Fate/Grand Order Episode of Drifters 廃棄漂流戦場関ヶ原 宝知らぬ武者   作:watazakana

3 / 13
前回までのあらすじ。

突然なんの脈絡もなく召喚された島津のバーサーカー。彼の召喚と同時に発生した特異点の名は関ヶ原。これは偶然とは思えない。よし、調査しよう!ということで藤丸立香、織田信長、島津のバーサーカーの3人がレイシフトし、聖杯の探索および特異点の解消を試みるのだった。


二節 おっさんズ・キル

藤丸立香達がレイシフトを完了した時を同じくして、関ヶ原のある山中、ガサガサと茂みを分け入る人影がいた。

 

「ここは……間違いねえ、美濃の関ヶ原だ……!てことは夢かぁ……あ〜あ、日本の夢なら夢でもいいから米が食いてぇなあ……」

 

その人影を付け狙う人影も居た。その人影は木の上から音もなく忍び寄り、弓に矢をつがえ、引き絞った。狙うは茂みの人影。

幸い彼は全く気付く素振りもない。大丈夫、落ち着いて、手を離すだけ、さあ、今だ───

 

「応、殺気も臭いも消せてねえぞ。さっきから付け回しやがって、正直言ってキモい」

 

バレていた!木の上の人影と茂みの人影の眼が合う。木の上の人影の弓は手の震えを伝播し、狙いをつけられない。汗が身体中から絞り出されるようにだくだくと滲み出る。

……しかし、しかしだ。構えているのはこちら。眉間を抜けられればそれでいい。上は自分が取っている。妙な動きをした瞬間、射抜いてやる───

そういった思考は、得てして死を招く。戦場では、こういった身の丈に合わぬ勇気を持つものから死んでいく。勇気は油断に他ならない。

静謐が人影ふたつを取り囲んで数秒、先に動いたのは茂みの人影だった。懐から火縄銃を取り出し、木の上の人影向けて発砲。驚くべきはその速度、精度である。

 

「俺の陣地に入ったら、この種子島と黒色火薬(たまぐすり)と俺の兵が相手してやるよ。一人も帰さん。絶対にな」

 

瞬間、茂みの人影の頭上を矢が駆けた。同時に木の上の人影が地に落ちる。その人影は、眉間を違いなく射抜いていた。決して、決して木の上の人影が素人であったわけではない。彼が英霊であったことがこの勝負を決めたのだ。そう、茂みの人影はサーヴァントである。

 

 

「本能寺から異世界に飛んで国盗りしたら、今度は関ヶ原で遭難、か……もうイヤこの巷!」

 

 

お米食べたあああああああいという心からの叫び声がそんな英霊の陣地中を駆け巡った。

 

 

 

 

銃声が響いた。

 

「ほう、単騎で種子島か、いい度胸しとるのう。わしなら絶対やらんがな」

「刀で突貫しちょるかもしれんぞ。殿なら銃で牽制したのちに殺到っす。兵子が少なかならやるぞ」

「それは島津しかやらんわこの蛮族。敵前逃亡しながら味方を盾にして敵中突破するとかなにそれこわい」

 

アーヴァントはサーヴァントで勝手に状況を推測し始めた。藤丸立香は辺りを警戒する。

 

「マスターよ、そんなに警戒するものでもないぞ。種子島の射程よりも遠いし、恐らくはぐれの英霊じゃ。こっちに向かわん辺り、迷子といったところかのう?」

「え?なんでわかるの?」

「種子島は鬨の声、集団で使えばこそ真に意味のあるものぞ。わいらはここにおる。わいらはお前を狙っちょるぞ、ちな」

「そう、種子島は音で存在を主張する。そんなことすれば、増援が来るかもしれない。だが彼奴は撃った。『俺の陣地に入った奴は一人も返さぬ』という宣言よ。それだけ自信のあるという表明じゃな」

「なるほどぉ」

 

だから英霊じゃないかと思ったわけよと締めくくる戦国の英霊の講義に藤丸立香は感嘆した。

 

『さすがはその時代の英雄だ、確かにこの近くの山に広大な範囲で魔力反応がある。信長や島津の推測通り、恐らくはキャスターのサーヴァントが魔術工房を作ったんだ。こうなってはキャスターの絶対有利は……ん?いや待て、拡がっている!?キャスターの陣地が霊脈を無視して拡がっているぞ!』

「「は?」」

 

魔術師が魔術を行使するには魔術回路なる神経のようなものを使うが、魔術をちゃんと使えるかどうかは霊脈にも左右される。基本的に魔術師は魔術工房を作る際、最大限魔術や儀式が行えるように質のいい霊脈の通る霊地の上に作る。聖杯戦争で有名な冬木も、全体的な霊脈の質が良かったので聖杯降霊の土地に選ばれた。

逆を言えば、霊脈の質が良くなければ魔術は行使しがたいのだ。それはキャスターという魔術師のクラスでも覆ることはない。キャスターは魔術師のクラスであり、魔術工房を作り自身の要塞へと場を作り替える陣地作成のクラススキルを持っているが、この霊脈の無視具合は半端ではない。

 

『じわじわとではありますが、キャスターの陣地は先輩たちがいる伊勢街道あたりのすぐ後方、南宮山(なんぐうさん)の中腹を中心に、まるで区画をとるかのように作成されています、これにどのような意図があるのか……』

「決まっちょる。()()()()()

「ほう、なるほどなぁ。()()()()()()()()()

「お(まあ)(ない)を言っちょるんかわかりゃせんど」

「まあそうだよネ」

 

帝都のアレとは、戦線(レッドライン)と呼ばれる陣地である。かつて藤丸立香が迷い込んだ特異点・帝都で行われた聖杯戦争に設けられた特殊ルール。あまたの英霊の中でもそれぞれのクラスにおいて最強を勝ち取った、7騎の英霊に割り当てられた恩恵を授ける陣地。その聖杯戦争は、互いの陣地を奪い合ういわば国盗り合戦だった。

結局、それはキャスターがある願いのために設定したものだったが、今回も似たようなこと──もっと言うなら、帝都のそれよりももっと前の段階の──をやろうとしているのかも知れない。

 

「そいで、()()()()()ちもんが無けりゃ困るんか」

「そうだね、それがないとカルデアからの補給が十分じゃなくなるし」

『困りましたね。この近くにはそこしか安全な霊脈がありません。かといって敵か味方かもわからないキャスターの陣地に入るのは危険すぎます。もう少し妥協して、最低限召喚ができる霊地を探して「うし、行くか」……はい?』

 

マシュの話している途中ずっと準備運動をしていた島津は突然走り出した。

 

「あ!おい待て島津十字!キャスターの陣地内に何も対策せずに行く馬鹿がどこにおるか!マスター、背中に!」

「あ、うん!」

 

藤丸立香は困惑した。島津のバーサーカーは思考が全く読めない。普通に会話できると思ったらスパルタクスのように暴走する。

 

「補給兵站は兵法の要ぞ!拠点無き兵子はただの野伏せりじゃ、それにおいは走ることしか知らぬ!」

「だあああかあああらあああ!!キャスターの陣地をどうにかせん限りはどうにもならんて言うておろうがこの馬鹿島津!」

『悔しいことに、島津の言うとおりだ。このあたり、本当に霊脈の質が悪い。こんな土地がなぜ特異点になれるのかわからないくらいにね。この霊脈は本当に奇跡だ。逃してはいけない。そのうえキャスターの陣地を攻略する手立てはさっき言ったことが理由で今の私たちにはない。今すべきことはキャスターとの接触だ。藤丸クン、頼んだよ』

「はい、了解です」

 

信長も不承不承で了解した。

 

 

 

「マスター、気をつけよ」

「へ?」

『陣地内に入ってから、敵性反応が多数確認されました。恐らく使い魔かと』

「さっきまで島津十字がバッサバッサなぎ倒した後を追っていたから襲ってこんかっただけじゃな」

「そういうことなら……!」

 

藤丸立香の右手が赤く光る。正確には令呪──英霊を縛り付ける三画の絶対命令権──が光り輝く。

 

「ノッブ、戦闘は避けて移動に集中して」

「応、元よりそのつもりよ」

 

聖杯探索は現地の英霊や一緒にレイシフトしてきた英霊の助けを受けて成すものだが、戦闘ばかりはそうはいかない。だから藤丸立香は呼ぶ。カルデアに記録された英霊の『影』を。短時間の顕現ながらもサーヴァント本来の力を持つ影は、幾度となく藤丸立香たちを、カルデアを、人類史を助けてくれた。

 

「───来たれ英霊!」

 

そのサーヴァントは、剣製の弓兵。赤い弓兵。抑止の尖兵。その真名は───

 

「エミヤ!」

投影開始(トレース、オン)

 

短い詠唱で幾本もの剣が投影される。その剣は寸分過たず木の上にて弓を構える使い魔たちに深々と刺さる。すると使い魔共々魔力に還り、霧散した。

 

『敵影、消失速度を発生速度が上回っています!』

『キャスターの完全有利な場所に入ってたらまあそうなるよね。だが霊脈の座標まであと少しだ。キャスターの霊基反応もその近くにある。信長、念のために宝具の準備を』

「承知した。しかしまあ……」

「どうしたの?ノッブ」

「いや、なんでもない」

 

織田信長には、一つの疑念があった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『自身がキャスターだったら』という脳内演算を、織田信長は島津が突っ込んで行って以来ずっとやっていた。その結果は()()()()()。これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なくらいあり得ない。なぜならサーヴァントとは言え『生き物が』布陣を敷くからだ。聖杯によって与えられた知識はあっても、自身の成功を伴ったその信頼は絶対的である。何より使い慣れない誰かの実績は自身の戦術、戦略の相性が合わないとき、最後に見るものは自らに押し込まれる刃だ。どれほどの手口を真似ても、必ず誤差は出るのだ。

しかし、その気持ち悪いほど一致した布陣は、今なら異常に役に立つ。

 

「お、いたいたあの馬鹿島津。マスターよ、霊脈を盗る、その意図は大方見通されておるじゃろ。相手のキャスターはえらく賢しいようじゃの。」

『そこが霊脈の座標だ。キャスターはその近くにいる。何処から何が来るかわからない。気をつけたまえ』

 

気付けば、山の斜面の中で妙に平らな場所に出ていた。

 

「おお、遅かったな」

「お前が速すぎるんじゃよこの蛮族。それからダ・ヴィンチ、何処から何が来るか?その程度、最初から承知しておる。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

魔力で編まれた火縄銃、種子島が信長たちを取り囲む。

 

「じゃが相手が悪かったな。わしをわし如きが倒せると思うな」

 

銃口を外に向け、一斉に発砲した種子島は、取り囲んでいた伏兵を一人残らず撃ち抜いた。

しかし、その直後である。信長の頬が銃弾でわずかに掠め取られた。

クヒヒと、下卑た笑い声が響く。

 

「おぉ、恐いのう。1人の馬鹿がここへ来て、二人の女がふざけたカッコで追って来たと思えば種子島で俺の兵を蹴散らすとは、その馬鹿は別としてお前らえんずか何かか?」

「そん声聞いたことあっど。主ゃ、ノブか?」

「応よ、◾️■。……なんでそんな女ホイホイ連れてんの?」

「知らぬ」

「おう島津十字、そんくらい知っとけや」

「ちょっと待って、島津とキャスターって知り合いなの?」

「応。あいつは織田信長ぞ」

「如何にも。俺は織田前右府信長。第六天魔王とは俺のことよ」

 

一瞬、静寂が訪れる。

 

『な…………っ!』

『ほほう!』

「えっ」

「はぁ⁉︎」

「ん?」

 

多種多様な反応。これには信長(おっさん)も困惑。

 

「え、なんか俺言っちゃいかんこと言った?」

 




イベントPUサーヴァント
織田信長(キャスター)☆5

サーヴァントステータス

【CLASS】キャスター
【真名】織田信長
【性別】男性
【身長・体重】168cm・60kg
【属性】中立・中庸

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷C+ 魔力A+ 幸運A

【クラス別スキル】
陣地作成(将):A
自身に有利なフィールドを築くスキル。この信長の陣地作成は特殊であり、霊脈の有無問わず、侵略するように陣地を築き上げる。他の陣地に対する優越権を有する。
ゲーム内の性能は、「自身のアーツ性能アップ&フィールド内の他のキャスターのアーツアップ無効」

道具作成:D
遠い異世界において黒色火薬を量産したという逸話に基づくスキル。しかし実際に量産できたのはエルフのおかげなのでランクは低い。
ゲーム内の性能は、「自身の弱体成功率アップ」


【固有スキル】
カリスマ:B-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。生前は王として君臨した三者は高レベル。Bランクであれば国を率いるに十分な度量。しかし、彼は謀反に遭い、天下統一は成せなかった。それ故にマイナスが付いている。
ゲーム内での性能は、「味方全体の攻撃力をアップ(3T)」

革新軍略:B+++
戦争における革命、すなわちパラダイムシフトをやってのけた者のスキル。その性質上、星の開拓者にも通じるものがある。人にのみ許されるスキル。Aランクともなれば電撃戦や航空機の主力運用の考案などに匹敵する。
ゲーム内では、「敵全体の防御力を大ダウン(3T)&味方全体のアーツ性能をアップ(3T)&宝具威力を大アップ(1T)」

謀反慣れ:A
謀反されまくった信長ならではのスキル。味方の不意打ちすら敏感に感じ取り、何がなんでも生き残る才能。
ゲーム内では「自身に回避状態を付与(3回、3T)自身にガッツ状態を付与(3T)」

【ゲーム内でのコマンドカード構成】
BBAAQ

【宝具】

火薬の智将魔王
(だいろくてんまおう)

ランク:C
分類:対軍宝具
レンジ:30
最大捕捉:100人〜300人

キャスターである織田信長はサモナー(召喚師)である。500人、自らの配下を召喚し、火縄銃による一斉砲火を敵に浴びせたのち、騎武者と足軽で蹂躙する。イアソン型宝具だが、この召喚には少なくとも召喚対象の同意が要らず、イアソンの宝具よりも使い勝手は良いが、イアソンの方がノッた時の質が良いので、一応差別化はできている。また、役割を果たした配下は消滅する際、残りの魔力を味方に還元する。

ゲーム内ではアーツの全体宝具。一体当たり5ヒット。
「自身の宝具威力アップ(1T)+敵全体に強力な攻撃&味方全体のNPをチャージ(OCで効果アップ。20%から5%ずつ上昇)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。