sistertale -来訪者はヴィランでした‐ 作:art-ai
まただ。しくじった。
アジトに戻った私は身を震わせながら次の言葉を静かに待つ。
「お前、自分が何をしたのか分かっているのか?」
酷く低い声にびく、と飛び上がる。
実のところ、自分がどうしてあんな行動をしたのか理解できていない。
だから、どう答えればいいのか、分からない。
「ごめん、なさい…」
とにかく、それしか言うことがなかった。
そして、父の足が、 私にだんだん近づき……こう言った。
「あの娘に情けを掛けるな。」
それだけを吐いて、部屋から出て行った。
私は、静かになった部屋で独り呟いた。
「どっちがだよ、この分からず屋……っ」
どうしてそう呟いたのか、どうして庇ったのか、今やっと理由が分かった。
私とあの子が、似ていると思ったからだ。
でも、あの子の思っていることと、私の思っていることは、違う。
それに、私には「使命」がある。
父の言うように、情は掛けないほうが、いいの…かな……
ずきり、と胸が痛む。
まるで、今の私を責めているように…。
ああ、私……
何が正解なのか、分からないよ。
「……さて、こんなところか。」
そっと、可愛らしいデザインの日記帳を閉じる。
別に課題とかではない。ただただ、自分の気持ちを書き出しただけ。
それでも、私にとっては大切なもの。
少し思いつめた表情をして、これからの自分について悩む。
こんなふうにしたら、心に詰まったものが、いつも取れていたから。
でも、今日はなんだか取れそうな気がしない。
「やっぱり、もやもやは取れない………」
うーん、と唸る。でも、唸ったところで答えが見つかる訳でもないので、机に伏せる。
その視線の先に見えたのは、一つの"cord"だった。
そこには、underswapのコードが書かれてあった。
「"underswap"…"入れ替わった者の世界"、か。」
確かあそこにはポジティブが無数にあった気がする。
・・・
いっそのこと、家出しようかな。
そこからの行動は早かった。
髪を梳かし、ヘアピンをつけ、いつものワンピースを身に纏い、お気に入りのブーツを履く。
あとは……と、淡々と準備を終わらせていく。勿論気付かれないように。
同日 深夜
「……誰も、いない…よね」
周りに誰もいないことを確認して身を起こし、準備していた荷物をまとめる。
そして、父の部屋の前まで静かに来て、一言だけ呟いた。
「父さん。………
"待っててね"」
玄関に向き直り、私は音を立てずに扉を開く。
そして、もういちど後ろを向いてみる。
誰も起きていないのを確認して、"underswap"のコードポータルを開く。
「ばいばい、みんな。」
それだけ言い残して、私はポータルを潜った。
そして
静かに
ポータルが閉ざされた。