Fate/Grand Order Episode of Drifters 廃棄漂流戦場関ヶ原 宝知らぬ武者 作:watazakana
一節 intro
藤丸立香は夢を見た。
彼らは追われていた。この地は日本。駆けるは馬と鎧武者。敵は多数、我は少数。絶対的不利の中で、彼らは決死の撤退を決行していた。赤の旗に白丸、その中に白の十字を掲げる武者達の願いは一つだった。
「大将は死んでも逃す。大将さえ故郷に落ちれば、必ず故郷が天下を取る」
故に、彼らは強かった。天下分け目を獲った武将の勝利に泥を塗るくらいには。二世紀半後に天下を奪うくらいには。
彼らの一部が本隊から離れる。これは決して疲労からではない。大将を逃す時間を、命で買おうとしていた。彼らは命が惜しくない。なぜなら、誇り高くあれるからだ。故郷に殿が落ちられれば、必ず死は無駄にはならないからだ。
それはともかく、本隊から分かたれた囮には、赤い武者がいた。彼は日本刀を上段に構え、腰を落とし、左足を限界まで後ろに伸ばし、その傾きと一直線になるように上半身を前傾させる。グッと力を込め、雄叫びと共に突出した。馬の首を騎兵の胴ごと両断する技量、膂力には敵総大将の直属、四天王の一角をも「美事也」と唸らせた。
彼は名乗りをあげる。酷いノイズで聞き取れなかったが、よく通る、猛々しくも爽やかな声だった。
敵の槍足軽は直属を守ろうと密集し、彼に向かって槍で威嚇する。尤も、首級をとることしか考えないいかれを相手するので、威嚇よりも殺すつもりしかないのだが。
彼はその槍に臆しない。窮しない。真っ正面から突撃し、跳び、自ら槍へ────
*
藤丸立香は目が覚めた。
「英霊の夢……」
奇妙なまでにリアルだった。こういった夢は稀によくある。
英霊の夢。英霊が成した偉業、最期、想い、そういったものをマスターは見る。へっぽこ魔術師でも、超一流魔術師でも、サーヴァントのマスターならばそれは変わらない。
しかし、今見る必要はもうないのだ。3000年にわたる人類史を燃料とした魔術王による時間遡行は彼女たちカルデアの「冠位指定」により失敗に終わった。3つの魔術王の残滓と並行世界の夢も綺麗に片付け、現在人類史は正常に時を刻んでいる。
夢に出てきた英霊は恐らく赤い武士だろうということは想像できた。しかし彼は見たことのない英霊だった。勘違いだろうか、ダ・ヴィンチちゃんにでも訊こうかな、そう思いながら伸びをして制服に着替えた瞬間である。
やかましいサイレンがカルデア中に響き渡った。
「え、何⁉︎」
『サーヴァントが一騎突然現れた!霊基グラフにはない未確認サーヴァントだ、赤い和武装の黒髪、今召喚室を蹴破って徘徊中、マシュと藤丸くんは今すぐ管制室に来ること!ああもう修理代だってバカにならないんだぜ⁉︎勘弁してくれ!』
声の主はダ・ヴィンチちゃんだった。しかし、どこかで見たことのある特徴……
と思えば藤丸の部屋のドアが開く。メタリックでオートな自動ドアの立てる音はまさにSF。開いたドアから見える右の桃髪と左のアメジストの瞳は、最近来た海賊のサーヴァントに言わせれば「綺麗すぎて死にそう(全年齢向け婉曲マシマシ要約)」。確かに綺麗だよね。
「先輩、急いでいきましょう!ダ・ヴィンチちゃんとカルデアがピンチです!いろんな意味で!」
彼女はマシュ・キリエライト。元シールダーのデミ・サーヴァントだ。同時に藤丸立香の相棒のような存在であり、「一度焼却された世界を救う旅の、相棒であり主従であり先輩後輩の仲である」という、この世に二つとあり得ぬ関係にある。別に愛し合うなどそういうアレではない。藤丸に恋の花は百合であろうとなかろうと、咲くのはまだ先の話である。
*
カルデア管制室
「来たかい、現在未確認サーヴァントは食堂で信長と喧嘩してるよ。霊基はバーサーカー。召喚室で勝手に起動した術式から出てきた英霊だ。食堂はエミヤくんの仕事場だから、今頃彼が仲裁に入ってるんじゃないかな。彼の魔力が高まっている」
今が冠位指定の只中じゃなくてよかった。今は退去したサーヴァントも多いからまだマシだった。と彼(彼女?)はぼやく。
「食堂に行きましょうか?そのサーヴァントが誰なのか、なぜ来たのか、会えばわかるかもしれません。朝食もまだですし」
「そうだね、私も行きたい」
「じゃあ藤丸くんにお願いしよう。ここにひとり分朝食が残ってるんだ。マシュは話があるから、ここで食べながらでも話そう」
「あ、はい」
マシュはちょっとしょげながらも、すぐに立ち直りダ・ヴィンチと話を始め、藤丸立香は食堂へと向かった。
*
数分前
「何をする島津十字!」
魔力で編まれた10挺の種子島が火を吹く。間違いなく史実より殺傷力の高い代物で食堂はみるも無惨。エミヤは速攻でバーサーカーに伸され、首を取ろうとしたバーサーカーに織田信長が銃撃、バーサーカーは被弾こそすれど尽く急所を外していたというところだ。奥歯を噛む。
「確かにわしの種子島は命中が悪いがあれだけ撃って急所ゼロは無いじゃろ……おう、島津十字!名のある武者じゃな?ワシの知る武者かも知れぬ、名を申せ!」
島津十字、そう呼ばれた赤武者は応える。
「島津!島津◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎」
「え?なんて?」
「島津◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!」
「人語で喋れよ!もう良い、島津の大名あたりか?」
「主ゃ何ぞ、女子がないごて鉄砲持ってこげなようわからん所で傾き者みたいな格好しちょる?おいは女子の首は獲らん。さっさと失せい」
「まあ待て、話くらい聞かんか。お主の目的は何ぞや?なぜあの赤アーチャーの首を狙う?」
「首級。何も分からんなら、走って敵の首級ば獲る。寝てん覚めてんおいはこれ一つぞ。して、あん男は襲ってきよった。敵じゃ。敵なら首級を挙げればよか」
信長は会話不能と判断した。この男はバーサーカーだ。できなくても何ら不思議はないが、これほど自己完結した加害的な狂気がカルデアに何を齎すか、想像に難くない。
「おう、赤いのの弓の方、起きろ。それでも鯖か」
「ぐぇ」
信長は足元に転がるエミヤの白髪を足で小突く。よろめきながらもエミヤは立ち上がった。
「宝具を使え。お主の固有結界でわしらを閉じ込めよ」
「……まあ、そうなるだろうな。詠唱中の防御は頼むぞ」
「応」
I am the bone of my sword.
「おう、なんか妙なこつせんで首置いてけや」
「はぁ?負けてもおらんのに首出す馬鹿がどこにおる?さっさと座に帰れ戯け者」
Steel is my body, and fire is my blood.
信長の牽制射撃に、バーサーカーは距離をとる。
I have created over a thousand blades.
「主ゃさっきからなんぞ、女子のくせに種子島ば大量に出して、えんずか?」
「は?えんず?」
Unknown to Death. Nor known to Life.
「ん?違うんか?」
「わし初めて聞いたわ。なにその痛い名前。エミヤ、ちょっと待った方がいいかもしれん」
Have withstood pain to create many weapons.
しかし、エミヤの詠唱が止まらない。というかあと2節くらいで発動する。
「おい聞け赤いの!待て!」
Yet, those hands will never hold anything.
「待てっつってんじゃろうが話を聴けェ!」
ゴンッ゛。鈍い音がした。エミヤの側頭部を信長が種子島の銃床で全力一撃。筋力Cとはいえどサーヴァントの全力は痛い。エミヤの足元から走る魔力の渦は虚空に発散され、彼は膝をつき、倒れた。
ここで藤丸立香が現場に到着した。現在へと繋がる。
「え、なにこのぐだぐだ現場」
プロフィールを更新しました
サーヴァントステータス
【CLASS】バーサーカー
【真名】不明
【性別】男性
【身長・体重】175cm・65kg
【属性】中庸・狂
【ステータス】
筋力B+ 耐久A 敏捷B++ 魔力E 幸運C+
【クラス別スキル】
狂化:EX
ただ狂い破壊することに特化したバーサーカー特有のスキル。彼は無意識化で自身の意思によるランクの調整に成功しているようだ。
薩摩兵子の矜恃:B
「女首は恥ぞ」という自縄自縛。例え狂い切っていても、女であれば(彼の中で)手加減する。彼による攻撃は女性を殺せない。
【固有スキル】
狂奔:EX
彼には戦さの才能がある。人を戦さへと駆り立てる才能がある。彼の言葉を聴いた者は、みるみる力が湧き、何者をも恐れず、何者にも惑わされず、致命傷を負わない限り、瀕死になっても戦闘可能になる
???
ストーリーの進行で解放
???
ストーリーの進行で解放
【宝具】
???
ストーリーの進行で解放