死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 今回も名前応募、ありがとうございます! 結果、サイクロンの力を宿した天羽々斬の名前は『天羽々斬・翼風刃』に決定しました!

 それでは本編、どうぞ!



交差する想い

 響達が東京スカイタワーで抗戦を始めて少し経った頃、二課の本部が地下に存在する《私立リディアン音楽院》はノイズに襲われていた。

 

 ノイズを打ち倒せる力を持つ響達は東京スカイタワーに向かっているので自衛隊が学校に現れたノイズの対処に追われているが、特別な力を宿していない通常兵器ではノイズを倒す事は出来ず、足止め程度しか役割を果たせない。今この場にいる者達が出来る事は、絶対的な『死』の具現者から逃れる事だけである。

 

 

「落ち着いてッ! シェルターに避難してくださいッ!」

「ヒナッ!」

 

 

 ノイズの被害を押し留める為に出動した自衛隊と協力して生徒の避難誘導を行っていた未来の元に、彼女や響の友人である安藤創世、板場弓美、寺島詩織がやって来る。

 

 

「どうなってるわけ? 学校が襲われるなんて、アニメじゃないんだからさ…………」

「わからない。だけど、逃げなきゃ。みんなも早く避難を」

「小日向さんも一緒に…………」

 

 

 ノイズの恐ろしさは誰だって知っている。その脅威から友人と逃れようと詩織が言うが、未来は首を振って拒否する。

 

 

「先に行ってて。私、他に人がいないか見てくるッ!」

「ヒナッ!」

 

 

 言うが早いか、創世の呼びかけにも答えずに持ち前の走力で外に飛び出した未来の後ろ姿に手を伸ばしかけると、「君達ッ!」と自衛隊の一人が走り寄ってきた。

 

 

「早くシェルターに向かってくださいッ! 校舎内にもノイズが――――――」

 

 

 瞬間、窓ガラスを突き破ってきた鳥型(フライト)ノイズが彼の体を貫き、男は一瞬にして自らを貫いたノイズごと炭素となって崩れ落ちた。

 

 一瞬、目の前でなにが起きたのか理解出来なかった三人だが、目の前の床に降り積もる黒い砂を見下ろし、今なにが起きたのかを察する。

 

 

「いやああああああああッ!!」

 

 

 息を呑み、なにも言えない二人の友人の気持ちを代弁するかのように、堪え切れなくなった弓美が悲鳴をあげた。

 

 

 

 

(――――――学校が…………響の帰る場所が…………)

 

 

 ノイズによって次々と学校が破壊されていく様が否応なしに見せつけられる。この光景を作り出したノイズに対する怒りと、響達との思い出が壊されていく事への哀しみが湧き上がってくるが、今はそれよりも、逃げ遅れた人々を救う事に集中すべきだ。

 

 

「あ…………ッ!?」

 

 

 その時、未来の存在に気付いたノイズの一体が未来に飛びかかってきた。未来の体がノイズに触れられる寸前、横から飛び込んできた緒川がノイズから未来を護った。

 

 

「緒川さんッ!」

「ギリギリでした…………。次、上手くやれる自信は無いですよ?」

 

 

 じりじりと寄ってくるノイズの集団を前に、緒川は未来の手を握る。

 

 

「走りますッ! 三十六計逃げるに如かずと言いますッ!」

「は、はいッ!」

 

 

 流石にこれだけの数を前にして、避難誘導を続けようとは思えない。急いでシェルターのある二課本部へのエレベーターに駆け込み、地下へと降り始める。

 

 

「…………はい、リディアンの破壊は依然拡大中です。ですが未来さん達のおかげで、被害は最小限に抑えられています」

 

 

 通信機を手に誰かと通話している緒川。通信機から僅かに聞こえる声から察するに、通話相手は弦十郎だろうか。

 

 

「これから未来さんをシェルターまで案内…………ッ!?」

 

 

 無意識にエレベーターから見える不思議な模様の描かれた壁を見た瞬間、そこにある人物がいる事に気付いた緒川が構えを取ろうとした瞬間、エレベーターに飛び移ってきた女性が彼の首を掴んだ。

 

 

「ぐ、うぅ…………ッ!」

「聞こえるか、愚かな男よ。お前の願いは儚く散ったッ!」

 

 

 ネフシュタンの鎧を装着する事によって強化された握力で緒川の首を絞め続けながら、フィーネは彼が落とした通信機に向かって叫ぶ。

 

 

「お前は私が改心するとでも思っていただろうが、何百、何千、何万という年月(せつな)を生きてきた私の想い、そう簡単に変わるとでも思うたかッ!」

 

 

 そこでエレベーターは最下層へと到着し、緒川の体が押し付けられていた扉が開くと、拘束を解いた緒川が未来を連れてフィーネから距離を取り、懐に忍ばせていた拳銃を発砲する。

 

 

「そんな豆粒が通用するとでもッ!」

 

 

 撃ち出された弾丸は全てフィーネに直撃するが、彼女の鎧はおろか、曝け出されている肌にも傷一つつかず、片手に握った鞭を緒川の首に巻き付けて持ち上げた。

 

 

「緒川さんッ!」

「未来さん…………に、逃げてください…………ッ!」

 

 

 少し力を籠められただけでも首の骨を圧し折られてしまうような状況であるのに、緒川は自分よりも未来の安全を優先し、早く逃げるようにと自分の首を絞める鞭を掴んで苦し紛れに言葉を発する。

 

 

「…………ッ!」

「む…………」

 

 

 だが、未来は彼の言う事に従わず、あろう事かフィーネに体当たりをかました。しかし、銃弾を物ともしない体にうら若き乙女の体当たりなどダメージにもならず、フィーネはゴミを見るような冷たい目つきで眼前の少女を見下す。

 

 ノイズと遭遇した時とは比べ物にならない恐怖にへたり込んだ未来に、フィーネは緒川の拘束を解いて向き合う。

 

 

「麗しいな。お前達を利用してきた者達を護ろうというのか?」

「利用…………?」

「リディアンとは音楽院と銘打ってはいるが、その実体は装者の捜索や聖遺物に関する歌や音楽のデータを収集する為の施設。生徒(おまえたち)被験者は、この者達に利用されていたに過ぎない。その点、風鳴翼という偶像は、生徒を集めるのによく役立ったよ」

「…………それでも」

 

 

 緒川を排除しようと動き出したフィーネの足が止まり、横目で足を震わせながらも立ち上がった未来を見る。

 

 

「嘘を吐いてまで、誰かの命を護ろうと、自分の身を顧みずに戦う人がいますッ!」

 

 

 利用されてはしたが、それは全てノイズという人類の天敵を打ち倒す為に行われていた事であり、響だって苦しい思いをしながらも、自分達を護る為に戦ってくれた。嘘で塗り固められていたとしても、それだけは変わらぬ事実である。

 

 

「私はその人を…………その人達を信じてるッ!」

「信じている、か。ならば…………ッ!」

 

 

 未来に向けて、鞭を振るう体勢に入る。

 

 誰かを信じる心。それはかつて、フィーネも持っていたものだ。だが、信じ、恋焦がれていた相手は、自分の気持ちなんて知らないままに、あの天へと続く塔を雷霆にて破壊し、呪われた人々は繋がる事よりも争う事を選んだ。

 

 そんな時代を生きたフィーネへ投げかけられた目の前の少女の言葉は、彼女の逆鱗に触れるに充分であった。

 

 

「真に人を繋ぐものとはなにか、その身を以て知るがいいッ!」

 

 

 未来の体を切り裂こうと、鞭を振り下ろそうとしたその時――――――

 

 

「――――――待ちな、了子」

 

 

 天井を破壊して彼女の前に降り立った男の姿に、フィーネは思わず鞭を握った手を止めてしまう。その隙に緒川は未来を抱え、二人から距離を取る。

 

 

「…………私をまだ、その名で呼ぶか」

 

 

 鞭を握った手をゆっくりと下ろし、フィーネは自然体で立つ弦十郎を睨む。

 

 

「君が自らを『フィーネ』だと呼んでも、俺は変わらず、お前を『了子』と呼んでやるさ」

「櫻井了子という人間は、とっくの昔にこの世から消え失せたのにか?」

「おうとも。君に魂を喰らい尽くされても、君は『櫻井了子』だ。…………それと、あの時交わした約束(・ ・)は忘れたのか?」

 

 

 響や克己達はおろか、二課の職員のほとんどに知らせる事無く、彼女と取り交わした約束。それは、デュランダル移送計画が中止になった日の翌日に行った響との訓練を終えた後に、櫻井了子として二課で働いていたフィーネと交戦した後に交わしたものである。

 

 秘密裏に調査を依頼していた調査部から得た『カ・ディンギル』という謎の塔と、それを建造しようとしている謎の女性フィーネの情報。調査の結果、彼女は自分と同じく二課で働く職員である櫻井了子その人であり、同時に櫻井了子というのは仮の姿という事も判明した。その情報に弦十郎は驚愕し、同時に彼女を止めようとも考えたのだ。

 

 当時はカ・ディンギルというものがどういったものかを知らなかったが、了子として振る舞っていたフィーネとの通話で、彼女直々に齎された情報により、それが途轍もなく危険なものであると悟った弦十郎は、遂に自らの正体を明かしたフィーネと戦い、これに勝利。殺しは好かない性分である弦十郎は彼女にトドメは刺さず、『これからもカ・ディンギルの建造を続けると言うのであれば、まず自分を殺してから』という約束を交わしたのだ。

 

 自分という壁で阻む事で、彼女の計画を頓挫させられないかという考えの下に弦十郎はフィーネとこの約束を交わしたのだが、フィーネは自分を殺すよりも先にカ・ディンギルを完成させ、こうして計画の実行に乗り出した。

 

 

「そんな約束に、もう意味は無い。この私に訪れた好機を不運に思うがいい」

「…………それでも、俺は今この瞬間でも、君を二課の仲間だと思っている」

「愚かな事。甘い男だ」

「あぁ、俺は甘い。だが、我々が特異災害対策機動部二課(ここ)で過ごした時間に嘘は無かったはずだ」

 

 

 確かに最初は、彼女は『櫻井了子』であり、『フィーネ』であるとは知らなかった。だが、彼女の正体を知ってから過ごした時間は確かに存在し、二人だけの秘密の約束を取り交わしてからは、誰にも悟られる事無く、命を狙い狙われの関係を続けてきた。そんな、一歩間違えれば死んでいたであろう生活を、不思議と弦十郎は楽しく思えていたのだ。

 

 

「こんな事は止めて、帰ってくる気は無いか? 俺は君に、三度目の招待をしたい」

「…………くどい」

「もう、考え直せないのか?」

 

 

 哀しそうに問いかけてくる弦十郎の表情を見ると、チクッとなにかが刺さる感覚に襲われる。

 

 これまで、何度も転生を繰り返してきた。その時の思い出など、今は全く思い出せないのに、この男との記憶だけは、たとえこの先転生したとしても、いつまでも消えそうにないと思える。

 

 それほどまでに、彼と過ごした時間は――――――

 

 

(…………あり得ない。あり得ては、ならない…………)

 

 

 首を振って、浮かんできた考えを振り払う。自分が求めるのは、あの御方の隣に立つ事のみ。この男は、それを阻む敵に過ぎない。そのはずなのに、そうであるはずなのに――――――

 

 

(なのに、どうして…………)

 

 

 

 

 ――――――こんなにも、胸が張り裂けそうなのだろうか?

 

 

 

 

「…………もう、後戻りは出来ない。この時を、私は幾星霜待ち続けたのだから。その為に…………」

 

 

 駄目だ。それから先は言ってはならない。それを言ってしまったら、もうあの頃には戻れない。

 

 そう叫ぶ自分に気付きながら、フィーネは弦十郎に構えを取る。

 

 

「――――――お前を、殺す」

 

 

 ――――――あぁ、言った。言ってしまった。これで、自分と彼は敵対者。思い出は遠い彼方に消え去って、二度と戻ってはこない。

 

 

「了子…………」

 

 

 言い切られた事を、弦十郎は哀しむ。考え直してはくれなかった。

 

 その言葉を以て、自分達は『仲間』から『敵対者』となってしまった。

 

 

「だが、俺は…………ッ!」

 

 

 ふざけるな。そんなのは認めない。

 

 敵対者? 違う。惚れた女(かのじょ)を敵対者と定めてはいけない。たとえ、天が自分達を敵対者として対峙する事を認めても、自分は、風鳴弦十郎という男は、それを認めないッ!

 

 

「だが俺は…………君を止めるぞ、了子君ッ!」

「…………来い、風鳴弦十郎」

「おおおおおおおッ!!」

 

 

 どこか哀しさを感じさせる雄叫びをあげ、弦十郎が駆け出す。フィーネが右手の鞭を振るって迎撃するが、弦十郎は体を左に動かす事でそれを回避し、続けてフィーネが振るった鞭をジャンプして躱し、天井を蹴って一気に距離を縮めてくる。

 

 

「おおらあああッ!」

「く…………ッ!」

 

 

 右に逸れて躱した拳は床を穿ち、その衝撃がネフシュタンの鎧にヒビを入れる。シンフォギアもドライバーも、果てはガイアメモリすら持たないのにも関わらずに超人的な力を発揮する弦十郎は以前戦った際に身を以て理解していたが、まさかの完全聖遺物であるネフシュタンの鎧ですら、彼の攻撃を無傷で防げないという事実に驚愕しつつ、フィーネは彼から距離を取る。

 

 

「喰らえ…………ッ!」

 

 

 今度は、先程よりも速度を増した同時攻撃。常人は自分が殺された事すら理解出来ずに絶命するであろう速度で迫り来るそれをしかし、

 

 

「ふんッ!」

 

 

 弦十郎は両手で掴み、それらを引っ張ってフィーネの体を無理矢理自分の拳が届く範囲まで引き寄せた。

 

 

「おおおおッ!」

 

 

 固く握り締められた右拳は、防御する暇を与える事無くフィーネの腹部に叩き込まれ、彼女の体を弦十郎の背後に落とした。

 

 

「流石、日本の最終兵器、風鳴弦十郎ね…………。まさか、このネフシュタンの鎧でも防ぎ切れないなんてね…………」

「了子、もうやめよう。こんな戦い、俺はしたくない」

 

 

 殴られた腹部を抑えながらよろよろと立ち上がったフィーネに、弦十郎は構えを解いて、戦いを止めるよう促す。だが、それに対するフィーネの答えは変わらずノーだ。

 

 

「さっきも言ったはずだ。『後戻りは出来ない』と。私達は殺し合わなければならない。私はあの御方の元へ行く為に。お前は人々の平和の為に。どちらかが敗北するまで、この戦いは続くのだ」

「そんな結末、俺は望まない。何度だって喰らいついてやる。お前の考えが変わる、その時までッ!」

「私の悲願は変わらない。今までも、そしてこれからもッ!」

 

 

 殴られた痛みは鎧の超自然回復能力で既に無くなっている。再び振るわれた鞭を避け、フィーネとの距離を縮めていく弦十郎。突き出された拳を間一髪でジャンプで躱したフィーネは短く握った鞭の尖った先端で弦十郎の首を狙うも、彼は手刀でそれを払って防ぐ。

 

 背後に着地したフィーネの姿を視界に収めようと振り向いた瞬間、弦十郎の側頭部にフィーネの蹴りが叩き込まれる。数歩後ずさりながらも追撃として飛んできた鞭を掴んだ弦十郎はそれを引っ張ってフィーネとの距離を縮め、顔面に裏拳を繰り出そうとするも、彼女はそれを片手で防ぐ。

 

 

「はぁッ!」

「がぁ…………ッ!」

 

 

 足払いを躱したところを襲ってくる二本の鞭を手刀で捌き、床を蹴り砕いて目にも留まらぬ速さで懐に潜り込んだ弦十郎の正拳突きが命中し、殴り飛ばされたフィーネの体がエレベーターの扉に叩き付けられる。

 

 

「終わりだ…………了子ッ!」

 

 

 一瞬崩れ落ちるも、すぐに立ち上がったフィーネに、弦十郎は拳を握り締めて飛び上がった。

 

 これから突き出される拳は、直撃すれば間違いなくこの戦いを終わらせられる威力を誇っている。だが、それがフィーネに当たる直前、

 

 

「…………ッ!!」

 

 

 俯かせていた顔を上げたフィーネの表情を見て、弦十郎は無意識に突き出しかけた拳を止めてしまう。

 

 

「――――――」

 

 

 声に出す事無く告げられた言葉の後、あらゆるものを切り裂く刃の鞭が、弦十郎の腹部を貫いた。

 

 

「…………愚かよ。本当に、どこまでも…………」

 

 

 徐々に広がっていく赤黒い泉の中心に倒れ伏す男を見下ろす。その言葉は彼に向けられたものなのか、それとも、自分に向けられたものなのか。はたまた、両者に向けられたものなのか。それを知っているのは、彼の鮮血を滴らせる鞭を握り締める彼女のみ。

 

 

「司令…………ッ!」

「いやあああああああああッ!!」

 

 

 倒れ伏す弦十郎の姿に緒川が声を漏らし、未来が叫び声をあげる中、フィーネは静かに目の前で倒れる弦十郎を見つめていると、呻き声を零して顔を上げた弦十郎と目が合う。

 

 

「了…………子…………」

「しつこいわね。私は『櫻井了子』ではないと、何度言ったらわかってくれるの?」

 

 

 伸ばされた震える手を振り払い、フィーネは弦十郎のポケットから彼のスマホを取り出す。

 

 特異災害対策機動部二課の最深部に存在するアビス。そこにフィーネの求める、ネフシュタンの鎧に次ぐ完全聖遺物であるデュランダルが保管されている。不死身の再生能力を持つネフシュタンの鎧に、万物を絶つデュランダル。この二つが揃った時、フィーネはどんな者でさえ相手にはならない、絶大な力を手に入れるのだ。

 

 

「私はフィーネ。神々の領域へと至る(いにしえ)の塔を以て、人類の相互理解を阻む呪いを解く者。この時を、私は永遠とさえ思える時間の中でずっと待っていた。貴方の感情一つで止められる程、私は甘くないのよ」

 

 

 そう、甘くない。永い時を生きてきた自分にとっては一瞬の出来事の内に出会った人間でしかないこの男に、自分の気持ちを変えられるはずが無い。変えられないはずだ。

 

 

(こんな男に心を惑わされる必要は無い。私が愛しているのは、あの御方ただ一人。だから、これでおしまい)

 

 

 弦十郎の横を通り過ぎる寸前、フィーネは小さく呟いた。

 

 

「…………さようなら、弦十郎君」

 

 

 デュランダルの保管されているアビスへ走り出す。

 

 その頬に、生暖かい雫が伝う事すら気付かずに。

 

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