憑依転生・怪力乱神の英雄譚   作:陣禅 祀

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さて、五話目となります今回で……ストックが切れました。はい。一話投稿した3/10から今日まで、ほぼほぼ推敲作業に明け暮れていた結果、書き溜められずこんな事態に。
…拙作のお気に入り件数が昨日100超えて、今朝確認したら140件超えてて戦慄を覚えました。が、やっぱりそれ以上にめちゃくちゃ嬉しくて、頑張って筆を進めておりまする。

あ、前話の修正/削除候補(風呂入ったに続く()の中の部分)ですが、現状は削除の方が内心優勢です。
結局今日昼までに決めきれなかったという……。


要らん前書きが長くなりましたが。第五話、今回も約一万字になります。ではどうぞ!


第五話

 さて、とりあえず大通りまで出てきたワケだが。あの塔(バベル)、石造りとは思えないくらいバカでけぇな。あの下にダンジョンがあるらしい。文明の進捗度合い的に完全にオーパーツだー!って思ったので神様に聞いたら、こんな話を聞かせてくれた。

 元々古代の人間たちがなんとか怪物を押し込めてダンジョンに蓋をしたけど、最初に下界に降臨した神々が「あそこに派手に降臨したらカッコいんじゃね?」とノリで降臨して破壊して、周りの人間は大激怒したらしい。死ぬか生きるかの瀬戸際でなんとか成し遂げたものを破壊されたらそらぶちギレるって……。そんで神々は(お詫びも兼ねてだが)ダンジョンから溢れるモンスターを押し込め、ダンジョンを封じたその偉業を讃え、『神の力(アルカナム)』使って瞬く間に、元々あった蓋よりも数段巨大で立派な塔を建てた……それが今も悠然と聳えるあの巨塔、バベルなのだそうだ。その神様方、マジで頭パリピじゃん。ノリは良すぎると良くないぞ。

 話を戻そう。朝故に昨日通った時よりは人の少ない(とはいえ十分に多いとは思うんだが)大通りを、神様の案内や説明を受けながら抜けて、目的地であったギルドの建物にたどり着いた。

 ふむ、大通りにさえ出てしまえばあとは一本道か。非常にわかりやすくて良いな。「ついていてあげようか?」と言われたので、「バイトまでにすることがあるだろうから別に良いぞ」と返したら「何も無いから安心していいよ!」と謎に胸を張られた。いやそれで良いのか。

 

「あ、昨日頼んだ『恩恵』を隠す方法聞けそうな神様とか、この辺に心当たりないのか?」

「むっ、確かに今ならバベルにいることはいると思うけど……キミは何が何でもボクについていてほしくないのかい……?」

「別についていてほしくない訳じゃないぞ?だってあなたはあたしの主神だ、よく知らない場所だし、できれば一緒がいい。でもさ……然程重要でないあたしの冒険者登録よりも、眷属の『恩恵』、特にスキルや魔法を読まれないようにする方がよっぽど大事じゃないか?」

「うっ……ま、まあそうだけど……」

「頼むよ神様~」

「……はあ。わかったよサク……じゃなかったサラーサ君。冒険者登録が終わったらバベルの四階に来るんだよ、ボクの神友であるヘファイストスの【ファミリア】がフロアを借りて武具店をやっているからね」

 

 なるほど、あれの上階ね。ってかそんな一流の気配がする派閥の主神と親友ならぬ神友とは。でもヘスティアとヘファイストスは同じギリシャ神話の神様だし、親交があってもおかしくはないか。多種多様な神々が降臨したというこの世界において、神話というものは恐らくほぼ形骸化していたり、全く残っていないだろうから、俺の故郷だった世界と一概には同じと言えないだろうけど。

 

「わかった。そんじゃ神様、また後でなー!」

「あぁ、また後でね」

 

 さてさて。受付窓口は、っと。あれエイナさんじゃないか?昨日は世話になったし丁度良い。

 

「おーい、エイナー!」

「うん?あら、サラーサちゃんじゃない。どうしたの?」

「昨日あれからベルの本拠に行ってな、ヘスティア様の眷属にしてもらったんだ。それで、今日は冒険者登録しにきた」

「そっか、神ヘスティアの派閥に入ったのね。でも君、まだまだ子どもでしょう?私はあんまり冒険者にはなってほしくないなぁ」

「失敬な。あたしこれでも18だぞ。数えとかじゃないぞ?18歳だ。主神に誓ったって良い」

「うぇっ⁉わ、私の1つ下⁉ぱ、小人族(パルゥム)とかじゃ、ないのよね……?」

 

 うるせぇ、余計なお世話だ。ドラフの成人女性は130cm台が一般的な身長なんだよ!

 

「パルゥム……もしかしたら混ざってるかもな。この通り色んな亜人(デミ・ヒューマン)、だったっけ?の特徴あるっぽいし。角は牛人(カウズ)だろ、多分身長は小人族(パルゥム)だし、耳は……ほれ、エルフかね?エイナとおんなじようにちょっと尖ってる」

 

 ぽかん、と呆気にとられるエイナさん。かわいい。19歳。ほぼほぼ同世代かー。まぁかわいいに年齢性別は些事だ些事。気にしたら負けってやつー。

 

「え、えぇぇぇ~~~~っ⁉」

 

 ごめんなさい流石に心中でもふざけるのはやめようと思います耳ふさぐの遅れてキンキンする。

 

「ちなみに質問は受け付けておりません、というかあたし自身もわかんないから答えようがないっていうか」

「そ、そうなの……それは、なんというか……ごめんなさいね」

「ああ、気にすんな。あたしも気にしてねーからさ。ま、これでガキじゃないってわかっただろ?」

 

 とりあえずさっさと手続き済ませたい……

 

「なんだか納得がいかないけれど……わかったわ。じゃあ必要事項の記入もあるし、あっちの個室に行きましょう」

「あー……あたし共通語(コイネー)の読み書きできねぇんだ。代筆って頼めたりするか?」

「あら、そうなの?ええ、もちろんできるわ。じゃあ記入する事項を言うから、答えていってもらえる?」

「あぁ、ありがとな、頼む!」

 

 よかった、代筆頼めた。これで勝つる!……何にかって?俺も知らん。

 

「じゃあまずは……名前と性別、所属派閥ね」

「サラシナ・サク、女、【ヘスティア・ファミリア】所属だ」

「……サラシナ・サク、女、【ヘスティア・ファミリア】、と。名前、サラーサじゃないのね?」

「ん?あぁ、サラーサは愛称なんだよ。ずっと呼ばれてたからつい、な。サクでもいいし、好きなように呼んでくれていいぞ」

「ああ、そういうこと。愛称だったのならこのままサラーサちゃんって呼ばせてもらうわ」

「そっか、わかったぜ。んじゃ次は何を答えたら良いんだ?」

「話が逸れちゃったわね。次は────」

 

 まぁなんやかんやで登録が終わり、支給品として剥ぎ取り用のナイフ、刃渡り60cm……いや、60C(セルチ)程度の両刃剣、ポーションがいくつか入ったポーションホルダー、荷物入れとして小さめの背嚢、魔石やドロップ品を入れるためのポーチ、あとは武器を背負うためのベルトに、皮の籠手と膝当て、ダンジョン上層の地図を貰った。まぁこれらは格安で支給されているだけで、代金はきっちりと俺が登録と同時に開設した口座に借金として記載されているらしい。利子はつかないし、上層で一か月もやってりゃ十分に返済できる金額だそう。それにしてもメインウェポンがただの両刃剣とは。しっくりこなさ過ぎる、なんてったってサラーサだしなぁ……はやく大型武器を調達したいもんだ。願わくば斧と剣でモードチェンジできるヤツ。でもあれって変形機構のせいで強度落ちそうだし、仮に再現できたとしても俺はすぐおしゃかにしてしまいそうだな、容易に想像できてとても悲しい。

 そんで簡単にダンジョンと生息するモンスターに関する説明と注意すべきモンスター……『新米殺し』と呼ばれるモンスター二種についての注意……というより警告を受けて、文字と数字の簡単な読み書きを少し教えてもらって解散となった。また明日も教えてくれるそうで、俺としてもとてもありがたい。金ができたら児童向けの絵本も買って読む練習してみたら良いってさ。こっちの童話ってどんなんだろ?日本昔話みたいな感じのもあるんだろうか。どちらかというと英雄譚が多そう。

 

「あ、そういやベル見てないか?」

「え?ベル君?ベル君なら朝早くにダンジョンに向かったけれど……どうかしたの?」

「あーいや、あたしの冒険者登録に付き合ってくれるって約束したんだけど、朝起きたらいなくてさぁ。朝飯食い終わっても戻ってこないんでどうしたのかなって。ダンジョンに行ってるんならいいや、昨日の今日だしそう無茶はしないだろ」

「あらら、それは帰ってきたらお小言ね。女の子との約束をすっぽかすだなんて」

「ははは、あんまりきつく言ってやんないでくれよ?昨日アイズ・ヴァレンシュタインについて神様……あいや、ヘスティア様にボコボコに言われてたみたいだから」

 

 冗談めかして言うエイナさんに、こちらも冗談めかして笑う。あー、ダンジョンに潜ってたかー。ベルのヤツ傷心したままだなんてことはないだろうけど、少しでもアイズさんに近づきたい!とか考えて無茶してないかちょっと心配になってきた。

 

「あ、いっけね。バベルに行かないと……確か四階、神ヘファイストスの武具店、だったか」

「何か装備を見繕いに行くの?それだったら新米鍛冶師が習作を出してるもうひとつ上の階に行った方が良いと思うけど……」

「いやいや、ヘスティア様が神ヘファイストスに会いに行ったんだよ。そんで、登録が終わったら来なさいって言ってたから」

「なぁんだ、そういうこと。じゃあ、今日はここまでにしておきましょうか。またわからないことがあったら遠慮なく聞いてね」

「おう、ありがとな。そんじゃまたなー!」

 

 エイナさんがギルドの入り口まで見送りに来てくれた。やっぱ良い人だねエイナさん。

 さてさて。バベルとやらに向かうとしますか。空を見上げると、太陽の位置的に恐らく11時過ぎ……昼前くらいの時間かな。本拠を出たのが9時過ぎだから、ギルドについたのは大体9時半頃だと思う。それからだとすると随分神様を待たせているかもしれない、ちょっと急ごう。目の前にそびえる巨大な塔を目指して、人混みをすり抜けるように走る。

 お、ようやく根本の入り口が見えた。

 

「はー、やっぱでっけぇなぁ」

 

 見上げる首が痛くなる、それでも頂点が見えないその威容。ダンジョンの蓋、らしいが、これはまた随分と巨大な重しだな。えっと、確か入り口の横に昇降機(エレベーター)が……っと、あれか。乗り込み、操作盤を確認し……なんだ、前世と大差ないじゃんと操作して上に上がる。

 チーン、と音がして止まり、扉が開いたので外へ出る。そこは、まぁ、なんというか。高級そうな武具が陳列された(実際添えられている値札の桁がかなり多かった)ショーウィンドウが内外の壁に沿ってずらーっと並んでいる様は、ある種博物館のようだった。

 ざーっと見た感じ、なんとなくだが機能性よりも華美性を重視しているような気がするので、これらの役目はほぼ『陳列用』……つまりちょっとした客引きのようなものなのだろう。ショーウィンドウの中の様々な武器防具を流し見ながら歩いていると、半開きのドアから神様の声がした。ここかね。とりあえず三回ノックすると、「どうぞ」と声がしたので中に入る。

 

「すまねぇ、失礼するぞ。うちの主神が邪魔してないか?」

「ああ、いるよ……ってこれはまた個性的な……」

「なんだいヘファイストス。うちのサラーサ君がヘンテコだとでも言いたいのかい?」

 

 顔の右半分を覆う覆面……いや眼帯か?をつけた、背の高い、赤髪の神物……成程ヘファイストス神。神話の通りであれば、あの眼帯の下にはヘラ神が捨てた原因という醜い貌が隠されているってことかな。まぁんなもん見る気も無けりゃ見たところでどうってことないが、まさか女神とはねぇ。「そこまでは言ってないでしょ」とかちょっとじゃれあっている二人に声をかける。

 

「初めましてだな、神ヘファイストス。あたしはそこのヘスティア様の眷属で、サラシナ・サクっていうんだ。こんな口調で申し訳ないが、なんとか大目にみてほしい」

 

 とりあえず、会釈する。挨拶ってのは大事だぜ、第一印象に直結する。

 

「あぁ、丁度あんたの話聞いてたのよ、サラシナ・サク。女神並みの美貌に、一人目の眷属の子に似た色素の抜けた髪と赤い眼、それとヘスティアと同じような体型で、巨大な双角とハーフエルフのような耳を持つって……いやほんと本人見ても意味が分からないわね」

「ふっふーん、あたしもわかってないからな、仕方ないと思うぞ!」

「なんで当の本人がそんなことを胸を張って自慢げに話すのよ……はぁ、とりあえずヘスティア?聞かれたことには答えたし、お迎えも来たようだからさっさとお引き取り願えるかしら」

「そうだぞ神様、もうそろそろ昼だ。急がねーとバイトに間に合わなくなるんじゃねぇのか」

「うっ……そうだった。教えてくれて助かったよヘファイストス」

「レアスキルや稀少な魔法を発現させた眷属がいるのに【ステイタス】を(ロック)もせずそのままにしておくだなんてバカな真似、その子たちがかわいそうだから仕方なくよ?簡単なことだから今回は特別に教えてあげたけど……もし仮に面倒事抱えてきたとしら助けてあげないからね」

「あ、あぁ……わかったよ。それじゃあまたね」

「邪魔したな!そんじゃ失礼するぞ!」

 

ヘスティア様が出てから軽く頭を下げて退出し、扉を閉める。

 

「とりあえず『恩恵』の隠し方は教えて貰えたんだよな、神様」

「あぁ、バッチリだぜ。今すぐにでもできるけど、どうするんだい?」

「んー……今日戻ったらにする。今から飯食ってダンジョン一層に潜ってみようと思うんだ」

「そうかい。わかったよ、じゃあ折角だし一緒にご飯食べようぜ?その後ダンジョンの入り口まで送るよ」

 

 そんな訳で、簡単に昼飯をとり(ここでベルがくれたあの一〇〇ヴァリスが役に立った。二人とも然程空腹じゃなかったし、良心的価格の食堂で軽く済ませた。ベルはダンジョンらしいと伝えると特大のため息ついてらっしゃった)、神様と別れて現在ダンジョン第一階層。とりあえず貰った地図を()めつ(すが)めつ眺めながら適当に歩いてみている。一応エイナさんからは一回潜ってみて、問題なかった場合単独でも三階層までなら一気に降りても大丈夫だろう、とは言われてるので今日はこの一階層でぼちぼちモンスターを狩っていきたいと思う。ベルと一緒なら五階層まで行ってみても良いんだって。ベル聞いたら結構喜びそう。

 そういえば上層……特に一、二階層ってそう広くない上に人が多いからあんまりモンスターとの遭遇率は高くないらしいんだよなぁ。

 まぁとりあえずモンスター探しますかねー。交戦するときは……魔石を壊さないためにも心臓は狙わないようにしないとな。魔石がとれないと、稀にとれるらしいドロップアイテムとかいう魔石取り出しても残るモンスターの体の一部以外殆ど収入にならないらしいし。

 

*小一時間経過*

 

「……いねぇ。マジでいねぇ。いや、うっそ、マジでぇ……?」

 

 地図を見るに一階層は殆ど回り尽くした。それでエンカしないとかどうなってんだよ。あーでも交戦している冒険者は見かけたし、俺の運が悪いだけか。仕方ない、もう少しぶらつk「うおぉぉおぉぉ!!」あらま。この声はベル少年じゃあないか。交戦中?よしよし、加勢するとしようかな!(半ギレ)

 もしかして戦闘音聞こえて避けたところ、いくつかベル少年だったんだろうか。通路の角のところは覗かなかったし、何よりあまり声が聞こえてこなかったんでわからなかった。ふむ、この角だな。

 背中をこちらに向け、コボルトだったか。犬の頭を持った人型のモンスターの群れと戦っているベル少年の姿が目に入る。まぁまぁ疲れてないかあれ。もしかして朝っぱらからずっとか?

 

「ようベル。助太刀は必要か?」

「っ⁉さ、サラーサ⁉」

「ああ、あたしだ。で、助太刀は必要か?」

「う、うん、お願い!ちょっと数がっ!多くてっ!」

 

 確かに一人で五匹相手は厳しかろうな、とか思ってたらこうして話している間に一匹殺ってんぞ。すげぇなー。

 

「よっしゃまかせろ!左の二匹は貰うぞ、良いか⁉」

「うん!やっちゃって!」

 

 そーいうことなら話は早い。通路の広さに余裕があるってのは良いなぁ、思いっきり振り回せる。

 

「おらぁっ!ぶっ飛べ!」

 

 背中の鞘から直剣を抜きながら、素手でコボルトその1の頬を気持ち軽めにぶん殴る。パァン、と空気が炸裂するような音がして、錐揉み回転しながらコボルトその1が吹き飛んで壁にぶち当たって動かなくなった。わぁ、やっぱ一撃だー。……あれ?確かに頭が破裂するなんてことにはならなかったけどさ、昨日より明らかに威力上がってない?これが『恩恵』とスキルの力ってやつか?あれ、そういえば俺剣なんて使ったことねぇぞ。きちんと刃を立てて切らないとすぐ歪んでイカれちまうんじゃなかったか。それは日本刀だったっけ?

 

「うーん、わかんねぇけどとりあえずとりゃあぁっ!」

 

 腕の長さと刃渡り、しめて大体1m強……こっちの単位だと1M(メドル)だっけ。その圏内に入ってきたコボルトその2の首を刎ねる。抵抗らしき抵抗もなく胴と泣き別れて宙を舞う犬の首、血飛沫を上げる断面。うわきったね!咄嗟に外套をかざして返り血を避ける。うーん、後で洗濯確定……。

ベルの方も終わってた。なんでも数が多すぎて中々隙を突けず手こずっていたそう。

 

「とりあえず、ちょっと頭出せ」

 

 「頭?」と言って素直に頭を俺の目の前まで下げてきたベルに鉄の爪(アイアンクロー)を食らわせる。俺との約束すっぽかしやがった野郎にはこうだ!こう!

 

「いたっ⁉いたたたた‼痛い!痛いよサラーサぁ⁉」

「なんで黙って書置きもせずに出ていきやがったこの野郎!約束すっぽかしやがってよぉぉー!」

「ちょっ、そのことは謝るよ!謝るから!離して!頭割れちゃう⁉」

 

 ぐぎぎ。まぁ良いか、許す。離してやったら涙目で言外に「ここまでする……?」と訴えてきていたが、知らん。お前の事情なんて知ったこっちゃねぇんだよーーーーッ!(憤慨)

 

「ほい、お前の朝飯だったもの。戻って来るかと思ったら戻ってきやがらねぇのー。しゃーねーから持ってきたぞ、食え。えーと、確か壁ぶっ壊したらモンスターは湧かないんだよな?ドロップアイテムと魔石回収もしといてやるから安心して食べて良いぞ」

 

 小さな籠をベルに押し付ける。中身?少し油を塗ったあの固いパン二枚で、今朝作ったジャガ丸君のなんちゃってポテサラに賽の目状にしたゆで卵和えたヤツを挟んだ即席ポテサラタマゴサンドだよ。一応レタスっぽい葉野菜も挟んでるぞ。今度柔らかいパン買えたらタマゴサンド作ろうかなって思う。

 「ぅえっ?これどうしたの?」とかほざきやがるから水筒も押し付けながら「あたしが作った。なんか文句あんのか」って言ったら意外そうな顔された。昨日夕飯手伝ってやっただろうが、失礼な。もっかい鉄の爪(アイアンクロー)いっとくか?おお?

 この怒りはとりあえず壁にぶつけた。鞘に納めた剣で壁の表面をこう、抉るようにガスガスと。ほんとは殴る蹴るの方が早い気はするが。

 そうして壁を壊し、剥ぎ取りが終わるころにベルが食べ終わった。「おいしかったよ、ごちそうさま」ってすっげぇ嬉しそうにニコニコ笑いながら水筒と籠を返してきた姿に白兎を幻視した。かわいい。幻視したのも相俟って、なんだかウサギに餌付けしてる気分になりながら、受け取った籠と水筒を背嚢に仕舞う。

 

「んで、これからどーする?もう少しいっとく?」

「そうだね、せっかくだし二人でもう少し探索しよう」

「わかったぞ。後ろは任せとけ!」

「うん、任せた!」

 

 なんて言って笑い合いながら、それから暫くの間モンスターを狩り続けた。

 

***

 

 さて。今日の成果であるが……ベル少年のバックパックやポーチは元より、俺の背嚢とポーチもパンパンになった。ベル少年曰く今日はやけにドロップアイテムも遭遇(エンカウント)率も高かったそうな。

 換金したらなんと六二〇〇ヴァリス。昨日の約五倍だ、すっげぇの。ギルドに顔出したらエイナさんは宣言通りベル少年にお小言言ってました、ちょっと困ったような微笑みを浮かべながらね。

 

「実は今朝、シルさんって人から朝ごはん貰っちゃって、今晩はその人が働いているお店で食べる約束してるんだ。サラーサも一緒にどう?」

「……お前……お前さぁ……あーもう。行くよ、その上手いけど強引な客引きしたヤツの顔も見てみたいし」

 

 ベル少年、君がどこで誰と宜しくやってようが構わないとは思う。思うけどさぁ、俺は神様のこと応援するって宣言しちゃってるんだよ。君は知らないけど昨日発現させたスキルで神様結構荒れてたのにさ、ここで更に女の子追加かよ。あーもう。あーもう!何なのこのやるせない感情。

 

    @

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 力:I92→H130

 耐久:I13→I47

 器用:I96→H139

 敏捷:H182→G235

 魔力:I0

 《魔法》

 【】

 《スキル》

 【】

 

「……えっ」

「んお?どうしたベル。そんな間の抜けた声出して」

 

 受け取った【ステイタス】の写しの内容に驚愕し打ち震えているらしいベル。数字はエイナさんから習って覚えたし、ちょっと気になって覗いてみたら……なんか値が劇的ビフォーアフターしてた。昨日聞いた時トータル52上昇してたんだーって嬉しそうに話していた記憶があるんだが、いや実際何があったんですかね???

 

「か、神様、これ、書き写すの間違ったりしていませんか……?」

「……キミはボクが簡単な読み書きもできないなんて、そう思っているのかい?」

「い、いえっ!そういうことじゃなくて……ただ……」

「まー確かにこの上がり方だったら真っ先にヒューマンエラー……いや神様だからゴッドエラー?疑いたくなるよな。昨日のトータル52でもすげー方なんだろ?なのに今回は……」

「そ、そうですよ!やっぱりこれおかしいですよ神様⁉ここっ、ほら、『耐久』の項目!僕、今日は敵の攻撃を一回だけしかもらってないのに!」

「……」

 

 あら。神様からしっとオーラがビシバシ伝わってきてますね。ちょっと話題逸らさないと俺、もしかして初めての【ステイタス】更新も儘ならないんじゃ……。

 

「だからやっぱり何かがっ……あ、あの、神様?」

「……」

 

 お、ベル少年も神様のご機嫌がすこぶる悪いことに気が付いたぞ。よし、【ステイタス】更新狙うなら今!ここだぁ!俺の勘がそう言ってる!

 

「神様ー、ベルが終わったんだしあたしもやってくれよー。ほれ、ベルはあっち行ったあっち行った」

「……むぅ。そうだね、おいでサラーサ君。ベル君なんかあっちいっちゃえ!しっしっ!」

 

 ……かみさまぁ……。

 

 ***(なうろーでぃんぐ)

 

 という訳で更新終わり!神様ずっとぶつぶつベルへの恨み言か何か言いながら更新してんだぜ?「……終わったよ」とか「はい写し」とかしか言ってくれなかったんだぜ⁉フォローしたかったけどフォローのしようがねぇよ!誰か助けてくれよ!服着させてくれよ!受け取ってから服着たわ!すこぶる機嫌悪いけど同じくらい仕事はえーな⁉

 俺数字と自分の名前くらいしか読めないけどとりあえず【ステイタス】の写しがこちら!

 

 サラシナ・サク

 Lv.1

 力:I0→I33

 耐久:I0→I4

 器用:I0→I9

 敏捷:I0→I13

 魔力:I0→I12

 《魔法》

 【偽典器(プセヴデピグラフィア)天星(イストロン)三寅(トリートス)

 ・装備魔法-詠唱派生型

 ・時間経過で効果終了。

 ・追加詠唱にて効果発揮。

 ・基本詠唱『(ほし)()() (けもの)()して (てん)()ず (かげ)(つか)みて ()(しろ)()す』

 ・追加詠唱『()ちるとも (おの)()(しめ)せ ()(しろ)よ』

 

 【】

 

 《スキル》

 【禁束(バウンド)臥獣(ビースト)

 ・斧/剣装備時全アビリティ補正。

 ・自然治癒力向上。

 

 【憑着者(ひょうちゃくしゃ)

 ・早熟する。

 ・同化率が上昇するほど効果低下。

 ・同化率が一定値に達する毎に『拘束』解除。

 ・同化率が1に達するまで効果持続。

 ・同化率 0.05。

 

 熟練度トータル上昇値なんと71!バッッッッカじゃねぇの⁉幸い同化率は上昇してないけども!てか俺も俺で耐久上がるような攻撃受けた覚え……あ。一回ゴブリンの拳素手で受け止めて、そのまま握り潰したけど……もしかしてそれか⁉いやダメージどころか衝撃すら感じなかったぞ⁉いやでもそれ以外にないし……いや、えぇ……(大困惑)

 これ、やっぱり俺のもベル少年のも『早熟する』の影響な気がするな。予想的中ってとこかな……当たってほしくなかったが。

 ちなみに速攻で確認して【憑着者(ひょうちゃくしゃ)】の項目は破り取った。ベル少年にはこれ見せられないんだよな……!

そしてベル少年に俺の【ステイタス】伝えたらこっちもこっちで驚愕してr「か、神様……?えっと、サラーサのもそうですけど、何で急に僕、こんなに成長したのかなー、って……」神様に声かけちゃうしぃぃ‼

 

「……知るもんかっ」

 

 ぷいっ、と頬を膨らませた神様はそっぽを向いて、部屋の奥のクローゼットに向かった。昨日の神ロキの本拠襲撃未遂と同じようにツインテールがうねうね動いてる。しかもベルがちょっと声かけようとしたらあの髪フシャーッ!って感じで威嚇してるし。どうなってんだ。わけがわからん。

 あ、背伸びしてプルプルしながらギリギリのところにあるコートとってる。かわいいなぁ。へーあのコート特注かね?神様の身体すっぽり覆ってるけど丈は普通なんだよなぁ(現実逃避)

 

「ふんっ!ボクはバイトの打ち上げがあるから、それに行ってくる。たまにはベル君も羽を伸ばして、キミたち()()()()()豪華な食事でもしてくればいいさっ」

 

 ……そこ強調しちゃいます……?まるで俺に嫉妬してるみたいな構図ですけど大丈夫なんすかねアレ。

 あ、また現実逃避してたらバタンッ!って扉閉めて出て行っちまったよ神様。目がね、神様の目がね……うん……。俺、ちょっと泣きたくなってきた。なんで神様あんな据わった目してたの?ベル少年もなんか落ち込んでるし。

 

「……はぁ。ベル、メシどうする?作る?帰りに言ってたとこへ食いに行く?」

 

 もう本格的に泣きたい、気が滅入る。

 




はい、という訳でコメディ色が多めの第五話でした。
ところで主人公、有象無象の雑魚とはいえゴブリンやコボルトをぶん殴るだけでスプラッタを演出可能ってどういうことなんでしょうね…。サラーサなのだから当然だろうと思う一方、書いている本人が一番「どうすんだこのオーバースペック」ってなってますよ、ええ…。
現時点でミノタウロスも一方的にぶち殺す気がしてならないんですが(戦慄)
あ、今回は同化率に変化なし…と。

ベル君の耐久の伸びが原作より上なのは確実に主人公のアイアンクローのせいだと思うの。

次回は原作通りだとベートさんがはっちゃける回になると思うんですけど、拙作だとどうなるんでしょうね。
原作通りひとしきり嗤ってベルがいなくなった後に何か起こるのか、そもそも何にも言わず黙って酒を呷っているのか。
この辺はベートさん次第、私の頭の中のベートさんがどう動いたかで決めようと思って現在執筆中です。

確か二話の前書きでもお伝えしたと思うのですが、今話前書きの通りこれにてストックが切れたため、明日から毎日更新ができません。
多分週1,2くらいの不定期更新になると思いますが、書き溜めながら更新していこうと思っております。

読みやすい文章量はどのくらいでしょうか?

  • 5000~6000
  • 7000~8000
  • 9000~10000
  • 10000~
  • 考えたこともない
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