仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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ALTERー12 遊興の襲撃者

 風が、力が、荒れ狂う。

 鋼と鋼のぶつかり合う音、眩く散る火花。

 剣が風を切り、剛腕が振るうトンファーが大地を抉る。

 一手、一手間違えるだけで死に急降下してしまいそうな生死の境。生という名の綱を渡る二人。

 ツルギサバイブ、燐は決してレイダーサバイブ、遊の命を奪うつもりなどない。 

 ゆえに、危うい。

 命を奪わず、その力だけを奪うというのは難しいことだ。ましてや、実力が拮抗している者となれば。

 

「あぁ……このヒリヒリとした感じ堪んないよ!!!」

「ッ……!」

 

 激しい打ち合いの最中、楽しげな遊の声が語りかける。

 

「君もそうだろう! 私と同じ闘いを楽しむ者だったろう!」

「僕は、違う!!!」 

 

 戦えと、燐に囁いていた声。宮原士郎が燐を戦士とするべく言い聞かせた言葉。

 

『戦いを楽しめ』

 

 ゲームの感覚で、戦うことに何も思わせないようにする訓練のひとつであった。

 あの声がなんだったのか理解した燐はもうその声に惑わされることはない。

 

(見えた)

 

 左手のトンファーからの一撃を斬り上げて弾く。即座に右手のトンファーによる打撃が打ち込まれようとしているが、弾かれた左手側は守備ががら空き。この僅かな隙をつく。

 スラッシュバイザーツバイの切先がレイダーサバイブのデッキを狙う。

 剣先が一直線に駆けて、デッキを貫く────はずだった。

 

「ッ!?」

 

 刃は、阻まれる。

 ツルギサバイブに打ち込まれようとしていた右手が、デッキの前に置かれていた。

 

「ふふーん。殺さないようにするなら、デッキを狙ってくるだろうと思ってたよ!」 

「く……」

「さあ、殺すつもりでないと死ぬのは君。いや、君達だよッ!!!」

 

 トンファーが受け止めた刃を払いのけ、ツルギサバイブに向けてトンファーによる殴打が二撃。胸部に走る衝撃に、ツルギサバイブは後退りレイダーサバイブを睨み付ける。

 

「燐!」

 

 ツルギサバイブを援護しようとアイズが矢を放つ。レイダーサバイブは自身に向けて放たれた矢を、風を撫でるかのような、まるで力の入っていない動作で振り払う。

 

「なっ!?」

「邪魔しないでよ~」

「でぇぇぇやぁぁぁ!!!!」

 

 グリムがチェーンソーのような刃を持つ短剣二振りを構え、レイダーサバイブへと立ち向かっていく。独楽のように回りながら繰り出された刃はレイダーサバイブに直撃する、いや、直撃させたのだ。防御の構えも取らない棒立ちで、グリムが刃を振るうのを彼女はじっと眺めていた。

 レイダーサバイブの鎧は数多の戦いを経験したかのように傷だらけではあるが、グリムによって付けられた傷は一つも存在せず、その堅牢さを知らしめるのであった。

 

「嘘でしょ!?」

「全然響かないよっ!」

「ッ!?」

 

 満足感を得られない攻撃しか与えられない者に興味はないと、剛腕が振りかざされる。

 その拳には、迫力があった。

 死を感じさせる力があった。

 あれが直撃したら、死ぬ。死、死だ。死への恐怖が身体を支配し拘束する。

 

「あっ……」

 

【SWING VENT】

 

 咄嗟に、ジャグラーが動いた。

 武器である白い鞭を召喚し、グリムへと向かって鞭を伸ばす。グリムの腹部に巻き付いた鞭を力の限り引っ張り、グリムは引き摺られるようにしてジャグラーのもとへ。

 グリムが立っていた場所は、レイダーサバイブの拳によって砕かれていた。

 もしも、あと少し助けられるのが遅ければ、自分の肉片が辺り一面に転がっていただろう。そう思うとグリムの背に冷たいものが走る。

 

「大丈夫!?」

「うん、ありがとう!」

 

 一人一人立ち向かっていては歯が立たないとグリムとジャグラーがレイダーサバイブへと立ち向かい、アイズが再び矢を放ち援護。

 また、ツルギサバイブも自身の周囲を舞う風を荒れ狂わせ加速。四人からの一斉攻撃にレイダーサバイブは余裕の顔を仮面の下で浮かべる。

 まず、最も速く自身に接近してくるツルギサバイブの方を向き、地面を殴り付ける。すると、アスファルトを砕いて大地が牙を剥く。ツルギサバイブに向かって連なっていく岩石の牙。瞬間的な加速のため、今のツルギサバイブは方向変換が難しい。

 ゆえに、彼が選択するは回避ではなく攻撃である。

 

「ぜあぁぁぁッ!!!」

 

 スラッシュバイザーツバイを振り抜き、風の刃を放つ。

 風の刃と大地の牙がぶつかり合い衝撃を生み、接近していたグリムとジャグラーを怯ませる。立ち込める土煙の中、レイダーサバイブはグリムとジャグラーに襲いかかる。土煙に姿を隠し奇襲を試みるレイダーサバイブだが、その鎧に青い火が灯った矢が命中する。

 

「この中で当ててきた……」

 

 まぐれかと思いながらも土煙の外から、自身に向けて矢を命中させてきたアイズを見えないながらに睨み付ける。

 すると、風を切る音がこちらに近付いてくるのを聞いて二射、三射と矢が続く。トンファーで弾き、土煙の中を移動するレイダーサバイブであったが、矢はしつこく自分をつけ狙ってくるのを見て確信する。

 あいつは、こちらが見えていると。

 そう、アイズには見えていた。

 仮面のスリットの下に潜む鋭い蒼の瞳には、土煙の中のレイダーサバイブも仲間達の姿も見えていた。

 ゆえに、狙う。狙い続ける。

 自分の攻撃がレイダーサバイブにダメージを与えられないことは理解している。

 だから、この射は攻撃を目的としたものではない。

 

「ガッ!!!」

 

 背後からの剣気に反応こそ出来たが回避には至らない。レイダーサバイブの背中を袈裟に切り裂くツルギサバイブ。そう、アイズの放った矢はこのために。

 矢に灯る青い火が目印となり、レイダーサバイブの位置を伝えていた。

 奇襲を仕掛けるためにと土煙を活用していたレイダーサバイブであったが逆に奇襲を許してしまった。

 いいものを貰ってしまったと内心毒づくレイダーサバイブはこの窮地をどう切り抜けるかを思案していた。

 もう土煙も晴れつつある。

 同じような手は使えない。

 しかし、しまった。ツルギとの戦いこそ本命のため他三人には対して興味もなく、適当にあしらっていたがそれではいけないらしい。

 特にアイズは頭が切れる。

 戦いに集中するためにも、奴から削るか。

 レイダーサバイブの標的がアイズへと一時変更。

 そのためにも、まずはツルギサバイブ達の足止めをしなければいけない。

 

「こういうことも出来るんだよねぇ」

 

 地面を殴り付けるレイダーサバイブ。いや、殴り付けたのではない。地面を掴んだようであった。

 掴まれた地面をレイダーサバイブは引っ張り上げていく。すると土塊が盛り上がり、人の形を成していく。

 

「なに……?」

「あれって……」

「ライダー……」

 

 土塊は、ライダーとなった。

 白い恐竜の化石に包まれたような意匠のライダー。

 それよりも目を惹くのは身体中の傷痕であった。既に激しい戦いを行った後のような、万全とは言えないような風貌。

 なによりも、生気というものが感じられない。

 

「お次にこいつと……こいつも、せいぜい役に立ってよね」

 

 続いて、両手で二人のライダーも土塊から生み出される。

 赤い蟻を模したようなマスクのライダーと鉄色の蠍を思わせるライダー。

 この二人も、白いライダーと同じように生きているように思えなかった。

 

「そんじゃ、ちょっとばかしよろしくっと」

 

 レイダーサバイブが三人のライダーに命じると、ライダー達がそれぞれの得物を構え、ツルギサバイブ達に攻撃を開始する。

 赤いライダーと鉄色のライダーはそれぞれショットガン型の武装と小型の砲のような武装の引鉄を引く。

 グリムとジャグラーは放たれた弾丸を回避し、ツルギサバイブは風による防御で弾丸など無視して駆ける。

 ツルギサバイブに向けて白いライダーがトカゲの舌のような鞭を振るうも、鞭は斬り捨てられツルギサバイブは白いライダーに肉薄。

 白いライダーは恐竜の尻尾のような、鈍器とも取れるような銃剣を手にし、ツルギサバイブを迎え討とうとするがここはツルギサバイブの距離。

 通り抜けながら白いライダーの胴に斬を叩き込み、その勢いのまま駆け抜け赤と鉄色のライダーのもとへ。

 白いライダーが銃剣をツルギサバイブの背に向けるが、その銃剣はジャグラーの鞭によって叩き落とされ、グリムが白いライダーを後ろから取り押さえる。

 

「あなた達なんなの!?」

 

 グリムの問いかけに白いライダーは答えない。

 そうこうしている間、ツルギサバイブは二人のライダーへと距離を詰め赤いライダーの胴を一閃。

 

「な……!?」

 

 斬った時の手応えからしておかしかったが、その光景はツルギサバイブにとっても予想外であった。

 斬られた衝撃で赤いライダーが腰から直角に、背中の方に上半身が倒れたのだ。

 動揺するツルギサバイブに鉄色のライダーが攻撃を仕掛けてくる。今起きたことがあり、スラッシュバイザーツバイは使用せず、裏拳を鉄色の仮面に叩き込む。

 すると、今度は鉄色のライダーの首がぐにゃりとあり得ない曲がり方を。いや、これは折れたのだ。

 しかし、やはり手応えがおかしい。

 折れた、というより元から折れていたようだ。

 なにより……この二人のライダーは己が身体の状態など無視してまだ活動している────。

 

「やっぱりこれは人間じゃない……!」

「嘘でしょ!?」  

 

 驚愕に力が緩んだグリムの拘束を解いて白いライダーがグリムへと殴りかかる。

 右フックを回避しながら、グリムもまた反撃と腹部に拳を叩き込む。 

 すると、殴られた紫色のアンダースーツが裂けて赤黒い液体が噴き出し、グリムの仮面を濡らした。

 

「うっ……!」 

 

 人間じゃないと言われた三体のライダー達であったがそれは生きている人間のように血のようなものを噴いた。

 その光景にもしかしたら本当は人間なのではないかと思ってしまったグリムは動きが止まり、背に白いライダーの拳が叩き付けられる。

 うつ伏せで地面に倒れたグリムの背を踏む白いライダーはグリムの臀部を集中的に鞭で打つ。

 

「きゃっ! こ、この……! いっ……!」

 

 無機質に鞭を振るう白いライダーだが、仕返しとばかりにジャグラーの鞭が飛ぶ。

 グリムを踏みつけていた足が退かされるとグリムは即座に身を転がして立ち上がり、双剣でバツ字を描くように白いライダーを切り裂く。

 

「ごめん、また助けられた!」

「いいってこと! にしてもそういう趣味があるとは……」

「ないよそんな趣味!!!」 

「え、ごめん。あいつに向かって言ったんだけど……」

 

 仮面の下の顔が真っ赤になる美也であったが即座に切り替えて白いライダーに向き合う。

 ツルギサバイブもまた二人のライダーを相手にしていた。

 

「ぜあぁッ!」

 

 相手が土塊と分かれば容赦はなく、赤いライダーの上半身と下半身を断つ。

 切り落とされた上半身がもがき苦しむように手を動かす。これで終わりかと思われたが、割れたアスファルトの下の土が赤いライダーのもとへ集まり、新たな下半身を形成し再生。立ち上がり、ショットガンが火を噴く。

 更に、断たれた下半身の方も新たな上半身を得て赤いライダーは二人となってしまった。

 

「斬るのはまずい!」

「じゃあどうすれば!」

「くっ……!」

 

 一体一体は大した力はなく、ツルギサバイブからしたら容易に切り捨てられる。だが、斬れば増えるという相性の悪さ。

 安易に攻撃しては敵を増やすだけかもしれないとグリムとジャグラーの攻撃の手も緩む。

 こうして三人がレイダーサバイブが召喚した死者達の相手をしている間、レイダーサバイブはアイズを狩ろうとつけ狙っていた……。

 

 

 

 

 

 燐達と分断され、喜多村は私を標的としている。

 燐が目的みたいに言っていたはずだけど……。ああいう手合いの思考回路はまるで分からない。

 戦闘能力という点において私はレイダーサバイブに敵わないのは明白。であれば、逃げの一手を打つしかない。

 燐がいればすぐにあの三体のライダーをどうにかしてくるだろう。

 それに、戦闘能力では劣るが機動力という点では私の方に分があるだろう。

 ガナーウイングを召喚し、背中に装備して飛翔。

 どうやら飛んでる敵を落とす術はないらしく、地上のレイダーサバイブは頭を抱えていた。

 

「うーん、私じゃどうにもならないから頼んだよ相棒!」

 

【ADVENT】

 

 ビルの屋上に降り立った緑色のゴリラのようなモンスター。そのモンスターの身体が鏡が割れるようなエフェクトを放ち、新たなる姿へと変貌を遂げる。

 体躯は更に巨大となり、機械的な意匠が強くなったように思われる。

 

「ガッツフォルテ改めガッツタイタン! いっちゃえ相棒!」

『ウオオオオオオオ!!!!!!!』

 

 高く吼え、ドラミングするガッツタイタンはその巨体に似合わぬ機動力でビルを足場にして飛び掛かってくる。

 ……とにかく逃げ切るしかない。

 小回りなら私が上、あのモンスターだって飛行能力を持ってるわけではない。

 本気で逃げ回れば、いける。

 高度を上げて加速。眼下にはビルとビルを飛び交い私を追うガッツタイタン。

 この調子なら、余裕そうね……。

 

「止まった……?」

 

 突然、ガッツタイタンはビルの上で立ち止まり私を見つめている。

 一体、何のつもり……?

 諦めてくれたとでもいうの。

 いや、そんな甘い考えは捨てなさい。

 何か、何かまずい。

 警鐘が鳴る。まだ、ひたすらに飛んでいないとまずい────。

 

 ガッツタイタンはビルの屋上を殴り、自分の掌に収まるサイズのコンクリート片を握り潰すとアイズ目掛けてコンクリート片を投げ付ける。

 コンクリート片はガッツタイタンに握り潰され細かな欠片が散弾となってアイズを襲う。

 

「ぐっ!? きゃあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 アイズの背中にコンクリート片が直撃。バランスを崩し、青い羽を散らしながらアイズは墜落。

 何処かの廃工場の屋根を突き破り、地に伏した。

 変身も解け、美玲は埃っぽい床の上で這いつくばる。

 

 

「っ……あぁ……」

 

 背中の痛みが酷い。

 骨が折れたと思うぐらい、立ち上がれないほどだ。

 ガナーウイングも何処かへ飛び去った……というよりも、姿を隠したというべきか。

 弱った姿を見せたら、格好の捕食対象となってしまうだろうから。

 ……いや、それよりも自分のことか。

 身動きが取れない。ミラーワールドで変身もせず、生身でこんなところを晒していたらそれこそ格好の餌食だ。

 モンスターにしろ、喜多村にしろ……。

 そんなことを考えたからだろうか、屋根を突き破ってガッツタイタンとその肩に乗ったレイダーサバイブが目の前に現れる。

 

「もー、鬼ごっこはいいとしても飛ぶのはルール違反だよね。飛べない子の方が多いんだからさ」

 

 ガッツタイタンの肩から降りたレイダーサバイブが私を指差しそんなことを言う。

 

「……ルールなんて、この戦いにあったかしら」

「ないね、ない。配下の男共に襲わせてから恥ずかしいとこばっかり攻めるライダーなんてのもいた」

「……ああ、そんなのもいたわね」

「おっ、あいつと知り合いだったのかい?」

「一度、やり合ったことがある。男に襲われなかったのは幸運ね。それだけは、本当に嫌」

 

 私に時間はないが、時間を稼ぐ。

 デッキの持つ回復能力で多少は痛みが引いてきた。おかげで、身体を起こすぐらいは出来るようになった。

 そうして時間を稼ぎつつ、この状況を打破する方法を考える。

 まともにやり合っては勝てない。

 アイズになったところで、相手はサバイブ。性能が違う。

 

「……そういえば、貴女の願いは何なの。燐にやたら絡むのと関係ある?」

「私? 私は強い奴と戦いたい!!!」

 

 強い奴、か……。

 それで燐をつけ狙ってきたわけだ。まったく、燐は変な女とよく行き当たる。

 

「そういう君はあの子のなんだい?」 

 

 その問いに、ふっと笑ってしまった自分がいる。 

 口角は上がったまま、私はただ右手の親指を立てた。

 

「わーお、そういう感じか~。安心してよ、そういう意味では狙ってないからさ」

「ならいいけど……」

「あ、君を殺したら怒った本気のあの子と戦えるかな?」

 

 ……最悪、しくった。

 これだから狂人ってやつは嫌い。思考回路がまるで分からない。

 会話の流れが全て戦うことに帰結してしまうんじゃないのかこいつは。

 

「……どうだか。戦いになるかも分からないけど」

「それはそれで見てみたいね。そして、味わいたい」

 

 あー、駄目だこれは。

 会話は引き伸ばせそうにない。

 時間は充分稼いだつもり。しかし、燐も美也も来ない。

 まあ、私が結構遠くに来てしまったようだし仕方ない。

 

「仕方ない……」

「死ぬのを仕方ないで済ますのかい?」

「……違う」

 

 レイダーサバイブに背を向け、立ち上がる。

 身体の方はそれなりに良くなってきた。

 本調子には程遠いけれど。

 それでも、仕方ない。

 逃走も助けも見込めない現状を打破するためには仕方ない。

 あいつの言葉が思い返される。私はライダーとして弱くなってしまったらしい。

 それでも、戦うしかない。

 振り向く私を見たレイダーサバイブの足が止まる。驚いたようだ。

 私に巻かれたベルトを見て。

 

「それは……?」

「私に聞かないで。変身」

 

 黒いデッキをバックルに装填し、黒いスーツを纏う。獅子を模した頭部。左腕には銀色のバイザー。

 オルタナティブ・エンプレス。

 佐竹から取り上げていたデッキで変身。

 忌まわしい、かつて射澄を殺した相手のモンスターの力を使うことになるなんて。

 けれど、アイズでは性能面でレイダーサバイブには敵わない。

 ならば、ライダーより性能が上だというこの力を使う。

 レイダーサバイブに対して勝つつもりは毛頭ないけど、生き残るためだ仕方ない。

 

「……ふふ、あはは! 骨がある子は大好きだよ!」

 

 駆けるレイダーサバイブを冷静に見据え、その拳を回避しレイダーサバイブの仮面に一発、拳が命中。

 身体と身体が密着しそうなほどの距離で膝蹴りを放ち、怯んだところを蹴り飛ばす。

 ……なるほど、従来のライダーシステムよりも動きやすい。運動性能がかなり高いらしい。

 戦闘のアシスト機能もこっちのがかなりいい。

 

「意外とラフなんだね君!」

「……暴力の振るい方を知らないだけ」

 

 こっちはあっちと違って喧嘩なんかの経験はないのだ。弓道を7年ばかりやっただけである。

 それに、このデッキの武装はなんとも私とは相性が悪い。

 いいところで切り上げて撤退しなければいけない。

 易々とやらせてくれるとは思わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病室に、最近やけに縁のある女の顔があった。

 惣田早苗。こいつが病室に来た理由は至極単純。こいつが勤める孤児院のガキ達が川原に流れ着いたアタシを見つけて、通報という流れ。

 

「まさか、あんなところで出会ったと思ったら今度は土左衛門になりかけてるなんて思わないわ」

「……アタシはロボットじゃねぇ」

 

 何故か吹き出す女。

 腹を抱えて笑い始めやがった。

 

「なに笑ってんだよ気持ち悪い」

「ふふ……ごめんね? 土左衛門っていうのはその溺れて死んじゃった人を指す言葉で……」

 

 ……なんだそれ。

 思ってたのと違った。

 こいつそれで笑ってやがったのか……!

 

「知るかよそんなこと!」

「ごめんなさいって。可愛い勘違いだったからつい」

「……つうか、何の用だよアタシに」

 

 こいつがわざわざ来た理由はなんだ。

 通報して助けてやったから礼ぐらいしろとでも言うつもりだろうか。

 そもそもアタシは助けてくれなんて頼んだ覚えはない。

 

「昨日のこと、援助交際してるの?」

「……ああ、そうだよ。だからなんだよ。関係ないっつったろ」

「関係ないかもしれない。けどね、そんなことしなきゃ暮らしていけないような子は一人もいちゃいけないのよ」

「なんだよそれ……死ねってことかよ!」

「違う。子供は親に……大人に守られるものよ。貴女、ご両親は?」

 

 親に?

 大人に守られる?

 何を言ってるんだこいつは。

 守ってくれてた父さんは死んだ。それから、守ってくれる大人なんていなかった。

 母さんも、学校の先生も、アタシを抱いた奴等も。

 誰も、誰もアタシを守ってなんてくれなかった!

 だからアタシは一人で生きられるようにならなきゃいけなかった。

 そう、一人で。

 一人、で……。

 

「……父さんはアタシが小さい時に死んだ」

「……お母さんは?」

「母さんは……母さんは何にもしてくれなかった。アタシのことが邪魔なんだ! 男がいなきゃ生きていけないような人で、家に帰るといつも知らない男がいて……殴られたりして……」

 

 なんで、なんで口が動いてるんだろう。

 なんでこんなよく知りもしない奴に話してんだろう。

 あの、バカにすら聞かせたことない話を。

 ……ああいや、バカには聞かせたくはないんだこの話を。あいつにこんなこと知られたら、あいつと一緒にいられなくなる気がするから。

 

「……そうだったのね。ねぇ、片月さん。貴女のこと、もっと教えて?」

 

 そうして、つらつらとアタシはアタシ自身のことを話し始めていた。

 大して知りもしない奴だからだろうか、逆になんでも話せてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 負傷をしつつも、ある程度戦えるのはこのオルタナティブというシステムが優れているからだろう。

 サバイブ相手にも負けない戦いが出来ている。

 

「思ってたよりもやるね! 何が暴力の振るい方を知らないだけだってぇ!?」

「さぁ? 性能がいいだけよ」

「ご謙遜ッ!」

 

 回し蹴りを左腕で防御するも押し切られ、吹き飛ぶ。

 受け身も取れぬまま壁に衝突し、埃が一気に舞い上がる。

 痛む身体に無理を聞かせ、デッキからカードを引いて左腕を覆う銀のバイザーにスラッシュ。

 

【ADVENT】

 

 読み込まれたカードは青い炎となって消失。それと同時に屋根を突き破り、レイダーサバイブの前にこのデッキの契約モンスターであるレオキマイラが現れる。

 

「ぬわっ!? こいつ!」

 

 大型モンスターの奇襲はレイダーサバイブと言えどキツいものがあるだろう。

 これで時間を稼ぐ。

 

「ガッツタイタン! こいつの相手頼んだ!」

「チッ……」

 

 再び現れるガッツタイタンがレオキマイラの脳天を殴り付ける。

 呼ぶだけで来るぐらいの仲だったか。

 でも!

 

【STRIKE VENT】

 

 右手に備わるレオキマイラの頭部を模した手甲。口からは赤が混ざった紫色の炎が灯る。

 バックステップで私の後ろに構えたレオキマイラの口にも同じように炎が滾っている。

 

「スゥゥゥ……ハッ!!!」

 

 腰を低く落とし、黒き獣を突き出す。

 放たれる紫炎がレイダーサバイブを焼き尽くさんと周囲を焦がしながら突き進む。

 

 ────自身に向かってくる炎を、遊は見つめ笑っていた。

 

 爆発。

 死にはしていないだろうという妙な確信。

 それでも大きなダメージにはなっただろう。今のうちに逃げて……。

 

【FINAL VENT】

 

 それは、炎の中から響いた。

 そして、炎の中から飛び出て楽しげに嗤いながら駆けていた。

 

「あははははッ!!! とおっ!」

 

 ガッツタイタンと共に飛び上がったレイダーサバイブ。ガッツタイタンのボディが展開し、胸部にレイダーサバイブを収納すると手足が延長し更に巨大な姿へ。シルエットも猿のそれよりも人間に近付いた。

 さながら、ロボットアニメ。

 

「相棒との絆で合体! ガッツレイダー!」

「……ふざけてるでしょう!?」

「そらそらそらそらぁ!!!」

 

 巨人が拳を振り上げ、私に向かって振り下ろす。

 寸前で回避するも、連続で拳は繰り出されてくる。

 もうとにかく走って動き回るしかない……!

 パンチを避けるというよりも、無数の隕石を避けていると言った方が感覚として近い。

 

「あっはっはっ!!! ……あ、やばタイムリミット近い。よーし次ので最期だよ!」

 

 次?

 どういうことだとレイダーサバイブの方を見るとコクピットから飛び出たレイダーサバイブ。すると、ガッツタイタンが再び変形。

 今度は、人型ではない。

 あれは、ハンマーだ────。

 

「叩きつけてやれぇぇぇ!!!!!!」

 

 巨大なハンマーを振り下ろすレイダーサバイブ。

 生き残る……生き残るには……!

 

【ACCEL VENT】

 

 一瞬の超加速。あの攻撃の有効範囲から逃れる……!

 絶対に生き残って……じゃないと、私はもう燐と……!

 

 ハンマーはレオキマイラを押し潰し、大爆発。余波までは防げず、紙切れのように吹き飛ばされてしまう。

 

「く……」

 

 スーツの力が落ちたのがよく分かる。

 身体が重い。デッキに描かれたレオキマイラの紋章は消え、スーツからレオキマイラを思わせる意匠も無くなって黒いデッサン人形のような姿となっていた。

 

「おー、よく生き残ったね~。いや、もう死ぬのか。契約モンスターもいないから倒すのは朝飯前だよ?」

 

 飄々と、レイダーサバイブは言う。

 ハッ……ここまで生き残ったのが奇跡みたいなもの。でも、こいつ相手にここまでよく生き残れたものだ。初めて変身する姿でだ。

 奇跡は終わりか?

 いいや、まだだ。

 もうこの際だ、奇跡の株価が大暴落するぐらい奇跡を起こし続けてやる。

 

「……へぇ、まだやる気なんだ。嬉しいよ。でも、今日のメインは君じゃあないんだ」

 

 そうだろう。

 今日、こいつが相手したいのは燐なのだから。

 けど、そんなことさせたくない。

 だって、燐は……戦いをするような人ではないのだから……。

 守りたい……私が、燐を……。

 

「美玲先輩ッ!!!」

 

 風が吹く。

 レイダーサバイブを切り裂く風が。

 白いバイクを駆り、レイダーサバイブを辻斬って私を庇うようにしてツルギサバイブはバイクを停めた。

 

「ふふーん。来てくれたね、お姫様を守る騎士様が」

「燐……」

「美玲先輩、その姿は……」 

「気にしないで。それより、美也と撒菱は」

「あのライダー達を相手取ってくれてます」

 

 二人だけで大丈夫だろうかと、心配になる。

 しかし、レイダーサバイブさえなんとかしてしまえばあちらも助かるというわけで燐を行かせたのだろう。

 現状、レイダーサバイブの相手を出来るのは燐だけなのだから。

 

「さあ! それじゃあ始めようか! 今度は水入らずでね!」

 

 意気揚々と両拳を振り上げ、昂りを身体で表すレイダーサバイブ。だが、その身体からはミラーワールドの拒絶反応、消滅の時が近いことを示していた。

 それはツルギサバイブも同じであった。

 

「えー!? もう終わり!? 10分早すぎでしょ!!!」

「喜多村さんここは退いてください。消滅してしまいます!」

「やだやだ! まだ全然君と戦ってないぞ!!!」

 

 小さい子供のように駄々をこねるレイダーサバイブだが、どうにもならないことだ。

 彼女にとっても限界時間を過ぎて消滅なんて終わりは望んでいないだろう。

 

「ギリギリまで戦ってやるよ!!!」

 

 それでもとデッキからカードを引くレイダーサバイブはそのカードを見て首を傾げた。

 

「タイム、ベント?」

 

 レイダーサバイブはカード名を読み上げる。

 聞き間違いだと信じたいが、確かに彼女はタイムベントと言った。

 

「……彼女も、サバイブに至ったから……」

 

 燐が呟いたのが聞こえる。やはり、サバイブは特別な力……。

 

「はー! なるほどそういう事が出来るんだ! うってつけじゃん!」

 

 カードの効果を読み取ったレイダーサバイブは楽しげに話している。

 うってつけ?

 今の状況に?

 どういうこと……?

 私が考えている間に燐は嵐となって彼女へ接近していた。

 タイムベントを使わせないつもりなのだろう。

 だけど間に合わない……!

 レイダーサバイブは左手の召喚機にカードを装填してしまった────。

 

 

 

【TIME VENT】

 

「永遠闘諍」

 

 レイダーサバイブの指が鳴る。

 次の瞬間……レイダーサバイブ以外の全てが静止した。

 烈風を纏い、疾走するツルギサバイブすらも身動ぎ一つすること無く完全に停止している。

 そんな全てが止まった世界をレイダーサバイブは悠々と歩き、ツルギサバイブの肩に手を置いた。

 

「ッ!? な、に……?」

 

 動き出すツルギサバイブであったが、世界の異常に気付き周囲を見渡す。

 そんな彼に向かい、この世界の主は歓迎の挨拶を口にした。

 

「御剣燐くん。私の永遠にようこそ────」




次回 仮面ライダーツルギ

「戦ってよ私とさぁ! 戦うしか能がないんだからさぁ私達はぁ!!!!!」

「この戦いは僕の罪が引き起こしたものだ……。戦うのは僕だけでいい!」

「これでこの間みてぇにはいかねぇってわけだ」

「戦うことは……遊戯なんかじゃないッ!!!」

「アタシの時は、アタシが決める」

運命の叫び、願いの果てに────。


ADVENTCARD ARCHIVE
FINAL VENT(仮面ライダーレイダーサバイブ)
アウトレイジブリンガー 9000AP

レイダーサバイブの契約モンスター=ガッツタイタンが変形しレイダーサバイブ専用の巨大パワードスーツとなる。
レイダーサバイブがこれを纏い、ガッツレイダーと呼ばれる形態となって大暴れした後にレイダーサバイブとガッツタイタンは分離。
更にガッツタイタンは巨大なウォーハンマーへと変形し、敵を粉砕する。

相棒との絆の力で合体!変形!浪漫しかないね!
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