ぼくの名前はインなんとか   作:たけのこの里派

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しかし何故にホモを邪推する方がいらっしゃるのか(白目)



第二話 そして物語は始まる

 学園都市第七学区のとある河辺。

 そこに一方通行(アクセラレータ)とインデックスは居た。

 

 理由は魔術の証明。

 方法は『歩く教会』を使っての霊装(オカルトグッズ)の性能証明。

 

「さっき見せた様に、この祭服がイカレ科学繊維とかじゃないのは判ったか?」

「あァ、それでどうやって証明すンだよ?」

「この服は『歩く教会』といって、法王級の要塞の強度を誇る―――――具体的には三千度の爆炎ブチ込まれても効かない魔術霊装。つまりは100%魔術(オカルト)の逸品だ。そこでユーは自分に“能力を行使した打撃による攻撃”を行い、ノーダメージなら信じる事が出来るでしょ?」

「――――ハッ」

 

 一方通行は思わず吹き出しそうになる。

 一体自分が誰か判らないのだろうか?

 

「オイオイマジかよ。まァ外部の人間のお前には俺が誰か分からねェンだろォが、俺は「学園都市最強の超能力者(レベル5)。ベクトル操作の一方通行」……オマエ……」

 

 学園都市最強の一撃を受ければ、人の形など残らない。

 しかしインデックスは名乗ってもいない一方通行の名前はおろか、能力まで口にした。

 

「知ってるだけだよ。別に大した意味は無い」

 

 原作知識――――なんて、一方通行に限らずこの世界の人間は想像すら出来ないだろう。

 インデックスは大した意味は無いと言ったが、理解出来ないという意味での意味の無さである。

 

「だったら尚更正気か?」

「一応『歩く教会(コレ)』とは一年近くの付き合いだけども、幾らベクトルを集束した拳でも、唯の打撃じゃあコレは破れないよ。流石に血流操作とかされたら死ねるけど」

「へェ」

 

 面白い。

 目の前に居るのが誰か理解し、更にその能力も把握しての提案ならば、()()()()()()()()()()承知の上だろう。

 そう判断した一方通行は、一切の手加減を止める。

 

「じゃァ、行くぜ?」

「カモン。ただし打撃だけな。自分の体内のベクトル操作はしないでネ。死ぬから」

 

 一方通行は言葉では応えず、行動で示した。

 地面を軽く踏み込み、そのベクトルを操作し爆発的な速度で、両手を広げているインデックスに突貫した。

 その速度を全く殺さず、思うがままに右腕を振るう。

 インデックスの、神父服に拳を捩じ込み、本来自分や周りに向かう衝撃と威力のベクトルを収束。

 全て攻撃に向ける事で素人極まりない一方通行のパンチを、城壁を粉砕する悪魔の一撃へと変貌させた。

 

「(………………あ?)」

 

 一方通行は一瞬違和感を覚えるも、物理法則に従いインデックスの身体は、轟音と共にゴムボールより容易く吹き飛び川へと突っ込んでいった。

 

「オイオイどォしたよ。あンだけ大口叩いといて、愉快に吹っ飛びやがって」

 

 無茶な言葉である。

 今の一撃を生身で喰らって、無事な訳がない。

 穴が空いていなければ上出来。中身がスクラップになっているのが当たり前のレベルである。

 インデックスは川から上がる事すら不可能だろう。

 

「――――フムフム。自分に対するダメージは一切合切吸収できても、普通に吹っ飛びはするんだな。慣性の法則パネェ。しかしまぁ、お蔭でびしょびしょになったじゃんか」

 

 ――――だと言うのに、何事もなかったように川から這い上がってくる水浸しの少年神父は一体誰だ?

 

「へぇ………!」

「まぁ、ここで喧嘩売るなら二、三の挑発ぐらいするけど、流石に本気の学園都市最強を相手にする程馬鹿じゃないので止める。だけど、判ってくれたかな?」

「……確かになァ。頭ごなしに否定するには材料が足ンねェみてェだ」

 

 先程の攻撃では、大して気にはしていなかったが、拳で叩き込んだベクトルが、あの神父服に触れた瞬間一部解析出来なくなるというあり得ない感覚を覚えた気がしたが、どうやら一方通行の気のせいでは無いらしい。

 思わず科学的検証をしようとするが、能力開発を受けなければ不可能と断じる。

 

 魔術。

 曰く超能力とは違う法則の異能。

 確かに興味は無いわけではない。

 

「そもそもこの街は魔術的要素を徹底的に排除しておきながら、要となる超能力は所々魔術と似通った点が有りすぎるんだよ。例えばAIM拡散力場とか、絶対能力者(レベル6)とか」

「……何だと?」

 

 興味はあるが――――それは流石に一方通行は聞き捨てならなかった。

 特に後者。一方通行は今まさにその為の実験を行っているのだから。

 

「魔神つってね、魔術を神レベルまで極めまくった魔術師を指す言葉なんだけど、出鱈目具合と成れなさ加減は絶対能力者(レベル6)とドッコイドッコイだと思うぞ? 魔神一歩手前の魔術師の友人としては」

 

 魔神一歩手前。

 それはまさに、絶対能力者(レベル6)一歩手前である一方通行と同じではないか。

 

「じゃァよォ、オマエはソイツと俺が殺し合ったらどっちが勝つと思う?」

「う~ん、色々条件や状況によるだろうけど――――――――お前さんが殺されて終わりだろうね。一方通行」

「……へぇ」

 

 興味本位で聞いた問いに、インデックスは一方通行の敗北を解とした。

 学園都市最強である一方通行が負けると断言したのだ。

 一方通行のプライドに対する侮辱とも取れる発言に、一方通行が思ったのは疑問だった。

 核すら無傷でいられる自分を『殺されて終わり』と断定した理由が気になったのだ。

 同時に、ここまで言われて何もしない自分に驚きながら。

 

「理由は?」

「一方通行。お前が学園都市最強たる由縁は、やはりその反射が大きい。だけどそのベクトル変換能力は、ベクトルの数値を必ず演算式に入力しなければ操作出来ない。だけどオッレルスの『北欧王座』は『説明不能』が売りなんだ。唯でさえ全く未知のベクトル。そのベクトルの数値を逆算しなければならないのに、その数値が理解不能じゃ話にならない」

「……随分物知りじゃねェか」

 

 そしてそれに対するアドバイスを、インデックスは言わなかった。

 一方通行は上条当麻に負けなければ、一万のクローンは救われない。

 故に上条当麻が負ける要素を一方通行に与えてはならないのだ。

 

 そして一度敗北を知らなければ、一方通行はこれからクソッタレな学園都市の闇で、生き残れはしないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話 そして物語は始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――で、何でオマエは俺の部屋に居ンだよ」

「デジャブる発言だね。そりゃ誰かさんが俺を水浸しにしたからに決まってんでしょ。夏じゃなけりゃヤバかったぞこの野郎」

 

 一方通行の在宅している部屋――――と言って良いのか危うい、おそらく高級家具類が何者かに悉く荒らされた部屋で、今時の中高生の様なファッションに身を包んだインデックスが、ジト目で一方通行を睨んでいた。

 

「そンな服、いつの間に買ったンだよ」

「誰かさんがコンビニで缶コーヒー漁ってる間。……あぁクソッ、人の生命線をびしょびしょにしやがって。魔法は全種類覚えてるがMP0。精々百人程度のチンピラ圧倒できる程度のレベルの魔法使いの自分が、音速挙動の女剣士と摂氏3000℃の炎の巨人嗾けてくる魔法使いを相手に、どうしろっていうんだよ。どんなマゾゲーだ」

「随分ファンタジーなストーカーだなァオイ」

「喧しいわチート筆頭」

 

 学園都市の超能力者をチートとするなら、その第一位である一方通行は正しく筆頭と称すべきだろう。

 

「ったく……ヘイ学園都市最強の能力者。この水浸しを何とか出来ないの?」

「何で俺が……ベクトル操作で水分だけを飛ばす……出来なくもねェが、面倒臭ェからパス」

「ならネット上に学園都市最強の超能力者はロリコンで、本当の名前はアクセロリータって噂バラ撒くがよろしい?」

「この、野郎ッ……」

 

 青筋を浮かばせ、少年をミンチにする衝動を抑えながら、ギリギリと歯を喰いしばり少年の祭服を奪い水気を吹き飛ばした。

 

「あんがと。てか、何で学園都市の能力者の頂点がコミュ症なんだよ。『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』の影響かな? そんなんだから超能力者(レベル5)は他の学生から『隠しきれない人格破綻者』とか言われるんだよ。アレイスターの阿呆め、『計画』の中核者の情緒教育とか最重要だろう。環境が悪いよ環境が」

「喧嘩売ってるよなオマエ。居ねェよ。つかくだらねぇし、ンなモン興味もねェ」

「最強故に孤高? 一匹狼なんざどんなにカッコつけてもただのボッチでしょ。それに、他の超能力者にボッチとか指差されて爆笑されたら反論出来ないでしょ?」

「………………………………」

 

 一方通行は、そんな場面を一瞬想像し、思わず右手に持っていた缶コーヒーを握り潰した。

 

「じゃァどォしろっつゥンだよ……」

「フム。学園都市の悪意が作り出したボッチのコミュ症を、そんな一朝一夕では修正不可能だろうし……」

 

 学園都市の悪意は、そんなしょうもない物を態々作り出したりはしていない。

 

「――――よしっ、ならば自分が友達になろう! これで一方通行はボッチではなくなり、万事解決!!」

「お断りだ」

「おとこわりだと!?」

「何割ってンだよ」

 

 くだらない。そう思いながらも、一方通行はインデックスを排除しなかった。

 一方通行は考える。

 その気になればインデックスは何時でも排除されるか、また一方通行が音を反射して寝ればインデックスなど居ないも同じ。

 それでも何故そうしなかったのか。

 

「(何年ぶりだ? 邪気の無ェ声を掛けられたのは)」

 

 一方通行の周りは、負の感情で溢れていた。

 悪魔の様な白衣の研究者達。最強の座欲しさに蛮勇を振るってくる有象無象。

 一般人に至っては、その凶悪な眼光で話し掛けられることは無く、避けられる。

 

「つっても、ダチの条件ほぼクリアしてるぞー? 一緒に飯食って、河原で殴り合いして」

「河原じゃ俺がフッ飛ばして終わりだったと記憶してンだが?」

「じゃ今度自分がブッ飛ばせば全クリな」

「チッ……勝手にやってろ」

 

 一見クリーンな見た目を装った悪意に満ちたこの街で、一方通行にとってインデックスはとても珍しく見えた。

 

「好意を向けるのや向けられるのに慣れてないのは分かるけど、今の内に慣れてないと後でキツいよ?」

「あァン?」

 

 一方通行がそんなことを考えている内に、少年はいつの間にか乾いた神父服を纏って、部屋のベランダに足をかけていた。

 

「――――――じゃあ今度会った時は喧嘩って事で。そんでまた一緒に飯でも食おう」

 

 サラダバー!! と、おかしな叫び声を上げながらベランダから飛び降り、インデックスは去っていった。

 

「喧嘩だァ……?」

 

 そこでふと疑問に思った。

 インデックスは一方通行の力の強大さも、その能力の詳細も知っている筈だ。

 だと言うのに、反射に護られている一方通行に“喧嘩”を行えるとは思えなかった。

 しかし態々インデックスは喧嘩と言った。

 

「まァイイか、どォでも」

 

 彼は他者に敵意や悪意以外の感情など向けない。

 ソレが好意など以ての外である。

 故に、一方通行の思考からインデックスのことなどすぐに消えるだろう。

 ――――この約束は、彼が最も執心している実験の中で果たされることになるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 そして七月二十日。運命の日はやって来た。

 

 昨晩に御坂美琴との抗争により発生した落雷で、学園都市第七学区の一区画の電子機器が根刮ぎあの世に去ってしまい、上条当麻の部屋は茹だるような暑さに苛まれ、冷蔵庫の中身が全滅という惨状であった。

 

「さぁーって、布団でも干すかなぁ―」

 

 最早現実逃避のための行為。

 不幸な事があった、取り敢えず気分直そう。という既にサイクルと化している精神は、もういろんな意味で駄目な領域だろう。

 故に上条当麻は、ベランダの窓を開ける。

 

 本来布団を干すのに利用できる縦柵に――――――しかし其処には白い物体が干されていた。

 

 それはその少年が纏っている服が祭服であり、それらの知識がない上条にとって美少女と見間違う程の中性的な銀髪の美少年。

 屋上から落下したのか、柵が微妙に凹んでいるのを見る限り、下手したら死体だろう。

 

 呆然とした上条は手に抱えていた布団を落とし、その音に気が付いたのか、瞼に塞がれていた美しい碧眼が銀の前髪から上条を覗いた。

 そして、その口が開く。

 

「――――め、飯をくれぇぇえァァアアア………」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁッ!!!!?」

 

 こうして魔術と科学は交差し、物語は始まる。

 

 

 

 

 

 




美少女→運命の出会い
野郎→魔物と遭遇

取り敢えず本編中に回収する気の無い伏線をはってみた第二話目。

歩く教会って世界が違うと性能が分かれますよね。
型月だとAランク以上の宝具扱いは間違いないけど、ネギまだと大したこと無さそうで。でもハイスクールD×Dだと中途半端。リリカルなのはだとどんな扱いになるか解らないけど。

誤字脱字がある場合修正します。
感想待ってまーす。


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