死神に鎮魂歌を   作:seven74

11 / 77
それぞれのすべき事

 郊外の屋敷にて、少女の絶叫が響き渡る。

 

 

「まったく…………貴女に期待した私が馬鹿だったのかしら? 百歩譲ってもメモリの回収を失敗したのは許してあげるけど、まさか『融合症例』の回収も失敗するなんて」

「あ…………ぅ…………ッ!」

 

 

 装置に拘束されて項垂れている銀髪の少女を冷ややかに見つめるのは金髪の女性。一糸纏わぬ裸体でいるのに、それを全く恥に思っていないように振る舞う彼女は、項垂れた少女の顔を掴んで自分と視線を合わせる。

 

 

「ネフシュタンの鎧を使っておきながら、なんの成果も無しに帰ってくるなんて、流石にこの私も驚いたわよ。どうして手ぶらで帰ってこれたのか教えてくれる? クリス」

「…………あたしが、相手を舐めていたからだ…………」

 

 

 掠れた声で、昨夜克己達の前に現れた、ネフシュタンの鎧を纏っていた少女――――――雪音クリスは昨日の出来事を思い返す。

 

 自分が相手にした風鳴翼の纏うシンフォギア、天羽々斬と、自分が纏うネフシュタンの鎧のスペックはこちらの方が上だった。だが、相手は自分の命を顧みる事なく、装者にとっての禁断の攻撃手段である絶唱を解き放ち、自分達を撤退するまでに至らせた。

 

 絶唱の絶大な威力に傷ついた彼女の体を、驚異的な再生能力を備えたネフシュタンの鎧が浸食しようとしてきたため、すぐに鎧を脱ぐ羽目になったが、それさえなければ、自分達の任務は果たせていたはずだ。

 

 

「その舐めた結果がこれよ。次は徹底的に役目をこなしなさい」

「…………なぁ、フィーネ」

 

 

 クリスの目が、金髪の女性――――――フィーネに向けられる。

 

 

「これで…………いいんだよな…………? お前に従ってれば、あたしはあたしの目的を果たせるんだよな…………?」

「…………えぇ、その通りよ。貴女が私の言う通り動いてくれれば、貴女の目的も自ずと完遂されるわ。だから、貴女は黙って私の言う事を聞いていればいいのよ」

「が…………あああああああああああッ!!!」

 

 

 レバーを下ろした事で発生した電流がクリスの体内で暴れ回る。

 

 

「覚えておきなさい、クリス。人を繋ぐのは『痛み』よ。絆なんかで人は繋がれない。そんなもので出来た繋がりは容易く切れてしまう」

「ぐ…………うぅ…………ッ!」

「さて…………」

 

 

 フィーネの視線がクリスから、離れた場所で彼女達の会話を聞いていた二人組に声をかける。

 

 

「貴方達もこの子と同じ罰を受けてもらおうかしら? 昨日の失態はこの子だけのものじゃないし」

「ケッ! 相変わらず胸糞悪ぃ女だぜ。お前もそう思うだろ、賢? …………賢?」

「…………フィーネ」

 

 

 剛三の言葉を無視した賢がフィーネに詰め寄る。扇情的かつグラマラスな肉体を持つ彼女に決して情欲を抱く事なく詰め寄ってきた彼を、フィーネは臆する事無く見上げる。

 

 フィーネの視線の先にあった賢の表情は、燃え盛る憤怒に彩られていた。

 

 

「今すぐクリスを解放しろ。あんなのは見ていられない」

「あら? あれは私と彼女なりのスキンシップよ。ぽっと出の貴方に指図される筋合いは無いわ」

「ふざけるな…………ッ! クリスはまだ子どもだぞッ! それなのにあんな…………ッ!」

 

 

 項垂れる少女の姿が見るに堪えず、固く握り締めた拳から血が垂れてきている事にすら気付かないまま賢はクリスの元へ向かい、彼女を拘束している枷を外す。

 

 

「賢…………」

 

 

 電流で痺れた体では立てず、生まれたての小鹿のように崩れ落ちるクリスを支えて立たせる仲間を剛三が見つめていると、フィーネが溜息を吐いた。

 

 

「シラケるわね。…………いいわ、今日はもう食事にしましょう」

「…………」

「賢…………」

 

 

 既に料理が並べられたテーブルに向かっていくフィーネの背中を睨む賢の手の力が微かに強まるのを感じ、クリスは自然と彼の手に自分の手を重ねていた。

 

 

 

 

「――――――大道の…………母親…………?」

 

 

 翼が自分の目の前に浮かぶ女性――――――大道マリアを見つめると、彼女は目を伏せて首を振った。

 

 

「母親…………って言いはしたけど、実を言うと、私は母親失格なのよ。息子に対して、倫理に反する事をしてしまったわ」

「大道を…………NEVERに変えた事ですか?」

「知ってるのね。自分の秘密を明かす程、克己は貴女を信用してるのかしら?」

「信用、ではありませんね。大道が私に自身の過去を語ったのは、私が間違った道を歩もうとしたからです」

「間違った道?」

 

 

 首を傾げた奏とマリアに、翼はなぜ克己が自分に己の秘密を明かしたのかを説明した。

 

 

「…………私がいなくなってから、無理させちゃったみたいだな…………。ごめん、翼…………」

 

 

 説明を受けて申し訳ない気分になった奏が頭を下げると、翼は慌てて彼女の頭を上げさせる。

 

 

「奏は悪くなんかないよ。全ては私の責任なんだから…………」

「克己は、貴女に自分達と同じ道を歩んでほしくなかったのね。私の知っている克己はもう心が死んでいたけど、貴女達と同じ時間を過ごした事で、克己の心にも変化が起こったのかしら」

「大道のおかげで、私は忘れてはいけない記憶を思い出す事が出来た。彼には、本当に感謝している」

 

 

 翼の口から克己への感謝の言葉が出てきた事にマリアは驚き、そして喜びに目元を拭った。

 

 

「あぁ…………克己が、誰かに感謝されるなんて…………」

「おいおい、泣くなよマリアさん。さ、さっさと渡すもん渡しちゃおうぜ」

「えぇ、そうね…………」

「渡すもの…………?」

 

 

 首を傾げた翼に、マリアは白衣のポケットから二本のメモリを取り出す。

 

 一本は『C』と書かれたメモリに、なにも書かれていない真っ白なメモリ。それらを受け取った翼に、マリアは言う。

 

 

「それらは、貴女の新たな力。貴女の背を後押ししようとする、地球(ほし)の意思。行きなさい、風鳴翼。貴女はまだ、こっち(・ ・ ・)に来ていい人間じゃない」

 

 

 その言葉と共に、翼の体が引き寄せられるように上昇していく。上昇するにつれて徐々に姿が小さくなっていく二人に手を伸ばす。

 

 

「奏ッ!」

 

 

 翼の叫びに顔を上げた奏は、翼が彼女の生前によく見た、太陽のような笑顔を浮かべていた。

 

 

「翼、無理に気を張りすぎるなよ。いつも思ってたけど、お前は少し押しただけで折れちまいそうだからな。少しは柔らかくなるのもいいんじゃないか?」

 

 

 別れを哀しむように顔を伏せるが、それも一瞬の事ですぐに顔を上げる。

 

 

「私はもう無理だけど、翼はまだ、みんなに歌を歌う事が出来る。戦う事ばかり優先していた(おまえ)は、もう終わりにしようぜ?」

 

 

 手を伸ばし続ける翼に、奏は大きく手を振る。

 

 

「笑えよ、翼。そっちにはお前のファンが、お前の歌を待っているはずだろ? みんなの前で泣き顔を晒すのか?」

 

 

 翼から見て徐々に小さくなっていく奏は、彼女に絶えず言葉を送り続ける。

 

 

「歌うんだ。翼。『戦い』の為じゃなく、『笑顔』の為の歌を。それこそが、風鳴翼(おまえ)が本当に歌うべき歌だ」

 

 

 最後に奏は、翼に向けた握り拳を、自分の胸に押し当てる。

 

 

「自分に正直になれ、翼。そして、いつか聴かせてくれよ。正直になった、噓偽りの無い、ありのままのお前の歌を。…………頑張れ、翼ッ! 私はいつも、お前の心の中にいるからなッ!」

 

 

 その言葉を最後に、翼の視界は真っ白な光に包まれ――――――

 

 

「…………ッ!!」

 

 

 翼は、病室で目を覚ました。

 

 

(今のは、夢…………? それとも…………?)

 

 

 先程まで自分が見ていたものがなんだったのかを考えていると、両手にそれぞれなにかが握られている感覚を覚える。痛む体を起こして見てみると、そこには克己が使っているエターナルメモリと、彼の母親から受け取った二本のメモリが握られていた。

 

 

 

 

 ――――――翼が目覚めた頃、二課のシミュレーションルームでは響が修行に励んでいた。

 

 数日前に弦十郎に弟子入りした響は、弦十郎と共に様々な映画を鑑賞し、その都度その映画の出演者達の戦い方を参考に弦十郎の監督の下、己を鍛錬し続けてきた。

 

 そして今日、対人戦のスペシャリストである克己達を呼んで模擬戦を行う事になり、今は京水と模擬戦をしていた。

 

 

「このッ!」

「く〜ね〜くね〜くねくね〜〜♪ く〜ねくね〜くねくね〜〜♪ 効かないわよッ! ぬ〜るぬる〜ぬるぬる〜♪ 来なさ〜い!」

 

 

 何度も突き出される拳を言葉以上に体をくねくね動かして躱していく京水のカウンターの衝撃を利用して彼から距離を取った響が構えを取る。

 

 

「師匠ッ! この人海藻みたいにぬるぬる動いてきも…………攻撃が当たりませんッ!」

 

 

 いくら攻撃を繰り出しても当たらない事に苛立ちを感じつつ弦十郎に叫ぶと、京水が彼女の言葉に聞き捨てられない単語が紛れていたのに気付いて叫ぶ。

 

 

「貴女今なんて言おうとした? 『気持ち悪い』って言おうとしたわねッ!? でも途中で言い換えてくれたから許してあげるわッ!」

「手当たり次第に攻撃しても躱されるだけだ。だが、いくらぬるぬる動くといっても、全ての攻撃を回避出来るというわけではない。稲妻を喰らい、雷を握り潰すように打つべしッ!」

「最後の言葉の意味がわかりませんッ! でも、やってみますッ!」

 

 

 拳を握り直した響がパンチやキックで上手く京水の体を誘導して彼に一発でも攻撃を命中させようとするが、彼女の行動を数手先まで読んでいる京水には全く通用せず、遂に京水が攻勢に出た。

 

 

「甘いわよッ!!」

 

 

 紙一重で響の攻撃を回避した京水に鳩尾を殴られた響が殴り飛ばされる。

 

 

「あッ! やっちゃったッ! 響ちゃん、大丈夫ッ!?」

「だ、大丈夫…………です…………。それと、参りました…………」

 

 

 模擬戦であるため手加減をされているとはいえ、殴り飛ばしてしまった事に罪悪感を感じた京水に笑って返す響に改めて彼女が大丈夫かを確認してから京水は彼女に手を差し伸べた。

 

 

「ワタシに勝とうなんて百年早いわよ。でも、ボスのアドバイスを受けてからの戦い方は凄かったわ。これまでやった事無かっただろうに、すぐにそれを物にし始めた。貴女、戦闘センスずば抜けているわね」

「あ、ありがとうございます…………」

 

 

 京水の手を借りて立ち上がった響が軽く体を動かし、それほど動きに支障が無い事を確認していると、レイカが彼女の体を突き始める。

 

 

「貴女、子どもなのに凄い頑丈なのね。手加減しているとはいえ、京水の一撃を喰らってもピンピンしてるなんて」

「攻撃を受ける瞬間に体を後ろに逸らしたんです。直撃は避けられなくても、それで少しはダメージを軽減できるので」

「あの一瞬でか? 凄まじい反射神経だ。いったいどうやってこの短期間に?」

「師匠が見せてくれた映画で学びました!」

「映画…………本当に観るだけで強くなるの…………?」

「興味あるか、レイカ君。だったら今すぐ…………」

「遠慮しておくわ。私はこのままでいいし」

 

 

 キラキラと目を輝かせ始めた弦十郎の誘いをレイカが断ると、弦十郎は少し残念そうに肩を竦めたが、すぐにある考えを思いつく。

 

 

「克己君、京水君、レイカ君。良ければ俺と戦ってくれないか?」

「俺達に? 響の相手をするならわかるが、なぜボスの相手を?」

「さっきの模擬戦では京水君が手加減していたが、実戦で相手に手加減される事はまず無い。俺が相手なら君達も本気で来れるだろうと思ってな。響君も軽く殺気を感じ取れるようになってる事だから、本気の殺気の籠った攻撃を俺に浴びせてくれ。一応言っておくが、変身は無しだ」

「あら、それは少し意外ね。ボスなら変身した私達も軽くいなせるんじゃないの?」

「それは買い被り過ぎだ。俺とてまだ死にたくはないからな」

「またまたご謙遜を。じゃあ、始めましょうか」

 

 

 部屋の端に向かう響と入れ替わりに歩いてきた弦十郎の前に、克己達三人が揃う。

 

 

「よく見ておきたまえ、響君。今から彼らが、本当の『殺気の籠った攻撃』を見せてくれるぞ」

「は、はいッ!」

 

 

 構えを取る弦十郎に対し、克己達も構えを取る。

 

 

「胸を借りるぞ、ボス」

「弦十郎ちゃんの力、ワタシ達に見せてもらうわよッ!」

「手加減無しで、殺す気で行くわ」

「あぁ、かかってこいッ!!」

 

 

 三方向に分かれた三人に、弦十郎は拳を握った。

 

 

 

 ――――――数時間後、司令室には頭を抱えている三人の姿があった。

 

 

「ねじ伏せられた、わね…………」

「前から強いとは思ってたけど、あんなの『強すぎる』なんて言葉で言い表せないわよ…………」

「流石だな、ボス…………」

「なに、君達も凄かったぞ。響君も、その後の戦い方は実によかったぞ」

 

 

 弦十郎があおいから受け取ったスポーツドリンクを飲んでいた響に視線を向けると、響は少し疲れた顔で苦笑した。

 

 

「私なんてまだまだですよ。克己先生達の殺気に体が竦んじゃいましたもん。でも、めげませんッ! 絶対に克服してみせますッ!」

「頼んだぞ、未来のチャンピオンッ!」

「はいッ!」

 

 

 弦十郎に励まされた響が拳を握って頷く様子に、京水は少し目を伏せる。

 

 

「それにしても、哀しいわね。こんな子どもがノイズと戦わなきゃならないなんて。出来る事ならワタシ達大人が対処すべきなのに…………」

「確かにその通りだが、そうは問屋が卸さないのが世の常だ。外国に協力を要請しようにも、相手が対価としてシンフォギアについての情報を提示しろだの、日本政府が研究している聖遺物のデータ、またはそのものを渡せだのを要求してきそうだ。現にアメリカはハッキングを仕掛けてきている。是が非でもシンフォギア、聖遺物についての情報を手に入れたいんだろうな」

 

 

 ノイズの脅威が無ければ、響も普通に勉強したり友達との楽しい時間を過ごしていたはずだ。だが、現段階でメモリの力を自在に操れる自分達以外にノイズに真っ向から対抗できる武器がシンフォギアしか無い以上、それを纏う事が出来る翼や響にはどうしてもノイズと戦ってもらわなければならない。この戦いに参加するか否かの判断は当人達に委ね、彼女達はノイズと戦う道を選んだが、京水はそんな彼女達を憂いていたのだ。

 

 

「子どもは自由に遊んで、笑って、泣いて、成長していくべきなのよ。それをこんな、一歩間違えれば死んでしまう戦いに投じなきゃいけないなんてね…………」

「それは傲慢ってものよ、京水。これは響が決めた事。私達がとやかく言う事は出来ないわ」

「えぇ、そうよね…………」

 

 

 そんな彼らの会話を聞いていた響はスポーツドリンクの入ったペットボトルの蓋を閉めて彼らの前に立つ。

 

 

「あの、ありがとうございます。私達の事、心配してくれて」

「いいのよ。レイカも言ったけど、これは貴女達が決めた事。ワタシの言った事はただの傲慢から来るもの。ごめんなさいね、貴女達は覚悟を固めて戦うって決めたのに」

「いえ。私は護りたいだけなんです。この何気ない日常を。みんなが笑って暮らせる、当たり前だけど、とても大切な日々を…………」

「…………ホント、貴女ってば男前ね。いいわ、そこまで言うんだもの。ワタシは絶対に貴女達を護るわ。克己ちゃんとレイカもそうでしょ?」

 

 

 頷いた二人に「ありがとうございます」と響が頭を下げると、この場にいるであろう人物がいない事に気付く。

 

 

「あれ? そういえば、了子さんは?」

「了子なら政府のお偉いさんに呼び出されてな。本部の安全性、および防衛システムについての説明義務を果たしに行っている。もうすぐ戻る頃だと思うんだが…………」

「し、司令ッ! 緊急通信ですッ!」

 

 

 弦十郎の言葉を遮って報告された内容。それは、了子が会う予定だった人物、広木防衛大臣が殺害されたというものだった。

 

 

 

 

「――――――た~いへん長らくお待たせしました~。なに? そんなに寂しくさせちゃった?」

 

 

 幸いにも、了子は通信機が壊れていたので通信を取れなかっただけだったらしく、大事には至らなかった事に一同はホッと胸を撫で下ろしたが、事態が急変している事に間違いは無かった。

 

 《私立リディアン音楽院》、厳密にはその地下に存在する二課を中心にして頻発しているノイズ発生の事例から、日本政府はこれをアビスに保管されている完全聖遺物デュランダルの強奪目的の下に行われているものと決定。場所が割れてしまっているため、これ以上デュランダルはアビスに保管する事は出来ない。そこで政府は、二課にある命を下した。

 

 

「永田町最深部の特別電算室。通称『記憶の遺跡』。そこを新たな保管場所として、デュランダルをそこへ運搬する…………というのが、今回我々に与えられた任務だ」

「場所がバレてるから仕方ないとは思うけど、それでもここ以上に安全な場所なんて無いんじゃないかしら?」

 

 

 異端にして先端技術の結晶体であるとも言える二課本部なら、たとえ襲撃されても迎撃は充分可能だと考えられるが、弦十郎はその考えを首を振って却下する。

 

 

「なにを言ったとしても、所詮俺達は木っ端役人。お上の意向には逆らえないさ…………」

「移送日時は明朝0500。詳細はこの機密資料に記載されています。みんな、開始までに目を通しておいてね~」

「いいか、あまり時間は無いぞッ! 各自持ち場へついて準備を進めるんだ」

「響ちゃん達は予定時刻まで休んでおいて。貴女達の仕事はそれからよ」

「わかりましたッ!」

「「「了解ッ!」」」

 

 

 各自が果たすべき準備を進めていく間に、時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 ――――――そして、作戦実行当日。二課では最終ミーティングが行われていた。

 

 今回の任務はデュランダルを強奪しようとしている相手を攪乱する為、デュランダルを乗せた護送車と、それを護る護衛車を四台用意し、記憶の遺跡に一直線に向かうというものだ。これには永田町へ向かう必要があるため橋を使うが、既に広木防衛大臣殺害班を検挙するという名目で検問を配備している。つまり、一般人に被害を及ぼす事無く運搬任務が行えるのだ。

 

 これぞ、了子考案の運搬作戦、名付けて『天下の往来独り占め作戦』である。

 

 

「道中ノイズやネフシュタンの鎧の少女、そして二体のドーパントによる妨害が予想される。その際は君達を頼らせてもらう」

 

 

 常人では太刀打ち出来ない力を備えた相手には、こちらもそれと同じ相手で対抗すべし。響達には彼女達が出現した際の相手を務める事となっている。

 

 

「それと克己君。作戦実行に当たり、君にはこれを」

 

 

 弦十郎の合図に従ってモニターに表示されたのは、白を基調とした車体に蒼炎のグラデーションが施されたバイク。ヘッドライトは仮面ライダーエターナルの複眼、その上部の装飾はEを横倒しにしたようなものになっている。

 

 

「『マシンエターナル』。君の許可を得て了子君達が設計した、大道克己および仮面ライダーエターナル専用バイクだ。時速は600km。君のベルトを基にハンドル部分にはマキシマムスロットを取り付けており、これを使用してのマキシマムドライブの負荷はこのバイクが肩代わりしてくれる」

「前から依頼はしていたが、まさか、こんなに早く完成するとはな」

 

 

 翼を初めて叱ったあの夜、二課に帰った頃に了子が『克己専用のバイクを作る』と言い出し、克己はそれを承諾したのだ。克己は彼女と初めて会った時から彼女に警戒心を抱いており、今バイクが完成したという話を聞いた時も、準備に時間の大半を費やす事になってしまう状況を狙ったのではないかという考えもある。

 

 全てのメモリを支配する力を持つエターナルに変身していれば他メモリのマキシマムドライブを使用しても負荷はかからず、もしかかったとしても、そこはNEVERの肉体。死にそうなものだとしても、痛みには慣れている。むしろ、『自分は生きている』と錯覚出来て嬉しいぐらいだ。

 

 だが、この雰囲気の中で受け取り拒否なんて到底出来るものではなく、弦十郎も自分がバイクを使う事を視野に入れて配置を考えている事だろう。

 

 相手の思惑に乗せられているという事には些か、いやかなり不快感を感じるが、状況が状況なだけに、克己は全く悪感情を感じさせる事無く弦十郎からカギを受け取った。

 

 ちなみにエターナルメモリについては既に緒川を介して翼から返してもらっている。その時、克己は緒川からエターナルメモリ以外にもT2サイクロンメモリとイニシャルがなにも書かれていないメモリを受け取ったが、自分が渡した覚えの無いメモリを翼が持っている事にはなにか意味があるはずだと考え、翼に返しておくようにと緒川に伝えている。

 

 

「配置についてだが、響君と京水君は了子君の運転する護送車に乗り、克己君とレイカ君は四台の護衛車と共に護送車の護衛だ。俺はヘリで上空から異変が無いかを確認する。他のメンバーはここで異常が無いかを探ってくれ」

 

 

 司令室にいる者達からの了承の声に頷いた弦十郎は拳を高く突き上げる。

 

 

「さぁ、ミッション開始だッ!!」

 

 

 ここに、天下の往来独り占め作戦は決行されるのだった。

 




 
 マシンエターナル…………安直過ぎましたかね? 私個人としてはハードボイルダーのような名前にしたかったのですが、どうしても思いつかず…………。

 次回もよろしくお願いしますッ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。