死神に鎮魂歌を   作:seven74

44 / 77
自由を目指して

 

 開かれた仮設本部のハッチから、先行部隊としてバイクに乗った翼と克己が飛び出す。

 

 

「こうして二人揃って走るのは久しぶりだな、翼」

「そうだな。ガイアメモリの力を使っていたとはいえ、大道が脚力で私に追いついてきた時は驚いたがな」

 

 

 まだ響やレイカ、京水が二課に加入する前の事。ノイズ駆除に向かう為にバイクを駆った翼に、克己がT2アクセルメモリを使用して並走した時の記憶を思い起こして翼は軽く笑う。

 

 あの光景は傍から見れば異様の一言に尽きよう。なにせ人間がバイクと並走しているのだから。だが、今はあの時とは異なり、克己もバイクに跨って目的地へと向かっている。

 

 

「バイクを手に入れて、ようやく『仮面ライダー』といったところか?」

「いいや。俺はまだ、本当の意味の『仮面ライダー』にはなれてないさ。俺が『仮面ライダー』を名乗ったら、あいつら(・ ・ ・ ・)が黙っていないだろうさ」

あいつら(・ ・ ・ ・)? それはいったい……………」

「いずれ話してやる。それより、来たぞ」

 

 

 克己の視線の先。そこには自分達を迎え撃とうと多数のノイズの姿がある。

 

 

「――――――Imyuteus amenohabakiri tron

エターナル!

「変身ッ!」

 

 

 蒼白の装者と蒼炎の死神は、バイクの速度を上げてノイズの群れに突っ込んでいく。

 

 翼は脚部のブレードを変形させてバイクの前方に巨大な刃を形成し、エターナルはT2ユニコーンメモリを取り出す。

 

 

ユニコーン・マキシマムドライブ!

 

 

 エターナル専用バイク――――――トゥモルシーカーのマキシマムスロットに挿し込んだT2ユニコーンメモリの力が反映され、トゥモルシーカーはその形状をバイクから一角獣へと変化させる。

 

 翼が『騎刃ノ一閃』でノイズの群れを切り裂き、彼女が討ち漏らしたノイズを後方から続く鋼鉄の一角獣が蹴散らしていく。

 

 

 

 

「――――――二人共、流石ですね……………ッ!」

 

 

 モニター内でノイズを蹂躙していく二人に、思わず友里が称賛の声を上げる。

 

 

「私にもギアが使えたら……………ッ!」

「ギアの無い響君を戦わせるつもりはないからな」

 

 

 悔しそうにする響に無謀な行動は起こすな、と釘を刺す弦十郎だが、それは響も重々承知している。

 

 もしギアを纏えない状態で行ったとしても、ノイズと戦えない自分は彼らにとって足手まといになってしまうし、隣にいる未来も悲しませてしまうだろう。それは響も望んでなんかいない。

 

 

「いえ。戦うのは、私じゃありません」

 

 

 しかし、響にはある考えがあった。

 

 響の考えを聞いた弦十郎は、早速彼女達(・ ・ ・)を監視しているレイカ達に連絡を取り、彼女達を司令室に連れてくるよう指示する。

 

 

「捕虜に出撃要請って、どこまで本気なの?」

 

 

 連れてこられたのは、自ら二課の捕虜となるべく投降してきた調と切歌である。

 

 

「貴女が私達をここに連れてくるように言ったんでしょう? どこまで本気かは知らないけど、貴女のそういうところ、好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者の貴女が……………」

「私、自分のやってる事が正しいだなんて、思ってないよ……………。それでも私は、自分の気持ちだけは偽りたくない……………。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる……………」

 

 

 その結果が、未来との衝突である。自分が面と向かって向き合わなかったから、未来は神獣鏡(シェンショウジン)を纏って戦場に足を踏み入れてしまったのだから。

 

 

「手を繋ぐ……………。そんな事、本気で思ってるんデスか?」

「思ってるよッ! だから二人にも、やりたい事をやり遂げてほしい。もしも、それが私達と同じ目的なら、少しだけ力を貸してほしいんだ」

「私達の、やりたい事……………」

「やりたい事は、暴走する仲間達を止める事……………でしたよね?」

「……………みんなを助ける為なら、手伝ってもいい」

 

 

 調の答えに、響は嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

 

「だけど、信じるの?」

「アタシ達、元は敵同士デスよ?」

 

 

 二人は敵であるはずの自分達を自由の身にする事に抵抗感はないのか、と彼らに訊ねると、弦十郎が二人に答える。

 

 

「敵だとか味方だとか言う前に、子どもやりたい事を支えてやれない大人なんて、格好悪くて適わないんだよ」

「師匠……………ッ!」

「甘いわね、相変わらず」

「甘いのはわかってる、性分だ」

 

 

 出会った時から変わらぬ弦十郎の優しさに微笑むフィーネは、自分に向けられている調と切歌の視線に気づく。

 

 櫻井了子の体が無くなった際の保険として用意したレセプターチルドレンの二人からすれば、目の前に立つフィーネにどんな感情を抱いているのか。それはフィーネはもちろん、当人達でさえ、心の中が様々な気持ちが混ざり合っている為、よくわかっていない。

 

 

「……………時間さえあれば色々話したいところだけど、今はそれどころじゃないわ。全てが終わってから、話しましょう?」

「……………はい」

「既にハッチには京水君達をスタンバイさせている。響君、彼女達を案内してやれ」

「はいッ! 二人共、急ごうッ!」

 

 

 響が二人をハッチまで連れていくと、そこには弦十郎の言った通り、克己の部下の京水達とクリスがいた。彼らは克己と翼が出撃した後にバギーで出撃する予定だったのだ。

 

 

「ボスから話は聞いてるぜッ! 早く乗りなッ!」

 

 

 剛三に言われるがまま、調と切歌がバギーに乗り込むと、助手席に座っていた京水が早速絡んできた。

 

 

「あらッ! 近くで見るととっても可愛らしいじゃないッ! ワタシ、貴女達みたいな可愛い子好きよッ!」

「うえぇッ!? いきなりなんデスかこいつッ!?」

「あまり、近寄らないで……………」

「あらやだ辛辣。アタシはただ貴女達と仲良くなりたいだけなのに……………ッ! イケナイ子にはお仕置き、し・ちゃ・う・ぞへぶッ!?」

 

 

 嫌がる二人に尚も距離を縮めようとする京水だったが、レイカとクリスに頭を引っ叩かれてしまう。

 

 

「こんな状況でなに言ってんだこの馬鹿ッ!」

「それ以上なにか言おうものならバギーから落とすわよ」

「あ~ん辛辣ッ! ワタシの味方は何処(いずこ)へッ!?」

「出撃する」

 

 

 ギャーギャー騒ぐ彼らを乗せたバギーは、賢の運転の下フロンティアの大地を駆け始める。

 

 

「調、マリア達を助けるデスよッ!」

「うん。……………だけど、この人達は真面目に戦う気あるのかな?」

 

 

 目の前で繰り広げられる京水とレイカとクリスの口論を見て、早速不安になってしまう。

 

 

「まぁまぁ、あれも二課(うち)じゃよくある事だよ? そうですよね、剛三さん?」

「おう、こいつらが喧嘩するのはよくある事だぜ、なぁ? ひび……………き……………」

 

 

 本来ならこの場にいないはずの少女の声に眉を顰めた剛三がバギーの座席を見渡してみると――――――

 

 

「なんでここにいやがんだッ!? 響ッ!」

 

 

 なんと、バギーの後方に響が隠れていたのだ。

 

 

『なにをやっているッ! 響君を戦わせるつもりはないと言ったはずだッ!』

「戦いじゃありませんッ! 人助けですッ!」

 

 

 もちろん、響がここにいる以上、司令室で彼らの様子を確認していた弦十郎達にも気づかれてしまい、早速弦十郎からのお叱りの言葉が飛んでくるも、響はこれを屁理屈で返す。

 

 

『減らず口の上手い映画など、見せた覚えはないぞッ!』

『行かせてあげてください』

 

 

 そこで割り込んでくる声が一つ。それを発した者は、当然未来である。

 

 

『人助けは、一番響らしい事ですから……………』

『……………こういう無理無茶無謀は本来、俺の役目だったはずなんだがなぁ』

「未来……………、師匠……………」

 

 

 通信機越しに聞こえる溜息から、弦十郎が司令室で肩を竦めている様子が容易に想像できる。

 

 

『……………いいだろう。なら俺達は、全力でお前達をバックアップするッ! お前達だけにいい格好をさせて堪るかッ!』

「ありがとうございますッ!」

 

 

 響が乗り込んできたという予想外のハプニングこそあったものの、当初の目的に変更はない。エターナルと翼によってノイズが駆除された大地を、バギーは駆け抜けていくのだった。

 

 

 

 

 ――――――一方、ウェル達と別れて制御室にやって来ていたナスターシャは、ウェルの暴走によって落下が早まった月の脅威にどう対処していくべきかを端末を操作しながら考えていた。

 

 

「一ついいか、マム」

 

 

 凄まじい速さで端末を操作するナスターシャの背後。そこに立つケアンが、彼女に声をかける。

 

 

「なんですか?」

「暴走とはいえ、ウェルは人類の救済を目前に控えている。なぜ、それを阻むのだ?」

 

 

 マリアはナスターシャの指示には忠実に従う為、容疑者ではないだろう。ならば、この現状を作り出したのはウェルに違いない。あの男の性格からして、自分さえ満足出来ればそれでいいという考えの下に起こした行動のはずだ。月の落下こそ早まっているが、ウェルがみすみす月が地球に衝突させるとは思わない。やるとすれば、『自分が死ねば月が落ちてくる』とでも言って、全人類を従わせるといったところだろう。

 

 だが、やり方こそ異なるが、ウェルが死亡するまでの間とはいえ、人類は月の脅威から護られる事となる。代償として人類の滅びが大分早くなったが、計画遂行を最終目的と定められているケアンにとって、それは些細な問題でしかない。

 

 

「これは『救済』ではなく、『支配』です。私達とは真逆の、邪悪な意志によって引き起こされた行動です」

「逆というわけではないだろう。ウェルはウェルで、彼なりのやり方で人類を救済しようとしているのでは?」

「自らにとって不都合な存在は抹消するやり方がですか? そのような事をする人間は『救済者』ではなく、『独裁者』と呼ぶのです。機械の貴方とて、一般的な知識は持ち得ているはず。歴史に名を刻まれた独裁者達は、果たして万人から『正義』と認識されましたか?」

「……………」

 

 

 ナスターシャからの問いかけに、ケアンは答えない。それは、独裁者と語られた者達が、褒められたものではない行動を起こし続け、最後には自ら破滅するか、民衆によって破滅させられるかのどちらかの結末に至ったのがほとんどである、と考えたが故である。

 

 

「このようなものが人類の救済など、片腹痛いにも程があります。私達が望むのは、弱者が救われる世界です。決して、彼の欲望に忠実な世界ではありません」

 

 

 一旦端末の操作を中断し、ナスターシャがケアンに振り向く。

 

 

「『武力』という鎖に束縛された者達に自由はありません。誰もが笑っていられる、自由な世界の為、貴方の力を貸してください」

「自由な、世界……………」

 

 

 ウェルのやり方では絶対に創り出せないであろう世界。その言葉に対して、ケアンは自身には理解できない、どうしようもない魅力を感じる。

 

 なぜ、自分がここまでその言葉に惹かれたのか、それはわからない。だが、ウェルがこれから創造しようとする世界より、ナスターシャの語る自由な世界の方が、万人の望むものだという事はわかった。

 

 

「……………承知した。ウェルの居場所はわかるか?」

「恐らく、ブリッジかジェネレータールームにいるはずです。貴方が向かっている間、私は月の落下を食い止める方法を模索しますので、よろしくお願いします」

「了解。任務が完了し次第、帰還する。マム、無茶はしないように」

「……………ッ! ふふ、嬉しいですね。貴方が私の身を案じてくれるなんて」

「貴女は私を再起動させてくれた恩人だ。貴女のお陰、私はここにいるのだ。身を案じるのも普通だろう」

「えぇ、たとえ本物でなくとも、貴方はケアン・ディークスなのですね。今の貴方の表情、まるで生前の彼のよう……………」

「なに……………?」

 

 

 どこか自分の顔を見れるものはないかと周囲を見渡すも、それができそうなものは見当たらず、今の自分がどういった顔をしているのかはわからず仕舞いだった。

 

 残念無念といった風に目を伏せるケアンに、ナスターシャは慈しみを込めた声をかける。

 

 

「調達から聞きましたよ。『心』を知りたいのでしょう? 事態を収束させたら、たくさん教えてあげます。もちろん、マリア達と一緒に」

「それは嬉しい限りだ。不思議と、活力が湧いてくる。……………作戦完了後、また会おう」

「えぇ、お互い頑張りましょう」

 

 

 慈愛に満ちた笑顔のナスターシャに頷き、ケアンはウェルを止めるべく制御室を飛び出していく。彼の姿が見えなくなるまで、その背中を見送っていたナスターシャは、ケアンの背中が完全に見えなくなると同時に、通信機を片手にマリアに連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 

 ――――――ウェルがいなくなり、一人残されていたマリアの通信機に、ナスターシャからの通信が入る。

 

 

『マリア、今、貴女一人ですか?』

「マム……………。……………えぇ、今は私一人よ」

『それは好都合です。フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました』

「え……………ッ!?」

 

 

 突然の吉報に、先程まで抱いていた自身への激情が遠退く。静かに話を聴くマリアに、ナスターシャは最後の希望に必要なものを告げる。

 

 

『最後に残された希望……………。それには、貴女の歌が必要です』

「私の……………歌……………」

 

 

 今も続いている月の落下を食い止める唯一の方法として提言されたそれを聞いたマリアに、迷いは無い。

 

 

「……………了解、マム。私の歌で、みんなを救ってみせるッ!」

 

 

 覚悟を決めたマリアの通信機越しの声に頷いたナスターシャは、すぐさま準備に取り掛かり始めた。

 

 

 

 

 ――――――ノイズを蹴散らしながらエターナルと翼がフロンティアブリッジに向かっていると、彼らの前に大量の光が迸ったかと思いきや、数十体の大型ノイズが出現した。

 

 

「ここで新手と来たか」

「押し通すッ!」

「私達も……………」

「いるデスよッ!」

 

 

 先頭のノイズから攻撃しようとした瞬間、二人の背後から飛んできた丸鋸と鎌が、今まさに二人が攻撃しかけていたノイズを八つ裂きにして消滅させる。

 

 

「シュルシャガナとイガリマ」

「共に参上デスッ!」

「おいおい、あたしらを忘れてもらっちゃ困るんだよッ!」

 

 

 エターナルと翼の前にシンフォギアを装備した調と切歌が降り立つと、彼女達に遅れてクリス達がやって来る。エターナル達が道を切り拓いてくれたので、彼らは全速力で二人の後を追ってきたのだ。その中には現在シンフォギアを纏えない響の姿もあるが、既に弦十郎から連絡を受けていた二人は特に驚いた様子は見せない。

 

 

「響、お前は、今のお前にできる事をやりに来たんだよな?」

「はいッ! シンフォギアが無くてもできる事をやり遂げに来ましたッ!」

 

 

 自信満々に答える響に、克己は仮面の奥で不敵な笑みを向ける。

 

 

「いい目をしてるな。それでこそ、立花響といったところか。……………お前達、頼みがある」

「道を拓け、でしょ? 任せなさい」

 

 

 トゥモルシーカーのスロットからT2ユニコーンメモリを抜いたエターナルの指示を予測していたレイカに「助かる」と一言告げ、エターナルは響を後ろに乗せる。

 

 

「アタシ達もついてくデスッ!」

「マリア達を助けたいから、断られてもついていく」

「構わない。だが、こっちには響がいる。こっちはこっちのペースで行かせてもらう」

 

 

 これからノイズの群れに突っ込んでいく以上、シンフォギアを纏えない響は一回ノイズに触れるだけでアウトだ。ここは最速で突っ切る他に方法はない。

 

 

「では、私達が活路を切り拓く。後は頼んだぞ、大道、立花ッ!」

「あぁ。お前達、翼とクリスを任せた」

「了解。必ず護り通す」

 

 

 NEVERの四人がメモリを取り出してドーパントに変身し、クリスもイチイバルのシンフォギアを身に纏う。

 

 

アクセル・マキシマムドライブ!

 

 

 マキシマムスロットに挿し込んだT2アクセルメモリの力がトゥモルシーカーに行き渡り、今度は外見が真っ赤に変色し、前方で翼達が大型ノイズを次々と消滅させている間に、クラッチを押さえながら徐々にエンジンの回転数を上げていく。

 

 

「振り落とされるなよ、響」

「は、はいッ!」

 

 

 そして、ある程度ビレッジへと続く道が拓けた瞬間、一気にクラッチから指を放す。周囲にエンジン音が轟き、凄まじい勢いでトゥモルシーカーが走り出す。一気に全身に襲い来るGに耐えながら、エターナルはノイズに激突しないよう巧みにハンドルを操作して、赤い閃光となった鉄馬はノイズの間を駆け抜けていく。

 

 

(やるんだ……………ッ! 今の私に出来る事を……………ッ! 胸の歌がある限りッ!)

 

 

 シンフォギアが無くとも、この胸に宿る気持ちのままに行動すれば、必ずなにかが出来るはずだ。

 

 徐々に大きくなっていくブリッジを見て、響は改めて決意を固めるのだった。

 

そこでですが、皆さんにアンケートを取りたいと思います。今後の物語、一章だけですがダブルやアクセルを登場させる予定です。それで皆さんにお聞きしたいのですが、皆さんは彼らが登場するのはGX編か、完全オリジナル編か、どちらがいいですか? アンケートを貼っておきますので、よろしくお願いします。

  • GX編に登場させてッ!
  • オリジナル編がいいッ!
  • やらなくていいゾイ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。