死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 今回も様々な名前が集まりました。ありがとうございますッ!

 考えた結果、ヒートのガングニールは『エルナンディ・ガングニール』、トリガーのイチイバルは『アズゥティラール・イチイバル』と決定しましたッ! 名前を応募してくれた皆様、本当にありがとうございましたッ!

 そして今回も、新たなイチイバル形態登場ッ!



解き放て、叛逆の銃士の記憶ッ!

「それがフィーネの言っていたシンフォギアとガイアメモリの融合ですか。ガングニールの装者とは異なる姿のようですが、それと似た力を感じますね」

 

 

 試しにと浮遊させた瓦礫を飛ばすも、クリスはマントでそれを防ぐ。シンフォギアを纏っていても直撃すれば骨折は免れられない速度を誇る瓦礫だったが、マントの防御力はその攻撃力を凌駕しており、全くの無傷だったクリスは二丁のマグナムの引き金を引く。

 

 

「…………ッ!? ぬぅ…………ッ!?」

 

 

 光速に迫る勢いで撃ち出された光弾が直撃し、ユートピアドーパントが十数メートルも吹っ飛ばされた。想像以上の速度に反応出来なかったユートピアドーパントが煙を上げる胸元を押さえながら立ち上がると、クリスは再び引き金を引く。

 

 即座に杖を振るって光弾を弾くが、続けて発射された光弾が再び体に命中した。

 

 

「やってくれますね…………。ですが、イチイバルは遠距離特化型のシンフォギア。近距離戦は不得手でしょう」

 

 

 目にも留まらぬ高速移動でクリスに接近してから杖で殴り飛ばす。

 

 飛んできたクリスの体を受け止めた賢が剛三と共に再びドーパントに変身しようとするが、その手を掴んだクリスが首を振る。

 

 

「あたしにやらせてくれッ! あいつはあたしが倒さなきゃ気が済まねぇんだよッ!」

 

 

 幸い、手元の武器はマグナムで小回りが利くし、反動も抑制されていて撃ちやすい。

 

 再び引き金を引いて光弾を発射するが、ユートピアドーパントは近くのトラックを盾にしてそれを防ぐ。

 

 

「隠れてねぇで出てきやがれッ!」

 

 

 連続で光弾を発射してトラックを爆破させると、その黒煙を突っ切ってきたユートピアドーパントはクリスの体を重力操作で浮かび上がらせて地面に叩き付けようとするが、先程受けたマグナムの光弾の倍以上の衝撃が襲ってきて吹っ飛ばされる。

 

 

「落とされる前に撃っちまえばこっちのもんだッ!」

 

 

 スナイパーライフルに変形させたマグナムを元に戻して上半身を起き上がらせたユートピアドーパントに向ける。

 

 二つの銃口から光弾が撃ち出される。それを躱したユートピアドーパントは再び高速移動でクリスを殴り、続けて左手から衝撃波を繰り出そうとするが、それは咄嗟にクリスが引っ張ったマントによって防がれる。

 

 

「抗ってくれますね。その力、戦争で使えばどれ程役立てる事か」

「あたしを物扱いすんじゃねぇッ! 財団X(おまえたち)の事は賢達から聞いてるぜ。色んな闇組織を支援している死の商人だってなッ! そんな奴らにあたしと、このイチイバルは渡せるかッ!」

 

 

 戦争がどれだけ残酷なものかは、自分がよく知っている。自分の他にも、戦争で家族を奪われた者は大勢いる。大切な者を喪った哀しみを知っている彼女だからこそ、それを激化させる技術を提供する財団Xに対する怒りと嫌悪感は人一倍強い。

 

 

「あたしはフィーネに言われるがままに、ソロモンの杖を起動させた。それが戦争を無くすどころか、新しい戦いを始める事も知らずにッ! ソロモンの杖が起動したのが原因で家族と死に別れた奴だっているはずだ。その原因があたしにあると考えると、自分が憎くて憎くて堪らねぇッ! いっそ自殺しちまいたいくらいさッ!」

 

 

 でも、それは逃げだ。自分は、間接的に自分が殺してきた人々から逃げたくない。逃げ出したら、理不尽に命を奪われた彼らに申し訳が立たない。

 

 

「きっとあたしは、地獄に落ちるんだろうな。パパとママのいる天国なんて、こんなあたしにゃ似合わない。でも、あたしは悪人のまま一生を終えるつもりはこれっぽっちもねぇよ」

 

 

 もう手遅れだが、自分は罪を自覚出来た。だが、それに気付いて尚悪行を重ねるつもりなんて更々無い。

 

 自分が犯した罪は、自らの手で償う。それは人として当然の事であり、今ここに立つ雪音クリスという名の人間もまた、例外ではない。

 

 

「ぶっ潰してやるよ、この世にのさばるクソッタレな連中を。あたしが味わった哀しみを、これ以上誰かに与えない為にッ!」

 

 

 その時、今度は銀色の輝きがクリスを包み、剛三のメタルメモリが強く輝き始める。

 

 メタルメモリから飛び出した銀色の光球がクリスの体に入り込むと、彼女の纏ったイチイバルの武装が変化する。

 

 蒼のマグナムは銀色を基調とした緋色のラインが走ったガントンファーに変化し、外見は狙撃手のようなものから一変して上半身は胸元を開けたドレスアーマーを着込み、左目の網膜に『M』の字が浮かび上がっている姿に変化したクリスに感嘆の声を漏らしたユートピアドーパントに、クリスは両手に持ったガントンファーから光弾を発射した。

 

 

「二つのメモリの形態を持つ装者ですか。これは面白いですね」

「喰らいやがれッ!」

 

 

 振り下ろされた右手のガントンファーを杖で受け止め、左拳を腹に捻じ込もうとするも、それは左手に持ったガントンファーによって弾かれる。ユートピアドーパントの体を蹴って跳躍した際にガントンファーから発射された光弾がユートピアドーパントに着弾し、数歩後ずさると懐に潜り込んでからのガントンファーの先端で突き飛ばす。さらに追い打ちとして開いた距離を跳び蹴りで縮めると同時に蹴り飛ばし、もう一回跳び蹴りで怯ませると左手のガントンファーを回転させてユートピアドーパントに叩き付ける。

 

 

「こいつでトドメだッ!」

 

 

 ガントンファーを地面に叩き付けると、その衝撃波は前方のユートピアドーパントの足元を爆発させて彼の体が打ち上げられる。落下してくるユートピアドーパントに一瞬の途切れも無く発射した光弾を命中させると、クリスは自分に宿るガイアメモリの記憶を『闘士』から『引き金』へ切り替える。

 

 自分に力を貸してくれるメモリの力の切り替えなんてやった事無いのに、不思議な事にクリスはそれが長年やって来た事のように出来る。

 

 

「もう、お前達に『物』みたいに扱われて堪るかッ!」

 

 

 両手のマグナムを合体させてバスターライフルにする。

 

 そしてクリスは、自身がイチイバルを纏う際に聖詠が脳裏に浮かんでくるのと同じような感覚で浮かんできた単語を口にする。

 

 

「――――――マキシマム(・ ・ ・ ・ ・)ドライブ(・ ・ ・ ・)

 

 

 その単語に応えるように、バスターライフルの内部から絶大なエネルギーが充填されていく。

 

 照準を定める。大丈夫。離れていようと撃てる。なにせ自分は、イチイバルに選ばれた人間だからッ!

 

 

「受け取れよ、化け物。こいつがあたしからの、叛逆プレゼントだッ!」

 

 

 銃口から放たれる巨大な蒼紅のレーザー――――――『TRAITOR's ROAR』がユートピアドーパントを呑み込んだ。

 

 数秒に及ぶレーザー光線が消え、全エネルギーを使い果たしたバスターライフルを手にするクリスの前に、数十メートル先にユートピアドーパントが墜ちてきた。

 

 

「あの攻撃を喰らっても生きてんのかよッ!? とんだバケモンじゃねぇかッ!」

 

 

 全身から黒煙を立ち昇らせるユートピアドーパントは武装が解除されたクリスと、彼女に力を貸したメモリの持ち主である二人を見る。

 

 

「シンフォギア装者にガイアメモリ…………侮れませんね…………ッ! いいでしょう…………、今日はこのところで彼女に免じて退散しましょう。では、またいつか…………」

 

 

 これ以上の戦闘続行は不可能と察したのだろう。持ち前の高速移動で、ユートピアドーパントは三人の前から姿を消した。

 

 

「ふぅ…………。なんとか切り抜けたようだな…………」

「だな。ノイズの姿も見えねぇし、さっさと帰るか。立てるか?」

 

 

 クリスの手を引いて立ち上がらせると、「待ってくれ」と声をかけられる。

 

 

「あんたは…………」

「俺の名は風鳴弦十郎。特異災害対策機動部二課の司令官だ。君達に話がある」

「あの時のおっさんか。俺達になんの用だ?」

「俺は君達を二課に保護したいと考えてる。もちろん、君達の安全は保障するし、生活に必要なものも全て提供しよう」

「嬉しいお誘いだが、いったいどういう魂胆だ? お前がフィーネと違って信頼出来ない相手ではない事はなんとなくわかるが」

「…………スマートではないが、それに答える前に一つ確認したい。君達はクリスの両親を知っているか?」

「バイオリン奏者の雪音雅律と声楽家のソネット・M・ユキネだろ? 聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だったから保護したって、フィーネが教えてくれた」

 

 

 最初はそう説明されたが、今となっては『保護』とは名ばかりで、事実は『拉致』だと考えられるが。

 

 隣でクリスが「なんで話してんだよ…………」と零す中、弦十郎は「その通りだ」と言う。

 

 

「二人が難民救済活動中に内戦で命を落としたのが八年前。残された一人娘…………クリス君は国連軍によって保護され、日本に輸送される事となったんだ」

「よく調べているじゃねぇか。そういう詮索、反吐が出る」

「当時の俺達は適合者を探す為に、音楽界のサラブレットである君に注目していてね。天涯孤独となった君の身元引受先として、手を挙げたのさ」

「こっちでも女衒(ぜげん)かよ…………」

「ところが、クリス君は帰国直後に消息不明になり、二課からも相当数の捜査員が駆り出されたが…………」

 

 

 結果は散々。保護対象の少女は見つからず、この件に関わった者のほとんどが死亡、あるいは行方不明となり、この捜査は中止となってしまったのだ。

 

 

「今思えば、あれはフィーネが仕組んだ事だったんだろうな。おかげで、今ではこの任務を受けている捜査員は俺だけになったよ」

「…………なにが言いたいんだ、おっさん」

「俺はな、君を救い出したいんだ。引き受けた仕事をやり遂げるのは、大人の務めだからな」

「…………務め、か」

 

 

 以前の自分なら、その言葉を馬鹿馬鹿しいと一蹴しただろう。だが、体を張ってユートピアドーパントから自分を護ろうとしてくれた賢達の姿を先程見たばかりのクリスにとっては、その言葉を一蹴する気にはなれなかった。

 

 

「これが俺が君達に接触した理由だ。君達の事も克己君から聞いている。良ければ君達も二課に来てくれないか?」

「克己とまた同じ場所で働けるってのはいいんだがな。一つ心配事が…………」

「あんたはあたしの親かッ! 一人でも大丈夫に決まってるだろッ!」

 

 

 バシッと叩かれた頭を押さえた賢が、クリスを一人にする事に対する不満の理由を口にした。

 

 

「あのドーパントはお前が俺達のガイアメモリの力を使ってやっと撃退出来たんだ。また戦って勝てる保証はどこにも無いんだぞ」

「それにあいつが逃げた先にいる奴とすりゃフィーネだろ? お前どうやってあのバケモン共を相手すんだよ」

「そ、それは…………」

「待ってくれ。君達が撃退したドーパントというのは、こういう者ではなかったか?」

 

 

 確認の為に胸ポケットから取り出したユートピアドーパントの写真を見たクリス達が頷くと、弦十郎の顔色が少し明るくなる。

 

 

「ユートピアドーパントを撃退するまで追い詰めたのか。彼は俺達が対処すべき相手だったんだ。撃退とはいえ、そこまで追い詰めてくれた事には感謝したい。本当にありがとう」

「あいつはあたしらの獲物だ。あたしがソロモンの杖を起動させなかったら、あいつはフィーネに関わらなかったはずだからな」

「いや、どちらにしろ、財団Xはフィーネに接触したはずだ。…………フィーネの詳細は今も調査中だが、響君達の話を聞くにネフシュタンの鎧を手に入れている事はわかっている。戦闘になれば、必ず使用してくるだろう」

「なんだ? まさか、フィーネのいるところに殴り込むつもりか? 言っちゃなんだが、おっさんがあいつらに勝てる未来は見えねぇぞ?」

「いつ俺一人で行くと言った? 克己君達を連れて行く。響君も連れて行きたいところだが、あの子はフィーネの姿を見たら足手纏いになってしまうから、連れて行かない」

 

 

 

 撤退するまでに追い込まれていてもユートピアドーパントは強力だろう。それなら、かつて彼と交戦した経験があると言う克己と、その部下であるレイカ達に相手をしてもらう。そしてフィーネの相手は――――――

 

 

「俺がやる」

「はぁッ!? アホかおっさんッ!? フィーネはあたし以上にネフシュタンの鎧を使いこなしてるんだぞッ!? 勝てるわけがないッ!」

「それでも、俺は彼女と戦わなければならない。事後処理は優秀な部下に任せるとして、俺は今回の事件の首謀者である彼女を止めなければならないんだ」

 

 

 どうやら目の前の男は本気でフィーネと戦う覚悟を決めているようで、その気迫に押し負けた三人は彼を止める事は不可能だと悟って深く溜息を吐いた。

 

 

「…………仕方ねぇ。ついてこいよ、あいつらが拠点にしてる屋敷まで連れてってやる」

「すまない、助かる」

 

 

 頭を下げて感謝した弦十郎は、ポケットからスマホを取り出して克己達に連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 ――――――その頃、フィーネが拠点にしている屋敷では、クリスのマキシマムドライブを受けて全身に多少の傷を負った順が、手元のユートピアメモリを見つめていた。

 

 

「派手にやられたわね。遠くから見てたけど滑稽だったわ」

「見てたなら助けてもらいたかったところですね。貴女であれば、私があのレーザーに呑み込まれる前に助けられたはずですけど」

「地獄の炎が凍ったら助けてあげるわよ」

「おや、それは残念」

 

 

 言葉とは裏腹に残念がる様子を微塵も見せない順は、先程までクリスと繰り広げていた戦闘を思い返す。

 

 

「ガイアメモリはまだ未知の力を秘めている。それを再認識させられましたよ、今回の戦いは」

「それは結構。貴方も充分な戦闘データを上に送れた事でしょうね」

「えぇ、貴女が作ったこのT3ガイアメモリは私の体によく馴染みます。おかげで素晴らしいデータが送れました。…………そして」

 

 

 閉ざされた扉を見て、順はガイアドライバーに、フィーネが賢達が集めたT2ガイアメモリを解析して作り上げたT3ユートピアメモリを挿し込んでユートピアドーパントに変身する。

 

 

「また、新たなデータが送れそうですね」

 

 

 衝撃波で扉を吹き飛ばすと、そこから十数人の黒服の男達が現れて拳銃を向けてくる。

 

 

「アメリカの犬ね。遂に武力行使で聖遺物のデータを奪いに来たというところかしら」

「目的はどうでもいいのです。どんな目的にせよ、彼らはもう、ここから逃げられないのですから」

 

 

 こちらに拳銃を向けてくる者達の中で最も自分との距離が近い男の前に移動したユートピアドーパントは彼の顔を鷲掴みにし、一瞬にして彼の希望を奪い取った。

 

 顔のパーツを全て失った男を投げ飛ばし、続けてその隣に居た男からも希望を奪い取る。

 

 

「貴方の希望も、そして貴方の希望も、全ての希望を私の力に変えてみせましょう」

「う、撃てッ! 撃てぇッ!」

 

 

 隠し切れない恐怖を顔に表し、男達が拳銃を発砲する。その全ての弾丸がユートピアドーパントに命中するが、彼の体に傷がついた様子は無く、ユートピアドーパントは相手に恐怖を与える笑い声を漏らしながら二人の男から希望を奪う。

 

 

「フ、フフフ…………フハハハハハッ!」

 

 

 全身に力が漲る。その感覚が愉快で堪らなくて、ユートピアドーパントは笑い声をあげる。

 

 

「さぁ、寄越しなさい、貴方方の希望を。なに、無駄にはしませんよ。そう、全ては…………」

 

 

 両腕を広げ、ユートピアドーパントは残りの男達に近づいていく。

 

 

「――――――私の望む(・ ・ ・ ・)理想郷の為に(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 財団Xの利益をなによりも優先して考える彼にとってはあり得ない事を口にしたのにも関わらず、彼はいたって普通の事を口にしたような態度で男達に襲いかかった。

 

 

「『理想郷』とは名ばかり。まるで怪物ね…………」

 

 

 目の前で繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄を眺め、フィーネはポツリと呟くのだった。

 




 今回登場したメタルメモリの力を宿したイチイバル、どうでしょうか? 色々探した結果、クリスに会うと思った近接武器はガントンファーだと思ったのですが、おかしいですかね?

 そして、今回も例の如く募集させてもらいますッ! この話が投稿され次第、募集欄を設けますッ! 連続で登場するなら前回の時点で募集欄を設けておくべきかとも思ったのですが、やはりどんな姿かを把握してもらってから募集した方がいいと考えたので、こうさせてもらいましたッ!
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