憑依転生・怪力乱神の英雄譚   作:陣禅 祀

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思い付いて衝動的に書いたものになります。
TS?ふざけんな!とか、サラーサは本人が至高なんだ!という方はブラウザバック推奨。私もサラーサ推しとしては本人可愛い最高の人なんですがね…(じゃあなんで書いてんだよ)
繋げながら書いてるので読みづらいかもしれませんが、それでも構わないという方はどうぞ。
※現段階では他のグラブルキャラを登場させる予定はありません。

2020/3/11 一部修正。主人公とベルのやり取りの部分です。
2020/3/20 誤字修正。ジャック・オー・ランタン様ご報告ありがとうございます。


第一話

突然ですが問題です。

俺、更級 朔(さらしな さく)18歳高校三年生男子はつい先程死にました。車に()かれて。記憶は曖昧(あいまい)だけど、多分そう。

そんで、気が付いたら頭から倒れている最中で、地面と熱烈なキスをする直前だった。

受け身をとる猶予(ゆうよ)すら与えられず、そのままべしゃり。痛む顔を(さす)りながら起き上がって座り込む。

どうも壁の(くぼ)みから出てきたようだが、その窪みは見る間に(ふさ)がれて最早周りの壁となんら変わらなくなってしまった。昔学校行事で見学に行った廃坑の坑道みたいなとこだなここ。

あと、なんか下向いたらやけにデカいメロンがふたつついてました。重いです。あぁ、スカートって初めてはいたけどかなりスースーしますね。落ち着かない。元々落ち着いてないけど。

さて、ここはどこでしょう?そして俺はどうなったのでしょうか?

 

「正解はッ…!」

 

「わっかんねぇよチクショウめぇ!!」

 

いかん、取り乱して叫んでしまった。落ち着かなければ…失念してたけど、もしかしたら熊とかがいるかもしれない。熊って好奇心旺盛だから、もしいるならこっち来るかもしれないではないか。阿呆ねぇ俺。

 

まぁ、結論から言いますと、女の子になっておりました。髪長いな、腰より下まであるじゃん。

うーん、あれ?ちょっと待てよ…この服見覚えあるな、もしや?

顔が思わず引き攣るのを感じながら、ぺたぺたと()()()()()()()()()()()()()()()を触る。

あー…種族は確定しましたね、グラブル…グランブルーファンタジーに登場する、『人間』と総称される四大種族が一、ドラフ族だ。男性は筋骨隆々の大男、女性はおっぱいおばけの低身長、つまるところロリ巨乳でお馴染みだよなー。

ドラフの女性、いや少女か。それにこの独特の意匠の服装的に、九割九分九厘サラーサだ。鏡かなんかで見ないことには確定できないけど。あとは……そうだな、籠手(こて)やブーツといった豪奢(ごうしゃ)な装備品が無いな。サラーサが立ち絵や初期絵、三凸絵なんかで羽織ってたコートの代わりに襤褸切(ぼろき)れのような外套をつけている。見られる範囲でわかるのはこの程度か。

わぁい、(多分)推しそのものになれたよ、やったねー!

 

「………いや、なんでやねん…」

 

頬を思いっきりつねってみるが痛いだけで目が覚めるなんてこともない。

 

ため息をつき、ガシガシと頭を掻いていると、目の前の壁が(ひび)割れ始めた。すわ同類の登場かと淡い期待を抱き、少し距離をとって眺めていると───ぞわりと背筋が冷たくなった。

今目の前で現れようとしてるコレは、同類でもなければ友好的なモノでもない。確実に。

そう直感し、慣れない身体ではあるが身構える。

とにかく、サラーサの肉体なんだ。検証すらできてないけど、単身で巨大な魔獣さえ(ほふ)膂力(りょりょく)の持ち主の肉体なのだから、余程のことが無い限り遅れはとらないだろうし逃げられるはず。

よし!来るなら来やがれ、返り討ちにしてやる…!

 

こちらが覚悟を決めたのを見計らったかのように、壁面が崩れ、小さな影がいくつか飛び出してきた。

緑の皮膚、血走った目、耳まで裂けた口、設定通りであれば身長136cmのサラーサよりも小さい身体の亜人型の魔物…うーん、ゴブリンですね間違いない。

グラブルの世界で坑道といえばバルツだが、ここは全然暑くないから多分違う。それにこんな変な、魔物の発生のしかたは聞いたことがない。壁から出てくるとか初耳だ。魔力が淀んで発生するっていうが、壁から出てくるんじゃなくて淀んだ魔力が実体を持つ感じで生まれるんだと思うんだよなぁ。そもそも坑道自体がこんな自己修復能力を備えてる訳がないし、ここ、下手したら星晶獣の内部か?

っと、それよりゴブリンだ。とりあえず一撃入れてから逃げるかどうか考えよう、倒せるかどうかだけは要確認だ。

瞬時に肉薄し、相手がこちらを認識できていない間にまずは一体、胸部に拳を叩き込む。ドッ、という鈍い音に続いてパキンと澄んだ音がしたかと思うと、ゴブリンはザァァ…と足元から次第に灰と化して消えてしまった。

 

「───え?」

 

は?え?ゴブリン、仕留めたよな?今。え?なんで灰に…

次の瞬間。ぞわりと悪寒が走って背筋が凍り、身体が硬直して、ゴッ、と鈍い音と共に頭に衝撃を受けた。

視界が明滅し、一瞬平衡感覚を失う。飛び掛かられてアームハンマーで殴られた、と中空から自由落下するゴブリンの姿を視覚に捉え、理解した。

 

「──っのやろッ!!」

 

ふらついたのを耐えるために一歩踏み出し、そのままの勢いを乗せて頭を殴ってきたヤツの顔面に拳をご馳走すると、水風船か何かのようにパァンと破裂した。血、肉片、脳漿、骨片…色々なものを浴びた。臭い、気持ち悪い、吐きそう。

しかし後ろに回り込む気配を感じ、吐き気を(こら)えて回し蹴りで吹き飛ばす。破裂音に混じってパキンと何かが割れる音が聞こえた。よし、よくわからんが生きてるのはあと一体だけのはずだ。

 

「ギィィッ!!」

 

無事なヤツは雄叫びなのだろうか、大声をあげながら腕を振り回して突っ込んできた。

こちらも肉薄し、勢いそのまま手首に裏拳(うらけん)を当てて腕を弾き飛ばして、もう片方の手で顔面をひっ掴んで地面に叩き付ける。

ごしゃりと林檎のように頭蓋(ずがい)が砕ける感覚、だらんと力を失う肉体。

 

「はぁ、はぁ…(サラーサ)のカラダが凄いのか、ゴブリン共が弱すぎるのか…とりあえず、なんとかなりそう…ぐっ」

 

アドレナリン切れたか?痛む頭を押さえると、手にべっとりと血がつく感触。ヤバい、頭割れてたのかよ…。

頭に強い衝撃を受けた直後に激しく動いたのもあって、先程堪えた吐き気がまたせり上がってきた。立っていられなくなってうずくまり、堪え切れずに吐いてしまう。

 

「うっ!?おえぇぇぇ…」

 

吐いても出てくるのは透明な液体だけ。当然か、だって何にも食べてないもんな。他人事のようにそんなことを考えていたが、頭がぼうっとして、意識が遠のく。あー、やば…い…な…

 

『あっ!?キミ、大丈夫!?しっ───』

 

誰かの声が聞こえるのを最後に、俺は耐えきれず意識を手放した。

 

***

 

「……う」

 

知らない天井…ではないな。これさっきいた坑道の天井だ。

 

「あ、気が付いた?」

 

声の方を向くと、白髪にルベライトの瞳を持つ少年がいた。

 

「…あのときの声、お前か?」

 

頭に痛みは無い。吐き気もない。顔や肌が一部べたべたするし生臭いが。まぁ行動に支障はなさそうだし、とりあえずサラーサの口調くらいは真似ながら彼に話を聞いてみよう。

 

「あ、うん。怒鳴り声が聞こえたから、怖いもの見たさで…そしたら君がゴブリンと戦ってて。そのあと倒れたから驚いたよ。あ、ポーションで頭の傷は塞がってると思うけど、下級のやつだからはやく戻ってちゃんとした治療受けた方が良いと思う」

 

若干頬を染めて決まり悪そうに笑う少年。この少年は信用できる、なんとなくそう直感する。これ、サラーサの『野生の勘』ってヤツなのかな?

 

「ふーん、そっか。ありがとな!仲間でも知り合いでもないのに助けてくれて」

「い、いやぁ。困ってる人を助けるのは当たり前だから…」

「へえ…あ、そうだ。お前、名前はなんていうんだ?あたしはサラーサっていうんだ」

 

当たり前、か。純粋だなぁ…俺だってまだ18なのに、眩しいねぇ。

 

「えっと、僕はベル。ベル・クラネルっていうんだ。よろしくね、サラーサ」

「ベルっていうのか。こっちこそよろしくな!」

 

俺の知る限りグラブルにベル・クラネルなんてキャラクターはいなかった。となると、空の世界であるなら俺がまだクリアしてないストーリーの登場キャラか、偽名を使ってるか、ストーリーに取り上げられないその他大勢(モブ)か。それともここがまた別の世界なのか。このどれかになるんだろうか。でもこんな目立つ容姿でその他大勢(モブ)は無いだろう。どちらにせよ、できれば空の世界が良いなぁ…でも俺がガチでサラーサに憑依してるとかだったら空の世界は勘弁願いたいな、全空の脅威(世界のバランサー)でいられる気がしない。

 

「よっと。なぁベル、ここ何処だ?」

 

上体を起こし、にへら、と笑いながら聞いてみる。

 

「え、ここ?な、なんでそんなことを?」

 

明らかに困惑してるな、まぁ当然っちゃ当然か。

てかさっきから俺の胸をチラチラ見てんのわかってんだからな。ずっと真っ赤な顔しやがって。気持ちはわかるが!

 

「いやー、あたし気が付いたらここにいてさー。訳わかんなくてあわあわしてたらさっき壁からゴブリンが出てきたんだよ」

「えぇ~!?じゃ、じゃあ……ここで気が付くよりも前のこと、何か覚えてたりは…所属してるファミリアとか、ご両親の名前とか生まれたところとか」

 

素頓狂(すっとんきょう)な声をあげて、本気で心配してくれているらしいベル少年。まぁ記憶はあるけどさ、言ったところで意味無さそうだし。覚えてないで通そうかね。

 

「んー。わりぃ、わかんないや」

 

暫く考える素振りをしてから、苦笑してそう返す。

 

「うーん、そ、そっか…じゃあ、とりあえずここから出よう。案内するよ」

 

 「き、記憶喪失なのかな…エイナさんに相談しなきゃ」とかぶつぶつ言っていたが、「あ、こっちだよ。ついてきて」と歩き出したのでついていくことにする。

まぁこんな魔窟に居るべきではないのは自明の理だ。悠長にいたらまた複数に襲われて今度こそお陀仏になるかもしれないし。

 

「ゴメンな、ベルもやることあっただろうに」

「あはは、大丈夫だよ。本当は探索する予定だったんだけど。僕の担当をしてるエイナさんってギルド職員の人に『冒険者は冒険しちゃダメ!』って何度も言われてて、いつも一、二階層で探索してるんだけどね…実は今回はその言いつけを破ってこっそりこの五階層まで腕試しに来てたんだ」

「お前…」

 

とりあえずジト目を向けておく。いくらその無謀がなければ助けてもらうことは無かったとはいえ、そんなことしちゃいけないでしょうよベル少年。

 

「うっ…。だ、だからね?こうして君に会ったのも、『危ないから早く帰れ』っていうことなんじゃ、ないかなぁ…って。あはは…」

 

しょぼくれちゃって、まぁ。一応フォローと釘刺しくらいはしとくかな。

 

「…その無謀に助けられたんだし、別に良いけど。命あっての物種で、弱いやつも強いやつも、油断するとすぐに死ぬってこと、忘れんなよ。それはお前も、俺…じゃなかった。あたしも、もっともっと強いやつでも変わらないんだからな」

「き、肝に銘じます…」

「わかればいいぞ!じゃ、なんか嫌な予感するしさっさと帰ろうぜ!」

「うぅ……あ、うん。わかった、ちょっと急ごうか」

 

地図を片手に、ベル少年は先導してくれている。もう片方の手は得物なのだろう短刀に添えられており、いつ魔物…じゃなかった、モンスターと遭遇しても対処できるようにしているようだ。さっきはがっくし肩落としてて涙目だったけど。

こうして背中を見上げてると、ちょっとは頼れそうだと思うんだから不思議だ。よくよく見れば、線が細いとは言ってもきちんと筋肉はついている。ただのもやしじゃないぞ、というところか。

 

────ヴヴォオオオオオオオオオオッ!!

 

ぞわり、と肌が粟立(あわだ)つ感覚、雑魚(ゴブリン)に頭かち割られた時とは比にならない、背中に氷水を流し込まれたような強烈な悪寒がした。本能が警鐘を鳴らしてる、死ぬぞって。死ぬから逃げろって!同じくらいに『戦え!』とも言ってるけど、さっき『いのちだいじに』って説いたとこだからな!逃げるしかないし戦うのは追いつかれた時の最終手段だ。

 

「…え?今の声…いや、鳴き声?な…」

「HAHAHA、不味いぞベル。いくぞ、走れ!やべーのが来てる!階段はどっちだ!?」

「うえっ!?え、えっと…こっち!」

 

正しく脱兎だ。地図を一瞥して確かめると、俺を背負って走り始めた。…ん?

 

「うぇっ?ちょっべるなにしてなんでおれおぶわれて」

「逃げるんでしょ!?それに君はさっき頭を怪我して、気を失ってたんだか『ヴヴォォォォォォォォォッ!!』ひぃっ!?」

 

来やがった!…ゑ?なんだ?興奮し充血した双眸(そうぼう)、歯を剥き出しにした口からまき散らされる唾液、まぁこの辺は発狂してたりしたらわかる。問題はだな、御立派な一対の角と牛の頭に、人間の身体を持ってることなんだよなぁ!しかもめっちゃデケェ!説明不要?いいや説明を要求する!

 

「んだあいつ!?ミノタウロスぅ!?」

「は、はひいぃっ!?ミノタウロス!?」

 

ぶち飛ばしていくぜぇ!!な速度で迫って来る巨体。俺という重りを背負っていながらかなりの速度で疾走するベル少年。あ、でもこれわりとすぐ追いつかれそう。

 

「…ベル。もしやばくなったら、あたし置いてって良いぞ。お前の方がきっと足は速いだろうが、あたしの方が力は強い」

「…っ!できないよそんなこと」

「なんでだ?こういうのは必要なことだぜ。いざとなったら生き残る可能性の高い方を逃がして、低い方は時間稼ぎに徹するなんて常識だろ」

「だって!サラーサ…震えてるじゃないかっ」

 

…うるさい、お前だって一緒だろ。

 

***

 

あれから何度かベルが攻撃を敢行してみたり何か投げてみたり、と色々試みていたが、結局効果無し。というか結局俺はベルにずっと負ぶわれている状態。

嗚呼、万事休すってヤツなのかな…行き止まりだ。

勢いを殺して、何とか壁と激突する前に止まれたベルから降りて、反転する。

圧倒的優位に立つ強者(追う側)であるミノタウロスは、これから獲物を甚振(いたぶ)れる喜悦に顔を歪めて、ゆっくりと歩いて近付いて来ていた。

 

ちらりとベル君を見てみると、絶望一色の表情。凄いな、俺という荷物を背負ったままここまで走ってきたのに気力体力を使い果たしましたって感じじゃない。ギリギリだけどまだ走れた感じだこいつ。

 

「さ、ささサラーサ」

「なんだよ、ベル」

「ぼ、僕が…ミノタウロスの、ちゅ…注意を、引く、から…!逃げてっ」

 

へぇ。歯の根も上手く噛み合わないくらいに…生れたての子鹿みたいに恐怖で震えている癖に、ここで男を見せようってことか。

ははっ、良いね。これは何がなんでも二人で生きて帰りたい、な。可能か不可能かはこの際置いておく。でもいざとなれば…

 

「…ヤだね」

「サラーサ!」

 

不恰好ながらも覚悟を決めた表情で、ベル君が抗議の色を含んだ声をかけてくるのを横目に、一歩前へ出る。

 

あたし()は強者じゃないといけないんだ」

 

〈弱者は全てを奪われる。強者は弱者の全てを手に入れる。〉弱ければ全てを失う。命さえ。だから。

 

『ヴォッ』

 

(なぶ)る気満々の、恐らくミノタウロスにとっては軽いジャブのような一撃。しかしこちとらただの人間。サラーサ本人ならともかく、俺はまともに喰らえば確実に死ぬか、死なずとも動けなくなる程の重いダメージを負うだろう。でも不思議だよなぁ、全然怖くないし、何なら()()()()()()()()()()()()()()()

 

「サラーサッ!」

 

先と言葉は同じでも、そこに込められた感情は全く違う。悲鳴同然のベルの声を聞きながら、ミノタウロスの拳を少し前進しながら流す。そのまま動作を繋げ…丁度伸びきる寸前の肘がすぐ横に来た。その肘に関節の非可動方向から渾身の肘鉄を打ち込む。

 

『ヴォオォ!?』

 

 肘関節を痛めた様子は無いが、まさか紙一重で躱され、あまつさえ反撃されるとは思っていなかった怪物が、思わずといった様子で若干後ずさる。

 

「ふぅ───…」

 

息を整え、ファイティングポーズをとる。

 

ミノタウロスの表情が驚愕から憤怒へと変わった。そして奴は…すぅ、と軽く息を吸い込む動作をとる。

咆哮か?鼓膜をやられると不味い。

距離を一歩深く深く踏み込んで潰し、その反動をバネにして鳩尾(みぞおち)にアッパーを叩き込む。

 

『ヴォガッ!?』

 

今度は良い手ごたえだ。何かしようとした動きは潰せたし。もう一撃といきたいが、欲張るとぐしゃっと潰されかねないので軽いバックステップで距離をとる。逃げている最中に感じていた恐怖は全くと言って良い程に鳴りを潜め、業火の如く燃え盛る闘争心が頭をもたげてきていた。負ける気は全くしないが、一撃貰えばそれでおしまいだと頭の中の()()(ささや)いている。

 

「ベル」

「…っはい!」

「正直勝ち目が見えない。さっきのは殆ど不意討ちみたいなもんだ。隙を見て逃げて助けを呼んできてくれ」

 

笑えるよなぁ、強くなければならないだなんて宣ったヤツがたったの一、二合で諦めてんだから。しかしそれが現実である。正直まさかこんな、運動音痴のゲーヲタやってた奴がほんの数時間程度でここまで(おそ)れもなく冷静に戦えてることに自分でも驚きを禁じ得ない。サラーサって直感型バーサーカーだったはずだよな?なんでここまで自己分析までできてるんだ?これが天性の才能ってやつなんだろうか。

 

おっと、まだ数秒しか経ってないのにこの牛野郎もう立ち直りやがった。普通えずいて暫く動けないだろあれ。

 

「そら、来いよ牛野郎。テメェより弱いヤツに一杯喰わされて大人しくしてるようなタマじゃねーだろ」

 

くいくい、と人差し指を動かす。さぁ、来やがれ。

 

『ヴゥオオオオオオオッ!』

 

ミシミシと音がしそうな程引き絞られた強烈な右拳が、風すら纏って迫る。さっきも思ったが最早拳じゃねぇ、ちょっとした面攻撃だ。

だが、それがどうした。()()()は全空の脅威、十天衆サラーサだぞ。全身全霊、全力を込めて踏み込み、正面から迫る拳に渾身の右ストレートで応える。

踏み込みの衝撃に地面が陥没するが、そんなこと構うものか。ミシリミシリと腕が軋み、一瞬の拮抗を経て右腕の骨が指先から肩まで尽く粉砕され、至るところが裂けて血が吹き出す。

だがそれは(ミノタウロス)も同じこと。寧ろ俺よりひどいんじゃないだろうか、あれ拳が骨ごと挽肉になってる。

 

「はっ、ザマァみやが───『ヴヴォオオオオオオオッ‼』!?」

 

しまっ…身体が動かない!?さっき咆哮止めてなかったら既に終わっていたと!?

本能が屈したような、身体の奥から湧き出るような恐怖に呑まれる感覚。だが、だが!ここで終わって堪るかってんだよ!

 

呑まれたのはほんの一瞬だった。しかし、その一瞬の好機を見逃すミノタウロスではない。無事な左手が伸びてきてがっしりと身体を掴まれてしまった。

 

「がっ……」

 

握り締める力が強まり、みしりみしりと身体が悲鳴を上げる。肺腑(はいふ)の空気が押し出され、骨が、(きし)む。

霞む目でミノタウロスの方を見れば、憤怒と愉悦をないまぜにした感情が見えた。

 

「……う、うぉおおおおっ!その人を、離せぇっ!」

 

俺に完全に気を取られ、ベル君の存在を忘れていたであろうミノタウロスの目に、ショートソードが突き立てられる。

は、はは。イケメンじゃん、ベル君。

 

悲鳴を上げ、俺を投げ捨てて目を押さえるミノタウロス。ってさっきの圧迫で無事な左腕も折れたから上手く受け身とれねぇ!息も吸えてない!

案の定、背中から壁に激突。元々無かったなけなしの空気が肺から押し出され、意識が明滅する。

 

──最後に見たのは、目を押さえて暴れるミノタウロスと、その場に尻もちをついたベル君だった。

 




如何でしたでしょうか?勢いに任せて書いてる感半端ないので、もしかしたらいつか書き直すなんてこともあるかもなんですが……
誤字脱字等ありましたらどうかお教え願います。

読みやすい文章量はどのくらいでしょうか?

  • 5000~6000
  • 7000~8000
  • 9000~10000
  • 10000~
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