アズールレーンでイベント海域を周回していた遅れてしまいました…………申し訳ありません…………。それでは本編、どうぞッ!
『フィーネ』がアジトにしていた施設で『フィーネ』を構成するメンバー達と交戦した日から数日経った頃、二課の仮本部である潜水艦内の司令室に集められた響達は、フィーネからある説明を受けていた。
説明の内容は、響達とギアの適合率が減少した原因となった霧と、施設内で彼らが遭遇した正体不明の怪物についてである。
「あの施設内に充満していた霧の正体はLiNKERの成分を反転させ、霧状にして散布したものだという事がわかったわ。克己君達に影響は無かったし、効力を受けていたのは装者達だけだったから、容易に判断できたわ。『Anti_LiNKER』、といったところかしらね」
「これがまた使われる可能性はあるんですか?」
響の質問に首を横に振るフィーネ。
「無い、と断言はできないけど、可能性は低いわね。向こうにも装者がいる以上、無闇に使うのは愚の骨頂よ。自分達の戦力を削る事になってしまうから。それに向こうの装者達は、貴女達と違ってLiNKERを使わなきゃギアを纏えないわ」
「彼女達は奏と同じという事ですか?」
今は亡き相棒の姿を思い出す翼に頷く。
「奏ちゃんと同じく、彼女達のギアとの適合係数は低いと考えて間違いないわ。じゃなきゃ『時限式』なんて言わないもの。…………そして、響ちゃん達が遭遇した怪物。そいつの正体も掴めたわ」
フィーネの言葉を待っていたかのように、数日前響達が遭遇した異形の怪物がモニターに映し出される。
「怪物の名は、『ネフィリム』。生物のように自ら成長していく特異な性質を持つ完全聖遺物よ」
「はぁッ!? あれも聖遺物なのかよッ!?」
「意思を持つ聖遺物が存在するのか…………」
「戦闘力もそれなりにはあるけど、それよりも警戒すべきはこいつの性質。ネフィリムは聖遺物と生物の特徴を兼ね備える存在で、生物である以上、『食事』というものが必要になってくるわ。そして、その食糧というのが…………」
響達が首元に下げているペンダントを指差すフィーネに、「なんだとッ!?」と弦十郎が驚愕する。
「まさか、聖遺物が餌だと言うのかッ!?」
「その通りよ。ネフィリムの食糧は、自分と同じ聖遺物。あいつから見れば、聖遺物を身に纏って戦う装者達は格好の餌よ。貴女達、運が良かったわね。克己君達がいなかったら、最悪誰かがあいつに喰われてたかもしれないんだから」
もしあの時、克己達がいなかったらと考えて装者達がゾッとしている間にも、フィーネはネフィリムの説明を続ける。
「元々は『堕ちた巨人』を意味する『ネフィル』って名前だったんだけど、響ちゃん達が遭遇したのは、種族間での共食いの末、他のネフィルを取り込んで『一にして全』として完成された個体でしょうね」
「あんなのが昔はわんさかいたってのかよ…………。想像したくもねぇ」
「完成されているとはいえ、一体しか存在していない事は幸いね。複数で来られたら『最悪』の一言に尽きるもの」
「ですが、それでも脅威という事には変わりはありません。早速訓練を…………」
「いや、お前達、今日はもう休め」
「なんでだよ? 向こうがどんだけ危険な存在を抱えているのがわかってるってのに、訓練もさせてくれないのか?」
シミュレーションルームに向かおうとした翼を止める弦十郎に、クリスが問う。
「そうは言うが、お前達、明日は学祭だろう?」
「そういえば…………」
フィーネからもたらされる情報の内容が思考の大部分を占めていた故に完全に抜け落ちてしまっていたが、明日は響達が通う《私立リディアン音楽院》の学園祭――――――『秋桜祭』当日なのだ。
「体をゆっくり休めるのも大切な事だ。明日に疲れを残しては、せっかくの学祭が楽しめないぞ」
「後の事は私達に任せておきなさい」
「わかりました。じゃあ明日は、目一杯楽しんできますッ!」
三人の少女が司令室から出ていき、大人達が残される。
「改めて思うけど、今回の敵もかなり厄介ね」
「聖遺物を喰って成長するネフィリム…………。絶対に響達に相手させたくないわ」
「それに加えて、あの仮面ライダーだ。あの野郎、戦っている間にどんどん強くなってやがる」
ネフィリムの他にも警戒すべき者の名を挙げると、「その事なんだけど」とフィーネが口を開く。
「イクシードの硬さは私も殴ってみて理解したけど、常人が絶えず進化し続ける力を振るい続ける事なんて出来るのかしら? 装甲自体が自発的に成長して変身者の肉体を動かしているだけかもしれないけど」
「いや、その可能性は無いだろう。翼に首元を攻撃された時、奴は『
学習されたとなると、今後、翼が行った攻撃手段で首元を狙うのは難しくなるだろう。弱点はそこだけではないとはいえ、また一つ、イクシードに対する有効打が無くなってしまった。
「だが、そうとなると別の問題が出てくるんじゃないのか? ライダーシステム自体が進化しているならまだしも、変身しているのは人間だぞ? 人間がシステムと同じ速さで成長できるとは到底思えないのだが」
「当然よ。もしそうだったら人類の文明は今の数千倍も発展しているわ。それこそ、ノイズに対抗しうる武器を簡単に量産できるくらい。…………克己君、レイカちゃん」
「なんだ?」
「彼と二度交戦した貴方達に訊きたいんだけど、彼に攻撃した時、痛がったりしてた?」
「後ずさりして怯みこそすれど、痛がったりする様子は無かったな」
「えぇ、翼の時もそうだったけど、あいつは急所に攻撃を受けても、全く動じずに反撃してきたわ」
「…………これは推測に過ぎないのだけれど…………」
フィーネが脳内で組み立てた仮説を口にすると、それを聞いた全員が驚愕する。
「まさか、そんな事があり得るのか…………?」
「あくまで可能性の話だけどね。だけど、F.I.Sにはそれを専門にしているグループも存在しているわ。今はどうかは知らないけどね」
「でも、もしそれが正しかったら…………」
京水に頷き、フィーネは緊迫した声色で言う。
「仮面ライダーイクシード…………いえ、ケアン・ディークスは、向こうに所属する誰よりも危険な存在よ」
――――――一夜明け、『秋桜祭』当日。
「学祭か…………。もう二度と参加する事は無いと思っていたが、まさかこんな形で参加するとはな」
出店で購入したタコ焼きを手に、克己は校内を巡回していた。
生前の記憶はほとんど失われてしまっているが、学園祭に参加したという記憶は薄っすらと覚えている。それが自分の通っていた学校のものか、それとも別の学校にものかは定かではないが。
「ん…………?」
足を止め、振り返る。
そこには楽しそうに今後の予定を話し合っている生徒や参加者の姿があるのみで、「気のせいか」と小さく呟いて、克己は止めていた足を動かし始めた。
「――――――あ、危なかったデス…………」
克己が人混みの中に消えていくのを確認し、切歌はホッと胸を撫で下ろした。
「やっぱり、これを着けてると気付かれないね」
切歌の隣にいた調が額縁眼鏡をクイッと押し上げる。
武装集団『フィーネ』に所属し、現在二課と敵対している彼女達が、二課に所属している戦士が在籍している《私立リディアン音楽院》に、なんの変装もせずに訪れるはずがない。
二人が身に着けているのは、『潜入する美人な捜査官が身に着ける眼鏡』――――――略称『潜入美人捜査官メガネ』である。かつて、幾つもの国々に凄腕と畏れられたある女性捜査官が使用していたとされるそれを着用すればあら不思議、誰に見咎められる事無く目的地までの到達が可能となるのだ。外見的には全く変化が無いというのになぜバレないのかについては詮索してはいけない。
「それはそうと切ちゃん、私達がここに来た目的、ちゃんと覚えてるよね?」
「決まってるデス。ズバリ、『学祭を全力で楽し――――――」
「じ~~~…………」
「て、『敵のギアのペンダントを手に入れる』デス…………」
「うんうん、ちゃんと理解してて偉い。だから、その『学院内の旨いもんマップ』はおしまい」
「えぇッ!? い、嫌デスよッ! すぐそこのお店で食べれば完成デスよッ!?」
片手に持っていたマップを握り締める親友を見て、調は「はぁ…………」とため息を吐く。
「いいよ。まずはマップを完成させよ? それが終わったら、ちゃんと任務に戻ろうね」
「調…………ッ! 感謝デスッ!」
満面の笑みを浮かべる切歌を見て、「やっぱりこの笑顔には敵わない…………」と調はボソリと零すのだった。
――――――一方その頃、切歌と調が学院に来ているという事を知らない翼が廊下を歩いていると、突然曲がり角から飛び出してきた人影とぶつかっていた。
「痛ったぁ~…………」
「またしても雪音か…………。今度は誰に追われてるんだ?」
「この前と同じだよ…………。ったく、あたしは参加したくねぇって言ってるのによぉ…………」
「見つけたッ! 雪音さんッ!」
その時、クリスが飛び出してきた曲がり角から数人の女子生徒が現れる。以前、クリスを追いかけていた女子生徒達だ。
「お願いッ! 登壇まで時間が無いのッ!」
「いったいどうしたんだ?」
「ステージ予定してた子が急に都合がつかなくなったから、雪音さんに代わりに歌ってほしくて…………」
「だからって、なんであたしがッ! あたしは歌なんて…………」
「だって雪音さん、音楽の授業の時、凄く楽しそうに歌ってたからッ!」
「う…………」
「だから、代役は雪音さんしかないと思って」
「いきなり歌えなんて言われて、歌えるものかよ…………」
そんなに期待されても困る、と言いたげに目を伏せたクリスに翼が問う。
「雪音は歌が嫌いなのか?」
「あ、あたしは歌なんて…………その…………。…………嫌いじゃない、けど」
「…………出てやったらどうだ?」
「…………クソッ」
悪態を吐きながらも、クリスは渋々とクラスメイト達の頼みを承諾してくれた。
「時間も迫っているのなら、急いだ方が良さそうだな」
「はいッ!」
「なんで、こんな事に…………」
ブツブツとそんな事を呟きながらも、クリスは翼やクラスメイトと共に、カラオケ大会が開かれている大ホールへと向かうのだった。
「――――――みんな惜しかったね。勝ち抜けば悲願達成だったのに」
カラオケ大会の観客として大ホールに来ていた響が、惨敗に終わってしまった友人達への労いの言葉を口にすると、「そうね」と隣に座っていた京水が答える。
「でも、敗北も悪いものじゃないわ。あの子達には敗北を糧に、次回に活かしてもらいたいわね」
「あ、やっぱりそう思います? …………ていうか、京水さんはここにいていいんですか?」
京水と響を挟む形で座っている未来の質問に「いいのよ」と答える。
「最初はボス達を手伝おうかと思ってたんだけど、ボス直々に『お前達も休め』なんて言われちゃったから、NEVER総出で貴女達のいる学院に来たわけ。ここは広いからみんなバラバラになって行動してるけど、もしかしたらどこかでバッタリ出くわすかもね。…………あ、次の挑戦者が来るみたいよ」
大ホールが新たな挑戦者を迎える歓声と拍手の音に包まれ、響達がスポットライトが当てられているステージに目を向けると、そこには普段ならこういったイベントの参加は絶対に断るであろう少女が立っていた。
「響、あれって…………ッ!」
「うっそぉ~ッ!」
「あら、あの子も挑戦するなんて意外ね」
そこにクリスと別れた翼がやって来る。
「雪音だ。《私立リディアン音楽院》、二回生の雪音クリスだ」
大ホールに集まった人々の視線が注がれて固まっているクリスは、しばらく俯いていた。
(――――――成り行きで連れてこられちまったが、いきなりこんなところで歌えるかよ…………)
スポットライトと観客の視線を一身に浴びてクリスが穴があったら入りたい気持ちになっていると、自分をここまで連れてきたクラスメイト達が舞台袖から見つめている事に気付く。
静まり返っているため、自然と抑えられた声で「頑張って」と応援してくれていた。
それで少しは気分が軽くなり、マイクを握る力を強める。
「――――――誰かに手を差し伸べて貰って」
静かに歌い出し始める。
大ホールに設置された席を埋め尽くす程の観客数だ。恥ずかしさはもちろんある。
「――――――
だが、一度歌い出せば、もはやその口は止まらない。そして、先程まで感じていた恥ずかしさも、徐々に消えていく。
「――――――モノクロームの未来予想図 絵具を探して」
彼女の歌声に、誰もが魅了されていく。克己達も、大ホールに来ていた切歌と調も、敵味方の区別も無く。ただただ、彼女の歌声に身を委ねる。
「――――――…………でも今は 何故だろう、何故だろう」
ふと、学院に転入したばかりの頃を思い出す。
全く新しい環境に投げ出された自分を気にかけて、食事に誘ってくれたクラスメイト達。
「――――――色付くよゆっくりと 花が虹に誇って咲くみたいに」
彼女達の気持ちを知りながらも、自分はずっと彼女達を避け続けていた。
でも、彼女達はそれでも、こんな自分との距離を縮めようと、彼女達なりの努力をしてきた。
それが今は、本当に嬉しい。
「――――――放課後のチャイムに 混じった風が吹き抜ける」
一人で黙々と食事を取っていた時、そこを通りかかった一人の教師が、小さく口にした言葉。
『勇気を持って、前に進め。誰かと関わりを持つのは、素晴らしい事だ』と。
それはきっと、彼が表向きとはいえ『教師』という立場に立つ者の一人として言った言葉なのだろう。だけど、その言葉は、自分に一歩踏み出す勇気をくれた。
「――――――感じた事無い居心地のよさにまだ戸惑ってるよ」
今はただ、感謝を。それだけを歌声に乗せ、これを聞く者達に届ける。
音楽の授業では、無意識に笑顔になっていた。授業中で無意識に笑顔になっていたのはとても恥ずかしかったが、今はそんな気持ちなどこれっぽちも無い。
「――――――ねぇこんな空が高いと 笑顔がね…………隠せない」
大ホールに連れてこられる前、クラスメイト達が言っていた。『雪音さんはいつも、凄く楽しそうに歌っている』と。
あぁ、そうだ。歌を歌っている間は、辛い事を思い出す事など無く、ただ『楽しい』という気持ちでいっぱいだった。
「――――――笑ってもいいのかな 許してもらえるのかな」
数ヶ月前までは、歌が嫌いで仕方なかった。大好きな父と母を死に誘ったものだと、憎しみさえ覚えていた。だけど、それは偽りのものだった。
どれだけ憎いと思おうとしても、憎み切れなかった。
それは、自分がどうしようもなく、歌が大好きだという事に他ならなかった。
「――――――あたしはあたしの せいいっぱい、せいいっぱい…………」
だから今は、自分が大好きな歌を歌い続ける。
こんなに楽しい事を、やめられるはずがない。いや、やめたくない。
「――――――こころから、こころから…………あるがままにうたってもいいのかな…………!」
溜めに溜めた想いを、一気に解き放つ。
「――――――太陽が教室へとさす光が眩しかった」
そのフレーズに、誰もが幻視する。
快晴の青空の下、花畑に腰を下ろして、幸せそうに微笑むクリスの姿を。
「――――――雪解けのように何故か涙が溢れて止まらないよ」
それはきっと、彼女が心に描く景色。
暗い感情など欠片も存在しない、ただ『幸せ』のみが存在する世界。
「――――――こんなこんな暖かいんだ…………」
花吹雪を纏って、柔らかな風に髪を靡かせる。
人々が幻視する景色。それこそが『雪音クリス』という少女の歌に籠められた、ありのままの感情。
「――――――あたしの帰る場所」
そしてそれは、同時に彼女が長い間求め続けた場所でもある。
「――――――あたしの帰る場所」
絶望も恐怖も無い、幸せに満ちた場所。そこが、クリスの帰る場所なのである。
(楽しいな…………。あたし、こんなに楽しく歌えるんだ…………。…………そっか、ここはきっと…………)
これまで例を観ない程の称賛を浴びながら、自分の気持ちを出し尽くしたクリスの表情は――――――
(あたしが…………いてもいいところなんだ…………)
ただ、幸せに満ち足りていた。
「――――――勝ち抜きステージ、新チャンピオン誕生ッ!」
クリスの歌声に魅了された審査員も観客達も満場一致で、クリスが今回のカラオケ大会のチャンピオンに決定する。
先程までとは打って変わって、消えていた恥ずかしさが再燃して顔が熱くなるクリスだが、そんな事はお構いなしに司会が観客席を見渡しながら叫ぶ。
「さぁ、次なる挑戦者はッ!? 飛び入りも大歓迎ですよッ!」
だが、その呼びかけに答える者は現れない。
それもそうだろう。あそこまでの歌を聴かされては、尻込みしてしまうのも仕方ないと言える。
否――――――
「やるデスッ!」
ここに、二人いる。
「なッ、あいつら…………ッ!?」
スポットライトが当てられた二人の少女――――――切歌と調を見て、クリスが驚愕の声を上げた。
教室モノクローム…………クリスちゃんの歌ではトップに入るぐらい好きな曲です。可愛くて歌も上手い、オマケにナイスボディ…………完璧ですなクリスちゃんッ!
そして次回、マリアとケアンが…………? 乞うご期待ッ!