暗い自室。
明かりはPCの画面のみ。
キーボードとマウスを巧みに操作し画面の中の敵達を撃ち殺していく少女。
最後の敵の頭を撃ち貫いて、ゲームセット。
「はい、終了っと。このゲームも飽きてきたな。なにか退屈しのぎになることないかな……」
言い終えると同時に鏡の中からあの音が響く。
退屈な日常を忘れさせてくれるあの音が。
机の上に置いていたカードデッキを手に取り、姿見の前に立つ。
「変身」
鎧を纏い、ミラーワールドの中へ。
藍色のアンダースーツ、艶消しの黒の鎧。
『仮面ライダーカノン』
それが少女「金草遥」の変身した仮面ライダー。
「さて、楽しい戦いになるといいなぁ」
ライドシューターを駆り、ディメンションホールを疾走する。
この少女もまた、戦いに赴くのだった。
二人を見送り、客間で一人。
力なくソファに座り込むと、一気に頭の中に混乱の波が押し寄せた。
頭の中がぐちゃぐちゃで、他のことが考えられない。
ミラーワールドの中にいる、もう一人の私。
アリス。
どうして、私なんかに似て……。
顔を上げ、棚に飾られている写真を見る。
幼少の頃の私と、兄がどこかの花畑で笑顔を浮かべている。
今は音信不通の兄。
優しかった兄。
こんな風に、私が困っているといつも優しく助けてくれたお兄ちゃんは……。
「お兄ちゃん……」
本当に、どこへ行ってしまったんですか……?
士郎お兄ちゃん……。
ミラーワールドに着くと、モンスターは羽の生えた蛇のようなモンスターで空を飛んでいるのだがこれが以外と速い。
僕と美玲先輩はそれぞれ契約モンスターの背に乗り追撃するが追い付かない。
遠距離攻撃の手段のない僕は攻撃をドラグスラッシャーと美玲先輩に任せるしかなく歯痒い。
何か僕に出来ないか…
剣を投げつける?けどそんなに遠くまで投げれないし……。
いや、待て。
剣を投げつけるんだ。
「美玲先輩! そのまま撃ち続けてください!」
「何か考えがあるの?」
「はい! うまくいくか分からないですけどやってみる価値はあると思います!」
「そう。なら、やってみなさい」
「はい! ドラグスラッシャー、上昇して!」
ドラグスラッシャーに命じて、さらに高空へ。
敵モンスター後方の斜め上を取った僕はデッキからあるカードを引き抜き、出来る限り近付くまで待つ。
ベストな距離、タイミングを計り……。
今だ───ッ!!!
ドラグスラッシャーの背を蹴り、空へと飛び出す。
モンスターに向かって加速、下落。
そして、カードを切る。
【SWORD VENT】
天から現れるのはいつも使っている太刀ではない。
大剣。
普通に使う分には大きすぎる両刃の大剣。
『ドラグバスターソード』
それを受け取ることなくただ墜ちていく。
いや、それだけじゃ足りない。
飛び蹴りの体勢を取り、ドラグバスターソードの柄を足裏に付け蛇型モンスターに迫る。
「はあぁぁぁぁ!!!」
モンスターは後方からの美玲先輩の矢、ガナーウイングの砲撃に回避するのに夢中で真上からの僕の攻撃には気付かず……。
そのモンスターは胴を切り裂かれ、蹴り貫かれた。
よっしゃ倒した!
けど、僕はあることをすっかり忘れていた。
ここが、空の上だということを。
「うわぁぁぁぁ!?!!落ちるーーーー!!!!」
普段キックをしたあとなら着地する地面がすぐあるのだが、その地面は遥か眼下。
キックでついた勢いそのままに地面に向かって落下して……いかなかった。
突然、自由落下が止まり浮遊して……。
「まったく。もう少し考えてから行動に移しなさい」
「あはは……。すいません美玲先輩」
ガナーウイングを背中に装着した美玲先輩に助けてもらってそのまま地面に降ろしてもらう。
気が付くと海まで来ていたようで、聖山港の埠頭のあたりである。
周囲にはたくさんのコンテナ。
滅多に来ない場所であるから物珍しく感じる。
「ドラグスラッシャー。エサに目が行くのは分かるけど、契約した相手のことくらい助けなさい。いいわね?」
僕が埠頭見学に勤しむ傍ら、ドラグスラッシャーが美玲先輩に怒られシュンとしている。
どうにも見た目の割に威厳がないよなこいつ。
空を見るとさっきのモンスターから出た光の球体が浮かんでいる。
一個だけだからドラグスラッシャーが獲るかガナーウイングが獲るか……。
するとここで予想外。
ドラグスラッシャーが球体を切り裂き、ガナーウイングと半分こ。
あいつ本当にモンスターなのか……?
まあ、それで困らないならいいけど。
「それじゃあ帰りましょうか」
「そうね……ッ!? 危ないッ!!!」
美玲先輩に吹き飛ばされると、僕がいた場所を銃弾が通りすぎた。
「銃撃!? どこから!?」
「あのクレーンよ! とにかく、敵から見えないところに!」
敵はあの貨物を吊り上げるクレーンから狙撃しているらしい。
しかし、遠い。
ただでさえ遠くの敵が苦手だっていうのに相手がスナイパーだなんて相手が悪すぎる。
とにかく逃げる。
かなり腕がいいようで、かなり近くを銃弾を掠める。
あーもうどうしたらいいんだ!?
モンスターが現れたようなのでスコープを覗いて狙撃しようと思ったが、速い。
あれに当てるのは難しい。
それよりもあのモンスターを追撃している二人のライダーを相手にするほうが簡単だ。
二人のライダー……。
同盟でも結んでいるのだろうか?
まあいい。
モンスターとの戦闘で消耗したところを……狩る。
そして、そのライダー達を追跡していると聖山港の埠頭まで来てしまった。
ここならクレーンなど高い建物もあり高所を取れる。
ちょうど戦いも終わり、なにやら駄弁っているところを狙う。
スコープを構える。まずはあの白いライダー。夜でも目立って狙いやすい。それに今日は雲一つない満月で夜でもそれなりに明るい。
白いライダー。昼間、学校で戦っていたやつ。同じ学校に通う生徒だったかもしれないけど、ごめんね。
このゲームに勝つために死んでくれ。
銃爪を引こうとした瞬間、もう一人の青いライダーと目があった。
驚いて、ガク引きとなってしまったがそれでも当たるはず……。
しかし、青いライダーが白いライダーを突き飛ばしたことで今の弾は命中しなかった。
「へぇ。目がいいんだ、あの青いの」
スコープがなくともこちらを見つけるなんて目もいいし、運もいい。
ここで潰すか。
今後の障害となりそうだし。
逃げ惑う二人のライダーを狙って撃つ。
撃って、撃って、撃ちまくって……。
次の瞬間、背中に強い衝撃を受けた。
「な、なにが……」
振り返っても誰もいない。
一体、なにが……。
瞬間、あたりが暗くなった。
雲でもかかったかと一瞬思ったがさっきは雲一つなかったはず……。
空を見上げると、月を隠していたのは人影。
空中で何度か回転すると、向かい側のクレーンに降り立ったそれは深緑の仮面ライダー。
首に巻かれたマフラーが風に靡いている。
これまで出会ってきたライダーは騎士のような風貌をしていたが、こいつは騎士じゃない。
忍者───。
「結構動けるもんだね、変身しただけで」
気怠げな声で緑のライダーは話しかけてきた。
敵を前にしているのにまるで力が入っていない。
無気力さしか感じられない。
すぐに銃口を向けて、いつでも撃てるように引き金に指をかける。
「あなたもライダーなんでしょ?ライダー同士はさぁ…殺し合うんでしょ!」
忍者刀を手に飛び掛かる緑のライダー。
私はそのライダーに対して引き金を引いた。
路地裏を抜け、屋戸岐町もあとにしたアタシは適当に歩き回っていつの間にか港の方まで来ていた。
海風が心地いい。
靡く髪は少しうざったいが、この心地よさの前には些細なこと。
いつまでも、この心地よさの中にいれたらいいのに。
そんな思いを抱くが、すぐにこの願いは砕かれる。
鏡の中から響く、耳障りな音。
しかし、行かなければならない。
ライダーなのだから。
自分の願いを、叶えるために。
戦場へ───。
埠頭を走り続けてなんとかあの銃撃から逃れることが出来た。
助かっ……。
「たーーーッ!?!!!?!!」
「燐!?」
突然、ものすごい勢いで目の前を横切った物体。
銃弾というよりも砲弾と言ったほうがいいと思うが、砲弾とも違うようだ。
今のは、一体……。
「ありゃ、運がいいね君。当たると思ったんだけどな~」
声のした方を見るとメタリックグリーンのライダー。
片方の腕がやけにでかい。
いや、全体的にでかい、ゴツい。
第一印象は……ゴリラ?
「あなたは……」
「わたしは仮面ライダーレイダー。さあ、喧嘩の始まりだよっ!」
「え!? ちょ!?」
「二人まとめてかかってきなぁ!!!」
腕をぶんぶん振り回して僕達に向かって駆け出す仮面ライダーレイダー。
飛びかかりながら、その巨大な拳で殴りかかってきて……。
「燐!伏せなさい!」
美玲先輩が叫んだのを聞いて、体を屈めると僕の頭上を矢が飛んだ。
その矢はレイダーの胸部に命中して、火花を散らしながら地面に倒れた。
「痛たたた……。くそぉ! 仕返ししてやる! これで吹っ飛びな!!!」
地面から起き上がったレイダーはその巨大な拳を射出した。
放たれた拳は美玲先輩の左肩に命中し、肩を抑えて美玲先輩は蹲る。
「美玲先輩!」
「私は大丈夫。運良く、ガードの硬い左肩だからよかったけれど……。あいつの攻撃は、重いわ。まともに食らったらひとたまりもない……!」
美玲先輩を襲ったロケットパンチ……。
さっき僕の前を通りすぎたのもあれか!
もしあれが直撃していたら、無事ではいられなかっただろう。
「さあ互いに攻撃を食らいあったね。けど、どっちがダメージ大きいかは分かりきってるよね? それじゃあ続きだ!」
再び殴りかかるレイダー。
美玲先輩はさっきのダメージが大きい。
僕が止めるしかない!
レイダーの拳を払って、ガードして掴み合う。
やはりパワーでは向こうが上……。
僕の根があがる前に説得しなければ。
「止めてください! 僕はライダーと戦うつもりなんてないんだ!」
「戦うつもりがない? 願いを叶えるつもりでライダーになった奴が戦う気がないなんて……おかしいだろっ!!!」
「ぐっ……!!!」
レイダーの握力が強まる。
レイダーと掴みあっている僕の掌が軋み、悲鳴をあげる。
なんとかして脱け出さないと、手が砕けてしまいそうだ。
「燐!」
美玲先輩が僕を助けようと駆け出す。
しかし、新たに現れた赤い騎士が美玲先輩の前に立ち塞がり双剣で美玲先輩を斬りつけ、蹴り飛ばす。
「いいね……。人を痛め付けるのはいい!」
更に赤い騎士は地面に倒れた美玲先輩を蹴り転がし、痛ぶる。
美玲先輩を……。
美玲先輩を助けないと!!!
「いい加減……離しやがれゴリラ野郎ッ!!!」
裂帛の気合いと共にレイダーに頭突きを食らわせる。
頭突きは予想外だったのだろう。手を離し、よろめいた隙にバイザーを抜いて厚い装甲だろうとお構い無しに切り裂いて後退させる。
次!あの赤い二本角のライダー!
カードを使って太刀を召喚して、バイザーと太刀の二刀流で赤い騎士に迫る。
美玲先輩に振り下ろそうとしていた双剣を太刀で受け止めバイザーで胴を横薙ぎに切り裂いた。
「大丈夫ですか美玲先輩!?」
「え、ええ……。とにかく、ミラーワールドから出ましょう。こんなにライダーが集まってくるなんて……」
足が痛むらしく、美玲先輩に肩を貸して立ち上がらせる。
近くに鏡がないか探すが見当たらない。
そうこうしている間にさっきダウンさせたライダー二人が反撃とばかりに迫る。
くそ……。やるしかないのか?
しかし、ここで思わぬ乱入者が登場した。
「はあ……。なにこれ? ライダーの大安売り? 一掃してやるよ」
黄色のライダー。スティンガーまで現れた。
右腕に蜂の腹を模した格闘武器を装備したスティンガーが二人のライダーに向かい駆け出す。
乱戦。
スティンガーがいい具合に乱入してくれたおかげで逃げる隙が出来た。
今のうちに鏡かなにか写るものを探すんだ。
「おっ! ライダー見っけ!」
声がすると、赤いコンテナの上から茶色い獣のようなライダーが両手に装備した爪を振り下ろしながら飛び掛かってくる。
太刀で迎撃しようと構えるが僕達の前に躍り出た朱色の影が茶色のライダーを二振りの小型のチェーンソーで迎え撃った。
「あなたは……」
「早く行って! その人を助けるんでしょう? 人を助けることになら手を貸す!」
「ありがとう! 後で絶対お礼するから!」
そう言って朱色のライダーにこの場を任せて美玲先輩をお姫様抱っこして走り出す。
ライダーの中にもあんな人がいてよかった……。
「り……! 燐! 聞いてるの?」
「あっ! すいません考え事してました……。なんですか?」
「……恥ずかしいから、おろしてほしいのだけど……」
目線を逸らして、美玲先輩はそう言った。
だけど、そのお願いは聞けない。
「でも美玲先輩怪我してますし……。それに、美玲先輩軽いから大丈夫ですよ!」
そう言ったら美玲先輩はなにを思ったのかバックルからデッキを抜いて変身を解除してしまった。
「……こっちの方が軽いでしょう。ほら、ミラーワールドは生身には危ないのだから早く脱け出すわよ。私のことをしっかり守りながらね」
「……はい」
若干、注文多いなと思いながらも美玲先輩を抱き抱えながら走り続ける。
鎧越しに感じる美玲先輩の体温。
この熱は僕が守らなければならない、命の熱だ。
……昨日、はじめて変身したばかりなのにやけに大袈裟な使命感を感じている。
本当に、昨日はじめて変身したのだろうか?
もっと前から、長い間戦ってきたような気もする。
かなり考えなきゃいけないことが多いな……。
けど今は美玲先輩を守りながらミラーワールドから脱け出すことが最優先。
とにかく、走れ!
スティンガーとレイダー、赤のライダー「仮面ライダーヘリオス」の戦いはまさに乱戦。
味方などいない、全てが彼女達にとって敵。
彼女達の思考は同じ「二人まとめて潰す」
呉越同舟なんて言葉は彼女達の中にない。
「おらおらおらおらおらぁ!!!」
「チッ……暑苦しいッ!」
ヘリオスに向かい、殴打のラッシュを繰り出すレイダー。
ヘリオスは双剣で器用に拳を弾き、レイダーを袈裟斬りしようと肩へ双剣をぶつけるがレイダーは左手でその双剣の刃を掴み離さない。
「いただきっ!」
レイダーの右拳が握られ、ヘリオスの顎目掛けてパンチが放たれるが…
「それ、こっちの台詞」
声が響き、レイダーとヘリオスは動きが止まる。
しばらく傍観していたスティンガーがガードベントを使用。
スズメバチの頭を模した盾を左腕に装備したスティンガーが両腕の武具を用いて二人を殴り飛ばす。
「目の前の敵ばっかに集中し過ぎ。脳筋ばっかかよ……」
「ムフー!わたしはバカかもしれないが、わたしの相棒は賢いんだよ!」
立ち上がりながらそう吼えるレイダー。
デッキからカードを引き抜き、メリケンサックのようなバイザーにアドベントのカード。自身の契約モンスターであるゴリラ型モンスター「ガッツフォルテ」を呼び出そうとするが、それより早くあるカードが切られた。
【ACCEL VENT】
電子音の鳴った次の瞬間、スティンガーとレイダーの二人が火花を上げながら吹き飛んだ。
「なるほど……。効果持続時間はこんなもんか。けど、使えるねこれは」
一人地面に立つヘリオス。
双剣をその手で遊ばせながら、そう呟いていた。
「なに、今の……」
「え? ちょーっと速くなっただけだよ。見えなかった?」
スティンガーを煽るヘリオス。
苛立たしさからスティンガーは舌を打つ。
「はじめての変身だからさぁ。もっとなにが出来るか知りたいんだよねぇ。実験台になってよ君達」
デッキからカードを抜き、剣型バイザーに装填するヘリオス。
次なるカードは……。
【ADVENT】
次の瞬間、現れる巨大な赤いマンモスのようなモンスター。
実際なら牙にあたる部位は巨大な刃となっている。
「へーすっごい! さっきの子が出てくるんだねこのカードは。やっちゃえ、ダイナエレファス!」
ヘリオスの声に答えるように咆哮をあげるダイナエレファス。刃を地面に突き立て、スティンガーに向かって突進していく。
アスファルトを抉りながらスティンガーに迫るが、その進行は阻まれた。
レイダーの契約モンスター「ガッツフォルテ」がダイナエレファスを右側面から押さえ込んだのだ。
「いいぞ相棒ー!」
そのまま二体のモンスターは格闘戦を始める。
その光景はさながら怪獣映画のよう。
「やっちまえ相棒!」
「そいつを振り払って!」
それぞれのモンスターに指示を出すレイダーとヘリオス。
その様子を見てスティンガーは馬鹿馬鹿しいと吐き捨てカードを切る。
【ADVENT】
スティンガーのスズメバチ型契約モンスター「クインビージョ」が夜空を羽音を響かせながら現れる。
巨大なスズメバチのようなモンスターが現れ、二体のモンスターとの戦いに乱入するかと思いきやクインビージョはスティンガーの傍らに浮かび、戦いを傍観する。
そして、クインビージョは動き出す。
クインビージョの下半身はドレスのようになっている。
だが、それは擬態。
実態は……彼女の兵隊達の営舎である。
次々と巣から出動する小型のハチのようなモンスター「ビージョ」
ビージョ達はレイダー、ヘリオスに取り付き装甲を傷つける。
「くそ! なによこれ!?」
「な、なんかチクチクするー!」
二人はビージョを振り払おうと足掻くが、しつこく離れない。
勝負は決したかのように見えたが……レイダーがビージョを纏ったままスティンガーに向かい駆け出した。
装甲の厚いレイダーはビージョの攻撃がそこまで効いているわけではなかった。
「おらぁ!!!」
その巨大な拳でスティンガーに殴りかかるレイダー。
スティンガーはそれを左腕の盾で受け止める。
そのまま、睨み合う二人。
「君、名前聞いてもいいかな?」
「……なんで?」
「なんだか、長い付き合いになりそうだからさ。ちなみにわたしはレイダー。よろしくぅ!」
「……仮面ライダー、スティンガー。別によろしくはしない」
互いの名前は言った二人は同時に距離を取り……。
同時に駆け出し、それぞれの拳を相手に向かって突き出した。
銃弾が飛ぶ、白刃が舞う。
ここを戦場と呼ばずしてなんと言おう。
黒のライダーがユニコーン型のモンスターに騎乗する水色のライダーに向けて引き金を引き、深い青色のライダーが深緑のライダーに向けて槍を突きだす。
黄色と赤とメタリックグリーンのライダーが乱舞する。
朱色のライダーが茶色のライダーと斬り結ぶ。
願いが、命がぶつかっていた。
「ふふふ……。チュートリアルということで特別に戦場にご案内したんですけれど…みなさん才能があるようで素晴らしいです! 来なかった人は勿体無かったですね~。こんなに楽しいパーティーに参加出来たというのに……」
戦場を眺めるアリス。
コンテナに腰かけ足をぱたぱたと揺らしている。
それぞれのライダー達を眺め終えると次に鑑賞を始めるのは美玲を抱き抱えながら走るツルギ。
その光景を見た瞬間、アリスは目を細めた。
「……なんですか、あれは。美玲ちゃん役得~!って感じですか? ダメですよ、抜け駆けは」
言い終えると立ち上がり、ツルギが走る方向にあるカーブミラー、車などをアリスは消滅させていった。
まるで、闇に溶けるかのように現実にあるはずのものが消えていく。
とにかくアリスは写るものを消していった。
二人を簡単にミラーワールドから出させないために。
「燐君には悪いですけど……少しばかり罰を与えます」
そう呟く少女の顔は禍々しく笑みを浮かべていた。
走れども走れども鏡どころか写るものすらない。
港の工場が立ち並ぶあたりまで来たというのに……。
ミラーワールドにいられる制限時間が迫っている。
こうもなにもないなんてどうなってるんだ?
カーブミラーのひとつもないなんて……。
こうなったらドラグスラッシャーで遠くまで行くか。
なんだかよく分からないけれどライダーもたくさん集まっているようだしここは危険だ。
美玲先輩を一度降ろしてデッキからカードを抜こうとした瞬間。
ものすごいプレッシャーを感じた。
威圧感……。
巨大な壁が迫ってくるようなそんな気配。
振り向くと、そこにいたのは……。
「黒い、ツルギ……」
美玲先輩がそう呟いた。
鏡華さんが話していた仮面ライダーが、黒い太刀をだらりと手に持ち立っていた。
しかし話に聞く、鏡華さんを見守っているという優しさなんてものは感じられずあるのはただ殺気。
それも、僕にだけ向けられたもの。
すぐに僕はアドベントのカードを使ってドラグスラッシャーを呼び出し、美玲先輩を連れて現実世界に行くように命じた。
「燐。もうミラーワールドにいられる時間はないわ。あなたも一緒に……」
「美玲先輩。あいつは、僕だけを狙ってます。そして、恐らく逃げられない。
「待ちなさい燐! 燐!!! 離してドラグスラッシャー! 燐が!!!」
ドラグスラッシャーは無理矢理美玲先輩を連れて飛んでいった。
よし……。
白い太刀を構え、黒いツルギ……黒ツルギと向かい合う。
他のライダーと戦うのは個人的によろしくないのだがこいつは別だ。
決着をつけなければいけない相手だと、直感で理解した。
黒ツルギと向かい合うこと、どれほどか。
永遠のようで、一瞬だったかもしれない。
ミラーワールドにいられる時間のことも忘れ……。
そして、同時に動き出した。
白の刃と黒の刃がぶつかり合う。
宵闇に華麗な火花が咲く。
鍔競り合うがすぐに離れ、太刀を上段から振り下ろす。
それを黒ツルギは体を半身にし、白刃を体すれすれで避ける。
そして、黒ツルギは一瞬で目の前まで詰めてきた。
縮地……!
こんなに詰められたら、今はなにも出来ない……!
黒ツルギの掌底が僕の鳩尾を捕らえる。
息が漏れる。肺から空気が失われ、苦しい。
そしてなにより、鋭い痛覚が体を襲う。
吹き飛ばされた僕は地面を転がる。
動け、ない……。
だが黒ツルギはお構い無しに襲いかかる。首を切り落とそうと刃が迫る。なんとか自身の太刀で受け止めるが力が入らない。
徐々に圧されていき、更に状況は悪化していく。
太刀を持つ僕の手が消滅を始めている。
時間が迫っている。
この世界に存在出来る時間が。
こいつに殺されるのが先か、ミラーワールドに融けて消えていくのが先か。
どのみち、僕に待っているのは死のみ。
ここで、僕は終わる……?
「絶望、したか?」
黒ツルギが声を発した。
低い、男の声。
あの時、僕に語りかけてきた声。
「これが、絶望だ。お前の前に立ち塞がる、お前が戦わなければならないものだ。だからお前は強くならなければならない」
「なにを……!?」
黒ツルギは自分の太刀を投げ捨て僕の首を掴むと、僕を投げ飛ばした。
投げ飛ばされた先は工場の割れた破片が僅かに残っているガラス。
それに僕は吸い込まれて現実世界へと戻っていったのだった。
次回 仮面ライダーツルギ
「影守美也。よろしくね」
「……貴女は、誰?」
「それじゃあ、脱いで」
「燐君が参加するのはルール違反というものです」
願いが、叫びをあげている────。
キャラクター原案
金草遥/仮面ライダーカノン 人見知り様
仮面ライダーグリズ ガジャルグ様
仮面ライダー甲賀 ロンギヌス様
仮面ライダーヘリオス kajyuu1000000%様
仮面ライダーレイダー/仮面ライダーグリム マフ30様
ADVENTCARD ARCHIVE
SWORD VENT(黒のツルギ)
クロキリュウノタチ 3000AP
黒いツルギが用いる艶のない黒き太刀。
ツルギが使用するリュウノタチより1000AP攻撃力が高い。
その刃は闇に溶け、一太刀で命を刈り取る。