Fate/Grand Order Episode of Drifters 廃棄漂流戦場関ヶ原 宝知らぬ武者 作:watazakana
カルデアに突如現れた島津のバーサーカーと今更ながら現れた特異点。特異点を解決するために島津、織田信長、藤丸立香は1600年の関ヶ原へとレイシフトした。その先には異世界のキャスター、織田信長と異世界のセイバー、土方歳三。キャスターの織田信長とは仲間になれたものの、その織田信長が土方のつく徳川勢に喧嘩を売っており、また島津をひどく憎む土方の気性もあって、徳川とカルデアは全面的に対立することとなる。そして迎える戦さの当日、紫電改が飛ぶ関ヶ原で石田に取り入らんとするカルデアはキャスター信長と藤丸立香の2人で西軍後方へと回り込む最中、土方の強襲に遭う。逃げるカルデアに追いつく土方。もはやこれまでと諦めかけたその刹那、アーチャー・那須与一が参戦。彼はいきなり宝具を開帳し、藤丸立香ごと、二騎のサーヴァントを消そうとしていた━━━
「おやぁ?私としたことが、外してはいないようですが、ダメですなぁ。盾の破壊の概念をたたき込んだのですが、無傷で立たれると困ります」
「へっ…これが与一か、えげつねえ」
「多分、この与一は異世界のじゃない」
「俺から見たらガッツリ異世界だけどな」
見ると、信長たちの立つ場所とその後ろ以外が大きくえぐれていた。
与一はため息ひとつ吐いたのち、苦笑を浮かべる。
「二重に張っておられたか。それなら流石に私如きが編み出した概念破盾も厳しい。そしてせいばあ殿は……令呪の転移で避けた気になられたか。どこにおるのかわかりませんが、当てるのは与一の役目にございますれば」
『因果逆転系の宝具か。900年前の英雄、それも知名度が名だたる武将と並ぶ最高クラスだ。おそらく戦闘力は牛若丸以上、単純な宝具の強さなら、セイバーとは桁違いに上をいく』
2人は生唾を飲む。
「いやいや、そこまで持ち上げられても困りますよ。今は弾道調整に忙しいので、貴女がたに弓を向けていられません」
ほら、矢を必中の弾丸とする神仏の加護を得たのに調整は自らしなければならない。こんなに弱小な英霊、どこにいましょう?と、与一は自虐の笑みを浮かべる。
「なんで、私たちよりセイバーを?」
藤丸立香は恐る恐る訊く。
「なぜか、それはせいばあ殿が最優と呼ばれているからです」
「……それだけ?」
「えぇ、現状は最優と呼ばれるせいばあ殿が最も脅威だ。加え彼はてきゃすたあ殿……織田信長公に執心して、いや、させられている。おかげでせいばあ殿を真っ先に仕留められる。もし今仕損じたとあっても、貴女がたがいれば必ずせいばあ殿は貴女がたの目の前に現れるはずだ。故に貴女がたを生かす次第にて候。その命、な捨て奉りそ」
なるほど……とキャスノブは歯噛みした。これは「キャスターなぞいつでも殺せるからまずはセイバーを殺してからだ」というある種の侮り。挑発にも取れるが、彼にはそんなつもりはないようだ。
「主人の元に行かれたか、せいばあ殿もその主人も一掃する良い機会だ。ああお二人、これが終われば次は貴女がたです。今のうちに逃げた方がいいですよ」
「お前逃げても絶対殺すだろ。むしろ逃げられた方が良いと思っておる」
「おや、バレましたか」
「
「聖杯に与えられる知識と生前の知識を以って、ですか……ん?」
与一が突然顔をしかめた。
「どうした?」
「あー、矢が墜されましたね。せいばあ殿、主人に恵まれましたな。まさか神仏の加護を纏いし矢を撃ち落とすとは」
神仏の加護を纏った矢には、相当の神秘が宿っている。与一は知らないが、神秘はそれを上回る神秘に打ち消されるという原則がある以上、矢を撃ち落とすには与一が纏わせた加護以上の神秘が必要になる。それこそ神霊そのもの、もしくは格上の神の加護を纏った一撃だ。
それを知るものだけが動揺した。驚愕した。戦慄した。与一はそんな感情の揺れを気にすることなく続ける。
「さて、私は貴女がたを生かす理由があります。とく行かれよ。大丈夫、背中を射抜いたりしませんよ。これは主人の方針でもあります故」
「……だとよ。俺は信じられんがな」
「……見る限りトリスタンの弓みたいなものじゃ無いみたい。私が礼装で防御するから、ここは逃げよう」
藤丸立香の見立てではあるが、彼の弓に礼装の防御は有効だ。宝具は扇を射抜いたあの逸話と同じだろう。盾の破壊という概念を何かしらの魔力で付与したということは、宝具級にならないとそういうことは起きないのだ。原則、宝具は連発できない。ということは、ああいった防御解除、盾破りはそうそう撃てない。
「……ならば、そうするか」
見立てをダ・ヴィンチちゃんに検証してもった結果、それは真と出た。
「戻るぞ」
「えっ?」
キャスノブは元来た道を走り出した。やがて木々の間に姿を消す。
「……バレておりましたか」
与一は舌打ちをした。念のために平原で仕掛けておいた罠を、一切その素振りすら見せなかったのに、見切られてしまった。
━━━ お前は俺を知らねえだろうが、俺はお前を知っている━━━
その言葉に妙な気を覚えた。確かに織田信長なるもの、聖杯の知識で情報は知っているものの、思考回路の全てを知るわけではない。行動を理解できても、完全な予測はできない。だが、
「……やはり侮れない。天文台も、その天文台と手を組んだ智将も」
情報戦で有利を取ったと言いたいところだが、互いに真名を明かした状態で宝具と(なぜか)思考回路を知られた己が不利だ。が、憂うどころか笑みが浮かぶ。
「……面白い」
今はこちらが不利。しかし不利な中での逆転劇は面白いことこの上なし。己の勝利を確信する者の鼻柱を叩き折ることの愉悦よ、有頂天の者をどん底に突き落とす悦びよ、これらを何と形容しよう。これからの愉悦に昂る感情よ、これを何と言い表そう。
我慢しても堪えられぬ口元の歪みはついに決壊し、谷間には笑い声がこだました。
「兄上たちよ、大明神よ、権現よ、義経様よ!ご照覧あれ、与一はこの戦、見事勝ち抜いて見せます故!」
*
カルデア・キャスノブ陣営・山中帰路
「ねえ!ねえ信長!」
「何ぞ」
ため息の後煩しそうにこっちを見る目。めちゃくちゃ怖い。
「何で引き返すの?目的は西軍に取り入ることでしょ?」
「ああ、それか」
確かに説明せんとわからんよなと信長は訳を語る。
曰く、「那須与一ってのは、俺たちドリフの仲間だ。与一とはそれなりの付き合いだから、与一のやり口くらい知っている。
お前の世界でも、俺の最後にいた世界でも、同じ『織田信長』ならば思考が同じであった。で、あるならば。そっちの与一は俺たちも知る与一とも少なくとも『戦の思考』だけは似てるだろうと踏んだのだ。与一は徹底的に殺る奴だ。ある意味◼️◼️……そういやこの名前聞こえないんだったな、あのバカよりも怖い奴よ。逃げる方向には必ず罠を仕掛けている。ならば来た道を戻るのが一番よ」
「西軍はどうするの」
「戦場を突っ切って迂回する」
それ迂回じゃないんだけど?人生RTAする最適解なんだけど?私死んだら終わりなんだけど?
「突っ切るにもヤケじゃねえ。俺ぁ魔術師の階位で召喚されてるからな。流れ弾程度を防ぐくらいの結界なら張れる」
「なんでそれでいて迂回路取ろうとしたの?」
「うるせー!こちとら魔力防御なんてさっきのが初めてなんだよ!やり方とか知らん以上できるわけねーだろ!」
「あーそうだったね……信長ごめんよー」
かくして、私と信長は戦場へと駆けていくのであった。
*
カルデア管制
「マシュ、さっきの矢を撃ち落とした魔力は、心当たりがあるかい?」
「いえ。この時代、魔術師が神霊の加護を纏うことはほぼありません。神代からあまりにもかけ離れています。神秘も少ないこの関ヶ原で、そんなことがありえるのでしょうか」
「ああ、
「(……魔術師?いや、そもそも極東に居たのは魔術師ではない。修験道、仏道、神道、陰陽道……およそ聖杯戦争とは無縁のものだ。トリスメギストスも言っていたが第一次聖杯戦争自体発生のきっかけは西洋にある。異世界にゆかりのあるものだろうか……だがまだ確定するには情報が足りないから)今語ることはできない」
カルデア管制にいる者は皆ため息をついた。
*
某所
凄まじい光がこちらに降りかかってきた。
「因果逆転の必中の宝具か、英霊は誠に度し難いなあ」
江戸の狸はため息交じりに腕を振るった。その腕は魔力の光を発していて、振るった腕から魔弾が飛んでいく。そして、矢を撃墜。側近からは嘆息の音が出た。
「人が人ならざる力を得て何と為すか。剣兵よ」
「知らん。それを言うならお前だってそうだろう」
「ははは、
からからと徳川はわざとらしく笑った。
「それで、僕は令呪を三画失った。貴重な令呪だ。
土方の額に冷や汗が垂れる。
「君はとうに人間をやめていると彼女から聞いた。敵をなぎ倒す駒だとも。だからこうして僕は君を英霊として雇っている。どうか忘れないでほしいな」
「……分かった」
凄まじいまでの圧が土方を屈させた。決して、彼の雰囲気ではない。魔力の乗った声だ。対魔力を以ってしても通じるその圧力、メデューサの魔眼に匹敵する。
「ならばよろしい。引き続き織田信長の殺害に注力せよ。バーサーカーとは、戦わざるを得ない時のみ戦闘を許可する。ただし、離脱の目処が立ち次第全力で撤退、織田信長殺害に移ること。以上を令呪一画を捧げて命ずる」
「……」
「続けて第五の令呪を以って命ずる。この命に背いた時、その自我を漂白すること」
赤の紋章を構成する二画が弾けた。それは魔力の重石となり、土方歳三という男の霊基にのしかかった。
「よろしく頼むよ、廃棄物」
少し遅れ気味でしたね、今回なかなか難しかったので気分が乗る日が少なかったのです。ご容赦くだされ