Jojo/Grand DIOrder OVER HEAVEN 作:ユフたんマン
目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。古ぼけた木造建築の部屋の中で、俺はベッドで寝転がっていた。
起き上がろうと、体を動かすと体中から悲鳴が上がる。痛い。鈍痛が襲い掛かる。何故俺はこんな怪我をしているんだ…?
痛む体を無理やり起こし、体を引き摺りながら、部屋に取り付けられていたドアへと向かう。
そのドアを開けるとそこには、汚らしい風貌をし、酒を煽り呑む老人がいた。
「へへへッ…やっと起きたか
ディオ…!?俺の名前か?何処かで聞いたような気もするが気のせいか?しかしこのようなボロっちい家にそんな金はあるのだろうか…
「何ボーッとしてやがんだッ!!さっさと行きやがれッてんだよ!!誰がテメーを産んでやったと思ってんだッ!!」
どうやら彼は俺の…この身体の親のようだ。少し考えていたら叱られてしまった。こういう人種は怒らせず、逆らわずに従った方がいいだろう。そうしないとガッ…!!?
「さっさと行きやがれッ!!」
グッ…酒瓶を投げやがった…あのジジイ…!!クソッ…ひとまず家から出ないと…!!また投げられる…!!
そうして逃げるように外へ出ると、そこはヨーロッパの中世のような光景が目に入った。まさかこれはラノベとかである異世界転生!?と思っていたが、どうやらここは昔のロンドンのようだ。どうやら俺はタイムスリップしてしまったらしい。この町は治安が悪く、奪い、奪われが日常茶飯事で行われる、所謂弱肉強食の世界だ。
ひとまずあの家に金が無いことはあの親を見て確信した為、取り敢えず店から盗んで…いや、奪ってみることにする。生まれて初めての盗みだ。上手くいくだろうか…
ひとまず顔を隠すように布を怪しいと思われない程度に巻き、目立つ金髪と目を隠す。そして路地裏で酔い潰れていた男から衣服を剥ぎ取り着込む。一応金目の物がないか探してみたが、一つも持っていなかった。使えないゴミめ…!しかしナイフを持っていた為、この時代に指紋やらの検査は無いとは思うが、俺が直接触れないように間接的にナイフを持ち、店へ向かう。
そのまま店を襲撃し、店員と客を皆殺しにし、麻袋に大量の酒と食料と金を詰め込む。そして裏口から脱出し、先程衣服を剥ぎ取った男に、ナイフと少しの酒と金を置いておき、衣服はマッチで燃やし灰にする。最後に俺は顔に付いた血を拭いその場を去った。
初めての盗みと殺人。これが意外にも何とも思わなかった。この身体の精神に俺の精神、価値観が引っ張られているのだろうか…。まぁそんなことは考えてもわからないので置いておく。
ジジイに酒を数本渡し、俺が最初いた部屋の物色を始める。何か俺の過去の手掛かりが見つかるかもしれない。
《〜〜ディオ物色中〜〜》
机の中に日記が入っていた。そこには今までの出来事や、これから行おうとしていた計画が綴られている。しかしその中で一番気になったのは、“天国”というワードだ。母がよく言っていたらしく、馬鹿にしたように書いてあるも、その天国が気になり無意識にも天国の行き方を模索しているようだった。俺の好奇心がその天国というワードに刺激されるが、今重要なのはそこでは無い。
この日記では、東洋人の秘薬であのジジイをジワジワと弱らせ殺すという計画が書かれていた。ずっと我慢していたこの身体の持ち主も限界だったらしい。
俺もまだ一瞬しかあのジジイと話していないが、もう既に殺意が湧いている。かなり異常なことだろうが、彼には嫌悪感をかなり抱いている。恐らく身体が覚えているのだろう。
俺はこの計画を実行する。体格的に俺はまだ幼い。商人には舐められるだろうが、この計画を成功させてみよう!と痛む身体をベッドで休ませながら心の中で誓った。
数ヶ月後、東洋人から秘薬を買うことに成功した。今日から食事や酒に少しずつ混ぜていこうと思う。商人はワンチェンとかいう小柄な奴だったが、俺を見定めるような視線を送り、耳を見たところで何かを確信した様に、秘薬を安値で捌いてくれた。俺の耳に何かあるのだろうか…自分で見てもホクロが3つあるだけで何か変わったようなところは見当たらない。まぁ安くて助かったのでどうでもいいか…
あれから1年が経った。酒や食料を隠し持ってたことがバレて酒瓶で殴られたりした。何度も毒ですぐに殺してやろうかと思ったりもしたが、どうにか抑え込み、遂にジジイは立つことも難しくなる程に衰弱していった。
「聞こえねぇのか……ディオ……ディオ…ゴホッ………ゴホッ!ゴホ、ゴホ、ゴホ…!ここへ来いディオ!聞こえねぇのかァ……ディオ…ゴホッ、ゴホ、ゴホ」
「なんだい父さん、薬かい?」
最初は無視していたが、あまりにもしつこかった為、返事をしてジジイの側に寄る。まぁ薬と言ってもそれは毒だが…
「俺はもう長いことねえ……わかるんだ……じき死ぬ……死んだ後の気がかりは一人息子のおめえだけだ……」
よく言う…散々俺をストレスの捌け口にしていた奴が今更父親ぶるな…この間抜けがッ!
「いいかディオ、ゴホ!俺が死んだらこの手紙を出してこの宛名の人の所へ行け!こいつは俺に恩がある……きっとお前の生活の面倒を見てくれる、学校へも行かせてくれるだろう!」
差し出された手紙の宛名は『ジョージ・ジョースター』。恐らく相手は貴族だろう。どうやらこのジジイは貴族に恩があると言う。
真実がどうか怪しかったが、ジジイの態度を見る限り、それは真実なのだろう。
「ディオッ!俺が死んだらジョースター家に行けッ!!お前は頭がいいッ!誰にも負けねぇ一番の金持ちになれよッ!!」
こうして1880年、ジジイ、ダリオ・ブランドーは死んだ。葬式を挙げ、偽りの涙を流し、最後まで俺は孝行息子をやり遂げたのだった。
ジジイの墓の前に立ち、ジジイの墓を蹴る。
奪うばかりだったあの男が、唯一俺に与えたものだと言っていいだろう。人生の最後の最後で、あの男は、ダリオ・ブランドーは、日記を真似するなら、『奪う者』から『与える者』になったわけだ。それが俺には不愉快だった。どうしようもなく不愉快だった。
最後の最後に宗旨替えをすることで、ひょっとするとあの男が、悪人としか言いようのないあの男が、母の言っていたという天国に行ってしまったかもしれないと思うと、たまらなかった。そんな可能性がほんのわずかでもあったかと思うとーーたまらなかった…。身が捩れそうだった。
『だとすれば…だとすれば、俺は天国に行かなければならないだろう。天国でジジイと再会し、あの男をもう一度殺さなければならないだろう』そんな風に考えた。いや、馬鹿らしい。あの男を殺すだなどと小さな目標で天国へ行こうというわけではない。天国で出会ったとしても、当然殺すとしても、それはついででしかない。俺は頂点に立ちたいのだ。
ジジイの墓に唾を吐きかける。今は非現実な天国のことなど構ってられない。受け取ってやる。お前の遺産をな。そしてまずは手始めに…ジョースター家を乗っ取る…!!
俺はジョースター家、いや、貴族が嫌いだった。父が極度の貴族嫌いな為、あのジジイにさえ唾棄される貴族。ロクなものであるはずがないと思っていた。漫画とかでいう悪徳貴族とかそのような連中だろうと考えていた。しかし違った。だがそれでも貴族が嫌いなことには変わりなかった。
「君はディオ・ブランドーだね?」
「そういう君はジョナサン・ジョースター」
笑顔で話しかけてくるジョースター家の跡取り息子、ジョナサン・ジョースターを見て一瞬で直感した。
ああ、と。
こいつは『受け継ぐ者』だ、と。途端に腹が立った。いや、腹が立ったなんてものじゃない、怒り心頭に発するという感情だ。しかしその激情を必死に抑え込む。ここで抑えられなければ後々の計画に支障が出る。
ここまでは良かった。しかしこの後がいけなかった。犬がこちらに走ってきた。それを激情を抑えきれず、強く、強く本気で犬を蹴飛ばしてしまった。ものに…犬にあたったのだ。
口から白い泡を出し、ピクピクと痙攣する犬、ダニー。
「なっ!何をするだァーーーーッ!!ゆるさんッ!!」
俺を睨み戦闘態勢に入るジョナサン。顔は怒りで歪んでおり、本気で怒っているのだろう。
やってしまった…。まぁいいだろう。やってしまったものは仕方ない。計画を変えよう。こいつを精神的にとことん追い詰め、ゆくゆくは代わりにこのディオがジョースター系の財産を乗っ取ってやる!
ジョースター家に来てから数ヶ月が過ぎた。これまでにジョジョから友人達を取り上げ孤独にしたりと、精神的に、計画通り追い詰めている。孤独は人間をカラッポにするからな。奴を無気力な腑抜けにしてやる。
しかし最近ジョジョの様子がおかしい。友人は既にジョジョにはいないはずだ。俺が取り上げたからな。うかれているな…ジョジョの奴…食事中に何かを思い出しニヤニヤと笑っていた。
そんなジョジョを友人と尾行すると、エリナとかいう病院の娘と恋仲であることが判明した。これは困る。これは俺の計画での障害になり得る事態だ。
ジョジョとエリナが別れた時を見計らって、エリナの前へと躍り出る。そして無理矢理エリナの唇を奪う。
「君……もうジョジョとキスはしたのかい?まだだよなァ、初めての相手はジョジョではないッ!このディオだッ!!」
手段は問題ではない。キスをしたという結果があればいい。これでジョジョとこの女の仲も終わりとなる。ジョジョに会っても気まずい思いを抱くだろう。この女が親からレディの教育をなされていれば尚更だ。
ジョジョの心に砂漠をつくってやる為、奴には決して友人とか恋人は与えんッ!そして生きがいのない奴は腑抜け人間になるッ!!
するとエリナは近くの泥水で口を洗う。それは自分の意思を示す行為。激情にまたもや駆られたが、なんとか抑制し、近くの木の枝をへし折る。クソッ…!!最悪の気分だ…ッ!!
そして数日後、ジョジョに先日の件がバレたのだろう。俺の名を叫びながら家に入ってきた。良い機会だ。ここでキチッとした上下関係というモノを理解させてやるッ!!
「ディオォォオオーーーーーッ!!!!!君がッ!!泣くまでッ!!殴るのをやめないッ!!」
「こ…こんな…こ……こんな!こんなカスみたいな奴にこのディオがッ!!」
最初は俺はジョジョの奴を圧倒し、高揚していた。油断していた。それがいけなかった。俺はジョジョの力を、爆発力を見誤っていた。そしてその先で見た。黄金の精神を…そしてもう一つ…俺の血で壁に掛けられていた石仮面が作動したのを…
俺はジョジョへの認識を改めた。コイツは間抜けな奴なんかじゃあない。正に受け継ぎ、そして与える者、つまりは俺の宿敵になる者だと…!!
ふとそこで目から液体が出ていることに気づく。それは涙だった。俺がこの身体になってから偽りではない涙を流すのはこれが初めてだった。その事実に俺は驚愕していると、そこでジョージ・ジョースターが現れ、俺たちは謹慎処分となった。
そして7年の歳月が経過する。この間にダニーを始末することで屈辱を晴らしたりしたが、今ではジョジョと仲直りし、今ではラグビーで協力して他共に認める親友兼戦友として有名になりつつあった。
仲直り…親友…別にそんなことはない。そんな綺麗事にはウンザリする。今は表向きには仲良くしているが、もうすぐ大学も卒業。もうジョースター卿の援助はいらない。ジョジョと表向き仲良くしていたのはこの期を待ったからだ。遂に俺は財産を法的に自由にできる年齢になった。
ここで昔から考えていた計画を実行する。それはジジイと同じようにジョージ・ジョースターに秘薬を飲ませ、弱らせ、殺すという計画だ。もう既に計画は実行しており、ジョージ・ジョースターは寝こみっきりになっている。
しかし異常事態が起きた。ダリオ・ブランドー、ジジイの手紙がジョジョに見つかったのだ。その手紙には症状が書かれており、それがジョージ・ジョースターの症状と同じことに気づいたジョジョは、俺が薬を運び、薬と毒を入れ替える瞬間を捉えた。そして俺はジョジョに吹き飛ばされ、ジョージ・ジョースターの部屋への立ち入りを禁じられてしまった。
クソッ!!こんなつもりじゃあなかったというのに…ッ!!何故今更あのジジイの手紙が出てくる!!?
もうちょっとで財産が手に入るというところだったのに…手紙が見つかったのは何かの前兆か!?だが、もう引くことは出来ないッ!!ジョジョが薬の証拠を掴むのに3日とみた!3日の間にジョジョをなんとか始末せねばッ!!殺すッ!!
そこで俺に朗報が入った。ジョジョがロンドンの
食屍鬼街とは、「呪われた者の住むところ」「伝染病が流行る時はいつもここから」と噂されるロンドンの貧民街だ。そこには行く当てのない浮浪者達が住み着き、旅人の金品を狙って徘徊しているいわば現代の世紀末と呼ばれる地だ。そこには確かに東洋の秘薬を売っているワンチェンがいるが、そこに辿り着く前にジョジョはくたばるだろう。
しかし、もしもジョジョが生きて帰って来た時は…だ。
ジョジョの部屋にある机の引き出しから、石仮面を取り出す。そしてそれと一緒にして仕舞っているノートを開き、内容を読み上げる。
血を仮面につけることによって作動し、骨針が頭に、脳に食い込むようなつくりをしている。そしてこの骨針がジョジョの脳味噌に食い込めば間違いなく即死ッ!!銃やナイフでジョジョを始末することは出来ない。凶器は殺人の疑いが俺にかかってくるからだ。しかし、この石仮面でジョジョを始末したとしたら、この仕掛けはジョジョだけが知っている研究であるし、記録はこのノートに全て書かれている。警察はジョジョの変死体を研究中の事故死とみて捜査は打ち切り、殺人容疑は俺にかかってこない!!
「ジョジョ!お前の研究でお前自身が死ぬんだ!」
最近俺はどうもおかしい。気持ちが荒れている。何故か?ジョジョのせいだ。俺の人生は奴のおかげで狂い始めている。ジョジョの奴、食屍鬼街でのたれ死んだだろうか?それが気になる。
そんなムシャクシャした気分で俺に喧嘩を売ってきた浮浪者でいざという時の為に人体実験を行うことにした。
浮浪者の1人に石仮面を被せ、もう1人の浮浪者をナイフで叩き切り、大量の血を石仮面に吸わせる。すると石仮面は眩く輝き、骨針が浮浪者の脳に突き刺さり、光が止むと崩れ落ちる。
「今の光は幻覚か…まぁいい、やはり死んだな…骨針が頭に食い込めば即死は当たり前…なあんのこたァない……ただの拷問殺人道具よ」
その場から去ろうとした瞬間、死んだと思っていた浮浪者がピクッと動いた。
気のせいかと思ったが、すぐにそれは間違いだと気づいた。浮浪者は立ち上がり、俺に襲いかかる。
「こ、こいつ!!?」
浮浪者は俺の胸ぐらを掴み、もう一つの腕を振りかぶる。それを咄嗟にナイフで手を切り裂くことで逸らす。それは背後の建物にぶつかり、大きな亀裂を創り出し、そこは崩壊する。
その余波で俺は吹き飛ばされ橋の柵に叩き付けられる。
なんだこのパワーは…!?骨針はこの獰猛な力を脳から呼び覚ましたというのか!!しかもちょっとかすっただけで鎖骨を砕かれているッ!?
川だ!!川に飛び降りるのだッ!そうすれば助かる可能性があるッ!!
痺れて言うことを聞かない体を無理矢理動かし、川へと向かって這うが、遂に追いつかれ、首に手を充てがわれる。その手は皮膚を貫き、俺から何かを奪っていく。
「う……うあああああっ!! !?ち…血が……吸い取られるゥ!」
血が吸われている。そして死の覚悟をした時、日が明け、太陽の光を浴びた浮浪者は灰となり悲鳴を上げて消え去った。そこで俺の頭によぎったのは吸血鬼という言葉だった。
「血を吸う…太陽に弱い…フフフ…ッフハハハハハハハッ!!!!」
結論を言うと俺は負けた。あの後、ジョースター邸に帰ると、そこには無事帰還したジョジョがワンチェンと警察を連れて俺の帰りを待っていた。
そして俺はそのジョジョに騙し討ちという形でナイフを振るうが、ジョージ・ジョースターがジョジョを庇い、ジョジョを殺すには至らなかったが、ジョージ・ジョースターを始末することが出来た。
そしてその血で吸血鬼となり人間を超越したが、またもやジョジョの爆発力に敗北した。不死身、不老不死の力を持ってしてもあの爆発力には敵わなかった。ジョージ・ジョースターから精神を「受け継いだ」ジョジョに、だ。
ジョジョが放った炎で焼かれ、自由の女神像で腹を貫かれた俺は、自分でも死んだと思ったが、運命はこの時俺の味方をしてくれた。
そして生き延びた俺は、ワンチェンの血を飲み干し、屍生人と化したワンチェンを従え、体を癒す為に血を求め、各地を放浪した。
そして今いるロンドン、ホワイトチャペル街の深い霧の中で面白い光景を見た。
なんと少女が女の腹を捌いているではないか。それに彼女からは何やら親近感が湧いてきた。取り敢えず、今の俺には信頼出来る部下が必要だ。
「クックック!」
俺は未だ傷が癒えないため、ワンチェンに車椅子を押させ、焼き爛れた肌を見せないようにローブを羽織っている為、彼女にはかなりの不審者に見えただろう。
「あなたは…ダレ?」
少女はコテンと首を可愛らしく傾げながら俺に尋ねる。
「わたしは…ディオ・ブランドー」
「…?あなたからわたしたちと似たような気配を感じるのはなんでなの?」
「わたしたち?このディオから君と同じ様な気配を?」
「うん!わたしたちはいっっぱいの死んじゃった子供たちの魂が集まった集合体なの!個にして全、全にして個!そんなわたしたちと似たような気配を感じるんだ!」
「……そうか」
恐らく彼女が言いたいのは俺の魂と、元のディオ・ブランドーとしての魂が混じっていることだろう。彼女に先程親近感を感じたのはそれが原因だろう。
「わたしたちはね!おかあさんを探してるんだ!」
「それで…切り裂きジャック、ジャック・ザ・リッパーは女のみを対象として殺していたのか…」
「アレ?わたしたちの名前を知ってるの?そうだよ!わたしたちはジャック・ザ・リッパー!わたしたちは偽物のおかあさんを解体してるの!じゃあわたしたちはあっちにいるおかあさんに会いに行くね!また会おうねお兄さん!」
そう言い姿を消すジャック・ザ・リッパー。死んだ子供達の魂の集合体…吸血鬼、人間とは異なる怨霊や悪霊の類か…
恐らく俺と彼女の境遇は似ているのだろう。俺達は父が『奪う者』として君臨し、俺達は全てを父に奪われた。
そして今は俺が『奪う者』だ。君臨していた『奪う者』のジジイからも『受け継ぐ者』のジョジョからも俺達は奪ってきた。
そして彼女、ジャック・ザ・リッパーは死んだ子供達の魂の集合体ということは、当然その子供は弱者だったのだろう。
死因は虐待に栄養失調などなど…強者から、『奪う者』から奪われるというまさに幼かった俺達と同じ、いや、それ以上に酷かったのだろう。
そして今は愛してくれる母親を探し、偽物から命を『奪う者』としてロンドンを徘徊している。いい…
だから気に入ったッ!!彼女は半端者ではない、純粋な悪だ。大抵の人間には心に善のタガがある。そのために思い切った行動が取れない。素晴らしい悪への恐れがあるのだ。
しかしジャック・ザ・リッパーにはそれがない。彼女は純粋なのだ。子供の純粋さとその死んでいった子供たちの魂、怨念、未練という悪。即ち悪のエリートと言える俺達と同じような存在なのだ!
ギャリッと甲高い音が響く。その音と共に一度姿を霧に紛れ姿を消したジャック・ザ・リッパーが隣に現れる。そしてジャック・ザ・リッパーの現れた方向を見ると、そこだけ霧が晴れ、黒いローブを羽織った複数人の男女が屋根の上からこちらを見下ろしていた。
「一般人!?どうしてここに!?人払いの結界は張ってるはずじゃ!?」
「いや、どう見ても一般人じゃないだろう。そこのジャック・ザ・リッパーの仲間だろう」
「まぁどの道一般人でも始末するしかないんだけどね〜。先生にまた神秘やらなんたら〜って長い説教されちゃうよ。」
ふむ…コイツらは何者か見当もつかない。魔法使いのような格好をしているコスプレ集団か?いや、さっき人払いの結界とか言っていたな…本当にあるのかはしらんが辺りに人間の気配を感じない。
…吸血鬼や幽霊擬きが存在するなら魔法使いがいてもおかしくはない。そしてやはり彼らの目的はジャック・ザ・リッパーだろう。
「ワンチェン…ジャック・ザ・リッパーに手を貸せ。そしてこのディオに血を捧げよ。1人分だけなら喰らっても構わん」
「URRYッ!かしこまりましたディオ様ァッ!!」
既にジャック・ザ・リッパーは霧に紛れ行動に移っている。それに続きワンチェンも両手に鉤爪を装着し、謎の集団に襲い掛かる。
「クソッ!!なんだコイツッ!!?」
謎の集団の1人が魔法の弾のようなモノを撃ち、その弾はワンチェンの腹を貫通するが、屍生人となったワンチェンに痛覚は存在しない。よって効かない。
「ディオ様は言ったね!!お前らの血を分けてくださると!!ベロベロ舐めてやるね!お前の血をこの素早い舌でなぁ!ヘッヘッヘ〜ッ!!」
ワンチェンの鉤爪は男の身体を引き裂き、噴水のように溢れ出る血を、肉を貪るようにワンチェンは口に入れる。まさにその姿は血に飢えたゾンビそのもの!
「きッ、貴様ァッ!!ァッ…ァァァアアアァァアアッッッッ!!!?」
ワンチェンに気を取られた女は迫りくる脅威に気がつかなかった。隙をつき現れたのはジャック・ザ・リッパー。女の腹を掻っ捌き、生かしたまま腸を、子宮を引きずり出す。
「あなた…おかあさんじゃない…だから…解体するね。いいよね?ね?」
そして瞬く間にワンチェンとジャック・ザ・リッパーによって数十人いた部隊は全滅する。ワンチェンは念願の血をベロベロとゆっくりと恍惚顔で味わっており、ジャック・ザ・リッパーはおかあさんに会えなかったとやらで少々落ち込んでいる。
「おかあさん探しとやら…このディオが手伝ってやろう」
「え、ホントに?いいの?」
「勿論だ。ただし、それはこのディオの配下になることが絶対条件だ。何、君に出来ぬ無茶振りな命令はしないさ。来たるべき時に君の力を借りたいのだ。君も思う存分、解体したいだろう?」
「……はいかって何?」
むう…そこからか…さては俺が言ったこと殆ど理解出来ていないな…?
「簡単に言えば協力関係といい奴だ。このディオは君のおかあさん探しとやらを手伝う。そして君はこのディオに力を貸す。これでわかったか?」
「うん!よくわからないけどわかったよ!おかあさん探しを手伝ってくれるってことでしょ?」
「まぁ…そういうことだ」
……説明するのが面倒くさくさくなってきた。これでいいだろう。間違っては無いしな。
「早速移動したいところだが……その前に…」
ズブリと死体に指を差し込む。死体からそうして血を全て、生気と共に抜き去り、その死体を屍生人に変える。後の死体はミイラにした後に捨てた。
そして屍生人から情報を聞き出す。そして俺は裏の世界というモノを知った。『魔術』『時計塔』そしてあらゆる願いを叶えるとされる万能の願望器『聖杯』を巡る『聖杯戦争』の存在を。
あらゆる願いを叶える万能の願望器、聖杯…これがあれば俺は…天国に…フッフッフッフッフッハッハッハッハッハッ!!
「ジャック・ザ・リッパーはその『聖杯』とやらでなにを望む?母か?平穏か?」
「ムー!長いからジャックでいいって言ってるのに!えーと…聖杯への願い…だったよね?わたしたちはおかあさんの中に帰りたいの…わたしたちは…それだけでいいのに…」
「…そうか、では『聖杯』とやらは私達の為にも必要な物なのだろうな…。ジョジョを殺し次第早急に聖杯の探索を開始する。貴様は聖杯の情報を集めてこい。何か分かれば報告に来るのだ」
「URRY。かしこまりましたわディオ様。ご期待に添えるよう精進いたしますわ。」
「貴様如きに期待などしておらん。早くいけ」
「…ハッ」
先程、屍生人にした女に聖杯の情報を詳しく調べてくるように命令する。まぁ期待などつゆ程にもしていないのだが…
「では行くか、ワンチェン、ジャック」
「ウリィイイ!」
「あっ!!やっとジャックって呼んでくれた!もう、すなおじゃないんだからおかあ…、お兄さんは!」
ジャック・ザ・リッパー。この殺人鬼はある日を境に犯罪をピタリとやめ…謎の彼方に消える…
しかしディオは知っている。
深い霧の中に俺達は紛れ、もともとそこに初めから誰もいなかったような静寂を残し、その場から去った。
これからの進路
-
オリジナル特異点
-
幕間からのオリジナル特異点
-
第二特異点以降
-
時間神殿
-
幕間から第四特異点