sistertale -来訪者はヴィランでした‐   作:art-ai

3 / 7
第三章 娘の本音

まただ。しくじった。

アジトに戻った私は身を震わせながら次の言葉を静かに待つ。

「お前、自分が何をしたのか分かっているのか?」

酷く低い声にびく、と飛び上がる。

実のところ、自分がどうしてあんな行動をしたのか理解できていない。

だから、どう答えればいいのか、分からない。

「ごめん、なさい…」

とにかく、それしか言うことがなかった。

そして、父の足が、 私にだんだん近づき……こう言った。

 

「あの娘に情けを掛けるな。」

 

それだけを吐いて、部屋から出て行った。

私は、静かになった部屋で独り呟いた。

「どっちがだよ、この分からず屋……っ」

 

どうしてそう呟いたのか、どうして庇ったのか、今やっと理由が分かった。

私とあの子が、似ていると思ったからだ。

でも、あの子の思っていることと、私の思っていることは、違う。

それに、私には「使命」がある。

父の言うように、情は掛けないほうが、いいの…かな……

ずきり、と胸が痛む。

まるで、今の私を責めているように…。

ああ、私……

 

 

何が正解なのか、分からないよ。

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、こんなところか。」

そっと、可愛らしいデザインの日記帳を閉じる。

別に課題とかではない。ただただ、自分の気持ちを書き出しただけ。

それでも、私にとっては大切なもの。

少し思いつめた表情をして、これからの自分について悩む。

こんなふうにしたら、心に詰まったものが、いつも取れていたから。

でも、今日はなんだか取れそうな気がしない。

「やっぱり、もやもやは取れない………」

うーん、と唸る。でも、唸ったところで答えが見つかる訳でもないので、机に伏せる。

その視線の先に見えたのは、一つの"cord"だった。

そこには、underswapのコードが書かれてあった。

「"underswap"…"入れ替わった者の世界"、か。」

確かあそこにはポジティブが無数にあった気がする。

 

・・・

 

いっそのこと、家出しようかな。

 

そこからの行動は早かった。

髪を梳かし、ヘアピンをつけ、いつものワンピースを身に纏い、お気に入りのブーツを履く。

あとは……と、淡々と準備を終わらせていく。勿論気付かれないように。

 

同日 深夜

 

「……誰も、いない…よね」

周りに誰もいないことを確認して身を起こし、準備していた荷物をまとめる。

そして、父の部屋の前まで静かに来て、一言だけ呟いた。

「父さん。………

 

 

"待っててね"」

玄関に向き直り、私は音を立てずに扉を開く。

そして、もういちど後ろを向いてみる。

誰も起きていないのを確認して、"underswap"のコードポータルを開く。

「ばいばい、みんな。」

それだけ言い残して、私はポータルを潜った。

 

そして

 

静かに

 

 

ポータルが閉ざされた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。