死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 シンフォギアXDU新イベント、『LOST SONG』……………。並行世界の、いわば同一ではあるが別人ともいえる響とはいえ、彼女が歌を捨てて、武器を手に取る日が来るとは思いませんでした……………。そして新たな敵組織は、錬金術はおろか、異端技術にも勝る純粋な科学技術を用いているようなので、これからどんな戦いが始まるのか、楽しみでもあります。

 さて、XDUの話はここまでにしましょう。今回はG編最終回ッ! そしてラストには、彼らがッ!



遥か彼方、星が音楽となった……………かの日

 

 無人のフロンティア・ブリッジ。変身が解除されたケアンをブリッジの中央にある球体の傍に下ろしたエターナルはベルトのスロットからT2エターナルメモリを引き抜き、変身を解除する。

 

 

「……………感謝する、大道克己」

 

 

 開口一番、ケアンが感謝の一言を述べる。

 

 

「礼はマリアに言え。俺に言われても困る」

 

 

 『心』を知りたがっているから救ってくれ、などという願い、かつての自分が聞いたら鼻で笑って一蹴するだろう。

 

 排除すべき敵がいるなら、排除する。他人の、それも敵対組織の人間が言う事など聞くに値しない。

 

 風の街で敗れるその時までの自分なら、間違いなくそうしただろう。だが、不思議だ。今の自分に、あの頃の自分と同じ行動が取れるような気はあまりしない。

 

 それもこれも、あの男達と戦ったからだろうか。それとも、二課に所属するようになってからだろうか。

 

 

「随分と甘くなったな、この死神(おれ)も」

「……………?」

「……………なんでもない。ただの独り言だ」

 

 

 訝し気に自分を見つめるケアンにそう言い、彼の前に片膝をつく。

 

 

「マリアから聞いた。お前がなにを求めているのか」

「笑うか? 機械の私が、人と同じ『心』を求めているのを」

「あぁ、とことんまで笑ってやる」

 

 

 即答した克己に、ケアンは自虐的に笑う。

 

 所詮、自分は人間になれぬ機械だ。目の前のこの男や仲間達のような、血の通った存在(いきもの)ではないのだ。そんな自分が心を求めるなど、最初から――――――

 

 

「『よく、ここまで頑張ったものだ』、ってな」

 

 

 言われた意味は、一瞬理解できなかった。

 

 俯きかけた顔を上げた先には、柔らかく笑う克己の顔があった。自分を蔑むような笑みではなく、素晴らしいものを見たような、そんな笑み。

 

 

「お前は、俺と似ている」

 

 

 その一言を皮切りに、克己が言葉を紡いでいく。

 

 

「なにかを求めて、少ないヒントを頼りに彷徨い続ける……………。『心』を求めるお前の気持ちは、俺にも理解できる。かく言う俺も、欲しいものがあるからな」

「それは、なんだ……………?」

 

 

 ケアンからの問いかけに、克己は自分の手を見下ろして答える。

 

 

「『答え』だ。俺がなぜ、ここにいるのか。なぜ、失われたはずの力が、俺の手元にあるのか。俺は、それが知りたい」

 

 

 開かれた手を握り締め、下ろす。未だに下を向いている克己は「ハハッ」と、自虐的に小さく(わら)った。

 

 

「……………人の道から堕ち続けた俺が、碌な最期を迎えられるなんて思ってないさ。そこまで俺は楽観者じゃない。でもな、それで諦めるつもりは無い。進み続けるさ、この足がある限り」

「救いが無いとわかっていながら、なぜお前は進むんだ……………?」

 

 

 結末が碌なものではないとわかっているにも関わらず、自ら破滅へ邁進する心意気が、まるで理解出来ない。

 

 欠片の利益さえ得られないのなら、とっとと諦めてしまえばいいはずだ。しかし、その考えは既に否定されてしまっている。

 

 いったいどういう事なのだ、と困惑するケアンだが、次に聞こえた克己の返答に、ケアンは余計困惑させられた。

 

 

「少しでもいい。俺の、俺達の存在を誰かの心に刻み付けられたら、それだけでいいんだ。どんなに惨い終わり方だろうと、それだけができれば、俺はそれでいい」

 

 

 自分達は間違いなくこの世界に生きた、という事を証明してくれる者が一人いるだけでいい。それだけでも、自分達は救われるのだ、と言う。

 

 

「俺達はどこまで行っても死人(かこ)だ。進むべき未来は、現代(いま)を生きる連中だけにあればいい」

 

 

 人間は過去に生きた先人から時代を託されて成長し、未来を次の世代に託して逝く。そうして人間は進化してきたのだ。過去の存在である自分が出しゃばるつもりなどない。

 

 

「理解不能だ。碌でも無い結末しか待っていないというのに、自分が生きた証を残す為に戦うのか。…………あぁ、まったくもって、理解出来ない」

「その通りだ。人間ほど、理解に苦しむものは無いだろうよ。だが、それでいいじゃないか」

 

 

 人の在り方は千差万別。これが好きと言う者がいれば、あれが好きと言う者もいる。それぞれの理念の下、ぶつかり合う事もあるが、それでわかり合う事も出来る。

 

 それぞれが違う考えを持ったからこそ、人はこうして、万物の霊長足り得るのだ。

 

 

「この世全てを理解したら、つまらない事この上ない。理解出来ないものがあるだけで、世界は楽しくなる」

「……………私がお前に敵わなかった理由が、わかった気がする」

 

 

 自分がこの男に勝利できなかったのは、メモリの数などという単純な問題ではない。

 

 この男は、世界を見ている。現代(いま)を生きる者達の未来を見ている。目先の利益に囚われ、その先を見ていなかった自分が敗北するのは、今思えば当然だったのかもしれない。

 

 

「私もなれるか? お前のような存在に」

「おっと、俺を目標にするのはやめておけ。目標は自分で決めるんだな。そこまで誰かに決められていては、成長できないぞ」

 

 

 だが、と克己はケアンに手を差し伸べる。

 

 

「立ち上がる手伝いくらいはしてやる。さぁ、立ち上がれ。そして、『心』を知るんだ。それが、お前をより強くする」

 

 

 ケアンは差し伸べられた手を見ながら、克己の言葉に耳を傾ける。

 

 

「『心』を持ったその時こそ、お前は本当の強さを手に入れられる。……………足掻け、ケアン・ディークス。足掻いて、足掻いて、足掻き続けて、その存在を、この世に刻み付けろ」

「……………あぁ」

 

 

 差し伸べられた手を取る。

 

 自分は、本物のケアン・ディークスではない。その姿形を再現した、贋作(アンドロイド)に過ぎない。それでも、前に進んでいこうと思った。

 

 『心』を知る。そして、ナスターシャから託された、『自由な世界の実現』を目指して、この足を動かし続ける。

 

 進化し続け、人々の未来の為に戦い続けよう。

 

 いつか、この身が砕けるその日まで。

 

 そう決意したケアンの瞳には、静かな炎の輝きが灯っていた。

 

 

 

 

「――――――そ、そんな馬鹿なッ! あり得ないッ! こんな事、僕は認めないぞッ!」

 

 

 神の力を得たイクシードと、フロンティアを取り込んで強化されたネフィリムの敗北。その信じ難い事実に打ちのめされたウェルが頭を抱えた直後、弦十郎達がジェネレータールームへやって来た。

 

 

「見つけたぞ、ウェル博士ッ!」

「ひぃッ!」

 

 

 酷く情けない悲鳴を上げたウェルが逃げ出そうとするも、足を踏み出しかけた先で銃弾が地面に着弾する。

 

 銃弾は賢が放ったもので、もちろんわざと狙いを外しての発砲……威嚇射撃である。もし殺して良しという命令があったなら、彼は寸分の狂いもなくウェルの頭部を撃ち抜いていたであろう。

 

 そして、彼による威嚇射撃はウェルに効果抜群だったようだ。

 

 

「ひいいぃぃぃッ!」

 

 

 目の前に自分の命を容易く奪える銃弾が飛んでいった事に恐怖を覚えたウェルが情けなく尻餅をついた。

 

 

「お前の手に世界は大きすぎたようだなッ!」

 

 

 弦十郎達が近づいてくる。だが、黙って彼らに捕縛されるウェルではない。

 

 起き上がり、コンソールに手を伸ばそうとするが、その手はなぜか空中で、まるでそこだけの時間を止められたかのようにびくともしなくなる。

 

 緒川が影縫いを使用して、ウェルの腕の動きを止めたのだ。

 

 

「貴方の好きにはさせませんッ!」

「奇跡が一生懸命の報酬なら……………僕にこそおおお……………ッ!」

 

 

 あの装者達が奇跡を成し遂げたのなら、彼女達と同じ、いや、それ以上苦労してきた自分にも、奇跡は起こるべきだと、ウェルは足掻き続ける。

 

 すると、驚くべき事に、ウェルはところどころから血を流しながらも影縫いによる拘束を振り解き、コンソールに触れたのだ。

 

 信じ難い事だが、なんとウェルは本来ならば振り解けないであろう影縫いの拘束を、力業で振り解いたのだ。ある意味、これも彼に起こった、『奇跡』というものなのかもしれない。

 

 尤も、彼が起こした奇跡は、人類に希望をもたらすものではなく、新たな絶望を与えるものであったのだが……………。

 

 ウェルがコンソールに触れると、ジェネレータールームの中心に位置する炉心が赤黒く変色し、その周囲を稲妻が這い回る。

 

 

「なにをしたッ!」

 

 

 異様な変化から嫌な予感がし始めた弦十郎の叫びに、ウェルはしてやったりといった笑みを浮かべる。

 

 

「ただ一言、ネフィリムの心臓を切り離せと命じただけ……………ッ! こちらの制御下を離れたネフィリムの心臓は、フロンティアの船体を喰らい、糧として、暴走を開始するッ! そこから放たれるエネルギーは、一兆度だあああ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)ッ!」

 

 

 その圧倒的なまでの熱量を孕んだネフィリムの心臓が爆発でもすれば、このフロンティアはおろか、月の落下には劣るだろうが、地球にも甚大な被害が出る事は間違いない。

 

 

「僕が英雄になれない世界なんて、蒸発してしまえばいいんだああ……………ッ! ふへへ、へへへへへごばぁッ!?」

 

 

 自暴自棄になったウェルの笑い声は、レイカの蹴りによって遮られる。

 

 

「自分のものにならないからって世界ごと心中? 頭沸騰してんじゃないのッ!? その全身を焼き尽くして黒焦げにした後、そのトチ狂った脳天を蹴り砕いてやるッ!」

「レイカ、落ち着いてッ!」

「落ち着いてられるかッ! あんたはなんとも思わないのッ!? こんな奴が、私達と同じ大人って考えるだけで吐き気がするわッ!」

 

 

 地獄の閻魔でさえも裸足で逃げ出しそうな形相で怒り狂うレイカをなんとか京水が抑えている間に、弦十郎は球体を見上げながらフィーネに訊ねる。

 

 

「了子君、君の鞭で破壊できるか?」

「壊してどうにかできるなら苦労しないわ。でなければ、とうに破壊してる」

「ならば仕方ない」

 

 

 破壊してもなんの解決にもならないのなら、ここに留まり続ける意味も無い。

 

 今取るべき行動は、般若と化したレイカに怯えているウェルを連れてフロンティアから脱出する事だ。

 

 

「剛三君ッ!」

「あいよ、ボスッ!」

 

 

 弦十郎には劣るが、この中でもパワーに優れている剛三が、ウェルを軽々と持ち上げて肩に担ぐ。

 

 そのまま弦十郎達は、外に残しているバギーの下へ向かい始める。

 

 

「確保だなんて悠長な事を……………。僕を殺せば簡単な事を……………」

 

 

 剛三に担がれている情けない状況下でも、ウェルは口を開き続ける。それに対して、弦十郎はある言葉を彼に送った。

 

 

「殺しはしない。お前を、世界を滅ぼした悪魔にも、理想に殉じた英雄にもさせはしない……………。どこにでもいる、ただの人間として裁いてやるッ!」

 

 

 その言葉は、弦十郎達に殺害される事で、自分は偉大な理念の下に動き、そして死んだ英雄である、と定義しようとしていたウェルの心を砕くには充分だった。

 

 

「畜生ッ! 僕を殺せぇッ! 英雄にしてくれッ! 英雄にしてくれよおおおおぉ……………ッ!」

「あ、一つ、私からもとっておきの言葉を送ってあげる」

 

 

 なにかを思いついた様子のフィーネに、ウェルの視線が向く。

 

 正直、これ以上、現実を突きつけられたくなかったが、それでも誰かがなにかを言おうとすると気になってしまうのが人の(さが)である。

 

 

「英雄ってのはね、英雄になろうとした瞬間に失格なのよ。貴方、最初っからアウトってわけ」

「……………ッッ!!」

 

 

 これが漫画であれば、ウェルの背後には幾つもの雷が落ちていた事だろう。先の弦十郎の言葉よりもショックを受けたウェルががっくりと項垂れる。

 

 

「あら、気絶してるわね、こいつ」

「蹴って起こして、何度もさっきの言葉を連呼してやりましょ」

「悪魔だな」

「えぇ。悪魔よ。特にこいつみたいな屑には、とことんまで悪魔になってやるわ」

 

 

 そんな会話をしているうちに一行はバギーに搭乗し、仮設本部まで戻り、克己がケアンを連れて戻ってきた事を確認してから、迎撃用ミサイルを使って周囲の地面を破壊。フロンティアから離脱するのだった。

 

 

 

 

 ――――――無人のジェネレータールームを中心に大爆発が起こり、そこから巨大ななにかが飛び出す。それは、ネフィリムの心臓が埋め込まれていたフロンティアの炉心。それはフロンティアのエネルギーを吸収、肥大化していき、最後には真紅の巨人の形を取る。

 

 

「あれが、司令の言っていた……………」

「再生する、ネフィリムの心臓ッ!」

 

 

 フロンティアを取り込んで最大強化されたネフィリム――――――ネフィリム・ノヴァへ、調と切歌が飛び出す。

 

 調は限定解除(エクスドライブモード)で強化されたギアのパーツを組み合わせて、巨大な搭乗式オートマタを完成させる。『Ω式ディストピア』だ。

 

 切歌は鎌の刃を三枚に増やし、『終虐・Ne破aア乱怒』を繰り出す。

 

 

「「ああああ……………ッ!」」

 

 

 しかし、二人の攻撃はまるでネフィリム・ノヴァに通用したようには見えず、逆にエネルギーを吸い取られてしまった。

 

 

「聖遺物どころか、そのエネルギーまで喰らっているのかッ!」

 

 

 もし、自分達が通常のギアのまま挑んでいたら、瞬く間に全滅まで追い込まれていたであろう。変異したネフィリム・ノヴァの脅威に、マリアは戦慄する。

 

 

「限界に達したら、地上は……………」

「蒸発しちゃうッ!」

 

 

 ここで怖気づいてはいけない。自分達が敗れれば最後、地上は一兆度のエネルギーを溜め込んだネフィリム・ノヴァによって焼き払われてしまう。

 

 なんとしても、止めなければならない。しかし、ここで倒したとしても爆発は防げない。どこか、自分達にも地上にも爆発の影響が及ばない場所が必要だ。だが、そんな場所など、どこにも――――――

 

 

「――――――バビロニア、フルオープンだあああッ!」

 

 

 フィーネからソロモンの杖を渡されていたクリスが、ソロモンの杖を使って異空間へと続く穴を開けた。

 

 そこに広がるのは、見た事も無い建造物が浮かぶ場所。そして、そこには数え切れない数のノイズの姿があった。

 

 ソロモンの杖を使って開かれる場所など、この場にいる者なら誰だって知っている。

 

 

「バビロニアの宝物庫ッ!?」

「エクスドライブの出力で、ソロモンの杖を機能拡張したのかッ!?」

「ゲートの向こう、バビロニアの宝物庫にネフィリムを収納できれば……………ッ!」

 

 

 宝物庫といっても、その容量は一つの世界と言ってもいい程のものだろう。そこにネフィリム・ノヴァを閉じ込める事ができれば、この世界に被害を与える事無く奴を倒す事ができる。

 

 

「人を殺すだけじゃないって……………やってみせろよッ! ソロモンッ!」

 

 

 クリスが力を籠めれば、限定解除(エクスドライブモード)の出力によって機能を拡張されたソロモンの杖がさらに宝物庫への扉を開いていく。

 

 これなら、と誰もが思ったその時、ネフィリム・ノヴァがクリスを薙ぎ払おうと右腕を動かしてきた。

 

 

「避けろ、雪音ッ!」

 

 

 翼がクリスを助けようと動き出すが、彼女が間に合うよりも早く、ネフィリム・ノヴァの腕がクリスを薙ぎ払った。その衝撃でクリスの手からソロモンの杖が飛んでいってしまうが、それをすかさずマリアが掴み取る。

 

 

「私が……………明日をおおおおおおおッッ!!」

 

 

 クリスと同じようにしてソロモンの杖の機能を拡張。宝物庫への扉を大きくさせ、ネフィリム・ノヴァを収納するのに充分な広さにする。

 

 ネフィリム・ノヴァの手がマリアを捕まえようと伸ばされる。それを難なく回避するマリアだったが、ネフィリム・ノヴァの手から伸びた触手によって捕らえられてしまう。

 

 

「ぐ……………ッ!」

「「マリアッ!」」

 

 

 叫ぶ調と切歌の前で、マリアを捕まえたネフィリム・ノヴァはそのまま宝物庫へと吸い込まれるように落ちていく。

 

 

「格納後、私が内部よりゲートを閉じるッ! ネフィリムは私が……………ッ!」

「自分を犠牲にする気デスかッ!?」

「マリアッ!」

 

 

 二人の叫びも虚しく、マリアはネフィリム・ノヴァと共に宝物庫の内部へと落ちていく。

 

 

(この命を犠牲に世界を救った事で、これまでの罪が精算できるなんて思ってない。だけど、私一人の命で全ての命を救えるというのなら、この命、惜しくは無いッ!)

 

 

 これまで重ねてきた罪は、自分一人の命で償えるものだとは欠片も思っていない。だが、その自分一人の命を対価に世界が救えるのなら、それでも構わない、と覚悟を決めるマリアだが――――――

 

 

「マリアさんを犠牲になんてさせません。マリアさんの命は、私達が護ってみせますねッ!」

 

 

 ここには、それを断じて認めない戦士(しょうじょ)達がいるッ!

 

 

「貴女達……………ッ」

「英雄でない私に、世界なんて護れやしない。……………でも、私達は独りじゃないんだッ!」

 

 

 誰もが、この世界に生きる者達の願いを背負っている。彼らの願いを果たす為に、そしてマリアという一人の人間の命を救う為にも、響を筆頭に装者達がマリアに続いて宝物庫内部へと侵入する。同時に、宝物庫と彼女達の世界を繋ぐ扉が閉じた。

 

 

 

 

「――――――フォニックゲイン、照射継続……………がはッ!」

 

 

 マリアの歌に共鳴した人々の歌によって高まった七十億のフォニックゲインを月遺跡に照射し続けていたナスターシャが噎せ込み、少量の血が吐き出される。

 

 

「はぁ、はぁ……………。月遺跡、バラルの呪詛、管制装置の再起動を確認……………。月遺跡、アジャスト開始……………ッ!」

 

 

 僅かに見える月遺跡の輝きが増したのを確認したナスターシャは、近いようで遠い彼方にある地球(こきょう)を見る。

 

 

「星が……………音楽となって……………」

 

 

 地球を覆う程の光。その一つ一つが、命の輝き。人が生きる証。

 

 今この瞬間、生きとし生ける者達の心が一つとなり、遂には星そのものが、一つの音楽となっている。

 

 最後の力を使い果たしたのか、意識が遠退いていく。

 

 暗転していき、無明の闇に意識が奪い去られていく刹那、ある青年の顔を思い出す。

 

 

『ナスターシャ博士ッ!』

 

 

 人懐っこい笑みと共に、自分の名を呼ぶ青年。子どもの頃から変わらぬ、太陽のように朗らかな笑顔。

 

 その笑顔を思い出し、今を生きる彼が、あの時と同じ笑顔になれる事を祈る。

 

 本当に孫のように可愛がったな、と思いながら、最後にナスターシャは彼と、自分に賛同してくれた少女達に願う。

 

 

「どうか、幸せな、未来を……………」

 

 

 その願い事を最期に、ナスターシャはその命の輝きを失う。

 

 倒れ込み、二度と動かなくなった彼女の顔は、とても安らかな表情だった――――――

 

 

 

 

 ――――――バビロニアの宝物庫に入った響達は、宝物庫の侵入者に気付いたノイズの数に呆気に取られる。

 

 

「なんて大量のノイズ……………ッ!」

「散々この杖が呼び出してきた奴らの住処だからな」

 

 

 響とクリスが会話していると、侵入者を排除すべくノイズ達が襲い掛かってくる。

 

 

「斬り払うぞッ!」

 

 

 翼の一言を合図に装者達が散開する。

 

 

「いっけえええええッ!」

 

 

 アームドギアを合体させて作り上げた槍で響が突貫すれば、彼女が通り過ぎていった場所にいたノイズ達は瞬く間に炭化して消滅していく。

 

 

「はあああああッ!」

 

 

 翼が覚醒した『疾風』の記憶の力を纏わせた刃を振るえば、彼女を中心に発生した暴風が周囲のノイズを粉微塵に切り刻んでいく。

 

 

「喰らええええええッ!」

 

 

 クリスがリフターからレーザーを放てば、その先にいたノイズ達が高出力のレーザーに貫かれ、大爆発を起こした。

 

 

「調、まだデスかッ!?」

 

 

 響達がノイズの注意を引いている間に、調と切歌はネフィリム・ノヴァに捕まっているマリアの救出を急いでいた。

 

 

「もう少しで……………ッ!」

 

 

 響達がノイズの注意を引き、切歌がネフィリム・ノヴァの片腕の相手をしてくれていたおかげで、誰にも邪魔されずに調はオートマタを操ってマリアを拘束する触手を切断できた。それによってオートマタは砕け散ってしまったが、マリアを救出できたので良しとする。

 

 

「切れたッ! マリアッ!」

「一振りの杖では、これだけの数を……………。制御が追い付かないッ!」

 

 

 如何にノイズを使役する事ができるソロモンの杖といえど、これほどの数のノイズを完全に操るのは不可能だ。

 

 

「マリアさんは、その杖でもう一度宝物庫を開く事に集中してくださいッ!」

「外から開くなら、中から開ける事だってできるはずだッ! 鍵なんだよ(・ ・ ・ ・)そいつは(・ ・ ・ ・)ッ!」

 

 

 ソロモンの杖はノイズを召喚、使役する為の完全聖遺物。宝物庫内にいるノイズを出現させるという事は、外部へと続く扉を開くという事。今の状態でそれを行えば、ここから外へ通じる扉を開く事も可能なのだ。

 

 

「セレナあああああッッ!!」

 

 

 自分に勇気を与えてくれた、今は亡き妹の名を叫んだマリアが杖から光線を放ち、外へと続く扉を開ける。

 

 

「脱出デスッ!」

「ネフィリムが飛び出す前にッ!」

 

 

 自分達が脱出する前にネフィリム・ノヴァが外に出ては元も子もない。ネフィリム・ノヴァよりも先に扉に飛び込もうとする装者達であったが、その行く手を阻むようにネフィリム・ノヴァが立ち塞がる。

 

 

「迂回路はなさそうだッ!」

「ならば、行く道はただ一つッ!」

 

 

 ノイズはまだまだいるし、ネフィリム・ノヴァが大人しく通してくれるはずが無い。ならば、自分達が取るべき行動は決まっている。

 

 

「手を繋ごうッ!」

 

 

 響に従い、全員が手を繋いでいく。

 

 

「マリアッ!」

「マリアさんッ!」

「この手、簡単には離さないッ!」

 

 

 最後に手を繋いだマリアの胸から一本の長剣が飛び出し、彼女達の頭上に浮かぶ。

 

 

「「最速で、最短で、真っ直ぐにッ!」」

 

 

 繋いだ手を高く掲げた響とマリアに呼応するように長剣が消え、二人の鎧が組み合わさっていく。響の鎧は金色の左腕に、マリアの鎧は銀色の右腕となり、装者達と同じように固く握り合う。

 

 

「「一直線にいいいいいいいいッッッ!!!」」

 

 

 回転する二色の拳はネフィリム・ノヴァが伸ばした触手を薙ぎ払っていく。

 

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」」」」」」

 

 

 六人の戦姫の絶叫と共に繰り出された絶技――――――『Vitalization』がネフィリム・ノヴァの胴体を貫き、装者達はそのまま宝物庫を脱出。どこかの砂浜に落ちていく。

 

 力を使い果たした彼女達の前に、傷一つついていないソロモンの杖が砂浜に突き立つ。

 

 

「ぐ……………ッ! すぐにゲートを閉じなければ、まもなくネフィリムの爆発が……………ッ!」

 

 

 なんとかしてソロモンの杖を使ってゲートを閉じようと動こうとするが、力を使い果たしているせいでまともに体が動かない。

 

 

「まだ、だ……………ッ!」

「心強い仲間は、他にも……………ッ!」

「仲間……………?」

 

 

 クリスと翼を訝し気に見つめる。

 

 まだ、自分の知らない二課に所属する装者がいるのか、それとも、あの仮面の戦士や記憶の怪人達が来てくれるのだろうか。

 

 しかし、やがて現れた彼女達の言う『心強い仲間』の姿に、マリアは驚愕せずにはいられなかった。

 

 仮設本部から全力疾走してくるのは、既に戦う力を失ったはずの少女――――――小日向未来だった。

 

 

(ギアだけが戦う力じゃないって、響が教えてくれた……………ッ! 私だって、戦うんだッ!)

 

 

 もう、戦場へ向かう親友を見送るだけの自分とはおさらばだ。自分には自分の、小日向未来の戦い方がある、と証明するのだ。

 

 大丈夫だ。陸上部で鍛えられた脚力は錆びついていない。杖との距離など、問題ではない。

 

 ソロモンの杖を手に取り、投擲の構えを取る。

 

 狙いはもちろん、バビロニアの宝物庫。

 

 

「お願いッ! 閉じてえええええッッ!!」

 

 

 未来の願いと共に投擲されたソロモンの杖は、速度を落とさず真っ直ぐに宝物庫へと飛んでいく。

 

 

「もう響が……………誰もが戦わなくていいような世界にいいいいいッッ!!」

 

 

 ネフィリム・ノヴァの熱量が臨界点を突破し、全身から眩い光を放ち始める。そして、凄まじい光が宝物庫から漏れ始めた瞬間――――――宝物庫内に投げ込まれたソロモンの杖が、その扉を閉めた。

 

 先程まで扉が開いていた場所から黒い波紋が広がり、一瞬空の色が通常ならあり得ない色に変わる。

 

 しかし、異変はそれだけで、そこからなにかが起こるという気配は無かった。

 

 

「……………」

 

 

 響も、未来も、翼も、クリスも、マリアも、調も、切歌も。誰もが、口を開かない。しかし、この場にいる誰もが確信した。

 

 

 ――――――戦いは、終わったのだと……………。

 

 

 

 

「――――――マムが未来を繋げてくれた……………」

 

 

 あれ程までの戦いが嘘だったかのように思える、夕焼けに染まる空を見上げるマリアが呟く。

 

 今、こうして自分達が安心してこの地に立てるのは、月遺跡を起動して月の落下を防いでくれたナスターシャのおかげに他ならない。

 

 

「ありがとう、お母さん……………」

 

 

 遥か彼方にいるであろう母親(ナスターシャ)に感謝の気持ちを伝えていると、背後から響に声をかけられる。

 

 振り返ったマリアに、響はなにかを乗せた手を差し出す。

 

 そこにあったのは、かつてはマリアが使用し、先程まで響が使っていたガングニールのペンダントだ。

 

 戦いは終わったから、ガングニールを本来の持ち主であるマリアに返そうと思っての行動だろう。しかし、マリアはゆっくりと(かぶり)を振った。

 

 

「ガングニールは君にこそ相応しい」

 

 

 ガングニール。北欧神話にて語られる、担い手に勝利をもたらす神槍。人と人の心を繋ぐ響こそ、まさにその適合者だ。

 

 マリアの言葉に、響は特になにも言わずに頷く。託された側が、託す側に文句を言ったりするのは筋違いだ。

 

 

「だが、月の遺跡を再起動させてしまった……………」

「バラルの呪詛か」

「人類の相互理解は、また遠のいたってわけか……………」

 

 

 月の落下を食い止める為とはいえ、人類の相互理解を阻むバラルの呪詛は未だ健在。これから先も、人間は自分達の考え方の齟齬から争いを繰り返す事となってしまった。

 

 

「……………へいき、へっちゃらですッ!」

 

 

 しかしそれを、(かのじょ)は軽く笑い飛ばした。

 

 

「だってこの世界には、歌があるんですよッ!」

 

 

 たった一つの歌でも、世界中の人々の心を一つに合わせる事ができた。それができたからこそ、今の自分達がここにいる。

 

 

「響……………ッ!」

「歌……………デスか」

 

 

 響の言葉に、誰もが笑顔で頷く。

 

 

「立花響。君に出会えて、よかった」

 

 

 これからマリア達はケアンやウェルと共に、武装集団『フィーネ』としてテロリスト活動を行った罪を裁かれ、服役する事となる。もしかしたら、これが今生の別れになるのかもしれないというのに、彼女達の間には、それを悔やむ雰囲気は流れていない。

 

 またいつか会える。なんとなくだが、そう感じていたからだ。

 

 

 

 

「――――――いつか人は繋がれる……………。だけど、それはどこかの場所でも、いつかの未来でもない……………」

 

 

 敵対していた両者が、まるで長い期間を共に戦ってきた戦友であるかのように語り合う様子を遠巻きで眺めていたフィーネがポツリと呟いた。

 

 統一言語を失い、理念の違いから争いを繰り返すようになってしまった人類。バラルの呪詛から解放されない間、人類が一つになるという可能性は皆無だと思っていたが、その考えは間違っていたようだ。

 

 

「本当に、末恐ろしい子ね。あの子は」

 

 

 いつ如何なる時も、『自分達はわかり合える。繋がれる』と信じて疑わない少女。自己犠牲精神の塊というのは少々心配だが、それも彼女とつながった仲間達がなんとかしてくれるだろう。

 

 そんな姿を見ていると、長年、人と繋がる事をせずに、孤独に統一言語を取り戻そうとしていた自分が恥ずかしくなってくる。だが、それ以上に、フィーネは今を生きる彼女達をとても誇らしく思う。

 

 

「きっと、大丈夫よね。あの子達なら……………」

「あぁ、彼女達ならば、バラルの呪詛程度、問題ないだろう」

 

 

 傍らに立つ弦十郎に頷き、よし、とフィーネは頬を叩いて気合を入れ直す。

 

 

「私も負けてられないわね。いつか必ず、統一言語を取り戻して、あの御方と再会してみせるわ」

「その意気だ、了子君。子どもばっかにいい格好はさせられないからな」

 

 

 二人は顔を見合わせ、彼女達に負けていられないと笑い合うのだった。

 

 

 

 

「――――――大道克己。これを」

 

 

 そこから少し離れた場所。克己と共にフロンティアを脱出していたケアンは、彼にT3イクシードメモリを渡していた。

 

 

イクシードメモリ(それ)は私専用に作られたメモリだが、フィーネに頼めばお前も使えるように改造してくれるだろう。私の代わりに、それを使ってやってくれ」

「どういう風の吹き回しだ? いきなり渡されても、使う気にはなれないぞ」

 

 

 至極当然な返事をする克己に、ケアンはなにも握られていない手を見下ろす。

 

 

「私は力の使い方を間違え、ラックドライバーも失った。最早、イクシードへの変身は叶わない。正しい力の使い方を知っているお前なら、それを有効活用してくれるだろうと判断しただけだ。判断はお前に任せる。使う気が無いのならこの場で砕いてもらっても構わない」

「……………それなら」

 

 

 T3イクシードメモリを握る力を強めた克己に、彼はそのメモリを使う気は無いと判断したケアンは、少し名残惜しさを感じながらも、その事実を受け入れようとする。

 

 

「フィーネ」

「え?」

「ケアンからの贈り物だ」

 

 

 だが、克己はそのままT3イクシードメモリを砕こうとせず、フィーネに投げ渡したのだった。

 

 訳も分からずに受け取ったフィーネと、なぜ彼女に渡したのかと克己を訝しむケアン。両者の視線を受けながら、克己は口を開く。

 

 

「お前とはここまで、とは思えなくてな。もしもの可能性に賭けて、フィーネに渡しておくのもいいかもしれない、と思ったまでだ。フィーネ、後で俺のロストドライバーを貸す。こいつが、また戻ってきた時に使うやつを作っておいてくれ」

「……………なるほどね。いいわ。完成を心待ちにしていなさい」

 

 

 納得したように笑ったフィーネが、T3イクシードメモリを懐にしまったのを確認してから、克己はケアンを見る。

 

 

「道具としてのお前は、俺が殺した。これからは、一人の人間としてのケアン・ディークスとして前に進む事だな」

「……………敵わないな、お前には。本当に」

 

 

 そろそろ連行される時間になる。

 

 マリア達に声をかけに行った自衛隊員の姿を見てそう思ったケアンは、最後に、と克己に手を差し出す。

 

 

「また会おう、大道克己。私を殺してくれた男」

「また会おう、ケアン・ディークス。いつか、共に戦う日に」

 

 

 握手を交わし、ケアンはマリア達と共に連行されていった。

 

 

 

 

 ――――――これにて、特異災害対策機動部二課と武装集団『フィーネ』の戦いは終結した。

 

 

 古代の杖は、古代の負の遺産が敷き詰められた宝物庫と共に世界の外側へと隔離され、日本政府が米国政府に情報隠蔽の事実は無く、またF.I.S.という組織も存在しなかったと公表した事で、口封じの為に米国政府に始末されかけていたマリア達の罪状は消滅。マリア達は今後、国連指導の特別保護観察下に置かれる事となる。また、施設に残されていたマリア達と同じレセプターチルドレンは、国際社会からの批難を恐れた米国政府は対応を一転。監禁されていた子ども達は解放、保護という形で救出される事となった。

 

 ウェルは左腕をネフィリムと同質化させたが故に『消滅を免れたネフィリムの一部』として異端技術に関連する危険物、即ち『物』として扱われ、それらを保管する海底施設《深淵の龍宮》に隔離される事になり、同じく世間から見れば『物』であるアンドロイドのケアンも同様に、そこに隔離された。

 

 

 

 

 ――――――そして、現在。

 

 

「翼さ~んッ! クリスちゃ~んッ!」

 

 

 人々の想いを背負い、世界を救った少女達は、いつもと変わらぬ日常に戻っていた。

 

 

「聞いてくれ、立花。あれ以来、雪音は私の事を『先輩』と呼んでくれないのだ……………」

「だからぁッ!」

 

 

 翼はフロンティアでの戦いの際、自分を『先輩』と呼んでくれたクリスに、これからもそう呼ばれたかったのだが、変なところで意固地になってしまうクリスが恥ずかしがって『先輩』と呼んでくれない事に不満を抱いていた。

 

 それを聞いた響はニヤニヤしながらクリスを見る。

 

 

「なになに~? クリスちゃんってば、翼さんの事、『先輩』って呼んでるの?」

「ちょっと、響ったら……………」

「いい機会だから教えてやる……………ッ! あたしはお前より年上で、先輩だって事をッ!」

 

 

 今にも響に殴りかかろうとしたクリスを見かねた翼がクリスの腕を掴み、響と一緒に登校してきた未来は響をクリスから引き離す。

 

 

「二人ともそのくらいにしておけ。傷も癒えてないというのに……………」

「へへへ……………」

 

 

 あの戦いが終わり、日常に戻ってはいるが、まだ傷は完全に治癒していない。ノイズの被害はしばらくは出ないだろうと考えられているが、万が一という事もあるが、その場合は克己達が出動してくれる事になっている。彼らが頑張ってくれるのだから、自分達は傷を癒すのに尽力すべきだろう。

 

 

「ねぇ、響」

「ん?」

「体、平気? おかしくない?」

「心配性だなぁ、未来は。へへ、私を蝕む聖遺物は、あの時全部綺麗さっぱり消えたんだって」

 

 

 プリズムドーパントと化した未来との戦いで、響は胸のガングニールを完全に除去する事ができた。これでもう、響はガングニールの浸食に苦しむ事は無いし、人ならざる『なにか』になる事も無い。

 

 ちなみに、未来も未来で神獣鏡(シェンショウジン)の装着や、プリズムドーパントに変身した後遺症などが心配されていたが、しばらく安静にしておく程度で問題は無いと判断されている。

 

 響のいつも通りの笑顔を見て、これなら大丈夫、と未来が安心したように微笑む。

 

 

「でもね、胸のガングニールは無くなったけれど……………、奏さんから託された歌は、絶対に無くしたりしないよ」

 

 

 自分の命を賭して、見ず知らずの(たにん)を救った、ガングニールの装者の意志は、決して消えない。彼女の意志は、今も響の中で煌々と輝いている。

 

 

「それに、それは私だけじゃない」

 

 

 空を見上げ、自分達を照らす太陽を掴むように拳を握る。

 

 

「きっとそれは、誰の胸にもある、歌なんだ……………ッ!」

 

 

 誰もが、誰かから託された願いを胸に生きている。それは決して変わらない、世界の真理なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――幸運も不運も運んでくる風が吹き続ける街。その場所の象徴するシンボルタワーの前で、二つの影が交錯する。

 

 片や、とある二人の探偵が身も心も一つとなった究極の戦士。片や、禍々しい爪を持つ、ところどころが靄のようになっている怪人。

 

 両者の意志に賛同した仲間達は既に力を使い果たしており、黙って自分の信じる男達の勝利を信じて、彼らの戦いを眺めている。

 

 

「ハァッ!」

「ヌンッ!」

 

 

 戦士が振るった刃を打ち払った怪人の爪が火花を散らし、後退った戦士に追撃を仕掛けようと靄状の爪を振るう。しかし、それは戦士が咄嗟に動かした盾によって阻まれる。

 

 互いの攻撃が阻まれ、両者は一旦距離を取る。

 

 両者共に、その身に何十もの攻撃を受けてきた。これ以上続けても、今のような結果になる事は明白。

 

 

 ――――――ここでこいつを倒す。それが、この戦いを終わらせる一手だ。

 

 

 戦士は『究極』の力を解放し、その身を黒と緑の竜巻に委ね、怪人は揺らめく真紅の双眼を妖しく輝かせ、靄の爪を巨大化させていく。

 

 両者の最大の一撃が、雄叫びと共に繰り出される。

 

 永遠にも思えるような、力と力の拮抗。それは――――――思わぬ形で崩れる事となる。

 

 

「もうやめてええええええええええええええッッッ!!!」

 

 

 悲鳴が響き渡ると同時、空が割れる(・ ・ ・ ・ ・)

 

 そこから生じるのは、行く先など皆目見当がつかぬ穴。

 

 それは地上にて争う戦士と怪人どころか、その仲間達、戦士達が駆るものすらも呑み込んでいく。

 

 誰もが予期せぬ出来事が起きた事に驚愕し、誰もがこの先になにがあるのかという不安を抱く。

 

 やがて彼らを呑み込んだ穴は、静かに閉じていくのだった――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――死神に鎮魂歌を・第二章『神威表明星艦フロンティア ―――彼方へ翔ける神船―――』完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――次章『純然魔導錬金アルケミック・カルト ―――エターナル&W 純真なる騎士と魔法少女―――』

 





 G編完結でありますッ! 次回はしないフォギアを投稿して、同時刻にイクシードなどの設定紹介も投降したいと思いますッ!

 そして再来週からはGX編ッ! キャロルちゃん達が登場しますッ! そして、新たな仮面の戦士も……………ッ!?

 乞うご期待デスッ!

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