今回は5000字ちょっと。前半ベートさん、後半ベル君視点でお送りいたしますが、ベル君部分少な目。
前回クオリティを上げる自助努力をすると言ったな。すまない、守れなかったよ(悲)
等と散々ではありますが、幕間の一です。どうぞ。
「……質問に答えろ。あたしはベル・クラネルに助けられた。
オラリオ最大派閥【ロキ・ファミリア】が幹部、『
酔っていたとはいえLv.5である己を投げ飛ばし、反撃すら歯牙にもかけず憤怒を浴びせる『角持つ少女の姿をした化物』。その言葉と行動、何よりも己を睥睨する紅い双眸に込められた赫怒と殺気に中てられてとっくに泥酔状態からは醒めていたものの、何故こんなことになっているのかが理解できない。
引き剥がそうと足掻いても、拳を振るっても、なんとか蹴りを放っても、文字通り片手間で対処されてしまうし、そもそも手応えが薄い。挙句の果てには苦し紛れに喉を狙った腕を掴まれる始末だ。
「ぐっ、くそっ……何が言いてえんだよッ⁉」
「お前はなんだ。どの口がそんなことをほざくんだ」
マウントポジションで抑えつけられているとはいえ、この身は
「アイズ・ヴァレンシュタインはあいつとあたしを救った。あいつはあたしを助けた。あたしはあいつを守った。何かが欠けていれば今頃あたしもあいつもきっと生きちゃいない。遅れてきたんだろうお前はアイズ・ヴァレンシュタインの後ろでただ見ていただけだったな。お前、そんなことを上からほざけるほどあたしたちに何かしてくれたか?おい。言ってみろよ。何が『ああいうヤツがいるから俺達の品位が下がる』だ?ふざけるな。あたしからしてみれば『お前なんぞと一緒にするな』だよ。ずっと聞いてたよ、お前の声を、お前の話を。あたしは勘が良いんだ。酒に酔ったお前がベルのことを話してる時、お前が考えてたコトを当ててやろうか?惚れた女を振り向かせたい、ただそれだけだろ。くっだらねぇにも程があんだろうが。あたしはともかくあいつを、ベルを、女の気を引くダシにしやがって。その行いの代償は、何が良い?眼か?耳か?鼻か?歯か?爪か?指か?腕か?脚か?それとも────────命か?」
言い終わると同時。殺気が膨れ上がり、掴まれた腕がみしりと悲鳴を上げる。殺気に反応したフィン、ガレス、ティオネにティオナの四人がこの『化物』を己から引き剥がそうとしているが、全くと言って良いほど不動。その事実に、ついに戦慄を超えて純粋な恐怖を覚えた。
「そこまでにしてもらえるかな?ここまでなら『派閥の失敗』と『団員の失礼』で穏便に済ませられる。だけど、流石にどちらかが大怪我をしてしまえばただじゃあ済ませられなくなってしまうからね」
「……ああ、言いたいことは言った。大人しく従ってやるよ【ロキ・ファミリア】の」
声を掛けられる寸前でようやくフィンたちに気付いたらしい『化物』は、先程まで己に向けていた怒りと殺気を霧散させ、あっさりと己の上から退く。
掴まれていた腕を見れば鬱血して変色し、赤黒い手の形の痣がくっきりとついていた。もう少しで握り潰されていたはずだ。
────────『化物』もまた、遥か空に輝く、見覚えのない三つ連なった星を見上げていた。不意に一陣の風が吹き、彼女が纏う外套がはためく。煽られた外套の下、その背中にあったのは。
【ステイタス】の刻印を覆い、淡い光を放つ『
「……本当に、世界ってのは力だけじゃ儘ならねぇな。けど……星がキレイだな────サク」
そう呟いて、『化物』は意識を失ってふらりと倒れ……いつの間にかいたミアに受け止められた。
「はあ……まったく、あたしの店で随分と好き勝手やってくれたじゃないか小娘。ツレも食い逃げたぁいい度胸だ」
「あんたもだよ
「……あ?お、おう……」
そのまま『化物』……『角の少女』はミアの小脇に抱えられ、店の奥へと姿を消した。
「……ベート。折角の宴の席でよおやってくれたなあ。なんか言い訳はあるか?んん~?」
『角の少女』が消えていった店の奥をぼんやり見つめていると、怒気を孕んだ声が聞こえてそちらへ向き直る。……主神であるロキが青筋を浮かべて仁王立ちしていた。
やらかしたことについてもう弁解の余地はなく、当事者であるトマト野郎……あの白髪頭の少年は夜の街に消え、もう一方の角の少女もミアに連れていかれた後。どうしようもないことを悟り、きまり悪く舌打ちをしてそっぽを向いた。
……罰として効能の低い、駆け出しが使うような低級の
そもそもあの騒ぎの時点で酔いはすっかり醒めており、ぐるぐると己の弱さを責めていると。
「……ベートさん」
目の前にアイズがしゃがんで声をかけてきた。
「……んだよアイズ。俺の事なんざほっとけよ」
己が恥を晒してしまった意中の相手が話しかけてきたことで吹き荒れる羞恥を押し殺して、なんとかいつものように粗雑な口調で突き放す。
当然目を合わせるなんてできる訳もなく、顔を背ける。というか背けないと見えてしまいそうだった。何がとは言わないが。
「……あのとき、あの二人が何をしてたのか……知りたくない、ですか……?」
ばっ、っと思わずアイズを見る。困ったように下がった眉と、躊躇いがちな表情。意中の相手にそんな顔をさせていることに罪悪感が湧き出すが、『化物』が言っていたことの仔細を知れるかもしれないという好奇心がそれを凌駕する。
「……何があったんだよ、あんとき」
「わたしが追いつく前のことなので、細かいことはわかりませんが……わたしが倒す直前のミノタウロスの右腕と、あの女の子の右腕がぐちゃぐちゃだったので、多分……ミノタウロスと正面から殴り合って、互いに……打ち合った拳や腕が、ぐちゃぐちゃになったんだと、思います……」
「なっ……⁉」
「おいアイズ。さっき俺を片手間に捻じ伏せたような女がミノタウロスと相討ちだと?おちょくってんのか?」
「……嘘じゃないです。さっきの、あれは……うまく言えませんけど……存在が、違うような……とにかく、あのときのあの子は……あんなじゃ、なかったです」
自分でもよくわかっていないらしい少女の言葉に、調子が狂うなと思いつつも、アイズが嘘をつくような性格ではない……いや嘘をつけない性格であることはそこそこ長い付き合いから知っている訳で。続けろよと先を促す。
「そのあと、ミノタウロスの咆哮で二人とも、
その時の記憶を思い出して噛み締めるように、アイズは一旦瞼を閉じたあと、ゆっくりと目を開いて、こう言った。
「……あの、男の子……ベルが、ミノタウロスの眼に、得物を突き刺して、女の子を助けたんです」
……嘘、だろ?あのトマト野郎が?情けなくしりもちついて、呆然としていたあのガキがか?アイズの瞳は真剣そのもので、そこに嘘や誇張が一切無いことは明白だった。
「……それだけ、です」
言うだけ言って満足したらしいアイズは、立ち上がって席に戻り、またマイペースに食事を始めた。
おかしい。そういえばあの少女は、少年に背負われていたはずだ。己を悠々と抑えつけるような化物が、明らかに格下である少年におぶわれて逃げるだろうか?しかもミノタウロスの
……不自然だとは思うものの、それが真実だとするならば……己が雑魚と嘲笑い、貶めた少年は、最後の最後まで抗っていたことになる。「雑魚はどこまでいっても雑魚だ」と言って憚らない己だが、あれは己なりの激励である。
だが、先の醜態はどうだ。上層で活動する程度の弱者ながらも、中層より出でた
アレは、一体何なのだろうか?
一時間ほど経った頃。Lv.5冒険者の鋭敏な感覚が店の奥にあの少女の気配を察知し、そちらを向こうとするも生憎転がされている向きが悪い。簀巻きにされていて動きづらいことこの上ないが、とりあえず頑張って向き直ろうと足掻く。第一級冒険者の身体能力をしょうもないことに使っているなと我が事ながら呆れかえるが、団員たちは己のことなど殆ど無視して呑んでいるし、この状態に甘んじていること自体が己への制裁である故に解くこともできないのだから仕方ない。何人かが急に動き出した己を見て驚愕しているが、己に委縮する雑魚など知ったことか。……ちぃっ、フィンやガレス、リヴェリアにアイズはともかく、ロキやティオナはいつまでも弄ってきそうだ。
見れば『
確かにあの化物の気配はしない。アイズの言う通りあの怒り狂った化物と角の少女とでは、根本は同じでも本質的な何かが違うように感じる。
拍子抜けしたものの、店仕舞いとなりガレスに担がれて店を出るまで不思議と角の少女から視線を外すことができなかった。
「……てめえは、なんなんだ……?」
己どころか己よりもLv.の高いフィンやガレスすら歯牙にもかけぬ化物であるかと思えば、アイズ曰く
ふと夜空を見上げれば星は無く。あのとき『化物』越しに、確かに見たはずの三連星は幻であったかのように何処にも見えず……蒼白に輝く上弦の三日月が、嘲笑うように浮かんでいた。
畜生、畜生、畜生っ!
走る、走る、走る。眦に浮かぶ涙もそのままに、何度も頭を過る先の光景を必死に振り払いながら疾走する。
色々な感情が自分の中を掻き乱し、先の光景が過るたびに自己嫌悪が増していく。
自らの無様を笑い種にされ、侮辱され、失笑され、庇われて、サラーサが本当の名前を自分に教えてくれていなかったという事実も同様に引きずり出されて。
あまりにも惨めだ。こんな自分等消し去ってしまいたい。初めてそう思った、思ってしまった。
馬鹿かよ、僕は、馬鹿かよっ‼
青年の放った全ての言葉が胸を抉る、心を蝕む。
惰弱、貧弱、虚弱、軟弱、怯弱、暗弱、柔弱、劣弱、脆弱。
彼女と親密になるために『何をすればいいのかわからない』ではない。
『何もかもしなければ』、自分は一人の少女の前に現れることさえ許されない。
殺意を覚えるのはあの青年でも周囲で馬鹿にしていた他人でも、隣で何も言わず黙っていた少女でもない。
何も……そう、何もしていないくせに無償で何かを期待していた、愚かな自分に対してだ。
悔しい、悔しい、悔しいっっ‼
青年の言葉を肯定してしまう弱い自分が悔しい。
何も言い返すことのできない無力な自分が悔しい。
彼女にとって路傍の石に過ぎない自分が悔しい。
彼女の隣に立つ資格を、欠片も所持していない自分が、堪らなく悔しい。
「……ッッ!」
迷宮の上に築き上げられた摩天楼施設が、地下に口を開けてベルを待っていた。
目指すはダンジョン、目指すは高み。
吊り上げた瞳に涙を溜め、ベルは闇に屹立する塔に向かってひた走る。
……夢中で走る少年の、その遥か頭上。少年の姿が迷宮へと完全に消えて見えなくなるまで、応援するように、鼓舞するように、三連星が力強く輝いていた。
ということで幕間の物語。
ベートさんとベル君視点でお送りしました。
正直ソードオラトリアの方の読み込みが甘かったので不出来だなーと思いつつ書いていたのですが、推敲してたらこのように。
『これおかしくね?』等ありましたら感想か、作者へメールをください。考察して修正も考えます。
さて、ベートさんが抱いたのはどうやら興味。個人的にベートさんは好きなキャラなんですがね、原作二章部分って二次だと大抵噛ませ化するんですよね。あのシーンムカつくから仕方無いか(南無)
そういえばベートさん何が見えそうだったのか知らないけど、バッとアイズさんの顔見た時仮に本当になにか見えてたとしても認識してない。思考の方にキャパの大半割いてましたのでね。
ベル君は原作どおりダンジョンへGo。再構成しようがなかったけどとにかく無事に帰ってきてね頼むから。
『三連星』
題の通りこれは三寅斧の刀身にあしらわれている装飾と同じ配置。もちろん前話にもあった『三つの星』と同じものです。連星と言って良いのかわかりませんでしたが、他にどうやって言うのか、星座は星座と認識されなければ星座ではありませんし……。
いずれにせよ私の語彙の不足からこのようなジェットストリームアタックを仕掛けそうな呼び方に落ち着きました。なんでガンダムよく知らないのに言うたびに黒い三連星という語が頭を過るのか。
感想・評価、あとはありましたら誤字報告、お待ちしております。
読みやすい文章量はどのくらいでしょうか?
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5000~6000
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7000~8000
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9000~10000
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10000~
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考えたこともない