スタートダッシュからいきなりズッコケてしまいましたが、今後はそういった事が無いよう努力しますので、これからも『死神に鎮魂歌を』をよろしくお願いします!
克己が正式に二課に所属する事が決定した日、克己は弦十郎から「戸籍を作らないか」という提案を受けた。
NEVERの克己にとって戸籍などあるはずもなく、克己本人にとっては戸籍など別にどうでもいい事だったのだが、二課の一員として働く以上、戸籍はあった方が良いという弦十郎の意見には賛成だったので、戸籍は弦十郎に頼む事になった。
そして現在、克己は新しく作られた戸籍に書かれた職務を遂行していた。それは――――――
「今日から体育授業の講師を務める事になった、大道克己だ。よろしく頼む」
そう、体育教師である。
先日のノイズ戦において、人々を護りながらも周囲のノイズを一掃してみせた克己の身のこなしは二課の誰もが目にしていた者であり、克己に体育教師を務めさせる事に反対する者など一人もいなかった。
試しに運動神経の確認の為に幾つかのテストを行い、その中には現役の自衛隊でさえも音を上げるものもあったのだが、克己はこれらを難なくクリアしてしまったのだ。おまけに指導も完璧なため、『これはもう確定でいいだろう』と全会一致で承認された。
それからというもの、平時は《私立リディアン音楽院》の体育教師、ノイズ出現時には『仮面ライダーエターナル』としてノイズ退治に向かうのが克己の日課となった。
初日はもちろん生徒達に良い印象を持たれてはいなかったが、彼の授業を受けている内に生徒達も徐々に心を開いていき、今ではすっかり人気者になっていた。
「私、初めて大道先生を見た時は『男の人に教わるってなんか嫌だな』って思ってたんだけど、今ではそんな事考えてた自分を殴ってやりたいぐらい大道先生が好きになっちゃった!」
「わかる! ちょっと近寄りがたい雰囲気なのがアレだけど、質問すればちゃんと教えてくれるよね!」
「でもさ、ちょっと教え方が厳しくない? 教え方が軍人っぽいっていうかなんというか…………」
「何言ってるのよ。そこがいいじゃん! 厳しい分、達成した時にはちゃんと褒めてくれるし、褒められたら『あぁ、私頑張った!』って思えるんだもん!」
今日も学校のどこかで女子生徒達が克己の話をしているが、当の本人はそんな事など全く気にしていなかった。
(――――――二課に所属したのは正解だったな。俺一人ではこの街の状況を把握するのは不可能だったし、時間はかかっているがT2ガイアメモリの回収も進んでいる)
場所は学校から変わり二課。持て余されていた部屋を弦十郎から与えられた克己の前には、四本のT2ガイアメモリが置かれていた。
(アクセル、バード、ダミーにファングか。適合者は今のところいないようだが、それに越した事はないな)
T2ガイアメモリにはそれぞれのメモリの適合者と強く引かれ合う性質を持っている。適合者以外の人間がT2ガイアメモリを使用してもその能力を発揮する事はないが、厄介なのはT2ガイアメモリと適合者が出会ってしまった時だ。
人間がドライバーなしにガイアメモリの力をその身に宿す方法は、『生体コネクタ』を介して自分の体にガイアメモリの力を注入するものである。ガイアメモリを販売していた組織『ミュージアム』は、ガイアメモリの購入者に拳銃型装置でそのガイアメモリ専用の生体コネクタを施術するのだが、T2にはその過程が必要ない。
一度出会ってしまえば最後、T2ガイアメモリは生体コネクタ無しで適合者の体内に侵入。適合者をドーパント化させてしまう。
二課が調査してもドーパントが出現したという話は聞かないが、それでも適合者がT2ガイアメモリと出会うのは時間の問題だろう。
ただでさえノイズによる被害が出ている中にドーパントまで出てくるとなると、その被害は甚大なものになるだろう。
(万が一ドーパントが出現した時には、その相手は俺がするとしよう)
自分を除いてドーパントの相手をできると考えられるのはシンフォギア装者だけだが、その翼はドーパント戦を経験した事が無い。もしノイズとドーパント、この両者が同時に出現した際は、ドーパントの相手は自分が務める事にしよう。それに、これは一石二鳥とも考えられる。
旧来のガイアメモリであれば話は別だが、T2ガイアメモリはドーパントを倒してもメモリブレイクされる事が無い。ドーパントを倒せば、適合者の体内にあったT2ガイアメモリが排出される。それが戦闘に使えそうなものであれば、即座に戦力とする事ができる。
決して慢心しているわけではないが、エターナルの力はドーパントを軽く凌駕しているため、敗北などありえないだろう。
(昔は人間の欲望を利用して《風都》の連中にT2ガイアメモリを集めさせたが、この街だとそうはできないよな)
どこにあるのかわからない以上、簡単な方法は街の住人を操って集めさせる事だが、そんな事をすれば弦十郎達が黙っていないだろう。二課から追放されるのは可能な限り避けたい。自分が二課に協力すると決めたのは、自分の求める答えを探す以外にもある。それは――――――
「なんだ?」
司令室からの通信が来たので応答すると、今回の雇い主の声が聞こえてきた。
『ノイズが現れた! 至急、現場に向かってくれ!』
「了解だ、ボス」
雇い主の男の声に立ち上がった克己は、目の前のT2ガイアメモリの内二本のメモリを手に取り、自室を出る。
『場所は海岸近くの工場地。翼が向かったが、数が多い。援護に回ってくれ』
《私立リディアン音楽院》から出ながら弦十郎からノイズの出現位置など情報を教えてもらい、大方把握した克己が通信を切ろうとした直後、
『――――――それと、君からの『頼み』についてだが』
通信機越しに告げられた弦十郎の言葉に、克己は思わず足を止めた。
『それらしき人物が監視カメラに映っていた。君と同じ服装の男女だ』
「……人数は?」
『二人だ。残りの二人の捜索もしたいところだが、申し訳ないがノイズの対処が先だ』
「いや、それを聞けただけででも良い収穫だ」
止めた足を動かし、克己は現場へと向かう。その足取りはどこか軽く、顔には僅かながら笑みが浮かんでいた。
『アクセル・マキシマムドライブ!』
腰に装着したロストドライバーのマキシマムスロットに差し込んだアクセルメモリに内包されている『加速』の記憶を解放する。マキシマムドライブは仮面ライダーに変身している状態より些か威力は劣るが、生身でも使用する事ができる。
「仮面『ライダー』と名乗っているのにバイクがないのは、我ながらおかしいな」
『あら、だったら貴方専用のバイクでも作ってあげようかしら?』
「機会があれば頼む。さて、行くか」
常人では決して出せる事のない速さで走り出した克己は、ノイズの出現した場所へと向かう。
――――――その頃、工場地では天羽々斬を装着した翼がノイズと交戦していた。
彼女の背後にはこれまで斬り捨ててきたノイズ達の残骸があるが彼女も無傷という訳ではなく、その体には無数の傷がついていた。
『翼、今克己君をそちらへ向かわせた。今回も以前のように数が多い。苦戦するようなら克己君が駆け付けるまで…………』
「その必要はありません。私だけで対処できます」
通信機越しに聞こえる叔父の声を無視して、翼は胸の内から湧き上がる歌を歌いながらノイズを斬り捨てていく。
自分を囲んだ
「はぁあああッ!」
だがそれで止まるほど、
逆立ちすると同時に脚部に刃を展開。そこから横回転する事で繰り出す技、『逆羅刹』でノイズ達を切り裂いていく。次々とノイズを炭素の塊に変えていく彼女を叩き潰そうとして
一気に上空から落下させた大量の剣によって貫かれたノイズ達が消滅する中、地面を蹴るように走り出した翼は前方にいるもう一体の
『ファング・マキシマムドライブ!』
「オラァッ!」
工場の屋根から飛び出してきた人影が、右手に握ったコンバットナイフで
「獲物を横取りしたか? それはすまなかったな」
「……大道」
エターナルローブを翻して振り抜いたエターナルは、自分を睨むように見つめてくる翼の体を眺め、溜息を吐いた。
「無茶な戦い方をしたな。お前はここから撤退しろ。後は俺が片づける」
「なんだと……?」
「お前については既に調べ上げている。自分がアイドルだという自覚があるのなら、とっととそれ以上の傷を負う前に帰れ」
「……私は剣だ」
「いいや、お前は人間だ。お前の歌は戦いだけに使う為のものじゃない」
『ユニコーン・マキシマムドライブ!』
一角獣の力を宿した拳から放たれたドリル状のエネルギー波が大量のノイズ達を真正面から吹き飛ばし、残り数体となったノイズを青白い斬撃で消滅させる。
ノイズが全滅した事がオペレーターから告げられ、一気に緊迫した空気が緩みかけた指令室だったが、その視線はモニターに映し出されている二人に向けられていた。
「お前の過去は知っている。二年前にライブ会場で起きた惨劇。あの時にお前が相方を失った事もな」
変身を解除した克己が、同じく武装を解いた翼を真っ直ぐに見据える。
二年前、翼がある人物と共に結成したツインヴォーカルユニット『ツヴァイウィング』のライブ中に出現した大量のノイズによって引き起こされた、死傷者・行方不明者が合わせて12874人にのぼる程の大惨事。その被害者の中には翼の相方の名もあり、翼と同じくシンフォギア装者だった彼女は、ライブ会場に現れたノイズ達を一気に消滅させる為、最大最強の攻撃手段『絶唱』を使用した。結果、彼女は絶唱による絶大なバックファイアのダメージが原因で死亡したのである。
「大切な者を失った気持ちは計り知れない。だが、いつまで過去を見続けているつもりだ? そんなに相方――――――天羽奏が大事だったか?」
「…………お前に、なにがわかるッ!」
叫んだ翼が克己の胸倉を掴む。その声色は震えており、瞳からは今にも涙が零れ落ちそうになっていた。
「そうだ。奏は本当に、本当に大切な人だったんだ…………。奏がいたから、私は変われる事ができた」
シンフォギア装者として戦い始めた頃の翼は自分の境遇を悲観的に捉えており、また性格も暗かった。
そんな彼女を変えたのが、天羽奏だった。彼女に励まされ、共に生活する内に翼は自分の使命に気付き成長する事ができた。二人で『ツヴァイウィング』として共に歌ったあの日々は、本当に素晴らしいものだったのだ。
「そんな奏を失った時の私の気持ちがわかるかッ!? 私にとって、奏は私の『光』そのものだったんだッ! この気持ちが、お前にわかるのかッ!? 答えろ、大道克己ッ!!」
何度も克己の体を揺さぶりながら尋ねてくる翼に、克己は、
「わからないな。これっぽっちも」
冷たく、そう言い切った。
「俺はその場にいなかったし、天羽奏が絶唱をしたのも彼女の勝手だ。それは、当時その場にいたお前が一番知っているはずだ」
「でも、私は…………、奏無しには…………」
嗚咽を漏らしながら俯く翼に、克己はある問いかけをする。
「翼、なぜ歌を歌う? なぜ剣を取る? 今のお前が思っている事、そのままに答えろ」
「私が歌う理由…………? …………それは…………」
しばしの沈黙の後、翼はその問いかけに答えた。
「この国を、護る為だ」
ハッキリと自分を見て答えた表情は、嘘偽りのないもの。それを見て克己は失望したように「そうか」と答え、
翼を、殴った。
『克己ッ!』
君付けを忘れる程の怒りの籠った弦十郎の言葉を無視して、克己はなぜ自分が殴られたのかわからないといった表情で自分を見上げる少女を見下ろす。
「わかるか? 今、お前は裏切ったんだ。お前の大切な人を。お前の『光』を」
「裏切った…………私が…………?」
「それだけじゃない。お前の歌を好きでいる連中さえも、お前は裏切っている。過去に囚われ過ぎた結果だ。今のお前は未来を見ようとしていない。過去の輝きに惑わされたんだよ。なぁ、なんで今を生きるお前が、未来を見ていないんだ? これから作られていく未来より、なぜ消えていくしかない過去を見ているんだ?」
屈んで翼と目線を合わせた克己は、頬に当てられている左手を握って自分の胸に押し当てた。
「なにを…………、…………ッ!?」
反射的に彼の手を振り解こうとした翼だったが、彼の手が恐ろしい程に冷たい事に驚き、そして、本来なら感じるはずのものが感じられない事に息を呑んだ。
「こんな
「わ、私、は…………」
口を何度も開閉させて答えられないでいる翼に、克己は怒鳴った。
「――――――生きてるんだろう? お前はまだッ!」
「……ッ!」
どれだけ涙を流そうと、過去は変わらない。過去は過去のまま消えていくのみだ。
だったら、求めろ。未来を。
まだなにも決まっていない、未来をッ!
「過去が消えていくなら、俺はせめて明日が欲しいッ! だから俺は足掻き続けてるんだよッ!!」
克己の言葉が脳内で何度も反復する。
ドクンッ、と心臓が、
「過去に抗え、翼。お前がなぜ歌うのか、その意味を理解するその時が、お前が抗った瞬間だ」
立ち上がった克己が、手を差し伸べてくる。その手を取ろうとして、翼は自分の体に起きた異変に気付いた。
「? どうした?」
「すまん…………、腰が抜けた」
多くの衝撃を受けたからだろうか、腰が抜けて立てなくなった翼に一瞬呆然とした克己だったが、やがて「仕方ないな」と翼を抱え上げた。
「うえぇッ!? だ、大道ッ!?」
腕を太ももの裏に、もう片方の腕を腰よりも少し上の背中に回されている状態――――――所謂お姫様抱っこをされた翼の顔がボッと赤くなる中、克己は司令部に通信を行う。
「ボス、遅れて報告するが、ノイズの殲滅を完了した。これより帰投する」
『あ、あぁ。気を付けて戻ってこい』
『あらあら、羨ましいわね~♪』
克己がお姫様抱っこをするとは予想していなかった弦十郎の動揺した声、了子の茶化すような声を聞きながら歩き始めると、案の定「お、下ろしてくれッ!」と翼が暴れ始めた。
「今下ろしても歩けないだろ。大人しくしてろ」
「~~~~~ッ!」
反論しようにも克己の言っている事は事実なため、暴れるのをやめた翼は彼に余計な負担をかけない為に克己の首に自分の腕を回し、大人しくお姫様抱っこされるのだった。
「……すまなかった。顔を殴ったりして」
「ん……大丈夫だ、大道の責任じゃない。…………大道」
「なんだ?」
「……ありがとう。私が戦う意味は、奏にほとんど依存していた。これからは、私自身が決めるんだな。何の為に、私は歌を歌うのかを」
「その答えは、案外近くにあるかもしれない。注意深く探す事だな」
「あぁ、そうさせてもらう」
月明かりが照らす中、翼は自分の背中に回された手を
(…………温かいな)
寒気がする程冷たかった彼の手は、なぜか今はとても温かかった。
「――――――来たか、克己君」
疲れていたのか、本部に戻る途中に眠ってしまった翼を念の為にメディカルルームに預けてきた克己が司令室に入ると、弦十郎が出迎えてきた。
「あぁ。さぁ、早く見せてくれ」
「もちろんだとも。…………モニターに映してくれ」
弦十郎の指示に従い、キーボードを叩く音が響く。
やがてモニターに監視カメラの映像が表示され、最初は粗かった映像が徐々に鮮明になっていき、二人の男女の顔が露になる。
「彼らに見覚えはあるか?」
「あぁ…………、もちろんだ」
「では、彼らの名は?」
今でも信じられない。彼が、彼女が、こうしてこの街にいるだなんて。
心に湧き上がる温かいなにかを感じながら、克己は彼らの名を口にした。
「泉京水に、羽原レイカ。あいつらは…………俺の部下だ」
※後日のSAKIMORI
「はわわ……! 腰が抜けていたとはいえ、まさか二課までお姫様抱っこされていたなんて、今思い出すと死ぬほど恥ずかしい…………!」
「翼さん、最後は寝ちゃってましたね。とても可愛らしい寝顔でしたよ」
「そうね、思わず写真撮っちゃったわ。これから克己君にあげるつもりなんだけど、なんなら貴女が直に渡しちゃう?」
「そんな地獄は嫌です!」
・・・
この小説を書くにあたって、シンフォギアXDをインストールしました。メインストーリーで原作を追体験できるという話を聞いたのでインストールしてプレイしてみましたが、とても楽しかったですし、ガチャもほとんどが11連で星5が確定で一枚排出されますので、まだインストールしていない方は是非是非(*・ω・)