死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 お気に入り登録者五十人超え、ありがとうございます!
 
 今回は響サイド! そして克己を除くNEVERのメンバーの内二人が登場します!





 六千文字ぐらいならまだしも、流石に一万文字はキチィ…………(GAME OVER)。



幻想の凍炎、蘇る神槍

 ――――――私にとって、『歌』とはなんだろうか。

 

 二課の廊下を歩きながら、翼は思考を巡らせる。

 

 大道克己に自分の無茶な戦い方を責められ、『奏を裏切った』と告げられたあの日からというもの、翼は自分がなぜ歌うのかという問いを繰り返していた。

 

 

(私は幼き頃よりこの身を剣として鍛え上げてきた。この国を護る防人として、それを脅かすノイズを殲滅せしめる為に、この剣――――――天羽々斬を手に取った)

 

 

 胸から下がるペンダントに手を当てる。これこそ、ノイズと戦う為に振るう剣にして、この国を護る鎧。これを振るい、ノイズを駆逐する為に必要なものこそ『歌』であるのだが、それの意味を理解できなくては刃も鈍るというもの。

 

 シミュレーションルームでの仮想ノイズとの戦闘でも、自分の胸になにかがつっかえているような気がしてまるで集中できない。

 

 答えが見えそうで見えない、このもどかしい現状をなんとかしたいのに、その方法が全く思いつかない。

 

 マネージャーにして二課のエージェントの緒川慎次に聞いてみても、

 

 

『それこそ、翼さん自身が見つける事だと思いますよ』

 

 

 と返されてしまった。

 

 

(誰かに頼って答えを与えてもらうのは駄目だ。それでは昔の私と変わらないではないか)

 

 

 それでも、いざ自分と向き合うとなるとどうすればいいかわからないのが現状だ。なにか、自分が自分と向き合えるような切っ掛けがあればいいのだが――――――

 

 

「……ッ! この音は……ッ!」

 

 

 突如として廊下に響き渡るサイレン音。この音は最近何度も聞いてきた、本来であれば聞き慣れたはいけないもの。

 

 すぐに司令室へ向かうと、既にそこは緊迫した空気に満ちており、そこかしこからキーボードを叩く音が聞こえてくる。

 

 

「叔父様、これは…………」

「来たか、翼。ノイズが現れた、場所は市街地だ。早速、克己君と一緒に現場へ――――――」

「市街地に、ノイズと異なる高出力エネルギー反応を検知ッ! その数、三つッ!」

「なんだとッ!?」

 

 

 自分の声を遮って報告された情報に驚愕した弦十郎の隣で了子が即座にオペレーターに叫ぶ。

 

 

「波長の照合はッ!?」

「照合、完了しましたッ! これは…………アウフヴァッヘン波形ですッ!」

「アウフヴァッヘン波形だとッ!? という事は…………」

 

 

 アウフヴァッヘン波形。聖遺物、または聖遺物の欠片が歌の力によって起動する際に発生するエネルギーの特殊な波形パターン。それが検出されたという事は…………

 

 

(まさか…………)

 

 

 翼がモニターに目を向ける。すると、それを待っていたかのようにモニターに検出されたアウフヴァッヘン波形の源の名が表示される。

 

 

《code:GUNGNIR(ガングニール)

「GUNGNIRだとォッ!?」

 

 

 弦十郎の驚愕に染め上げられた声を皮切りに司令室内にどよめきが満ちる。

 

 『ガングニール』。一度投げれば必ず標的を貫き、自動的に所有者の元へ戻るとされる、北欧神話の主神オーディンが振るう神槍。

 

 しかし、その聖遺物の名は、

 

 

(でもあれは、奏の…………)

 

 

 二年前のツヴァイウィングのライブ会場で起こった惨劇によって失われたはずの聖遺物の名前。翼の相方だったシンフォギア装者、天羽奏が纏っていたシンフォギアの名前だ。

 

 モニターに映し出されたその名を目にした翼の心は凄まじい衝撃を受けていたが、体は自然とガングニールのエネルギーが検出された場所へと向かっていった。

 

 

「おい、待てッ!」

 

 

 いきなり司令室を出ようとしている翼を追おうと克己が振り返ろうとした直後、ガングニールの名が表示されているモニターにある映像が表示された。

 

 監視カメラの映像だろうか、震える小さな女の子の前で自分の体に起こった変化に驚いている少女が映っている。外見を見るに、あれがガングニールの装者だろう。だが、克己の意識は彼女に向けられてはいなかった。

 

 伸縮自在の両腕を鞭のようにしならせる、月明かりのような黄色い体色を持つ怪人に、口元や体つきが女性のそれである、赤い体色の火炎のような怪人。

 

 

(あいつらは、まさかッ!?)

 

 

 克己が驚愕に身を強張らせる中、ガングニールの少女の両隣に立つ二体の異形は眼前のノイズ達の戦闘を開始した。

 

 

 

 

 ――――――時は聖遺物ガングニールが起動する前日まで遡る。

 

 

「えぇっと、今日の晩御飯に必要な食材はコレで全部だっけ?」

「うん。だけどごめんね、響。買い出しに付き合ってもらっちゃって…………」

「全然大丈夫だよ! あ、荷物は私が持つよ」

「ありがとう、響」

 

 

 スーパーから出てきた黒髪の少女――――――小日向未来の持っていた食材が詰め込まれたビニール袋を受け取った少女――――――立花響は、未来からの感謝の言葉に「えへへ」と朗らかに笑う。

 

 

「このくらいへいき、へっちゃらだよ。だって、未来が美味しいご飯を作ってくれるんだもん。これくらいはしないとね」

「もう、響ったら。そんな事言われたら頑張りたくなっちゃうじゃない」

 

 

 二人して笑い合って歩き始めると、「そういえば」と未来が今日起こった出来事を口にする。

 

 

「今日も響、授業に遅れたよね。今日はどうして遅刻したんだっけ?」

「えっとね、猫を助けてたの。高い所には登ったけど、降りられなくて困ってるようだったからさ」

「それ、この前もしてなかった? また助けたの?」

「もちろんだよ。困ってるようだったからほっとけなくて」

 

 

 響の趣味は『人助け』である。今回はどうにかして木に登った猫を降ろそうとしていた同級生の頼みを聞いて猫を助けはしたのだが、その結果授業に間に合わずに遅刻。なんとか気付かれないように生徒の列に入ろうとするも結局教師にバレてしまい、雷を落とされてしまったのだ。ちなみに響が《私立リディアン音楽院》で猫を助けた結果授業に遅れたのはこれで二回目である。

 

 

「人助けをするのは良い事だけど、それも程々にしないといけないよ。ただでさえ響の成績はあまり良くないんだから、ちゃんと勉強に集中しないと」

「うっ、痛い所を突かれた…………。うぅ、私ってやっぱり呪われてるのかな」

 

 

 がくりと肩を落としたその時、響の胃が大きな鳴き声を上げた。反射的に腹部を押さえて周りの人々に聞かれていないか辺りを見渡す響の姿に、未来は思わず笑い声を漏らす。

 

 

「…………ごめん、ちょっとそこのコンビニでおにぎり買ってきてもいい?」

「大丈夫だよ。でも買い過ぎないようにね。帰ったら夕食なんだから」

「は~~い!」

 

 

 そうしてコンビニに入った響がものの数分で出てくると、その手にはツナマヨと明太子おにぎりが握られていた。響からすれば今すぐにでも食べたかったが、道路の真ん中で食べるのはどうかと思うという未来の意見に従って、近くの公園に腰かけて食べる事にする。

 

 だが、そこには――――――

 

 

「もう、お金が無いんじゃ食べ物が買えないじゃない! この公園にも一応食べれる植物とかはあったけど、もう限界よッ!」

「うるさい、黙って。いや、やっぱり喋ってて。あんたが喋ってれば少しは空腹を紛らわせるかもしれないから」

「んまぁ、貴女ってば酷い人! 貴女がワタシの声で空腹を紛らわせている間、ワタシのお腹は現在進行形でどんどん減っていくのよ?」

「ああもう、お風呂に入りたい。出来る事ならベッドも欲しい。傭兵の私達にそういうのは似合わないってわかってても、それでもやっぱり欲しい。水はもううんざりなのよ、水は」

「おっしゃるとおりだわあああああッ!」

 

 

 『食べ物を下さい』と書かれた段ボール箱に後ろでひたすら大声で叫ぶ男性と、その隣でうんざりした様子で腹部を押さえている女性がいた。黒を基調とした服を着込んでいる二人の表情はやつれており、特に男性の方は女性よりも酷かった。女性に言われた通りに叫び続けたのが原因だろうか。

 

 

「あっ、もう周囲からの視線が痛いッ! ワタシ達を完全に不審者だと思ってる目だわアレッ! いいわよ、そんなに見たいなら気が済むまで見ればいいじゃないッ! あ、でも警察は呼ばないでくださいお願いします」

「いきなり声のトーン落とさないで。ほら、叫ぶ」

「痛いッ! 皆さん、これをやめてほしければ食べ物を恵んでくださああああああああいッッ!!」

 

 

 げしっ、と蹴られた男性が再び叫び始める。

 

 周りからの視線を物ともせずに叫び続ける彼の周りにいる人々はあからさまに彼らを避けるように通り過ぎていき、彼の『食べ物を恵んでほしい』という要望に応える人はいなかった。――――――否、ここに一人だけいた。

 

 

「あの、これで良ければ…………」

 

 

 他とは違い、自ら進んで彼らに近付いていった響からおずおずと差し出されたおにぎりを見て、先程まで叫び声をあげていた男性は一瞬で口を閉じ、女性の視線もおにぎりに釘付けになる。

 

 

「嘘、本当にくれるの?」

「お腹減ってるんですよね? 手元にあるのはこれぐらいしかありませんが、それでもいいのなら…………」

「…………あんた、『神』って言われた事ない?」

「え? な、ないですけど…………」

「でもワタシ達にとって貴女は神、救世主よッ! 本当にありがとうッ!」

「あっ、こら! そっちは私のものよッ!」

 

 

 二人は響から受け取ったおにぎりを飲み込むように頬張り、ものの数秒で完食した二人の顔には生気が戻っており、その表情は幸せに満ちていた。

 

 

「本当にありがとう、貴女はワタシ達の恩人だわ。なにかお礼をしたいんだけど、この通りなにも持ってないの。本当にごめんね」

「こいつと考えてる事が同じってのは癪に障るけど、本当にごめんなさい。お礼がしたいは私もだけど、本当になにもないから…………」

「いえいえ、大丈夫ですよ。私、人助けが趣味なんです。私がした事で誰かが喜んでくれれば、私は嬉しいんです」

「んまぁ、聞いた? この子、凄いイケメンだわ。女なのにイケメンオーラがんっがん放出してるわッ!」

「あんたはもう喋んなくていい。またお腹減らすわよ」

「あら、辛辣。――――――改めて言うけど、本当にありがとう。助かったわ。それに、なんだか貴女とはまた会いそうな気がするわ。良ければ名前を教えてくれない?」

「立花響です。《私立リディアン音楽院》の生徒です」

 

 

 響が自己紹介をすると、今度は二人が自己紹介を始める。

 

 

「響ちゃん、良い名前ね。ワタシは泉京水。そしてこっちが――――――」

「羽原レイカよ。よろしくね、響」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「えぇ、それじゃあ私達は行くわね。探さなきゃいけないものがあるから」

「あっ、それなら…………」

 

 

 私も、と言い出しかけたところで京水がチッチッチと立てた人差し指を左右に動かす。

 

 

「悪いけどこれはワタシ達がするべき事。響ちゃんは手伝わなくて大丈夫よ。それに…………」

 

 

 響の肩を掴んだ京水が響を180度回転させる。不思議なまでの手の冷たさに「ヒェッ」となってされるがままに回転させられた響の目には、少し離れた所から自分を見つめてくる未来の姿が映った。

 

 

「あの子、貴女がワタシ達と話してる間、ずっと心配そうに見てたのよ? 早く戻って安心させてあげなさい」

「は、はい」

「それなら良し! それじゃあ、バイバ~イ!」

 

 

 ひらひらと手を振って夕方の街へ向かっていく彼らに、響は「さようなら~ッ!」と彼らの姿が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。

 

 

 

 

「――――――なんか、改めて思い返してみると凄い人達だったなぁ」

 

 

 翌日の《私立リディアン音楽院》の食堂。響はそう呟きながら白米を口に含んだ。その前でドレッシングがかけられた野菜を食べた未来が、心配そうに響に尋ねてくる。

 

 

「あの時名前を教えちゃってよかったの? それに学校の名前まで…………」

「うん。あの後私もそう思ったんだけど、不思議と大丈夫だって思えてさ」

「根拠は?」

「よくわからないんだけど、あの人達は悪い事はしないって思えるんだよね。もしやってたとしても、根はきっと優しい人達だと思ったの」

「まぁ、そこは私も否定しないけどさ…………」

 

 

 そこで未来は「そういえば」と食事を中断して話題を変える。

 

 

「今日発売の翼さんのCD、人気が凄くて品切れ続出だって」

「そりゃ、翼さんの新曲だもん…………って、えぇッ!? 本当にッ!? たたたた大変だぁッ!」

「う・そ。響ってば朝からずっと翼さんのCDの事話してたでしょ? 驚いてる響ってば可愛いなぁ♪」

 

 

 クスクスと笑う未来にぷくぅと頬を膨らませる響。

 

 そう、今日は風鳴翼の新曲が収録されたCDの発売日なのだ。雑誌によると今回は初回特典の充実度が高いようで、それをなんとしてでも手に入れたい響にとってはそのCDが放課後まで売り切れていないかが心配で堪らないのである。

 

 響が翼のファンになった日。それは奇しくも、あの二年前のツヴァイウィングのライブ会場にノイズが大量発生した日だった。

 

 当時家庭の事情で未来が来れなくなってしまったため、一人でライブを観る事になった響だったのだが、その後のツヴァイウィングの曲に一瞬で魅せられたのだ。

 

 しかし、そこに大量のノイズが出現し、事態は急変した。

 

 周囲から聞こえる絶望の叫びが聞こえる中、響はノイズと、ノイズから人々を護るべく立ち上がった天羽奏と風鳴翼の戦いに巻き込まれ、胸に深い傷を負ってしまった。

 

 通常ならばあり得ない形状をした、(フォルテ)の傷は今でも胸に残っている。

 

 その時から響は、あの時いったいなにが原因であのような惨劇が起こってしまったのか。あの時翼達が纏っていたものはなんだったのか。それが気になって仕方なかった。

 

 翼に会えればあの時の事を訊けるかもしれない。響がこの学校に入学した理由の一つに、それはあった。

 

 すると、噂をすればなんとやらか。その本人が食堂に足を踏み入れてきた。

 

 

「ねぇ、風鳴翼よ…………」

「芸能人オーラ出まくりで、近寄り難くて――――――」

「孤高の歌姫といったところよね」

「え、翼さんッ!?」

 

 

 思わず椅子から立ち上がって見ると、確かに風鳴翼がそこにいた。その姿を視界に収めるや否や、彼女の前に躍り出る響。

 

 

「…………あ、ああ、あの、その…………」

 

 

 しかし、自分がなにを言おうとしていたのかをすっかり忘れてしまい、しどろもどろになってしまった。

 

 

(ど、どどどどうしよう、心の準備…………。二年前のお礼…………違う、私、訊かないと…………)

「…………頬、ついてる」

「え…………?」

 

 

 翼が自分の頬を突きながら言ったその言葉に理解できずに呆けていると、未来が小声で自分の頬にご飯粒がついている事を教えてくれた。

 

 

「…………あ。あああ…………ッ!」

「食事は落ち着いて食べる事だ」

 

 

 すぐに頬についたご飯粒を取っている間に翼は隣を通り過ぎていってしまった。それでも声をかけよう振り返った響の前には、

 

 

「あ、見て! 大道先生よ!」

「凄いなぁ、先生。翼さん相手に普通に話しかけてる」

「私にはあんな事できないなぁ…………」

 

 

 そこには新任の体育教師、大道克己と会話している翼の姿があった。なにやら『答え』がどうのの話をしており、翼はなにか思い詰めているようの表情をしていたが、それに対して克己は色々とアドバイスをしたりしていた。

 

 

(次こそは、必ず!)

 

 

 そう意気込んで、翼は席に戻って食事を再開する。

 

 しかし結局、それ以降翼と話せるチャンスが訪れる事はなく、今日の授業は終了してしまった。

 

 

「――――――はぁ、はぁ、特典♪ はぁ、はぁ、CD♪」

 

 

 だが響は、いつまでもそれをずるずると引きずりはしなかった。

 

 学校が終わってしまえば、後は自由だ。今日は翼のCDの発売日。初回特典の充実度が高いとなれば、これを買わない手はない。

 

 夕陽が眩しい街中を、響はCD屋まで意気揚々と走っていたのだが、次の瞬間見えたものに足を止めざるを得なくなった。

 

 

「え…………、これって…………」

 

 

 眼前に広がる光景に愕然とする。破壊された建築物、地面に落ちて夕陽の光を反射するガラス片。

 

 そしてなにより響の注意を引いたのは、あちこちに存在する小さな黒い塊。

 

 それはまさしく、ノイズに触れられた人間達の成れの果てだった。

 

 

(そういえば未来、最近この近くでノイズが出たって言ってたっけ…………。だったら早く、ここから逃げないと…………ッ!)

「きゃあああああああッ!」

「…………ッ!? 悲鳴ッ!?」

 

 

 慌てて踵を返して来た道を戻ろうとしたところに響いた悲鳴に振り向いた響は、危険を顧みずに悲鳴が聞こえてきた方向へ走り出した。

 

 

 

 

「――――――まったく、いつになったら見つかるのよ」

 

 

 いかにもなにかありそうな茂みを掻き分けるも、そこにあるのはガラクタくらいで目当ての物が見つけられなかったレイカが舌打ち交じりに呟くと、その後ろで路地裏から出てきた京水が「仕方ないじゃない」と返す。

 

 

「いくら二十六本あると言っても、この街中からあの二本を見つけ出すのは至難の業よ。でもきっと、あの子達もワタシ達と再会するのを心待ちにしてるはずよ。なにせ、T2ガイアメモリは適合者と引かれ合うんだもの」

 

 

 懐から取り出したジーンメモリ、アイスエイジメモリを見つめる京水に、レイカは隣の茂みを掻き分けながら口を開く。

 

 

「…………あんたに訊くのはこれで二度目になるけど、本当に克己を見たの? 見間違いだったりしない?」

「ワタシが克己ちゃんを見間違えるですって? それこそあり得ないわよ! このワタシが克己ちゃんを見間違えるはずないじゃない! 見た事ない街で、聞いた事ない連中が人間を襲う所だけど、それだけは断言できるわ」

「ま、それもそうよね。…………これもハズレね」

 

 

 茂みに隠れていたキーメモリを懐に仕舞う。適合しないT2ガイアメモリなどレイカにとって無価値なのだが、京水の言葉が事実なら、このメモリも克己の力になるはずだ。

 

 自分達は間違いなく、あの風が吹き続ける街で本当の死を迎えたはずだ。そのはずなのに、気付いたら知らない街にいた。京水とレイカは互いが目覚めてからしばらくしてから再会したのだが、その時に京水は「克己を見た」と言ったのだ。

 

 まさかと思いながらも話を聞いてみると、その克己らしき人物は彼らがよく知る姿、仮面ライダーエターナルへと変身し、人々を襲う謎の存在ノイズと交戦したらしい。それも、逃げ遅れた人々を護るように。

 

 

「克己ちゃんが彼らを護ったのは、きっとなにか理由があるはずよ。もしかしたら、『あの日』のような出来事を繰り返さない為かもしれないわ」

「私が言うのもアレだけど、『死神』に成り果てた克己が人を護るなんて、ついに頭がイカれたのかしら」

「むしろ、その逆じゃない? もしかしたら克己ちゃんは、正義の心に目覚めたんじゃないかしら? この街に来てからというもの、NEVER(ワタシたち)特有の残虐性が和らいでいくのが身に染みてわかるもの」

 

 

 京水の言う通り、この街に来てから二人にあった残虐性は徐々に鳴りを潜めていっているのだ。ついでに言えば、人体蘇生酵素も必要なくなっている。

 

 

人体蘇生酵素(あれ)が必要ないっていうのは嬉しいわぁ! 自由になれたって感じがするもの! これからは活動限界とか気にせず行動できるわ!」

「つべこべ言ってないで、あんたもT2メモリを探す!」

「はぁい」

 

 

 そうして再びT2ガイアメモリも捜索を開始する二人であったが、その瞬間、彼らの耳に悲鳴が届いてきた。

 

 

「今の悲鳴は…………ッ!?」

「行ってみましょうッ!」

 

 

 メモリの捜索を中断して悲鳴が聞こえた道に入ると、そこには今にもノイズの集団に襲われかけている女の子の姿があった。

 

 

「大変ッ! 助けなくちゃッ!」

「いや、待ってッ!」

 

 

 レイカが今すぐにでも駆け出そうとした京水を制止させた直後、ノイズに襲われかけた女の子を一人の少女が救い出した。

 

 

「嘘ッ!? あれ、響ちゃんじゃないッ!?」

「え? あ、京水さん、レイカさんッ!」

「こっちよッ! 早くッ!」

 

 

 少女の手を握った響を連れて走り出したレイカは、同じく走り出そうとしていた京水に振り向く。

 

 

「京水、あんたはノイズの足止めでもしておきなさいッ!」

「ワタシ一応貴女の先輩なんだけどッ!? もう、しょうがないわねッ!」

 

 

 立ち止まった京水がどこからともなく取り出した鞭を振り回してノイズを弾き飛ばそうとするが、なんの能力も持っていない鞭ではやはりノイズにダメージは通らない。鞭を纏めて、しばしノイズと睨み合った京水は――――――

 

 

「…………うん、無理ッ!!」

 

 

 と、踵を返してレイカ達と共に逃走する事を選んだ。

 

 

「ちょっと! 少しは攻撃ぐらいして時間稼ぎなさいよッ!」

「その攻撃が効かないんじゃ足止めにもならないわよッ! 流石に三度目の死は勘弁よッ! イケメンが相手なら話は変わるけどネッ! それで? ワタシ達は今どこへ向かってるわけ?」

「…………地平線の彼方へッ!」

「さぁ行こうッ! …………って、なに言わせるのよッ! それノープランって事じゃないッ!」

「うるさいッ! とにかく逃げるのよッ! ああもう、ヒートメモリがあれば、あんな奴らなんてすぐに倒せるのにッ!」

 

 

 背後にノイズ達の気配を感じながら走る四人だったが、ノイズの集団は諦める事なく彼らを追い続ける。

 

 道中待ち伏せされるような事があったが、その度に京水かレイカが他三人を先に行かせ、追いついていたが、徐々に響と女の子の体力が切れ始めてきた。

 

 そして遂に、体力が底をついた女の子が転んでしまった。

 

 

「あ…………ッ! 大丈夫ッ!?」

「お、お姉ちゃん…………ッ! もう、逃げられないよぉ…………ッ!」

「大丈夫よ、ワタシがおんぶしてあげる。行きましょうッ!」

「響、貴女は大丈夫?」

「少し辛いですけど、へいき、へっちゃらですッ!」

 

 

 そう言って走り出す響だが、肝心のシェルターから離れてしまっている。今からそこへ向かおうにも、道中にはノイズがいる。今から向かうのは不可能だ。

 

 

(…………? あれは…………)

 

 

 その時、電柱の影に隠れているが二本のUSBメモリのようなものが見えた。そういえば先程、レイカがメモリについてなにか叫んでいたような気がする。

 

 

「なにしてるのッ!? 早く来なさいッ!」

「は、はいッ!」

 

 

 電柱の傍で屈んでいた響にレイカが叫ぶ。とにかく、今は逃げるのが最優先だ。

 

 しかし日が完全に暮れた頃、遂に四人は工場地でノイズに追い詰められてしまった。

 

 

「どうしよう、このままじゃヤラれちゃうわよワタシ達…………ッ!」

「どうと言われても、戦えないんじゃどうしようも…………」

 

 

 せめて響と女の子だけは、と響達の前に立つ二人の前にいる大量のノイズは、じりじりとこちらに向かって来ている。

 

 

「…………お姉ちゃん。私達…………死んじゃうの…………?」

「…………ッ!」

 

 

 きゅっ、と女の子に制服の裾を掴まれた響は、大丈夫と言い聞かせるように女の子の手を強く握る。しかし、それでも一度その言葉を聞いてしまえば考えられずにはいられなかった。

 

 

(死ぬ…………? 死んじゃう…………? 私達、ここでノイズに…………)

 

 

 対抗できる手段は無い。このままでは遅かれ早かれ、自分達はノイズに殺される。

 

 嫌だ。死にたくない。まだやりたい事はたくさんある。こんなところで死ぬなんて、そんなの――――――

 

 

『――――――生きるのを諦めるなッ!』

 

 

 その時、二年前のあの場所で、自分を護ってくれた人の声が聞こえた。瞬間、響の心を呑み込もうとしていた闇が、瞬く間に消えていった。

 

 

(…………あの日、あの時、間違いなく私は、あの人に救われた)

 

 

 ――――――絶望になんて、負けられない。

 

 

(私を救ってくれたあの人は、とても優しくて、力強い歌を口ずさんでいた…………)

 

 

 ――――――まだ心は砕けちゃいない。

 

 

(私に出来る事を…………。出来る事が、きっとあるはずだッ!)

 

 

 ――――――諦めるな。立ち上がれッ!

 

 

「お、お姉ちゃ…………」

「――――――生きるのを、諦めないでッ!」

 

 

 ――――――立ち上がって、その手に掴めッ!

 

 

(とても、優しくて、力強い、歌がッ!)

 

 

 ――――――未来を掴む、希望の光をッ!!

 

 

「――――――Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 

 迸る、黄金の光。

 

 隣の女の子と突然の事態に振り向いた京水とレイカの視線を受ける中、彼女の胸を中心に放出されていた光の奔流が収まると、響は全身に走る激痛に四つん這いになる。

 

 

「ぐ、が…………ッ! あああああああ…………ッッッ!!!」

 

 

 響の背中から飛び出した機械のようなものが繰り返し彼女の体内を出入りしていく。それが一回、また一回と繰り返されていく内に、彼女の体は白い鎧に包まれていく。

 

 そして、最後に飛び出した機械が響の体に入り込んだ時、そこには、白い鎧に身を包んだ、響の姿があった。

 

 

「嘘ォッ!?」

「い、いったいなにが起こったというの…………ッ!?」

 

 

 衝撃的な出来事が目の前で起こった事に口をぽかんと開ける京水達だが、最も驚いていたのは響の方だった。

 

 

「え、えええッ!? 私、どうなっちゃってるのッ!?」

「お姉ちゃん、カッコいい…………ッ!」

「もう、なによ貴女ッ! 変身できるなら最初から言いなさいよッ! でもカッコいいのが見れたから良しとするわッ!」

「きっとその姿なら、奴らの相手も出来るはずよ。私達も戦いたいところだけど、メモリが無いんじゃどうしようも…………」

「あの、そのメモリって、これの事ですか…………?」

 

 

 そう言って響が取り出したのは、先程電柱の影に隠れるように置かれていた二本のメモリ。それを見た二人は、

 

 

「「嘘ォッ!?」」

 

 

 と、声を揃えて叫ぶのだった。

 

 

「あ、あんた、これをどこでッ!? …………いいえ、今はそれを聞いてる場合じゃないわよね」

「メモリがあれば、ワタシ達も戦えるッ!」

 

 

 響からメモリを受け取った二人は彼女の左右に立ち、メモリのスイッチを押す。

 

 

『ヒート!』

『ルナ!』

 

 

 『熱』の記憶を内包したメモリ、ヒートメモリを手にしたレイカは、それを左の鎖骨に押し当て、『幻想』の記憶を内包したメモリ、ルナメモリを手にした京水はそれを自らの額に押し当てる。

 

 自動的に出現した生体コネクタを介して彼らの体内に入り込んだT2ガイアメモリの力が解放され、彼らを異形の者へと変えていく。

 

 

「えええッ!?」

「うわぁ…………ッ!」

 

 

 変身が完了し、炎のような赤い体色に女性的な体を持つ怪人『ヒートドーパント』、メモリの色と同じ黄色い体に伸縮自在な腕を持つ怪人『ルナドーパント』にその姿を変えた二人は目の前のノイズに対して構えを取る。

 

 

「ノイズちゃん達~、たっぷりお仕置きしてあげるわよッ!」

「さっきはよくも追っかけ回してくれたわね。お返しに…………燃やし尽くしてあげる」

 

 

 言うが早いか、二体のドーパントはノイズに攻撃を仕掛け始めるのだった。

 




ビッキー「立花響と」
漢女「泉京水と」
乙女「羽原レイカの」
ビッキー&漢女&乙女「「「聖遺物解説コーナー!」」」
漢女「今回はワタシ達が聖遺物を解説させてもらうわね。『あんたら聖遺物知らないだろ』と思ったアナタ、後でハグしてあげるから待ってなさい! 今回紹介する聖遺物はこれよッ!」


《ガングニール》


乙女「ガングニールとは、古ノルド語で『揺れ動くもの』を意味するもので、出典は北欧神話。ドヴェルグの鍛冶、イーヴァルディの息子達によって作り出されたこの神槍はオーディン、トール、フレイの三柱に品定めされた後にオーディンの手に渡ったわ。狙いを外す事なく、敵を貫いた後は自ら所有者の手元に戻るとされるこの槍を向けられた軍勢には勝利がもたらされるという逸話があるのよ。他にも、ある再話ではオーディンがミーミルの泉の水を飲んで知識を得た記念として、泉の上にまで伸びていたユグドラシルの枝を折ってこれを作ったともされているわ。

 …………それにしても、どうして響はいきなりガングニールを起動できたのかしらね?」
響「歌が、聞こえたんです。それを口ずさんだらいきなりこうなって。でも、詳しい事はここで話すべきではないと思います」
漢女「それもそうね。ここはあくまで聖遺物の解説をするだけだもの。それじゃあみんな、また次回会いましょうね~♪」



 そういえばこの前、時間の都合で観れなかった「劇場版仮面ライダージオウ over quartzer」をレンタルして視聴したのですが、オーマフォームが強かったですねぇ~。設定上、オーマジオウと同等と言われるのも納得がいく強さでした!

 そしてバラバラな平成を一つに纏めようとしたラスボスに向かってソウゴ君のセリフは本当に感動しました! 遅まきながらソウゴ君、平成の良さを語ってくれてありがとう!

 イケメンで強いのね! 嫌いじゃないわ!←言いたかっただけ。
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