(暴走するデュランダルの力。なにもかも全部を壊したくなる、あの強烈な衝動…………)
突き出した拳でサンドバッグを揺らす中、響は先日の出来事を思い返す。
デュランダルを手に取った瞬間から記憶は無かったが、その後の自分がなにをしたのかは、本部に帰った後に弦十郎達からモニターで見せてもらっている。その時の自分は完全に理性を失って、ただ身も心も呑み込んだ破壊衝動に操られるように工場地帯を破壊した。弦十郎達からの話によれば死傷者はいないとの事だったが、それでも響は、あの時の自分が未熟だった事を悔やんでいたのだ。
(怖いのは、それを制御出来ない事じゃない。それを人に…………あの子に向けて、躊躇いも無く振り抜いた事。私がいつまでも、弱いばっかりにッ!)
「そうだッ! 自分の思いを拳に乗せ、真っ直ぐに突き出せッ! ラストッ! 大地すらねじ伏せる渾身の一撃を叩き込めッ!」
「はい、師匠ッ! はあああッ!」
拳に今の自分の思いを乗せ、一気に突き出す。これまで以上の渾身の一撃を受けたサンドバッグが大きく揺らぎ、弦十郎は「そこまでッ!」と言って響のサンドバッグ打ちの終了を告げる。
「サンドバッグ打ちはここまでッ! ご苦労だったな、響君」
「はぁ…………はぁ…………師匠ッ! 続きをお願いしますッ!」
自分が強くなる為には、もっと多くの鍛錬を積まなければならない。休憩も挟まずに次の特訓を要求する響だったが、弦十郎は首を横に振って拒否した。
「いや、今日の特訓はここまでだ。響君、君にはある事を頼みたい」
「頼みたい事?」
「翼の見舞いに行ってもらいたい。俺はこの後、少し用事がある。俺が行きたいのは山々なんだが、俺の代わりに行ってくれないか?」
「もちろんですッ! では、早速…………」
「待て、響君」
やるべき事は決まった。すぐに翼が入院している病院へ向かおうとすると、弦十郎に呼び止められた。
「響君、病院に行く前に、君にこの言葉を送らせてもらおう」
「はい、なんでしょう…………?」
「相手と対峙した際、振るうべき正しい拳というものは、己と向き合い、対話した結果導かれるものだという」
「…………?」
弦十郎の言っている事がよくわからず、首を傾げる響に、弦十郎は彼女にわかりやすく伝える。
「大いに迷い、悩む事だ。迷いこそが己を育て、強く大きく育てる為の糧となるッ!」
「全然わかりませんッ! でも、頑張って悩んでみますッ!」
わかりやすく伝えたつもりだったが、これでも響にはよくわからない事だったらしい。だが、それでこそ響だと思って笑って彼女を送り出した弦十郎は、懐からスマホを取り出して、電話帳からある人物の名前をタップする。
『はぁい♪ 出来る女で評判な櫻井了子で~す♪ どうしたのかしら、弦十郎君。まさかこの時間から飲みのお誘い? だったら私、この前貴方が教えてくれたお店がいいわね~♪』
聞こえてきたのは、いつものように上機嫌な様子で電話に応じた了子の声。だが、それに対し弦十郎の口から吐き出されたのは、緊急時を除けば友人に対してまず使わない、真剣な言葉だった。
「了子君、君に訊きたい事がある」
『あら、貴方が私に質問なんて珍しいじゃない。で、いったいなにを訊きたいのかしら? 答えられる事ならなんでも答えてあげるわよ?』
「そうか。なら…………」
そこで一旦言葉を区切り、弦十郎は了子に尋ねる。
「――――――『カ・ディンギル』というものを知っているか?」
翼が入院している病室の前に辿り着いた響が扉を開けて最初に目を奪われたのは、衣服や下着などが散乱した病室だった。あまりの散らかりように一瞬翼が誘拐されてしまったのではないかと考えてしまったが、病室の端に転がっていた下着を片づけている克己と、真っ赤になった顔を両手で覆っている翼を見て、この有様は決して誘拐などではなく、ただ単に翼が片づけられない性分だったのだと悟った。
部屋の片づけをしている克己を手伝ってある程度スペースを確保して椅子に座り、口を開く。
「でも、意外でした。翼さんはなんでも完璧にこなすイメージがありましたから」
「…………ふ、真実は逆ね。私は戦う事しか知らないのよ」
「また翼はそういう事を言う」
克己が顔を顰めるが、翼は緒川以外の男に下着類を片づけられた事に対する気恥しさから心の中が空っぽになっていたので、まともな答えを返せなかった。だが、すぐに彼方へと飛んで行っていた感情を手繰り寄せて思考を開始させる。
「大道、これは私が持っておくべきかしら? それとも…………」
そう言って克己にT2サイクロンメモリと空白のメモリを取り出して見せると、克己は「いや」と首を横に振る。
「T2メモリは適合者と引かれ合う。響の時もそうだったが、強制的に適合者をドーパント化させたりはしないようだな。それはお前が持っておけ」
「でもこれは、お前の母親の…………」
そこで翼は、自分の言葉に克己がピクリと眉を動かした事に気付く。
「…………なんでお前が、サイクロンが俺のお袋のものだって知ってる? 俺は一度も、お前にその話をしていないはずだ」
「実は…………」
翼は自分が目覚める前、どこかわからない場所で、大道マリアと名乗る人物からこれら二本のメモリを受け取った事を説明した。説明を聞き終えた克己は腕組みをして俯く。
「…………そうか、お袋に会ったのか。だったら尚更、お前が持っておくべきだ」
「でも…………」
「皆まで言わせるな。俺には、サイクロンを使う資格が無い。お前にそれを渡したのが
「…………わかった」
二本のメモリを持つ手を冷たい手で優しく包み込んだ克己に頷き、翼はそれらを枕の隣に置き、響に視線を移す。
「立花」
「は、はい」
「今はこんな状態だけど、報告書は読ませてもらっているわ。私が抜けた穴を、貴女が良く埋めているという事もね。でも、だからこそ聞かせてほしいの。貴女の戦う理由を」
ノイズとの戦いは遊びではない。一つ選択を誤れば、それが死に直結する事だってあり得る。それに加え、ネフシュタンの鎧の少女と彼女に付き従う二体のドーパントも敵として立ちはだかっているともなると、彼らと戦う彼女が戦死する可能性はノイズのみと戦っている時の何倍も大きくなっているはずであり、これまでの間に幾多の死線を潜り抜けている響なら、その事も当然わかっているはずだ。それでも戦いに臨むという事は、きっと彼女にも自分と同じ、『戦う理由』があるのだと考える翼に、響が答える。
「よく、わかりません…………。私、人助けが趣味みたいなものだから、それで…………」
「それで? それだけで?」
「私には特技とか人に誇れるものなんて無いから、せめて、自分に出来る事でみんなの役に立てればいいかな~って」
そこで言葉を区切り、窓の外に広がる青空を見る。
「…………でも、切っ掛けは、やっぱりあの事件かもしれません」
そこで響が思い出すのは、二年前のライブの惨劇。あの日、あの時、あの場所で、自分は一人の少女に命を救われて、その力は今、彼女に生かされたこの身に宿っている。
「あの事件で、奏さんだけじゃなく、たくさんの人が亡くなりました。でも、私は生き残って、今日も笑ってご飯を食べたりしています。だからせめて、誰かの役に立ちたいんです。明日もまた笑ったり、ご飯を食べたりしたいから」
あの日、自分が彼女に助けられたから、今の自分がいる。なら、今度は自分が、あの時の自分と同じ状況に陥っている人々を助ける番だ。自分が『生きている』というのは、日常ではあまり感じられないものであるが、一度非日常を体験すると、『生きている』事がとても素晴らしいもののように思えてくるのだ。
生きる事の幸せを、響は知っている。だからこそ、彼女は命を懸けて護り抜くのだ。
「私、護りたいものがあるんです。それは、なんでもないただの日常。誰もが友達と笑い合って、時々泣いて、それでもまた笑って、楽しく生活する…………。そんな当たり前だけど、なによりも大切なものを、私は護りたいんですッ!」
笑顔で自分の気持ちを口にした響をしばらく見つめ、フッ、と翼が笑う。
「貴女らしい、ポジティブな理由ね」
「なんでもないただの日常、か…………」
かつて死闘を繰り広げた二人組を思い出す。彼らも、こういった気持ちで自分達に立ち向かってきたのだろうか。長らく非日常に身を置いていた自分にはわからない感覚だ。自分も、響の言うそれを意識して戦う事で、彼らと同じ目線で物事を見る事が出来るのだろうか。
「…………でも、私はデュランダルに触れて、暗闇に呑み込まれかけました」
デュランダルの柄を握っていた両手を見下ろし、あのなにもかもを破壊したくなるような衝動を思い出す。
「気が付いたら、人に向かってあの力を…………。私がアームドギアを上手く使えていたら、あんな事にもならずに…………」
「…………戦いの中、貴女が思っている事は?」
「私が思っている事…………。それは…………」
ノイズに襲われる恐怖を、自分は知っている。あの時奏が自分を救っていなければ、ここに自分はいなかっただろう。ならば、救うのだ。自分と同じ恐怖を感じさせない為に、命の恩人から受け継いだ
「…………ノイズに襲われている人がいるなら、一秒でも早く救い出したいですッ! 最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線で駆け付けたいッ! そして、もしも相手がノイズでなく『誰か』なら…………」
ネフシュタンの鎧を纏っている少女も、克己の仲間だったはずの二人組も、なにか理由があって敵になっているはずだ。でも、彼らとの戦闘を響は望んでいない。
ノイズに言葉は通じない。でも彼らは、自分と会話する事が出来る。分かり合えるはずだ、自分達は。
「どうしても戦わなくっちゃいけないのかっていう胸の疑問を、私の思いを、届けたいと考えていますッ!」
ハッキリと自分の思いを吐き出すと、翼は響をじっと見据えて口を開く。
「…………今、貴女の胸にあるものを、出来るだけ強くハッキリと思い描きなさい。それが貴女の戦う力…………立花響のアームドギアに他ならないわッ!」
「私の、アームドギア…………」
響が翼の言葉を深く心に刻み付けていると、ポケットに入れていた通信機から緊急事態を告げるアラームが鳴り響く。
『ネフシュタンの鎧の少女が現れた。現在、京水君とレイカ君が市街地から近くの森に誘導してる。早速現地へ向かってくれッ!』
「あの子が…………ッ!? わかりましたッ!」
「賢と剛三はいるのか?」
『いや、今回はネフシュタンの鎧の少女だけだ。頼んだぞ、お前達ッ!』
「どうやら、貴女が思いを届けたい相手が来ているようね。行きなさい。行って胸の思いをぶつけてきなさいッ!」
「はいッ! 翼さん、行っていきますッ!」
病室から飛び出していく響に克己も続こうとすると、翼に呼び止められる。
「大道。私が歌う理由、やっとわかったよ」
「ほぅ、それは?」
振り返る克己に、翼は自分の胸に手を当てて、自分が歌う理由を告げた。
「みんなを笑顔にする為…………それが私の、風鳴翼が歌う理由だ」
「…………ようやく見つけられたな、翼」
翼の前に立ち、頭を撫でる克己。
「合格だ。ならこれからは、その為に歌うんだな」
「あぁ。…………なぁ、大道」
「ん?」
踵を返した克己に、翼は克己に撫でられた頭を擦りながら言う。
「また、撫でてもらってもいいかな? 頭を撫でられていると、なぜだか安心するんだ」
「…………死人に撫でられる事に抵抗を感じないのであれば、いつでも」
「約束だぞ? 破ったりしたら、許さないからな」
「ほぅ? 随分と可愛らしいセリフじゃないか」
「う、うるさいッ! さっさと行ってこいッ!」
「あぁ、行ってくる」
右手をひらひらと振って、克己は病室から出て行った。
「約束…………約束か…………」
病室に残された翼は、立てた小指を見つめる。
「どうせなら、指切りでもしておくべきだったかな? その方が、もっと約束の重要性を伝えられたかも…………」
などと、子どもじみた事を口にするのだった。
――――――一方その頃、ルナドーパントとヒートドーパントは森林の中でネフシュタンの鎧の少女の相手を相手をしていた。
「今日の晩御飯の買い出しに出かけてただけなのに、なんでこうも休日を楽しませてくれないのかしらッ! 貴女、ワタシ達に恨みでもあるのッ!?」
「うるせぇッ! 力を持つ奴らは全員ぶっ潰してやるッ! あたしに見つかったテメェらが悪いッ!」
「見境ないのねッ! 悪いけどそういうの、ワタシ嫌いよッ!」
ルナドーパントの両腕と二本の鞭が互いを弾き合い、鞭の猛攻を潜り抜けた右腕の攻撃を少女を避けると、背後に回っていたヒートドーパントが少女を蹴り飛ばした。
「その程度で私達を倒すつもり? 悪いけど、私達はそう簡単に倒せる相手じゃないわよ」
「うる…………せぇッ!!」
起き上がると同時に鞭の先端に作り出したエネルギー弾を投擲する。それをジャンプして回避したヒートドーパントの跳び蹴りを両腕を交差させて受け切ると、今度はルナドーパントの両腕が巻き付いてきた。
「あの夜のお返しよッ! 喰らいなぁ~~さいッ!!」
「うぉわッ!?」
ジャイアントスイングの要領で少女を振り回したルナドーパントが少女を投げ飛ばす。だが、飛ばした方角にあったのは、森から少し離れた道路だった。
「ちょっと、あんたッ! なにやってんのよッ!」
「やっちゃったッ! ごめんなさいッ!」
「だったらさっさと行ってこいッ!」
「行ってきまぁ~~すッ!!」
炎を纏ったヒートドーパントの蹴りを受けてルナドーパントが道路まで飛んでいく。
空中でバランスを整えたルナドーパントが綺麗なフォームで着地すると、目の前に一人の少女がいる事に気付く。
後頭部に結んでいる大きなリボンがチャームポイントな響の親友、小日向未来である。
「あら、未来ちゃん? どうしてここに?」
「え? ど、どうして私の名前を…………」
「えッ!? み、未来ッ!?」
困惑する二人に病院からマシンエターナルに乗ってきた響が駆け寄ろうとするも、道路にネフシュタンの鎧の少女が降り立ったのですぐに臨戦態勢に入る。
「テメェらも来たかッ! 丁度いい、ここで全員纏めてお陀仏にしてやるッ!」
「未来ちゃんッ、危ないッ!」
未来を抱えて飛んできた鞭を躱すが、少女は間髪入れずにもう一本の鞭で車を投げつけてくる。
着地したルナドーパントと、彼に抱えられた未来目掛けて車が迫ってくるが…………
「――――――Balwisyall Nescell gungnir tron」
聖句と共にガングニールの鎧を纏った響が、車を受け止めた。
「助かったわ、響ちゃんッ! あ…………」
思わずそう叫んだルナドーパントだったが、自分に抱えられていた未来がガングニールを纏って車を受け止めている響を見ている事に気付いてすぐに彼女の目を塞ごうとするも、既に後の祭りである。
「響…………?」
「…………ごめんッ!」
「どんくせぇのが、いっちょ前に挑発のつもりかよッ!」
まずは未来から離れた場所に少女を誘導しなければいけない。そう思って森に走り出した響を少女が追っていく。
「ま、待ってッ! 響ッ!」
「京水。未来を安全な場所へ」
「わかったわ」
未来を抱えたルナドーパントが走り去っていく中、未来はずっと響の名を呼び続けていた。
「喰らいやがれッ!」
「くぅ…………ッ!?」
一方、森林では出来るだけ未来から距離を取ろうとしていた響に少女の鞭が叩き付けられていた。
「どんくせぇのが、やってくれるッ!」
顔面から倒れ込んだ響の前に少女が降り立つと、響は少女から受けた攻撃による痛みを堪えながら立ち上がる。
「どんくさいなんて名前じゃないッ! 私は立花響15歳ッ! 誕生日は9月の13日で血液型はO型ッ! 身長はこの間の測定では157cmッ! 体重は…………もう少し仲良くなったら教えてあげるッ!」
「はぁッ!?」
いきなり自己紹介し始めた響に唖然とする少女に構わず、響は自己紹介を続ける。
「趣味は人助けで好きなものはご飯&ご飯ッ! あと…………彼氏いない歴は年齢と同じッ!」
「な、なにをとち狂ってやがるんだお前…………」
「私達は、ノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたいッ!」
こうして会話できるという事は、話し合いだって出来る。だから戦いをやめて少女と話そうとする響だったが、彼女は聞く耳を持たない。
「なんて悠長ッ! この期に及んでッ!」
少女は同時に二本の鞭を振るうが、響はそれを素早い身のこなしで躱していく。
(あたしの攻撃を凌いでいやがる…………ッ!? こいつ、なにが変わったッ!)
以前戦った時よりも明らかに成長している響に対する警戒心を強める少女に、響が叫ぶ。
「話し合おうよッ! 私達は戦っちゃいけないんだッ! だって、言葉が通じていれば人間は――――――」
「――――――うるさいッ! わかり合えるものかよ、人間がッ! そんな風に出来ているものかッ!」
人はわかり合えない。それを身をもって体験した過去を持つ少女にとって、響の言葉は夢物語に過ぎないもので、それを信じている彼女を、少女はどうしようもなく許せなかった。
「気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇッ! わかっちゃいねぇ事をペラペラと知った風に口にするお前がッ! お前を引きずってこいと言われたが、もうそんな事はどうでもいいッ!」
先端にエネルギー弾を作り出した二本の鞭を握り締め、大きく振り上げる。
「お前をこの手で叩き潰すッ! 今度こそお前の全てを踏み躙ってやるッ!」
「そうは…………」
「させないッ!!」
投擲されるエネルギー弾を、響の前に降り立ったエターナルのエターナルエッジが切り裂き、ヒートドーパントの灼熱の蹴撃が蹴り砕いた。
「まだだッ! 持ってけ、ダブルだッ!」
だが、少女はすぐにもう一発のエネルギー弾を飛ばしてくる。だが今度は、それを未来を安全な場所まで送り届けたルナドーパントが両腕を叩き付けて破壊した。
「信じる心を持つ事。それはとっても大事な事よ、響ちゃんッ!」
「響、今こそ翼の言葉を思い出す時だ。さぁ、その手に握れ。お前のアームドギアをッ!」
「はいッ! はああああああああぁぁぁぁッ!」
自分の胸にあるものを強くイメージし、響は右手に力を籠める。その手に眩い輝きが満ちていく様子を目にした少女は、彼女がアームドギアを手にしようとしている事に気付く。
「きゃあッ!?」
だが、失敗したのか光は響の手の中で弾け、響は尻もちをついてしまう。
(これじゃ駄目だ…………。翼さんのようにギアのエネルギーを固定できないッ! でも、エネルギーはあるんだ。アームドギアを形成出来ないなら――――――)
――――――そのエネルギーを、そのままぶつけるだけだッ!
「それ以上、させるかよぉッ!」
前に飛び出し、地を這う蛇のように迫ってくる鞭を受け止める。
(最速で、最短で、真っ直ぐにッ! 胸の響きを、この思いを、伝える為にッ!)
「うああ…………ッ!?」
少女が驚愕している隙を突いて、一気に鞭を引っ張って彼女を引き寄せてからの――――――
「おりゃああああッ!」
「くは…………ッ!」
強く踏み込んでからの正拳突きが、少女を殴り飛ばした。
「君がどんなに私の思いを否定しようと、私はそれを信じ続けるッ! 絶対に――――――」
腹部を押さえながら起き上がる少女に、響は拳を握り締めて叫ぶ。
「――――――絶対に、夢物語なんて言わせないッ!!」
瞬間、響の全身を眩い輝きが包み、それに響が驚いていると、背後からも驚愕の声が上がった。
「えッ!? えッ!? なによこれぇッ!?」
振り返ってみれば、ルナドーパントの全身も響を包むものと同じ光に包まれており、彼の体から小さな光球が出てきたかと思うと、それが響の体内に吸い込まれていった。
その時、心臓が一際強く鼓動するのを合図に全身に力が湧いてくる感覚に襲われ、思わず蹲る。
(なに、これ…………ッ!? 体が、熱い…………ッ!)
まるで体内でマグマが煮えたぎっているように熱くなり、全身に激痛が走る一瞬、視界に夜空に輝く三日月が映る。
「が、あ…………ッ! ああああああああああッ!!」
叫び声を上げた、響の全身から黄金の輝きが放出される。それが収まり、その場にいた全員が見たのは――――――
「なに…………これ…………?」
右目の網膜に三日月のマークが映し出され、月の模様が描かれたスカートを足元まで伸ばし、そして髪の毛を腰まで伸ばした響の姿だった。
響の新たな姿登場! ルナと響ガングニールの組み合わせは「響は敵とも繋がれるとも思っている」→「敵からすれば響の考えは決して叶わない夢物語」→「それでも響は『夢物語』である『幻想』を叶えようとする」→「『幻想』の記憶を持つルナメモリが彼女に力を貸した」という感じです。
一応ギアの名前の候補として『イリュージョニスト・ガングニール』、『ルナティック・ガングニール』が自分の頭の中に浮かんではいるのですが、以前のエターナルのバイクを登場させた話では感想欄に読者様から色々と素晴らしい名前が提供されましたので、皆さんの意見も参考にしたいと思います。
これらの中から「どっちもイマイチ…………」と選んだ方の内、自分の考えた名前がある方は後で活動報告欄に名前募集ページを作りますので、そこに名前を書いてください。活動報告欄には私の名前をクリックまたはタップすれば私のページに行けますので、そこから活動報告欄にある名前募集ページにお願いします。
-
イリュージョニスト・ガングニール
-
ルナティック・ガングニール
-
どっちもイマイチ…………