Fate/Grand Order Episode of Drifters 廃棄漂流戦場関ヶ原 宝知らぬ武者 作:watazakana
与一は宝具ぶっぱしたけども結局戦果なし。自称人でなしの徳川アンド土方歳三チームは仲が最悪に悪くなる。織田信長アンド藤丸立香チームは魔力防御を習得したため戦場を突っ切ることに決定。
これは一方その頃のお話━━━━
「なんじゃああああああああああああ!!!!!!!!!?」
弓ノッブは絶叫した。島津は目が輝いた。
飛行機。戦闘機。腹は白、背は濃緑。翼にあるのは真っ赤な日の丸。尻尾の付け根に二本の横線。その機体の型番はN1K2-J。かつて連合国と名乗った大国からのあだ名は「George21」。大戦末期にある航空隊に集中配備され、空を守ってきた陸上極地戦闘機。名は「紫電改」。これを宝具とし、英霊となりうるはただ一人。
「また鉄砲が来る、逃げろ!」
クラスはライダー、真名を菅野直。
機体は頭を下げて、弓ノッブと突っ込んでいく。両翼にある20mm機関砲の咆哮が上がる直前……
「ぉおおおおおおおぉぉおおおおおおおッッッッッッ!!!!!」
刀が翼に刺さった。それは投擲。島津の短刀が紫電改の主翼に深々とその刃を埋める。
「刺したぁああああああああああ!!!?」
そしてその刺さった位置は運良く機銃砲塔に刺さり、爆発する。紫電改は大きくバランスを崩し、青い粒子となって消えた。そして、落下していく人影が一つ。その人影目掛けて跳んで向かう人影一つ。
「首ぃ、よごぜやあああああああああああッ!」
「ちょっ、待っ……!」
菅野の首に狙いを定め、掲げた刀を一気に振り下ろす。刃は首にスラリと食い込んで……
「あぁ⁉︎マスターが俺の愛機ぶっ壊しやがったのかコノヤロウ!マスターだからってなんでもかんでもして良いと思ったら大間違いだバカヤロウ!」
ない。合掌の形で刀を止めている。真剣白刃取り、まさか島津はそうあるなどと思わなかった。いや、想定こそしたが意表を突かれた。そして何よりマスターという最近になって聴く単語。しかし島津を指しては決して言わない単語に妙に引っ掛かった。それが一瞬の油断になった。
「ウゥおおおおおおおおるァアッ!」
「っ!」
島津の体は刀ごと振り回され、森の中へ投げ落とされた。そこに菅野の飛び蹴りが追撃する。
「島津!」
弓ノッブは己の銃を顕現し、森に向かった。が、
「バカヤロウコノヤロウうるさか!ますたあなぞあん女子で十分ぞ!おいはますたあではなし、他を当たってくいやい!」
「……本当に別人かァ?」
「応。主ゃが何を言っちょるかいっちょんわかりゃせんど」
「んな訳ねえだろバカヤロウコノヤロウ!お前のその島津十字!俺は知ってんだよコノヤロウ!」
「知らぬもんは知らぬ!」
そこでは殴る蹴る突く撃つ斬るの殺し合いではなく、ただの口喧嘩が起きていた。
「信長からも何ぞ言えい!」
「あぁ゛?信長が関ヶ原にいる訳ねえだろ本物のバカヤロウかこのバカヤロウ」
「ところがどっこい居るんだよネ。わしこそ第六天魔王波旬、織田信長じゃもの」
「あぁ゛?信長が女な訳ねえだろバカヤロウ。2人揃って嘘下手バカかコノヤロウ」
「殺す」
「あーハイハイどうどうどうどう島津鎮まれ」
弓ノッブは島津をあやしながらふと気になったことを口にする。
「そういえば……ライダーかの?お主コイツをマスターとか言っておったな?」
「それがどうしたコノヤロウ。アイツは俺のマスターだ」
「いやいや、コイツサーヴァントなんじゃよ。バーサーカーのサーヴァント」
「は?」
「だから人違い。人間だったらひとっ飛びで鉄の鳥と同じ高さまで跳べんし鳥の翼に短刀投げんから。というか霊基とかそういうアレで気づかんかったの?」
沈黙。図星。どうやら気づかなかったようだ。弓ノッブは本物の馬鹿かコイツという目で菅野を見た。
「オラァ」
「ノブァ!反論できないからって殴ってくんな!」
「ふんぬ」
「島津も殴り返すな!なんかヤバイことになってる気がするから!ああもうなんでこんなにぐだぐだなんじゃ!」
*
菅野直は事情を聞いた。
「てことは、俺のマスターは生前のコイツで、コイツはカルデアってとこから来たバーサーカーのサーヴァント、要するに別人ってことかよバカヤロウ」
「そのバカヤロウやめれコノヤロウ」
「島津ちょっと黙っとれ。マスターが島津とはいいことを聞いたのう。わしイイコト思いついた」
「顔がめちゃくちゃ悪いけど大丈夫かこのアーチャー」
「このため息が出るほどカッコ可愛い美少女に何を言うかライダー」
キャラが濃すぎて胃もたれするこのメンツで、最初の悪巧みが始まる。
「ライダー!わしらと手を組まんか?」
「あ?」
「お主のマスターは島津十字とわかっただけ十分じゃ。じゃが、わしは十分以上を獲りに行く!島津は故あってここで死んではならんのだ。どちらにせよな。サーヴァントとはそれだけで十分に強い。じゃが、それが7騎集うのが聖杯戦争。単騎で6騎相手するよりも皆で6騎を相手するのが良かろう。最後に残った者らで争えば、背後から刺されたり、愛機に刀ぶっ刺されたり、島津を直接狙われなくなる」
弓ノッブは得意げに語る。
「つまり条約を結ぶんじゃよ。友好条約をな。期限はキャスターとライダーが残りになるまで。わしらは島津の護衛、ライダーへの不可侵、他サーヴァントとの戦いへの協力。お主らはわしらカルデアへの全面協力、カルデアへの不可侵。これでどうじゃ?」
どうだ、飲むか。吐くか。弓ノッブは見定める。菅野は口元を歪める。
「がっはははははははは!お前、敵になるってのに協力しろって言ってんのか!そんなバカヤロウどこにいるんだよコノヤロウ!」
答えはヒーヒー笑い出すだった。めちゃくちゃ決まったキメ顔が途端に小っ恥ずかしくなっていく。
「あのー。ライダーさーん?」
「あー、俺はいいんだけどよ、まずはマスターと会え。サーヴァントはマスターに従うもんだからよ」
なるほど、口に含んだままか。まあマスターのサーヴァントという自覚があるのは殊勝なことだ。と感心していると、木の上から殺気を感じた。
「応、主ゃら。わいらが大声出すもんじゃけん、敵に囲まれちょっぞ」
視認できる中でも、25は下らない。しかし、所詮は普通の兵士。神秘のない攻撃はサーヴァントには通らない。傷の一つも付いてはくれない。なんとも虚しき奇襲よ。そう弓ノッブは心の内でため息をつき、片手をあげる。
「出でよ種子島」
30挺の火縄銃を顕現させ、全方位に構える。
「撃───」
森に発砲音が響いた。マズルフラッシュは弓ノッブの方から出たのではない。木の上からであった。そこまでは良かった。しかし、ここからが良くなかった。
つう、と弓ノッブの頬に暖かなものが伝う。なんだか耳が熱い。右側頭部から硫黄の焼ける匂いがする。
触れてみると、赤い液体がベットリと手の平にこびりついた。
「ほう」
傷を負った。ただの兵士と思っていたが、これはこれは、神秘を纏った一撃のようだ。なるほど、わしは侮っていた。わしの世にはもう出ぬものと思っておったよ。
火縄銃を手づから握り、サーヴァントでなければ反応できないような速度で標準を定め、撃つ。捨てる。撃つ。捨てる。撃つ。
「魔術弾の類かのう?
それは怒りだった。神仏衆生の天敵である第六天魔王波旬、それが側面としてある織田信長が必ず蔑む、神仏衆生。化生のくせして神仏に名を連ねるおこがましさ。この感情を言葉にするにはそれに見合う単語は存在しないだろう。
織田信長としての在り方がそれを許してはならないものと言うのだ。本人に聞いても、それはなんかむかつくで終わるものだが。
それはさておき、化け物は次から次へと湧いてきた。このまま続けても埒が開かないと、森から出る形で撤退する。そうしてさっきの戦いの中へ戻ると同時に、少女と少女を負うおっさんのコンビが現れた。
「「「あ」」」
くううう難しい。ここから中盤ですぜ