〈Infinite Dendrogram〉 死して立ち上がる者   作:ベトベトー

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第八話 終幕

 ◇【闘士(グラディエーター)】ルーツ·ハイドレンジ

 

 デスペナ明けから早々、僕達はヴォルとモルジアナにせがまれ、【アシッド·キング·スネーク】のドロップ品を見せている。

 まさか、宿の中で待ち構えてるとは思わなかったぜ。

 

 「もしかしたら、すっごいレアな装備が手に入るかもしんないスよ!」

 「ルーツ!早く開けようぜ!」

 

 宝櫃と呼ばれるそれにはレアアイテムが、ランダムに一から五個手に入るらしい。あれだけの苦労をして手に入れた物だ。犠牲の対価としては十分だろう。

 

 「おお!これは……?」

 

 中に入っていたのは二つの【ハイエメンテリウム】というアイテムだ。取引価格は一つ十万リル。

 

 「これさぁ……普通に狩りをしてた方が報酬いいよね」

 「……しょっぱいな」

 「あーあ、残念」

 

 というか、なんでモルジアナがここに居るんだ。仲間みたいな感じで振る舞ってるけど違うだろお前。

 

 「いや、もう仲間ですよ、あたし。めっちゃ皆のために頑張ってたじゃないスか!?」

 「ヴォル、結局報酬はみんな渡したのか?」

 「ああ、渡しちまったぜ。お前がどうしても俺達に返したいなら、返してくれてもいんだぜ」

 

 空気が変わったのを感じ取ったのか、モルジアナは少しずつ扉の方に近づくいていく。

 

 「あー、ちょっとこれから用事があるんで――サイナラッ!」

 「あっ、待ちやがれ!」

 

 疾風のようにあっという間に走り去って行くモルジアナを追って、ヴォルもドタドタと追い掛けていく。モルジアナの方がレベル高いから追いつけないだろうな……。

 

 「怒涛のごとく過ぎ去ったね」

 「まったくだ」

 

 勢いと元気が凄いな。

 さてと、これからどうする?ひとまずはこれを換金して、あいつらの分をここに残しとくか。

 

 「じゃあ、買い物行こうぜ。新しい服が欲しい」

 

 それで良いんじゃねえのか。形態変化したら元の服に戻るだろ。

 

 「日常用に決まってるだろ?これでも身だしなみには気をつかってんだ」

 「じゃあ、僕のも選んでくれ。普段、何を着たら良いのか分かんないんだ」

 

 リアルではほとんど同じ服を着回してるからな。このままだと、戦闘着で日常も過ごすことになりそうだ。常在戦場?そんな武士みたいなキャラになるつもりはないな。

 

 「オッケー!じゃあ、早く行こうぜ」

 「わかったわかった。だから、そんな引っ張るなよ」

 

 勢いよくドアを開けて、僕達は昼の商業地区に飛び出していった。

 

 ◇◇◇

 

 長袖、長ズボンと見ているだけで暑苦しくなる格好だが、コルタナではこれが普通らしいので文句は無い。

 

 「割と地味だけど、これでいいか?うん、良しとしよう」

  

 勝手に納得して、拒否権を与えられなかったので僕の文句なんかは大して意味がないのだろうが……。まあいい。これで普段着が出来た。あとはこれの色違いでも買っておけば良いだろう。

 

 「え、何言ってんの?ちゃんと服を選べよ。この店で終わりじゃないぞ」

 「……マジか。いつも同じやつじゃいけないのか?」

 「ダメダメ!さあ、あっちの店行くぞ!」

 

 買い物を二人で楽しんでいると、いつの間にか日が暮れていた。街灯の光が街を満たし始める。上から見ればさぞ良い眺めとなっているだろう。日が暮れてもなお人の絶えない通りではなく、路地を通って宿へ向かう。

 

 「……あの日を思い出すね」

 「そうだな」

 

 有り余る富が更なる富を呼び込み、大きな繁栄を手にしたこの国は決して理想的な国などではない。通りから外れれば、見たくもないようなものを見るハメになるかもしれない。

 

 「この路地の先には、助けを求める誰かがいるかもな」

 「もし居たら助けるの?」

 

 あの時と同じように。

 

 「助けに行くさ」

 「ふーん」

 

 会話は途切れ、あっという間に宿の前まで着いた。

 だが、ネフティスは入ろうとはしない。自然、僕の足も止まり、無言で佇む。

 

 「これから、オレ達より遥かに強い敵と戦うことがあるかもしれない。誰かを護る為に戦いに迫られることがあるかもしれない」

 

 一度言葉を切って、続ける。

 

 「そうなったら、オレはきっと逃げろって言うと思う」

 「そうか。なら、僕は言う通りにした方が良いか?」

 「その時はあんたの判断に任せるさ。……あんたより大事な物はない。だからこそ、逃げてほしいと思うし、自身の意思を一番にして欲しいとも思う」

 

 ネフティスが僕の目を見て言う。

 

 「だから、約束してくれ。中途半端な生き方はしないって。後悔を残すようなことをしないって」

 

 「当たり前だ」

 

 ネフティスの生きるこの世界、彼女は僕とは思いや見えている物が違うのかもしれない。死に対する思いも、きっと僕より重く考えているのだろう。

 そのネフティスが中途半端にするなって言ってるんだ。

 

 「何があっても諦めない。曲げないし、折れない。死んでもだ」

 「約束だよ」

 「ああ」

 

 そう言うとネフティスは宿の中へ、駆け足で入っていく。中にはモルジアナとヴォルの姿が見えた。食事でもとって、僕達を待っていたのだろう。

 宝櫃の取り分の話もしなきゃな、そう思いながら僕も宿の扉を開けた。

 

 Fin




これで終わりです。
本来はもっと続ける予定でしたが、ここで終わりとしました。
読んで下さった皆様、ありがとうございました
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