『永遠』の目覚め
六枚の翼を広げた、人々の声援と風都の風を受けて奇跡の変身を遂げた戦士の両足が胸元に叩き付けられる。
「これが……ッ! そうか、これが…………」
「そう、それが『死』だ。大道克己」
無限にも等しい希望が詰まった一撃を受けた凄まじい衝撃が全身を走る中、かつて自分が『兄弟』と呼んだ男の声が、今の自分に迫って来ているものの名を告げる。
「久しぶりだな……死ぬのは…………」
常人ならば二度感じる事のない『死』の感覚を感じる彼は、死に対する恐怖を抱く事はなかった。
彼は久しぶりに経験する死を感じながら高笑いをしながら爆発し、使用していた全てのT2ガイアメモリと共に風の都に散ったのだった。
これが、死者蘇生兵士『NEVER』第一号にしてNEVER部隊のリーダー、そして『永遠』の名を冠する戦士だった男、大道克己の最期だった。
――――――だが、それは新たなる戦いの幕開けに過ぎなかった。
草木の臭いが鼻腔をくすぐり、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
視界に入り込んでくる日差しに開きかけた目を細め、片腕で太陽光を遮断する。
(…………? なんで、腕があるんだ…………?)
ごく当たり前に片腕を動かしたが、派手に爆発した以上、腕どころか全身が原型を留めていないはずだ。それがなぜこうして原型を留め、場所も《風都タワー》ではなく、森林に変わっているのだろうか。
一瞬『死後の世界だからか?』と考えはしたが、『そんな事はないか』と頭を振る。
自分がこれまで犯してきた事を考えれば、死後に自分が行くべき場所はこのような日差しが差し込んでいる森林などではなく、悪鬼羅刹が闊歩する地獄だという事くらい、あの二人に敗北する前から考えていた。
とりあえず立ち上がって服の汚れを払い落としてから森林を抜けると、眼下には街が広がっていたが、
(やはり、《風都》ではないか)
その街には、自分が部下達を率いて襲った巨大な風車が特徴的な塔がなかった。
となると、ここはいったいどこなのか、という疑問が浮かんでくる。だが、いくら考えても答えなど一向に出てくるはずもなく、思考を中断した克己は情報収集の為に街へ足を踏み入れるのだった。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、
「――――――『ノイズ』に『特異災害対策機動部』か。また謎が増えたな」
新たな謎だった。
聞いた話によると、『ノイズ』とは人間のみを標的とする、人類を脅かす認定特異災害。通常兵器をものともしないその体に触れた人間は一瞬で炭素の塊と化してしまう、早い話が人類の天敵である。そして、そんなノイズに対抗すべく創設されたのが『特異災害対策機動部』である。
彼らの役割は、ノイズが出現した際にはその近辺にいる人々の避難誘導やノイズの進路変更を行い、時間経過でノイズが自発的に消滅した後は被害状況の処理といったものであるが、通常兵器しか投入できない以上、それが効かないノイズに対する決定打がないのが現状らしい。
いかに死人であるNEVERといえども、その体は人間のもの。一度触れられれば例に漏れずに炭素となってしまうだろう。現状、ノイズが出現した際の対処法は、『ノイズが消えるまでの間、シェルターに隠れてやり過ごす。それができないのであればひたすら逃げる』しかない。
だが、もし……、『もし』の話であれば、
「こいつが使えるかもしれないな」
手元にあるガイアメモリを見て、克己はそう零した。
あの時、自分が敗北したと同時に砕け散ったはずの『永遠』の記憶を内包したガイアメモリと、それを差し込むロストドライバー。それらが今、自分にはある。
なぜそれらが手元にあるのかという謎もあるが、いい加減わからない事に悩むのは飽きた。
エターナルメモリの能力は主にT2以前のガイアメモリの機能停止だが、ドーパントが相手ではない以上、期待はできない。だが変身には使えるし、あの姿になればノイズに対抗する事も出来るだろう。
「ん?」
丁度エターナルメモリを懐にしまった頃、足元になにかが当たる感覚が走った。足元に視線を落とすと、そこにはサッカーボールが転がっていた。そして視線を上げれば、目の前にはサッカーボールと自分を見つめる少年の姿が。
「これはお前のか?」
サッカーボールを手に取って尋ねる克己に、こくりと頷く少年。「そうか」と答えてサッカーボールを渡すと、少年は感謝の言葉を述べてから遠巻きにこちらを見ていた少年達の元へ戻り、サッカーを再開した。
(あの二人は、こういった世界を護っていたのか)
楽しげにサッカーとしている彼らをなんとなく見つめていた克己の脳裏に、あの《風都タワー》で戦った二人が浮かぶ。
二人で一人の仮面ライダーとして自分と死闘を繰り広げた彼らは、こういった幸せに満ち溢れた世界を護っていたのだ。それに対して自分は、いったいなにをしていたのだろうか。そう思った瞬間、克己の脳裏に『あの日』の光景が思い浮かんできた。
巨大な箱庭から脱出し、自由を手に入れられるはずだった者達が死んだ日。「せめて」と救おうとした命さえ、この手から零れ落ちたあの日。
きっと、あの日からだろう。自分が根本から『死神』に成り果てたのは。
――――――だが、もしもあの時、彼らを救う事ができていたのなら。自分はきっと、なれていたのかもしれない。本当の意味での…………
「に、逃げろッ! ノイズだッッ!!」
「……ッ!?」
突然の悲鳴に顔を上げると、先程までの幸せな世界から一転して、恐怖に染め上げられた世界が広がっていた。
逃げ惑う人々の奥には、明らかに人間とは思えない外見を持つ異形の『なにか』がいた。その『なにか』に触れられた人間があっという間に炭素の塊となって消滅する様子が見え、その『なにか』がノイズであると瞬時に理解した克己が早速懐から取り出したロストドライバーを腰に着けようとした、その時だった。
どこからともかくバイクのエンジン音が轟き、反射的にその音がした方へ視線を向ける。
蒼い髪を靡かせてバイクを運転するその少女が凄まじい速度でノイズの集団へと向かっていくのが見え、克己は思わず目を見開いた。
丸腰の状態でノイズの集団に突っ込んでいくなど自殺行為に等しい行いであり、聞こえる事はなくても自然と彼女を止めようとした瞬間、
「――――――Imyuteus amenohabakiri tron」
美しい声が克己の耳朶を震わせると同時に、蒼髪の少女を眩い光が包み込む。少女を包んだ輝きを乗せたバイクがノイズの群れに突っ込み、その奥にあった障害物にぶつかったのか、爆発音と共に黒煙が立ち昇る。
そして、その黒煙を周囲のノイズごと切り裂き、一人の戦姫が現れる。
「――――――ッ!」
美しい声色で歌を歌いながらノイズとの戦闘を始める少女を呆然と見ていた克己だったが、彼女とノイズ達がいる場所からは別の場所からやって来たノイズが見え、その標的にされていたのは、先程サッカーを楽しんでいた少年達と、彼らの家族だと思われる男女だった。
大人達は我が子達を抱えて走っているが、子どもとはいえそれなりの重量を持つ人間を抱えながら逃げるのは困難であり、あと少しもしない内に追いつかれてしまうだろう。
「いけない……ッ! ぐ……ッ!?」
手にした剣でノイズ達を斬り捨てていた少女も彼らの存在に気付いて助けに行こうとするも、彼女を襲うノイズの数が多くとても間に合いそうにない。
遂にスタミナが切れてしまったのか、彼らの動きがどんどん遅くなっていく。それに比例して彼らとノイズ達の距離が狭まっていき、蒼髪の少女も悔しげに歯噛みしかけたその時、
――――――彼らに迫るノイズの前に、彼は立っていた。
「お、おじさん…………?」
先程サッカーボールを渡した少年やその友人、家族達が見つめる中、克己は振り返る事なく告げる。
「死にたくなかったら、そこを動くな」
脅すように吐き出されたその言葉に思わず身を強張らせた彼らの前で、克己は懐から取り出したロストドライバーを腰に着ける。ロストドライバーから伸びたベルトが自動的に克己の腰に巻き付いたのを確認してから、克己は続いて懐からエターナルメモリを取り出した。
『エターナル!』
――――――なぜ、自分は死なずにここにいるのか。
――――――なぜ、失われたはずの力があるのか。
――――――なぜ、自分は彼らの前に立つのか。
その答えは、今はまだわからない。でも、
「変身ッ!」
エターナルメモリを差し込んだスロットを倒すと、『エターナル!』と再び音声が流れ、彼の全身を白を基調とした鎧が覆い、その上に漆黒のマントが被さる。
変身が完了すると同時に発生した青白い波動が周囲を囲うノイズ達を吹き飛ばした。
「な、なんだ、あれは……ッ!?」
迫り来るノイズ達を切り裂きながらも驚愕する少女と、背後にいる大人達に抱えられた少年達のキラキラとした視線を受けながら、その戦士は目の前のノイズに向けて立てた親指を下に向ける。
「さぁ、地獄を楽しみなッ!」
仮面ライダーエターナル、カッコいいですよね。自分、マントとか羽織ってるキャラクターが結構好きでして、初めてエターナルを見た時は「なにこれッ!? メッチャカッコいいッ!」ってなりましたよ。
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