離れていく。
残ったのは、無数のデッキ達。
あとはこれを回収して……。
「燐……!」
美玲先輩に呼ばれ、振り向く。
どこか泣きそうな、寂しそうな表情を先輩は浮かべていた。
安心させようとしたのだろうか。
変身を解除し、笑顔を浮かべて美玲先輩に言葉をかけた。
なんて言っていいか、分からないままに。
「美玲先輩。えーと、その……俺、はカッコつけすぎでしたか?」
「……馬鹿ね。全然似合ってなかったわ……」
あはは、と笑う。
美玲先輩は手厳しいなぁ……。
……少しは、いつもの調子は取り戻せたか。
なにより、美玲先輩を取り戻すことが出来た。
その事が、今はなによりも嬉しい。
だからか、頬が緩みそうになって仕方ない。
頑張って我慢はするんだけど。もう、どうしようもないくらいに。
だから、ずっと美玲先輩に顔を見せないように変身したままでいたのに。
ああ、こんな顔は見せられない。
だから、誤魔化そう。
捨てられたデッキ達を拾い集めよう。
少女達に一瞬の、幻の希望を与え、絶望へと落とし込んだ悪魔の道具を。
北さん達も手伝ってくれて、恐らくはライダー達の6割ぐらいはこれで脱落したと見てもいいかもしれない。
正確なことは、キョウカさんに聞くしかないけど。
「さて、そろそろ帰ろうか!」
「……やばい。こんな時間まで出歩いてた言い訳、考えないと……」
「そ、それより怒られる覚悟ですよ……! 風紀委員である私がこんな時間まで……!」
もう深夜である。
草木も眠るなんとやら。
高校生がこんな時間に出歩いてたら補導されるだろうし、僕は許可を取ったからいいけどどうやら伊織さんともう一人の人は家族に断りをいれてなかったらしい。
「私の家に泊まったことにでもすればいい。連絡しなかったことに関しては叱られるでしょうけど。ライダーバトルしてた、なんて言うよりはよっぽど健全な理由になるでしょ」
美玲先輩が提案すると伊織さんともう一人(以後、風紀委員さんと呼称)はそれを飲み、口裏合わせに色々と話をでっちあげていた。
「ところで、北さんは大丈夫なんですか?」
「テニスの特訓で一晩山に籠ると伝えてあるから大丈夫さ!」
……そういえばこの人、テニス部でしかもエースだった。
なんかこう、色々とおかしいよなこの人。
「さあ、一件落着ということで帰ろうか!」
「なんであなたが仕切ってるの……」
「ここにいるメンバーでもっともカリスマ性のあるのが私だからさ!」
確かに、北さんは人を引っ張っていくのは得意だろうな。
無理矢理。
少しばかり騒がしく帰路につくが、門の前で身構える。
「御剣燐……!!!」
「鐵宮……」
ボロボロの、立っているのもやっとな様で立ち塞がる鐵宮武。
やはり、強い憎悪の視線が僕を焼きつくそうとする。
「何故、邪魔をする……! 何故、立ち塞がる……! 何故、私に勝る……!」
そこにいたのは敗北を知らぬ者であった。
いや、正確には敗北をいま刻み込まれたばかりの者。
生まれながらにして頂点に立つ運命にいた者。
そんな彼を躓かせた道端の石が僕、といったところか。
「大勢の願いが叶うはずだったんだ! それをお前は……分かっているはずだ! 少女達の絶望を! 悲しみを! お前が奪ったんだぞ! 希望を! 願いを!」
「……そうですね。ただ……あなたの言っていることは詭弁だ」
「なに……?」
「あなたのような人がみんなの願いを叶えて、それで終わりとは思えない。あなたが何を目的にしていたかは分かりませんが少なくとも……。あなたの正義は僕の悪だ」
美玲先輩とキョウカさんの命を奪おうとした。
射澄さんの命を奪った。
敵対するには充分過ぎる理由だ。
「悪、だと……。この俺が……悪だと!」
「ああ。あんたにとって僕が悪なように、僕にとっての悪があんただ。……あんたはもうライダーじゃない。退け」
「ふざ、けるな……! ぐっ!?」
こちらに詰め寄ろうとした鐵宮。
だが、様子がおかしい。
「ぐあっ……! 目が、目がぁ!?」
目をおさえ苦しむ鐵宮はふらつく。
指と指の間から血が流れ、滴り落ちる。
目から出血しているようだ。
そして……。
「ッ!?」
駆ける、手を伸ばす。
だがもう遅かった。
よろける鐵宮は石段を転げ落ちた。
踊り場で倒れる鐵宮のもとへ駆けるもそれより早く鐵宮の傍に現れたものがいた。
鐵宮と契約を結んでいたモンスター、レオキマイラ。
デッキは破壊したので契約は無効のものであるが、かつての契約者を救おうとでもいうのか。
いや……。
獣が一吼え、唸る。
「れ、レオキマイラよ……喰らえ……奴等を喰らえ……!」
目には見えずともその咆哮は鐵宮の耳に届いていた。
デッキを手に取り警戒する、が。
レオキマイラが牙を剥いたのは、鐵宮に対してであった。
咥えられた鐵宮の体に牙が突き刺さり、咀嚼され、鐵宮は獣の餌と成り果てた。
「ひっ……」
風紀委員さんが小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。
風紀委員さん以外はそれぞれデッキを手にし戦闘態勢。
それを察知したレオキマイラは森の中へと逃げ込み、姿を消した。
「……嫌な幕切れね」
「……あいつは射澄を殺した。その報いよ」
報い、か……。
死が報いならば、僕は────。
「燐?」
「え……あ、すいません。ぼうっとしちゃって」
「色々あって疲れてるのよ。あのモンスターを追いたいところだったかもしれないけれど、休んだ方がいいわ」
「……はい」
とにかく、今はここから去ろう。
そして、少しだけ戦いから遠ざかろう……。
なんだ、あれは。
なんだ、あれは。
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。
あんなものは、インチキだ。
あんなものがあるなんて聞いてない。
────まあ、鐵宮の未来視だってインチキだったが。
しかしあれはそれ以上だ。
鐵宮をなんなく倒して、他のライダー達の契約モンスターをまとめて殺戮した。
こんなこと、普通のライダーでは出来ない。
奴はなんなんだ……。
『彼はライダーバトルの外側にいる存在』
コアの声が脳内に響く。
今、ここではないどこかから語りかけているとでもいうのか。
「外側……?」
『ええ。男ということを抜きにしても、彼は始まりの仮面ライダーにして人類の守護者として生まれた存在。貴女達のように欲望に殉じて殺し合う者とは違うのよ』
どこか、私達ライダーを見下すように。そしてあの仮面ライダーを、御剣燐を讃えるようにコアは言った。
それが妙に鼻についた。
「人類の守護者? 馬鹿馬鹿しい。あいつだって人間。人間であれば欲に駆られる。願いを叶える力があるというなら、絶対にすがり付くはずよ」
『さあ、どうかしらね。ところで、貴女はこれからどうするの?』
これから?
……ああ、そうか。
あたしはいわゆる虎の威を借る狐というやつで、威を借りていた虎が脱落してしまったのだ。
他のあてを探す?
いや、現状の虎は間違いなくツルギ。
奴の陣営にあたしが入ることは不可能だ。
奴等を騙して寝首をかくのは無理。
となれば、あたしが虎となってライダー達を束ねて数で奴等を潰す?
それも不可能。
さっきの戦いを見ただろう。
むしろ、集団戦こそあの姿のツルギの本領を発揮させることになるのだろう。
それにそもそも、あたしに人を束ね、纏めあげるような才はない。
あたしは自分自身をよく知っている。
あたしは鐵宮のようにはなれない。
じゃあ、これから一体どうすればいい……。
『ねえ、私のために働かない?』
「は……?」
『今夜でライダーバトルは実質終わり。無効試合。だから、このゲームは捨てるの』
「捨てる……?」
『ええ。だから、貴女に新しいゲームの参加権をあげるわ』
新しいゲームの参加権……?
この女の企みはまるで分からない。
手の平の上で踊らされているのだろうとも思う。
ただ、それでも……。
握り締める右腕の痛み。
これが、私の願い。
願いのためなら、踊ってやる────!
暗闇の中、白い女の影がにたりと笑う。
新たなる遊戯の駒が三つ、手に入った。
けれどまだ、遊ぶには駒が足りない。
『駒ならば、すぐに集まるでしょう。ね? コア?』
背後に忍び寄る少女の声。
少女は白い女の肩に顎を乗せて、妖艶な瞳でコアを見つめた。
そして、少女の影から這う茨が女をつたう。
『貴女もその駒の一つだって分かってる?』
『ええ。でもぉ……私みたいにぃ、いつでも裏切りそうな奴がいた方がゲームに緊張感が生まれますよねぇ? 私はいつでもゲームマスターの権限を譲られても問題ありませんよぉ? だって私ぃ、失敗しませんから☆ 確実に、一度きりで全てを終わらせます……』
少女は不敵な笑みを浮かべる。
まったくと内心ため息をつくコアであったが、これほどの駒はそう手に入らない。
長い時間をかけて探し出したのだ、多少のことは目を瞑ろう。
『少し待ちなさい。最高のゲームのためにも準備が必要よ。念入りな、ね』
『はーい。それじゃあそれまで新しい仲間と絆でも深めますかぁ』
少女は闇の中へと姿を消す。
新たなる遊戯の開幕が迫る────。
美玲先輩の家の近くまではミラーワールドを使って移動した。補導が怖かったので。
美玲先輩の家まではもう少し。
男の僕がいていいのか? なんてことを考えたがそれも今更だと別の思考にすぐ切り替えた。
キョウカさんのこと。
きっとまだ、あそこに一人でいるはずだ。
話せるのなら……話したい。
美玲先輩の家の玄関前まで来たところでようやく決心がついた。
「すいません。僕、行きたいところがあって」
「こんな時間に? 一体どこへ?」
「あー、えーっと、そのぉ……行ってきます!」
「燐!」
はぐらかして、キョウカさんのもとへ向かう。
正直に言うのは気が引けた。
それはキョウカさんがアリスだったからか。
いや、もっと違う何かというか……。
「狡いな、僕……」
本当は、分かっている。
理由なら。
分かってしまったのだ。
それを前の僕は出来なかったから……。
とにかく、彼女とちゃんと話さないと。
ライダーバトルのことを、ちゃんと。
一人、何処かへと向かった燐の背中を見送り残った三人を家にあげた。
シャワーを浴びて、軽食もとってとあれこれやりたいのだが……。
「彼のこと、追いかけなくていいの?」
「……それは」
「気になるなら追いかけたまえ咲洲さん。追いかけた方がいいと、私の勘も言っている」
二人の後押しを受けて、決意する。
「ありがとう。今から追い付けるか分からないけど、行ってくる。家は好きに使っていいわ」
「ええ。北さんが何もしないように見張ってるわ」
「どういう意味だい日下部さん!」
「頼むわ」
日下部さんに家を任せて燐を探しに出かける。
ミラーワールドにいるガナーウイングにも燐を探すように命じて寝静まる街を一人、歩く。
数時間前に戦闘が行われた、燐がキョウカと出会った廃墟の洋館。
キョウカはそこで独り、自身を抱き締めるようにして座っていた。
「キョウカさん」
『燐くん……!』
燐が無事でいたことに、堪えていた涙がキョウカの目から溢れ出す。
二人は互いに割れた鏡に歩み寄り、右手を重ねる。
『よかった……燐くんが、生きてる……』
すすり泣くキョウカを燐は静かに見つめる。
優しい瞳で。
「うん。僕は生きているよ、ちゃんと」
『うん……うん……!』
その言葉に、どれほどの思いが籠められていただろうか。
かつて、人を守るために死した御剣燐とそれを看取ることしか出来なかったキョウカにしかそれは分からない。
幾何かして、燐は右手を下げた。
意を決して、問い掛ける。
記憶を取り戻してから考えていたことを。
「キョウカさん、教えてほしい。なんで君が、ライダーバトルなんてものを始めたのか……」
静かな街の中、歩き続けて数十分というところ。
「このあたり、宮原の家の近くね……」
まさか宮原の家に行ったのかと思い、道を思い出しながら進むと……。
予想外どころの話ではない。
一体、何がどうなっているのか。
あの屋敷が、廃墟と化している。
そんな、あり得ない。
ただ、どうにもここが廃墟であったことの方が自然というか、ここは廃墟であったはずだと思う自分がいる。
最初に燐と共にここを訪れた時も何か違和感を覚えたのは、まさかこれだったのか。
燐はきっとこの中にいる。
確信めいたものがあり、錆びた鉄扉に手をかけ廃墟の中へと足を踏み入れた。
『それ、は……』
「……僕は、僕が死んでからのことは何も知らない。僕が死んだ後に何かあったんじゃないかって、そう考えてて……」
御剣燐とキョウカが出会い、御剣燐が死ぬまでの間はキョウカには鏡の中にいること以外に特別な力などはなかったはずと燐は記憶している。
そういった力は隠していただけかもしれないという推測もあるが、燐はかつてのキョウカに何も特別な力はないとほとんど確信していた。
『燐くんはなんでだと思いますか?』
キョウカはこれまでと打って変わり、アリスぶって燐を突き放した。
話すことなどないのだと。
けれど、キョウカからアリスという仮面は剥がれ落ちていた。
どうしても、涙が止まらなかった。
アリスという仮面は真実を隠すため、ずっと泣き続けてきた己の顔を隠すためのものだった。
それが失くなった今、キョウカは感情を塞き止めることが出来なかった。
「キョウカさん……」
『なん、で……どうして私は……! 失敗しかしてこなかった! 燐くんを救うことが出来なかった!』
「僕を、救う……?」
『言いましたよね……燐くんは、戦っては駄目だって……。私は、燐くんに戦ってほしくなんて、なかった……。ずっと、私の傍にいてほしかった……』
彼女の心には常に、燐と他愛ない話をしていたあの頃の思い出が存在していた。
どれほどの時を繰り返しても、磨り減るもの達があってもこの思い出だけはずっと持ち続けていた。
『燐くんは、兄さんに言われて責任感で戦ってきました……。ミラーワールドが開いたことは燐くんが悪いんじゃない。あれは事故だというのに……。兄さんは私を救うと言っていたけれどそんなの望んでない! なにより救われるべきは燐くん、あなたでしょう……』
救われるべきは自分自身。
そんな風に言われても、燐にはよく分からなかった。
「キョウカさん。僕が救われるなんて、そんな……僕は別に……」
『たった独りで孤独に戦って! 傷ついて! 守るべき人間からも裏切られて! そして最期は戦いの中で死んで……。こんなの燐くんが辿るべき道じゃない! 私は、燐くんに……』
「────それ、どういうこと」
突然、割って入った第三者の声。
声の主は、咲洲美玲。
「美玲、先輩……」
「燐が、死ぬ……? 一から説明して!」
驚愕に目を見開き、キョウカが映る鏡へと迫る。
『……そう、ですね。咲洲美玲、貴女にも関係あることですから聞きなさい』
まっすぐと美玲を見つめ、キョウカは真実を語ろうとする。
だが、そこへまた新たな闖入者が現れる。
「キョウカさん!」
それに気付いたのは燐であった。
黒い短剣がアリスを突き刺そうと迫っており、燐がそれに気付いたので回避することは出来た。
ただ、鏡を越えて飛来した短剣が燐の頬を掠める。
静かに、血が流れた。
「燐!」
『燐くん!』
『両手に花、だな』
どこから侵入したのか、キョウカの背後に立つは仮面ライダー刃────。
闇の中から黒い剣士が現れて、キョウカの首筋に太刀を添える。
『あなた、どこから……!』
『来い、御剣燐。お前には俺から真実を話そう。剣を交えながらな。出来ないというなら、この女を斬る』
「……分かった」
燐はデッキを刃に見せつける。
「燐、私も……」
「いえ、こいつの相手は僕がします……! 変身ッ!」
ツルギとなり、ミラーワールドへと飛び込む燐。
ミラーワールド側へと出ると同時に刃はキョウカを突き飛ばし、スラッシュバイザーで斬りかかるツルギと刃を交えた。
『燐くん!』
「キョウカさん、下がっていて!」
鍔競り合ったまま駆け、崩落した壁から両者は外へと戦場を移した。
『……燐くん』
「アリス、聞かせなさい。一体、貴女と燐の間に何があったのかを」
『……ええ。そうですね、燐くんがいない方がかえって良かったのかもしれません。燐くんがいたら、そんなことはないって否定されていたでしょうから……。私が見た、真実を話しましょう……』
語られる真実に美玲は息を呑む。
自分の知らない、燐の物語をこれから知ることになるのだと────。
次回 仮面ライダーツルギ
『もう一度、彼と会いたい?』
『一人孤独に戦い続け、磨き上げられた剣技。そして……』
「……反則」
「……ようやく、死ねる……」
願いが、叫びをあげている────。
ADVENTCARD ARCHIVE
SWORD VENT(仮面ライダーツルギサバイブ)
リュウノゲキリン 4000AP
ツルギサバイブのソードベント。
ドラグブレイダーの鱗を模した六枚の刃が風に乗り、自由自在に飛び回り敵を切り裂く。
スラッシュバイザーツバイと合体して大剣形態となる他、単体で構えるとダガーに、三つが合体することで双剣形態になるなど形態変化も特徴的。
その龍の鱗は宝剣とされた。
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オリジナルライダー作品コラボ企画
ハーメルンジェネレーションズ
仮面ライダーツルギと仮面ライダーシェリフ
異なる世界の、異なる主義の二人が出会う────。
仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ
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こちらもよろしくお願いいたします。