ぼくの名前はインなんとか   作:たけのこの里派

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注意事項。
・「そこはちゃうんやで」という致命的な相違、無理な展開が発覚した場合は出来るだけ修正しますが、どうしようもないところは生暖かい目でスルーしてください。
・アニメ三期放送記念でテンション上がり急いで大幅修正したため、修正忘れがある可能性があります。
・駄文である。

以上の点が受け付けられない方はプラウザバックを推奨します。
また注意事項が増えたりするかもしれませんので、ご了承ください。


1巻 禁書目録
プロローグ 歩くような速さで


 

 

 

 ――――禁書目録。

 科学と相反する様に魔術が遍在し、ソレを扱う魔術師が存在するこの世界に於いて、その名は魔術師にとって極めて重要なモノである。

 

 魔導書と呼ばれる、著者や地脈の魔力を使い 本そのものが小型の魔法陣と化しているため、破壊や干渉を受け付けない魔術の使用方法が記された書物。

 魔術の知識という人間にとっては「毒」である技術に於いて、常人が読めば廃人確定の“汚染度”である『原典(オリジン)』を十万三千冊全てを完全記憶能力で“記憶”している、生きる『魔導書図書館』。

 ソレを得ることが出来れば、世界を狂わすことも、魔術師の頂点である魔神にすら至ることができると言われる、魔術師にとって喉から手が出るほど欲しいその知識の蔵書。

 

 イギリス清教の狂気が作り上げた、必要なだけの魔術の知識を必要なだけ引き出し、迎撃の場合十万三千冊を十全に使用した『魔神』の力を存分に振るう者。

 それが、Index-Librorum-Prohibitorum――――禁書目録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ 歩くような速さで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園都市二十一学区の物資輸入経路。そこに繋がる学園都市外部に、四人の男女が存在した。

 

「いやはや、漸く辿り着いたなぁ学園都市。本当に長かった」

「ハハハッ、随分感慨深そうだねインデックス」

 

 金髪碧眼の()()()()()()()()()に、インデックスと呼ばれた白金の装飾がある祭服(アルバ)を着た()()()()()が、当然だと言わんばかりに嘆息する。

 

「あッたり前でしょうが。こちとら時限爆弾付きで、天才と聖人の追っ手有りのオワタ式デスゲームやってる様なモンだよ? オッレルス達やブリュンヒルドに出会わなかったら終わってた事間違いないって」

「何、私も君が居なかったらどうなっていたか想像するだけでも薄ら寒い。ここで一時の別れが本当に寂しく思うぞ」

「お堅いねぇ。騎士派の騎士サマレベルだよ、アンタのは」

 

 金髪にエプロン姿の聖人に呆れられた、同じく金髪に羽根飾りの付いた帽子、膝上程度の丈のワンピースと男物のズボンという、服装全体に『現代にある素材を使って中世ヨーロッパの鎧のシルエットを再現した』ような、奇妙な統一感を身に纏った姿の聖人。

 魔神一歩手前(オッレルス)に聖人二人という並の魔術師が聞いたら即逃亡レベルの、最早戦力というより勢力と言った方が正しい化物達が学園都市外壁に集結していた。

 

「と言っても、自分だけ雑魚なんだけども」

 

 ズーンという効果音が、這いつくばった銀髪の少年から聴こえた気がした。

 

「どの口が言うかアンタ」

「君が雑魚なら並の魔術師は泣いちゃうよ?」

「うっさいリアルドチート共! 音速挙動が当たり前の連中に言われたかないわッ!」

 

 音速で動き、剣を振るえば風圧で対象がミンチになる女性陣。

 片や魔神の力の一端を振るい、時空が歪むほどの数億に及ぶ謎の連撃で相手を瞬殺する男という、魔術世界の理不尽である。

 “現在”魔術が使えない少年と比べてやるのが、そもそも間違っている領域だ。

 

「――――ま、そんな縛りプレイとはおさらばなんだよ」

「………本当に一人で行くのか? インデックス」

「優しいねェブリュンヒルドは。でもそれじゃあ駄目なんだ。ブリュンヒルドやオッレルス達をイギリス清教の敵にするわけにはいかないし、何よりあの()()()に目を付けられたらたまんないしね」

 

 魔術と科学の境界。ソレを侵した魔術師はイギリス清教が真っ先に処分しに来るだろう。

 科学と魔術、それぞれの世界が争わない為にも。

 戦争を起こさないためにも。

 

「私は構わない。君の味方になれるなら、敵がイギリス清教だろうとローマ聖教だろうと学園都市だろうと、神や悪魔であっても!」

 

 例え世界を敵に回そうが。

 

 ブリュンヒルドの銀髪の少年神父に対する想いは、ソレほどのモノだった。

 命の恩人。生きる希望。

 少年はブリュンヒルドにとってそういう存在なのだ。

 嘗てのパートナー達の様に。

 

「ストップ。アンタはこの子の事になると簡単に沸点越すね。アンタがこの子を心配な様に、この子もアンタが心配なのが判んないかなぁ?」

「……判っている、そんなこと。しかし私は……ッ」

「子供じゃないんだから。年下の少年に依存したら駄目だろ。それともアンタはこの子を信頼してないのかい?」

「………くッ」

「どうしようオッレルス、自分ってここまで重い愛を向けられることしたっけ?」

「おははは……」

 

 少年が連れの病み具合の現状を知りゲッソリした所で、一人ちゃっかり巻き込まれない様に一歩引いていたオッレルスが、何かに気が付いた様に振り向いた。

 

「そろそろ彼等も追い付いてきたみたいだよ」

「ほら仕事だよ。この子を信頼してるなら、その分自分の仕事をキチンとこなしなって」

「……そうだな。ならばこそ、奴等をここで滅殺してインデックスを追えない様にして――――」

「止めてネ!? あの二人一応自分の親友なんで! 全然覚えてないけど!!」

 

 それに少年の目的の為にも、その追手達は必要だったりするのだ。

 

「殺るなよ? 絶対ヤるなよ!? 振りじゃないからね? 絶対だかんな!」

「ハイハイ分かったよ。流石にイギリス清教の貴重な聖人を殺る訳無いでしょ?」

「お、おぅ……じ、じゃあまた! オッレルス! シルビア! ブリュンヒルド!! 本当に有り難う!!!」

 

 三人に別れを告げながら少年は貨物列車に跳び移り、そのまま学園都市内部へと運ばれていった。

 

「チッ」

「愛しの弟くんが居なくなった途端荒れるね、お姉ちゃん?」

「ソレ以上は止めといた方が良いよシルビアー……インデックスの居ない時にあの子のネタでおちょくると、すぐプッツンしちゃうんじゃ……」

「大丈夫」

 

 未処理の爆弾のスイッチが入らないように、ビクビクしながらオッレルスがシルビアに尋ねるが、シルビアはこう答えた。

 爆弾が爆発しそうで怖い? 

 

「捌け口のお出ましさ」

 

 ――――だったら誰かにブン投げればいいじゃない、と。

 全然解決してねぇー!! と、絶叫するオッレルスを尻目に、三人の前に二つの影が現れた。

 

 髪を赤く染め上げ眼元にバーコードの刺青を刻んだ、口にタバコを咥え破戒しまくっていると全身で表現している二メートル越えの不良神父。

 魔術師、ステイル=マグヌス。

 白いTシャツを、豊満な胸部を強調し腹部を露出するよう巻き、履いているジーンズは片足が根元から切り取られ綺麗な脚が見えている、左右非対称の奇抜な服装のポニーテイルの女性。

 聖人、神裂火織。

 

 勿論この姿には魔術的な『左右非対称のバランスが術式を組むのに有効』という理由があり、動きやすさも重視しているのだが、とある少年神父は「解ってる。解ってるけども、かおりんエロ過ぎると思う」と漏らしていたり。

 

「あの子は何処ですか?」

「聞くまでも無いと思うけど?」

「また面倒な場所に逃げ込んでくれたね。で? どうして君達が此処に居るんだい? あの子を一人にして構わないのかな?」

 

 神裂に続く様に、ステイルがタバコを吸いながら当然の疑問を口にする。

 確かに魔術師にとって学園都市は鬼門だ。

 しかし聖人二人に魔神一歩手前の魔術師に比べれば、明らかに難易度は落ちる。

 なのにオッレルス達はインデックスを一人で学園都市に送った。

 それが不可解でならないと。

 しかし――――――

 

「――――――黙れ」

 

 ダァンッ!!!! と、ブリュンヒルドがいつの間にか手にしていた大剣『クレイモア』を、地面に振り下ろしていた。

 そのあまりの威力と衝撃で、岩盤が捲り上げられながら縦に割れる。

 その音が、オッレルスには爆弾が起爆した音に聞こえた。

 

「何も知らない道化風情が。貴様等如きにあの子の考えを教えると思うか?」

「あァん?」

 

 ブリュンヒルドの言葉に、神裂の額に青筋が浮かび、代わりに丁寧語が一瞬で消し飛んだ。

 

「ヒィ――ッ! ブリュンヒルドさん!? 何イキナリ喧嘩吹っ掛けてんの!?」

「さっきから五月蝿いよバカ」

「冷静すぎる相棒が解らない!!!」

 

 オッレルスの絶叫と共に、神裂とブリュンヒルドが音速で激突した。

 よくも悪くも、一年以上付き合いのある、自身の最も大切なヒトの事を、半年や其処らの付き合いの人間に上から目線で語られ、更に側に居られない嫉妬からブチキレた神裂とは裏腹に、ステイルは冷静だった。

 

「……君達は何故あの子に協力しているんだ? シルビアがそちらに居る以上、あの子の記憶の事を知っているだろう」

 

 ステイルと神裂がインデックスを追う理由。

 元は同じイギリス清教の、しかも王族付き侍女であるシルビアが、それを知らない筈は無いと。

 

「10万3000冊を記憶したあの子は、完全記憶能力者であるが故に一年以上の記憶は脳が持たない……か」

「そこまで解ってるのに何故――――」

「視野狭窄、かな」

「――――何?」

 

 シルビアへの問いに、代わりに先程まで情けない顔で絶叫していたオッレルスが答えた。

 

「魔術師は優秀であればあるほど魔術で解決しようとする。そして魔術でどうにか出来ない場合、魔術師は容易に折れやすくなる。仮に折れなかったとしても、更なる魔術で解決しようとするだろう」

「何を言っている……!?」

「ヒントさ。後は直接あの子から話を聞きな」

「くッ!?」

 

 オッレルスがそこまで言って、シルビアはロープを展開させる。

 ステイルは、それに対応する為に炎剣を構えようとし、

 

「ぐァッ!!!?」

「なに、あの子を追えなくなる程痛め付けはしないよ」

 

 展開させたロープを囮にした、オッレルスの『北欧王座』による『説明不能の力』な攻撃に吹き飛ばされ、シルビアのロープに絡め取られた。

 

「ステイル!」

「余所見とは余裕だな」

「くッ!?」

 

 ブリュンヒルドと神裂火織。化物と化物の戦いを眺めながら、更なる化物であるオッレルスは腰を落とし、辛うじて意識を保っているステイルに語りかける。

 

「……何故、手加減をッ……?」

「約束だからね。あの子が絶対とまで言ったんだ。君達を潰すわけにはいかないさ」

「あの子が……ッ!?」

「安心しなよ、君達もすぐに知る」

 

 ブリュンヒルドは『振り』だと言い切るかもね、と苦笑いを浮かべながら、オッレルスは学園都市を見据える。

 

「あの子は自ら虎穴に入った。唯一の虎児(希望)を掴み取るために」

 

 魔神一歩手前まで高みに居るオッレルスでも、やはり魔神ではない為か、少年神父の“首輪”を解くには至らなかった。

 故に、その何もかもを一切合切一撃で粉砕する為の右手を、少年は目指した。

 

 

「――――祈ろう。科学と魔術が交差した、その果ての幸福を」

 

 

 




修正点:インデックスの口調を原作寄りに

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