〈Infinite Dendrogram〉 死して立ち上がる者   作:ベトベトー

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第四話 次の“狩場”へ 

 □【闘士(グラディエーター)】ルーツ·ハイドレンジ

 

 既にクエストの達成条件は満たしたが、まだ狩り続けている。ドロップアイテムもそこそこ集まった、この量なら五万リル近く稼げるだろう。

 

 「俺のレベルは十八だな。やっぱ支援系のジョブと〈エンブリオ〉じゃレベル上げにくいな」

 『こっちはレベルが二十一か。ちょっと上がりにくくなってるね』

 「どうする、他の狩場に移動するか?」

 

 ヴォルの〈エンブリオ〉、【排撃狂騒 パン】の能力で、植物とモンスターを判別することが出来るので不意打ちを喰らうこともなく狩りが出来ていた。それと歩くサボテン自体の数が多いのもあるだろう。

 しかし狩場の適正レベル帯を超えたのだろう、レベルの上がりが悪くなった。依頼は達成したし、これからはレベル上げに専念するために狩場移動をするべきかもしれない。

 

 僕達が次の狩場に向け移動の準備をしていると、近くで狩りをしていたマスターに声を掛けられた。同じマスターということもあって幾らか言葉を交わしたが、その程度だ。何か用だろうか。

 

 「すみませーん。あなた達も狩場移動するんですか?」

 「そうだぜ、何か用か?」

 「それならお願いがあるんすけど、私もパーティに入れてくれませんか?」

 

 そのマスターは目はエメラルドのような緑色で、髪は赤色でストレートロングの女性だ。名前はモルジアナ、アラビアンナイトの女奴隷と同じ名前だ。彼女は顔の下半分を隠すスカーフを着け、腰にはサーベルを差している。コルタナでは割と見かける服装である。

 

 「一人でやるのキツくなってたんです」

 「ネフティス、ヴォル、どうする?」

 『オレは別に』

 「別にいいぜ。ここより適正レベル帯の高い場所だけどそれでも大丈夫か?」

 

 ヴォルがレベルの確認をする。パーティ人数が増えるのは喜ばしいことだが、この人とレベルが合わないようであればもう少しレベル上げをしなければならない。

 

 「全然大丈夫ですよ。皆さんとおんなじぐらいっス!」

 「じゃあ、決まりだな」

 

 ◇

 

 『忘れられた町』から十五分ほど歩いて次の狩場に向かっている。そこそこの距離があったがレベルが上がったおかげで走っていても息が切れない。驚異の身体能力だ、現実の僕とは比べ物にもならない。

 

 「オレにはレベルがないからキツイぜ。また包帯になろっかなー」

 

 人間形態に戻ったネフティスが愚痴を言う。真っ黒の日傘を差していて、僕達より涼しそうだ。その日傘の中は冷気が出ていて涼しいだろ?

 

 「冷気が出ていても暑いもんは暑い!はやく宿に戻りたい……」

 「どうです、休憩します?」

 「そうするよ」

 

 休憩することになった。

 

 「ルーツ、俺の持ってるアイテム預けるよ。報酬になりそうなのはお前が持っててくれ」

 

 そう言ってヴォルはアイテムを僕に手渡す。時々、歩くサボテンを角笛で殴ってたからな。僅かだがドロップアイテムを持っていたようだ。

 日陰見つかったのでそこで休む。アイテムを受け取った僕は手早く、最低限休めるように辺りをキレイにした。

 

 目の前にある『ナジェダ台地』はコルタナから約五キロ西に位置する狩場だ。台地には巨大な岩や奇岩が多くあり、見通しが悪い。また、かなりの広さを誇るため出現するモンスターの強さにもバラつきがある。特に亜竜級と呼ばれるボスモンスターも出るらしい。僕達では手の余るボスモンスターだ。気をつけなければならない。

 

 そのためモルジアナの〈エンブリオ〉やジョブについて聞き、各々に出来ることを整理している。僕は前衛、ヴォルは楽器を扱う支援系のジョブ。バフ特化で〈エンブリオ〉を使えばモンスターの足止めくらいは出来る。

 

 「私は【斥候(スカウト)】っスねー。危険なんかを察知するんすよ」

 

 結構便利なジョブらしく、【闘士】を五十まで上げたら次はコレを取ってみても良いかもしれない。ただ、あまりステータスは高くないらしいので、引き続き前衛は僕がこなすようになるだろう。〈エンブリオ〉も戦闘系ではないようだし。

 

 あとは新しく覚えたスキルだ。《瞬間装備》というスキルで【闘士】の固有スキルではなく汎用スキルだ。試しに一度使ってみたが、これなら装備する手間も省ける。クールタイムが長いのが難点だが、スキルレベルを上げればそれも解決するだろう。

 

 「あ、ご飯持ってきてるんで食べます?アイテムボックスがあるからいっぱい作り過ぎちゃうんスね」

 

 すっかり打ち解けた様子で提案する。ありがたくモルジアナの持ってきた昼食を頂き、すぐに台地へ向かう。 

 ヴォルが早く行きたいと急かしたからだ。このクエストを選んだのもヴォルだしな。僕より若いそうなのでその分アクティブで微笑ましい。

 

 □ナジェダ台地 【闘士】ルーツ·ハイドレンジ

 ◇

 

 「GOOOOOOOOAAAAA!!」

 「RAAAAAAA!!」

 

 台地では人型のモンスターも出現するようだ。腰蓑だけのゴブリン。最初は人型だということもあって斬るのに抵抗があったが、次第に慣れていった。

 

 木の盾を構えたゴブリンをスティールメイスで殴りつける。メイスの衝撃で盾を落としたゴブリンを――

 

 「《瞬間装備》!!」

 

 ブレイズソードで逆袈裟に斬り上げる。MPを込め、刃に高熱を付与した剣は骨ごとゴブリンを断ち切った。……この切れ味なら普通に盾ごと斬れそうだな。もう一体のゴブリンはモルジアナが牽制をして、その隙にヴォルが全身を蔓で締め付けていた。

 

 「よっと」

 

 藻掻くゴブリンの首を斬り落とす。ゴブリンは光の粒子となって消えた。あとに残されたのは腰蓑だけだ。ドロップアイテムがしょっぱいんだよな。

 

 『じゃあ、ボス狩りに行こうよ。オレ達ならいけるんじゃないの?宝櫃を見てみたいよ』

 「亜竜級は下級職のパーティ一つ分だろ。実際どうなんだろうな。僕達に倒せるかね?」

 

 マスターはティアンとは違い〈エンブリオ〉のステータス補正もある。同レベルのティアンよりは技術を抜きにすれば勝っているだろう。

 いや、さすがにまだ亜竜級には届かないか。この台地で最も強いモンスターの【ライトニング·ロックバード】を見上げる。実力的にも物理的にも届かないそのモンスターは優雅に空を羽ばたいている。種族的に相手をするのは厳しそうだな、ワーム類なら何とかなるか?

 考えているとモルジアナに肩をたたかれた。 

 

 「お疲れーっス。これ水が入ってるんで飲んでください」

 

 そう言ってモルジアナが水の入ったコップを手渡してくれる。冷えた水は喉を潤すだけではなく、精神的な疲れも癒やしてくれるようだ。

 

 「……結構疲れたぜ」

 

 ヴォルは日陰に見を投げ出した。随分不用心だがその気持ちもわかる。一度休んでしまえば、手足を動かせなくなりそうだ。狩りのやめ時かもしれない。

 

 「あーあ、本当に疲れた。眠くなるよ」

 

 

 ……だるいどころではない。本当に手足が動かない。いや動かせるのは動かせるが、神経が麻痺したような感じだ。

 どういうことだ?いくらなんでもこれはおかしい。

 

 「そろそろッスかね」

 「……何がだ?」

 

 モルジアナは片手でパンパンと腰を払い、立ち上がる。

 

 「ああ、水に毒を入れておいたんスよ。皆さん、調子はどうです?」

 

 そう今日の天気を尋ねるように、自然な様子で彼女は問うた。震える手足を懸命に動かそうとする僕の視界には【麻痺】と表示されていた。

 

 To be continued

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