Fate/Grand Order Episode of Drifters 廃棄漂流戦場関ヶ原 宝知らぬ武者   作:watazakana

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じわり

紫が広げた白紙にじわりじわりと字が浮かぶ。それはまるで新聞のように。
デカデカとした一面の見出しには、

『徳川、織田狩りを始む』

という文字が。
紫は沈黙を守ったまま読み進めていく。

『徳川の編成した狩り備は、織田信長が拠点として構える南宮山中腹に向け進軍。侍大将が先陣を切るも織田の陣地に足を踏み入れた途端に侍大将の足元が爆発した。これを以てカルデア及び織田信長は、戦闘態勢へとついた』

紫はやはり無表情だった。新聞を畳み、次の書類へと取り掛かる。

「次」


5節 逃げるは恥だからぶっ殺す

大爆発が起きた。

 

「うっひょお……やっベーなコレ」

 

キャスノブの目はめちゃくちゃに輝いている。恐らくリボルバーの連射を見たとき位にワクワクしていた。

 

『即席の魔力感知型地雷、大成功だね。いやあ、黒色火薬で爆弾を作るだなんてやったことないし考えた事なかったけど、そこは万能の天才である私の設計のおかげだね!』

「作業したの信長とノッブなんだけどね……」

 

「下手に扱えばみんな吹き飛ぶ」という脅し文句で藤丸立香と島津は当然ながら除外され、火薬の扱いに長けた信長ズに任せた結果がコレである。濛々と立つ黒煙は悲鳴と特有の臭いを乗せて藤丸立香たちの鼻に届く。

 

「まあ、何はともあれじゃ、奇襲なぞ狡い手を使われずに済んだのう」

「応。戦さば始まっど。おいは斬り込みばすっ」

「ならわしはこの馬鹿が死なんように種子島で前線を狩る」

「俺は指示を出す。念話が要るから藤丸を借りるぞ」

 

サクサクと決まる役割。まだ爆発から2分と経っていないのにも関わらず、全員が全員()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう、予定調和のような進み具合だ。

 

「ああ、そうだ」

 

キャスノブは思い出したように声を上げると、手を軽くたたいた。

 

「場は整った。さあ来い、俺の天下を獲りに行くぞ。『火薬の智将魔王(だいろくてんまおう)』」

 

宝具、展開。彼の宝具は召喚術。最大500人の兵を呼ぶ宝具。彼が真名を開放すると同時に一人二人と武士や西洋風な痩せ身の軽装兵士、背の低い重装歩兵が現れる。

 

「げぇっ、宝具!?信長、宝具使うの!?今ぁ!?」

「いいだろ、俺の勝手よ。魔力とやらはたいして使わんしな」

『……どうやら本当のようだ。これはただの召喚魔術だ。人間ではロード級の魔術師が四苦八苦してやっとできる程度だがキャスターのサーヴァントならそこまでの苦労はないだろう。メディアの竜牙兵を少し上回る程度の魔力規模だし、カルデアの支援さえあれば全く気にする必要はないだろう』

 

ダ・ヴィンチちゃんは少し驚いたような声を上げた。本来宝具というものは魔力消費が多いのだ。ランサークラスによくある「持ってる武器そのものが宝具」だったり、一部のサーヴァントにある常時発動型宝具だったりしない限り、強力な代わりに現界中に何発と撃てる代物じゃないことが多い。

 

「まあとにかく、こいつらをうまく使え。信長を騙るならこの位できんとなあ?お前らは中級指揮官(くみがしら)だ。足軽の指揮は任せたぞ」

「いいけどわしは騙ってなどおらんわ」

「応。そいがおいの性に合っちょる」

「じゃあみんな、頼んだよ!」

 

行動、開始━━━

 

 

 

「敵の状況知らせい」

「『騎馬隊なし、長槍組と弓組がそれぞれ見える範囲で80と42。鉄砲組はだいたい75』」

「旗組は?」

「『旗組は見えない』」

「で、あるか。では、攻撃を始めよ」

 

 

 

(攻撃始め、だって)

 

藤丸立香から合図が念話で届く。弓ノッブは口角を上げた。

 

「はい皆の者、放てい」

 

狩り備の頭上から、弓の雨が降る。地雷といい、木の上から放たれる矢といい、完全に狩り備は織田軍のペースに乗せられていた。

 

「次、種子島衆、撃てい」

 

今度は茂みから火縄銃の狙撃。狙撃といっても命中率がお粗末な種子島では茂みの中に隊列を敷いて撃っているのだが、一回の斉射だけでも十分な成果があった。

 

そして━━━━

 

「おぉおおおぉおぉおぉおおおおおおおおおおぉおぉぉぉおお!!!」

 

猿叫。およそ人間の出せる声ではない獣物の雄叫びが木の間を駆け抜ける。

半ばパニックに陥った狩り備の兵士らは声の主を見た。

 

「首、置いてけェ!」

 

声の主は日本刀を上段に構え、腰を落とし、左足を限界まで後ろに伸ばし、その傾きと一直線になるように上半身を前傾させる。グッと力を込め、雄叫びと共に突出した。

声の主は島津。その十字が足軽たちの目に入った途端、皆動揺の色を顔に浮かべた。

 

「なぜ島津がここに⁉︎」

「我らは南宮山にいる怪異の討伐に向かったのではなかったか⁉︎」

 

 

ここは1600年の関ヶ原。石田方の島津が徳川のすぐ近くにいるとあれば、それは大事に発展しかねない。

こんな時でも、組頭は冷静である。

 

「狼狽えるな!あれこそ人の真似事をする妖の類なるぞ、退治して名をあげるべし!」

 

そう声を上げると、混乱していた兵士たちが突然統率の取れる集団となった。流石の器量である。最も、その器量を見せれば、その後に見るのは死なのだが。

 

「首ぃ、首よこせェ!」

「なっ⁉︎速っ……」

 

精神体といえどサーヴァントの規格に収まっている以上、人間がサーヴァントに勝てる道理もなく、目にも止まらぬ速さで組頭の首は一閃。鎧をも両断するその怪力はバーサーカーの名に相応しい。足軽たちの防衛も無意味に、その人間離れした速度を前に、組頭は斃された。

 

 

組頭の首を刎ねた後は、簡単だった。逃げる雑兵は弓ノッブの種子島や地雷で捌き、死屍累々の山を築く。そうした後に、初めて島津に届く斬撃が狩り備から放たれた。

 

「あの戦い方……やはり貴様か、島津!」

「応」

「お前は殺す。絶対に殺す。和平も、恭順も、降伏も、死以外の何も認めない。お前が島津であることが、お前を殺す百万の理由にも勝る。死ね。ただただ死ね」

 

霊体化を解き現れたのは、黒の外套に隊服姿の近代的な男。島津に剥き出しの憎悪をぶつけ、島津は無反応。両者に共通するのは、相手を殺すことしか考えていないこと、それだけだった。

男の周囲を風が取り巻く。その風は刀を持つ人の形を取り、島津へと斬りかかった。島津はそれを刀でいなす。いなしきれない斬撃は避ける。しかし、男の方は近づかせるつもりが無く、状況は男の有利のまま動かない。

 

南宮山の戦いは、今ここに始まった。

 

 

(やばい)

(やばいって何が?)

 

念話で弓ノッブの話を聞いていたが、突然やばいと言い出した。

 

(サーヴァントが出た。しかもアサシンじゃない。多分セイバーじゃな)

「はっ⁉︎」

「?どうした藤丸」

「サーヴァントが出たらしいです……セイバーのサーヴァントが……」

「特徴を聞け特徴を」

「わ…わかった」

 

キャスノブはここでは動じない。もとよりサーヴァントが現れるのはわかっていたこと。彼の作戦にサーヴァントが出ないことはなかった。

 

(特徴は?)

(黒い外套にわしみたいな隊服。それなりに背のある男で、相当入れあげてた女を寝取られた感じの雰囲気出してる。アヴェンジャー適正ありそうなやつじゃよ)

 

そのことをそのままキャスノブに言った藤丸立香。当のキャスノブは「何言ってんだコイツ」とでも言いたげな表情で思考したのち、思い出したと言わんばかりの声をあげた。

 

「あー!()()()()()のアイツかー!」

「ベルリン?」

「違う、ゔぇるりな。アイツはえんずだ」

「エンズって……世界廃滅のために化け物従えてるやつら?」

「そうそいつら。ウヒヒ、であるかー、あのバカに釣られやがったかー」

 

計画通りの大チャーンス!キャスノブは心の中でガッツポーズを決めた。

 

「あの弓兵を退かせい。後は俺の宝具でやってやるよ」

 

 

「おい島津十字!一旦退くぞ!」

「おいは気にせんで退きやんせ。おいは、そこの日の本侍に用がある」

「ハァ⁉︎馬鹿言うなよ馬鹿島……何?マスター、そのキャスターは真ににそう言っておるのか?……で、あるか。ならば是非もなし。ならばキャスターにとことん問い詰めてやる」

 

撤退しようとした弓ノッブは憤懣やる方なしな様子で単騎撤退する。

 

「島津、マスターを悲しませるようなつまらん真似は絶対するな。あやつは普通が似合う人間じゃ。マスターの精神状態は作戦に響く。やったら終いの始まりになろう。お前も、わしもな」

 

そのような言葉を残して。

 

「話は済んだか」

「応。主ゃ律儀なやつだの」

「うるさい。お前の全てを踏みにじって斬り捨てなければ満足などできようものか」

「なら、続きといこうか。そん首、置いてけ」

「島津なぞに誰が渡すか。俺と、俺の『新撰組』が斬ってやる」

 

男の真名は土方歳三。

 

「真名解放。宝具開帳。ここより先は死線と思え。斬り捨てよ。薩奸死すべし」

 

セイバーの霊基を以て現界した、遠い異世界において廃棄物と呼ばれる復讐者である。

 

『新撰組』

 

風が新撰組の剣士の形を取り斬りかかる。島津はそれをそれまでと同じようにいなすも、剣の速さ、重さ、数、全てがそれまでよりも大きく上回る。流石の島津も押されてしまい、腕で十字を作り頭を守る姿勢に入ると、至るところを斬り刻まれる。それでも傷が深くないのは、ひとえに心眼スキルのおかげだろう。

これが真名解放された宝具の威力。最優と謳われるセイバーの、最強の長所の全力活用である。

 

「どうした島津、てめえはその程度か!英霊として現界したにも関わらず、その程度しか力を出せないのか!」

 

憎しみと憤りの声が上がる。だが、それは純然たるそれらではなかった。僅かだが、もっと何か別の━━━

 

「おいは所詮戦餓鬼ぞ。英霊なんぞではなか。おいは人ぞ。突っ走ることしか知らん、ただの戦餓鬼ぞ」

 

瞬間、土方の頬を銃弾が掠めた。

 

「……」

 

新撰組は掻き消えて、土方は銃口が突き出す茂みを睨む。しかし、その一瞬は見逃されなかった。

 

「応、まだ終わっとりゃせんぞ」

「っ⁉︎」

 

島津は一つの瞬きを終えぬうちに土方の懐に入り、刃を彼の首めがけて振り抜く。

が、セイバーである土方も剣技で負けてはいない。音速を超えるかの瀬戸際を行く一閃を刀で受け止め、島津にできた隙を新撰組で突く。しかし、無理な体勢ながらもすんでのところで後ろに下がった島津が負うはかすり傷。

 

「……」

「……」

 

沈黙が訪れた。種子島の狙撃兵は土方歳三を狙っている。島津が離れたからには、何か動きを起こしただけで一斉射撃が土方を襲う。たかが種子島と侮るなかれ。この種子島は弓ノッブの使う種子島を参考にキャスノブが新たにデザインした対英霊火縄銃である。一方島津は血を流しすぎている。地味かつ威力も低いとはいえ宝具をまともに受けて立てる英霊はそうはいない。つまり島津は余裕そうな顔をしていて実は限界なのだ。

両者は、膠着状態に入った。

 

その膠着は、土方が少し驚いた顔をしたところで崩れる。

 

「……了解だ。撤退する」

 

突然土方は霧散した。霊体化による戦線離脱。サーヴァントだからできることだ。

 

「また逃げられた」

 

それだけ言って島津はどさりと仰向けに倒れた。

 

 

徳川は苦笑した。

 

「腐っても英霊、ということかな。人間をどれだけ連れたところで英霊にとっては烏合の衆、あの剣士のような者が複数揃っていなければ織田信長を倒せやしまいよ」

 

徳川は理解の早い男である。故に英霊の有用性を理解していた。土方は徳川唯一の英霊で、他の英霊6騎を手中に収めるは不可能と判断した。故に生かす他ないのだ。何せこれは天下を分ける大戦さでもあり、願いを叶える杯を奪い合う大戦さでもあるからだ。どれも個性が強く、こちらが最善策を組んでもその通りには動かない英霊もいておかしくない。替がないということのなんと不便なことか。

 

「備を再編する。侍大将を剣士の英霊、その他は『新撰組』とする。皆の者、戦さを始めるぞ」

 

関ヶ原の戦いは、ここに開幕しようとしていた。




イベントPUサーヴァント

土方歳三(セイバー) ☆5

サーヴァントステータス

【CLASS】セイバー
【真名】土方歳三
【性別】男性
【身長・体重】176cm・75kg
【属性】秩序・悪

【ステータス】
筋力A 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具C-

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能。Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
ゲーム内では、「自身の弱体耐性をアップ」

騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
セイバーであるという名目で付与されたスキルのため、ランクは低い。
ゲーム内では「自身のQuick性能アップ」

薩奸死すべし:B
その生前から強く恨み、自身が廃棄物となった元凶に対する想いの力。
その実中身は復讐者と同じであり、名前は自己申告。
ゲーム内では「自身の被ダメージ時に獲得するNPアップ&自身を除く味方全体<控え含む>の弱体耐性ダウン」

【固有スキル】

鬼の副長:A
土方歳三の代名詞。新撰組の死因一位の元凶。規律に厳しく、厳格な規律を好んだ超硬派を通り越して超強硬派な彼を体現するスキル。本来ならば面識のあったと記録に残るサーヴァントが新撰組の規律違反もしくは敵になったとき、そのサーヴァントへの攻撃に特効が乗るという代物だが、本来聖杯戦争に現界しないため、何者かにいじくられ、原型を留めないまでに変質した。
ゲーム内では「味方全体のQuick性能を大アップ&攻撃力をアップ(1T)」

戦の玄人・帥の素人:B
己が戦線に立つなら無双の力を発揮し、ともすれば戦況を変えかねないが、指揮する側になると策は読まれ、尽くが裏目にでる、決定された運命のスキル。
ゲーム内では「自身の攻撃力を大アップ(3T)&味方全体の宝具威力強化解除<デメリット>」

廃棄物:C
人類廃滅を謳う、哀れで凄惨な最期を迎えた復讐者のスキル。本来他のスキルになるはずだったが、何者かに改造された。
時代に取り残された男は、戦さ狂いと罵られ、仲間の弾で死に至った。だが人類のことはわりとどうでもいいと思っており、薩長と自分についていかなかった者達がとても憎いだけ。全人類を積極的に滅ぼそうとする廃棄物と比べたらランクは低め。
ゲーム内では「NP獲得量アップ&毎ターンNP獲得状態を付与(3T)」


【ゲーム内でのコマンドカード構成】
BBQQA

【宝具】

新撰組
(しんせんぐみ)

ランク:C-
分類:対人宝具
レンジ:10
最大捕捉:5〜10人/秒

厳密には己が覚えている今は亡き新撰組隊員を「呼びかける」だけの宝具。土方歳三を触媒に、亡霊に呼びかけ、それに応じた者を使役する。ただし、その使役には強制力は無く、本当に忠誠心の強い者のみが土方歳三を味方する。その隊員は空気でできた魔性の類であるが、その斬撃は重く、斬鉄すら可能にする。新撰組で有名な人物は、尽くが呼びかけを拒否しているようだが……

ゲーム内では全体Quick宝具。一体当たり6hit。
「自身に必中を付与(1T)&敵全体に強力な攻撃」
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