死神に鎮魂歌を   作:seven74

51 / 77
 

 今回からGX編突入ッ! 世界を脅かす新たな脅威に、S.O.N.G.、NEVER、そして風都の仮面ライダー達が立ち向かうッ!



純然魔導錬金アルケミック・カルト ―――エターナル&W 純真なる騎士と魔法少女―――
Wの参戦/奇跡の殺戮者


 

 

「二人共、新しい司令室には慣れたようだな」

「えぇ。二課の時の癖が抜けきらず、時々戸惑う事もありますけどね」

 

 

 弦十郎に、オペレーターの藤尭と友里が苦笑して返す。

 

 彼らがいる司令室は、今まで慣れ親しんできた二課仮設本部のそれではない。二課として活動していた当時からは考えられなかった、最新鋭の科学技術を用いられて作られた、新たな司令室である。

 

 では、なぜ彼らがそのような場所にいるのか、というと、それにはちゃんとした訳がある。

 

 世界を巻き込み、一時は地球を滅亡の危機にまで陥れたフロンティア事変解決後、国連は異なる空間の彼方に消えたネフィリム・ノヴァが取り込まなかったフロンティアの残骸を回収すべく、遥かな(そら)へと調査団を派遣した。

 

 世界から選ばれた精鋭を用いて行われた調査は滞りなく進み、ウェルによって打ち上げられた制御室内にいたナスターシャの遺体回収にも成功したが、帰還中にシャトルがシステムトラブルを起こし、操作不能になってしまったのだ。

 

 万事休すかと思われた彼らを救ったのは、正式に出動許可を受けた二課の装者達とNEVER部隊から派遣された克己、剛三である。

 

 彼らの活躍により、調査団員が死亡し、フロンティアの残骸をナスターシャ諸共に失い、さらには落下による甚大な被害が起きるという最悪の事態を防ぐ事ができた。

 

 それの代償としてか、世界二位の高度を誇っていたK2が三位に下方修正されてしまったのだが。

 

 このシャトル救助の一件により、特異災害対策機動部二課は正式に国連直轄下にて、超常災害対策機動部タスクフォースとして再編成される事となる。

 

 『Squad of Nexus Guardians』――――――略称『S.O.N.G.』。それが今の二課(かれら)の名である。

 

 

「シンフォギアを扱う私達に相応しい組織名ですが、シンフォギアシステムを初めとする異端技術を目の届く所で管理したいという国連の本音も透けて見えますね」

「それだけじゃなく、こっちにはライダーシステムやガイアメモリもありますからね。国連が見逃すはずがありませんよ」

 

 

 NEVER部隊が使用するガイアメモリは、地球の記憶そのもの。中にはそれ一本で街一つを壊滅状態にまで追い込めるものまで存在するのだ。しかもNEVERのリーダーは部下のものを除いても、二十二本のガイアメモリを所有しているのだ。それを野放しにするほど、国連も甘くはない。

 

 

「お上の思惑など、どうでもいいさ。我々二課が国連直轄のS.O.N.G.と再編成される切っ掛けとなったシャトル救出任務。ナスターシャ教授の亡骸を帰す為という、些か私的な目的もあったが、実際にあの事件の持つ意味は大きかった」

 

 

 S.O.N.G.として活動する前の二課は、基本日本国内でしかその力を行使できなかった。しかし、国連直轄組織となった今では、国際的な災害や事態に対処できるようになった。そう考えれば、国連直轄の立場というのも悪くない。

 

 

「半年以上ノイズの観測がされなくなっているとはいえ、異端技術による脅威が完全に消えたわけではない」

 

 

 ネフィリムをノイズの本拠地である宝物庫に閉じ込めた事でノイズによる被害はもう起こらないだろうと予想されているが、油断は禁物である。

 

 ウェルはソロモンの杖、ネフィリムを用いて世界を自分のものにしようと企んだ。聖遺物にはそれを可能にする力がある。あのような考えを持つ人間が今後現れないとも限らない。用心するに越した事はないだろう。

 

 

「俺達がすべき事は、人々が安心して笑って、飯食って、幸せな夢を見る事ができる、そんな世界を護る事だッ!」

 

 

 その言葉に二人が頷いた直後、自動開閉式扉が開いてフィーネが響達を連れてやって来る。

 

 

「こんにちは~ッ!」

「響君達か。メディカルチェックの結果はどうだった?」

「心配無用だぜ、おっさん。目立った異常はないってよ。な? フィーネ」

「えぇ、この状態ならいつ出撃しても問題ないわ」

「そうか、ならばよかった。翼がロンドンにいる現状では、動ける装者は君達二人に限られる。克己君達も問題なく動けるが、戦力は多いに越した事はない。……………流石に、調君と切歌君をLiNKER無しで任務に当たらせるわけにはいかないしな」

 

 

 マリア、調、切歌は現在、国連指導の特別保護観察下に置かれている。自由が制限された生活を送らせるのはS.O.N.G.側としては気が引けるが、日本政府の活躍が無ければ彼女達は死刑判決を受けていただろうと聞く。彼女達も殺されるよりはマシだという事で今の状況を受け入れているので、こちらがとやかく言う権利はないだろう。

 

 しかし、適合係数が低いマリアや調、切歌はLiNKER無しにはシンフォギアを纏えない。現在、急ピッチでフィーネがLiNKER製作に取り組んでいるが、まだ完成していないようだ。

 

 

「心配しすぎなんだよ。少しぐらいの任務でどうにかなるほど、あたしらは(やわ)じゃないっての」

「そういえば、調ちゃんも切歌ちゃんも、リディアンに通えるようになってよかったよねッ! 師匠、ありがとうございますッ!」

「俺はなにもしちゃいないさ。ただ、望む環境への切符を用意しただけに過ぎない。リディアンでどう過ごすかは本人次第だ」

「せっかく入った後輩だ。ちゃんと先輩のあたしが面倒を見てやるよ」

 

 

 可愛い後輩ができた事が嬉しいのだろう。クリスが明るい笑顔を浮かべている。

 

 

「そうだな。よく見てやってくれ」

「了解です、師匠ッ! ……………ところでクリスちゃん。この前調ちゃん達とも話してたんだけど、もうすぐだね~。翼さんとマリアさんのライブ」

「ん? あぁ、そうだったな」

 

 

 そういえば、とクリスは思い出す。

 

 近々、翼がマリアと共にロンドンでライブを行うらしい。既にチケットは完売。流石の人気である。

 

 

「クリスちゃんももちろん見るよね? ね?」

「当たり前だろ? せっかくのあいつらの晴れ舞台だしな」

「クリスちゃんの家ってテレビおっきかったよね?」

「ん? あぁ、割と大きい方だったかな。それがどうか……………あぁ、なるほどね」

 

 

 なぜそんな事を聞いてくるのか、と考えた瞬間、自ずと答えが導き出される。

 

 諦念の溜息を吐いたクリスに、響はにんまりと笑うのだった。

 

 

 

 

 ――――――駆ける。駆ける。駆ける。

 

 横浜港付近で、一枚のローブを羽織った少女……………いや、『それ』を少女と定義づけてしまってよいのだろうか。

 

 人ならざる彼女に、性別というものはない( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )。見る者がその人物を『少年』と言えば少年であり、『少女』と言えば少女であるような存在であるが、ここではそれを『少女』と定義しよう。

 

 

(ドヴェルグ=ダインの遺産……………。そして、ライダーシステム( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )……………)

 

 

 公衆電話の影に身を隠した彼女が抱えているのは、その幼い体躯には少々不釣り合いなアタッシュケース。

 

 その中に納められているものがなにか、それを知るのは彼女と――――――彼女を追う者達のみだ。

 

 

(全てが手遅れになる前に、これを届ける事がボクの償い……………)

 

 

 再び走り出す少女。

 

 真夜中を突き進む彼女の姿を、一人の女性が見下ろす。

 

 

「……………私に地味は似合わない。だから次は――――――」

 

 

 砕けた月を背景に、キメッキメのポーズを取った女性が、作り物めいた瞳で少女を追う。

 

 

「――――――派手にやる」

 

 

 女性が持つ一枚のコインが、月の光を反射して輝いた。

 

 

 

 

「――――――……………あの時から予想してはいたが」

 

 

 今日は遂に翼とマリアのライブ当日。全世界に生中継されるので、どうせなら大きなテレビがある家で見たい、という意思が見え見えだった響の態度からわかり切っていた事だが、

 

 

「やっぱり、あたしン家かよ」

「すみません、こんな時間に大人数で押しかけてしまいました」

「ロンドンとの時差は約八時間ッ!」

「チャリティロックフェスの中継をみんなで楽しむには、こうするしかないわけでして……………」

「まっ、頼れる先輩って事でッ!」

「時には先輩として気を利かせるのも必要な事よ、クリス」

 

 

 現在、クリスの家には響、未来、二人の友人の寺島、板場、安藤に加え、調、切歌、そして驚く事にフィーネがいる。

 

 

「てか、なんであんたまでここにいるんだよ。LiN……………仕事の方はどうしたんだ?」

「私とて休みは欲しいわよ。これはその休み時間を有効活用してるだけ。終わり次第、すぐに仕事に戻るわ」

「了子さん、色んな事を教えてくれるんですよ? 軽くですが、世界中の伝統的な料理や、歴史についても教えてくれました。クリスさんも教えてもらってはどうですか?」

 

 

 なにやら色々フィーネが話してたのはそういう事だったのか、と納得するクリス。

 

 最初こそ、かつてリディアンで響達を追い詰めたフィーネと顔を合わせた寺島達は警戒心を抱いていたが、響と未来が説得してくれたお陰で警戒心を解く事ができたのである。

 

 調や切歌も、初めは自分達がレセプターチルドレンとして監禁される原因である彼女に怒りを露わにするのではないか、と響達は内心冷や冷やしていたものだが、二人は彼女がウェル確保に乗り出してくれたり、自分達の為にLiNKERを作ってくれている事に感謝していた。また、彼女の存在が無ければ、自分達は親友とも呼べる者達と出会えなかったとも述べていた。

 

 

「あたしは成績優秀なんでな。ご教授されるとすりゃ、この馬鹿の方がよっぽどだ」

「うえぇ~。こんな時に勉強の話とかしないでよぉ~ッ!」

「でも勉強は必要よ、響ちゃん。休み時間ができて、貴女がフリーな時には色々教えてあげるわよ? ……………それにしても、ちゃんと片付けられててよかったわ。整理整頓を心掛けてて感心感心」

「うっせ。仮に散らかっててもちゃんと掃除くらいするからな」

 

 

 ジュースで満たされたコップを、響達が持ち込んできたお菓子で埋め尽くされているテーブルに置く。

 

 

「クリスちゃんも早く座りなよッ! やっと自分の夢を追いかけられるようになった翼さんのステージだよッ!」

「みんなで応援……………しないわけにはいかないよな」

「そしてもう一人……………」

「マリア……………ッ!」

「歌姫のコラボユニット、復活デスッ!」

 

 

 再び歌姫として芸能界に復帰したマリアの活躍を期待し、調と切歌が今か今かとテレビを凝視する。

 

 それからしばらくしない内に、二人の歌姫によるライブは始まった。

 

 

 

 

 ――――――ロンドン、テムズ川。

 

 南イングランドを流れ、ロンドンと海を繋ぐイギリスの有名な運河の中心に作られたライブ会場の中心にスポットライトが浴びせられ、そこに二人の歌姫の姿が現れると、観客席から割れるような歓声が上がった。

 

 

「――――――遺伝子レベルの」

「――――――インディペンデント」

 

 

 桃色のフリルのついた青白の衣装に身を包んだマリアが手を掲げれば、傍らに立つ、マリアとはフリルの色が異なる衣装の翼も手を掲げる。

 

 

「――――――絶望も希望も」

「――――――抱いて」

 

 

 不安など微塵も感じさせない、自信に満ち溢れた声を響かせる。

 

 

「「――――――足掻け命尽きるまで」」

 

 

 二人の歌姫による宴の開幕に、会場が熱狂の渦に巻き込まれる。

 

 間奏に入り、二人はスモークで満たされた床を歩いていく。

 

 華麗な動作で踊る二人が互いの指を合わせるような仕草を取ると同時、彼女達の背後のモニターが展開し、足元のスモークも消えていく。

 

 奥に広がるのは、ロンドン橋の向こうで空を赤く燃え上がらせる太陽。そして歌姫達の足元に広がるのは、水面。

 

 天候、時間帯、そこに立つべき歌姫達――――――この三つの要素のうち、どれか一つ欠ければ全てが台無しになってしまうであろう条件全てを満たした状態で行われるライブは、人々に感動すら覚えさせる。

 

 

「――――――ヒカリと飛沫のKiss」

 

 

 唇に当てた指先を放つような仕草を取ると、彼女達を囲むように無数の水柱が立つ。

 

 

「――――――恋のような」

「――――――虹のバースデイ」

 

 

 水柱が崩れると、その欠片が夕焼けの輝きを受けて、二人の頭上に虹を描く。

 

 

「――――――どんな美しき日も」

「――――――なにか生まれ」

「――――――なにかが死ぬ」

 

 

 二人は氷上のスケート選手の如く、水面を滑り始め、ステージを回り始める。

 

 

「――――――せめて唄おう」

「「――――――I love you」」

 

 

 観客達が二人と声を合わせて叫ぶ。

 

 

「――――――世界が酷い地獄だとしても」

 

 

 二人の背後に七本の水柱が立ち、再び残光を残しながら崩れ落ちていく。

 

 

「――――――せめて伝えよう」

「「――――――I love you」」

 

 

 再び観客が一緒に歌い、二人はそれを嬉しく思いながら美しい動きで観客達を魅了していく。

 

 

「――――――解放の時は来た」

「――――――星降る」

「――――――天へと」

「「――――――響き飛べッ! リバティソング」」

 

 

 過ぎ去った後に水柱を作り上げながら、バレエさながらの動きで回転して並び立つ。

 

 音楽が止まる。それで開幕の一曲目は終了――――――馬鹿な、そんなのはあり得ない。

 

 歌には無くてはならないものがある。それがなにか、わからない者はいないだろう。

 

 誰もが待ち焦がれ、誰もがその世界に呑まれる部分。

 

 ここから始まるのは、そう――――――サビ( ・ ・ )である。

 

 

「「――――――Stardust」」

 

 

 頭上に広がる星空が輝き、流星が降り注ぐ。

 

 

「「――――――そして奇跡は待つモノじゃなくて」」

 

 

 この瞬間(とき)を待っていたとばかりに沸き立つ歓声を浴びながら、翼は蒼色の、マリアは桃色の軌跡を残して水面を滑っていく。彼女達が形作るのは――――――永遠を意味する『∞』の文字。

 

 

「「――――――その手で創るものと……………吼えろッ!」」

 

 

 腕を振り上げ、観客達をもっと沸き立たせるべく、二人の歌姫は飛ぶ( ・ ・ )

 

 

「――――――涙した過去の苦みを」

「――――――レクイエムにして」

 

 

 自由気ままに飛び回る二人の周りを、色鮮やかな水柱が立ち並ぶ。

 

 二人が交差し、一回転して着地。そこから再び滑り出す。

 

 

「「――――――生ある全の力で」」

 

 

 降り注ぐ流星の中、力強い歌声で歌い、二人の歌姫達は振出しに戻るかのように並び立つ。

 

 

「――――――輝けFuture world」

「――――――信じ照らせ」

 

 

 その姿は、『QUEENS of MUSIC』のライブで歌ったデュエットソングとは異なる、互いに和解し合った者達の間にのみ生まれる、絆を体現しているかのよう。

 

 二人の間に苛烈な戦意は無く、在るのはただ、共にこの場に立つ事を喜び合う、友情の絆。

 

 

「「――――――星天ギャラクシィクロス」」

 

 

 頭上に浮かぶ二つの銀河が融合し、X字状の眩い煌めきで歓声が響き渡る会場を照らすのだった――――――

 

 

 

 

「――――――キャーッ! こんな二人と一緒に友達が世界を救ったなんて、まるでアニメみたいだよッ!」

「う、うん、ホントだよ……………」

 

 

 遠く離れた地で活躍する歌姫に感極まっている寺島に響が照れ笑いを浮かべる。

 

 

「やっぱりいいものね、歌っていうのは」

「やっぱり、先輩はスゲェや……………」

 

 

 背もたれに背を預けたフィーネが慈母の如き笑みを浮かべ、その隣に座ったクリスは翼の万人を魅了する歌声に素直に感動する。

 

 

「……………でも、月の落下とフロンティアの浮上に関連する事件を収束させる為、マリアは生贄とされてしまったデス」

「大人達の体裁を護る為にアイドルを……………文字通り偶像を強いられるなんて……………」

 

 

 だが、調と切歌の顔は晴れていない。

 

 マリアは自分達と同じく特別保護観察下に置かれているが、国連との取引によって、武装集団『フィーネ』の一員として活動していた彼女は『国連所属のエージェントとして潜入捜査を行っていた』という筋書きが与えられ、文字通りの偶像(アイドル)を演じる事となってしまったのだ。

 

 

「……………そうじゃないよ」

 

 

 マリアに辛い思いをさせてしまった、と暗い表情の二人に、未来が(かぶり)を振る。

 

 

「マリアさんが護っているのはきっと、誰もが笑っていられる日常なんだと思う」

 

 

 エアシャトルに拉致され、そこでマリアと会話した事がある未来は、彼女の優しさに触れた。そんな彼女がアイドルでいる事を嫌がっているとは到底思えなかったのだ。

 

 

「未来……………」

「……………そうデスよねッ!」

「だからこそ、私達がマリアを応援しないと……………ッ!」

 

 

 戦えない自分達に出来る事は、今ある日常を護るべく奮闘しているマリアを応援する事。

 

 戦う力が無くとも、誰かを助ける事は出来るのだ。

 

 その時、響とクリス、フィーネに弦十郎から連絡が入った。

 

 

『第七区域に大規模な火災発生。消防活動が困難な為、応援要請だッ!』

「どうやら、楽しい一時はここまでのようね」

「すぐに向かいますッ!」

「響ッ!」

 

 

 緩んだ表情が一気に真剣なものへと様変わりした響達の姿に、また新たな敵が現れたのではないか、と不安になる未来。

 

 

「大丈夫、人助けだからッ!」

 

 

 唯一無二の『陽だまり』を安心させるように優し気な声で答える。

 

 そう、嘘偽りなく、これから彼女達が行うのは人命救助――――――人助けだ。

 

 

「私達も」

「手伝うデスッ!」

「二人は留守番だッ! LiNKERも無しに、出動なんかさせないからなッ!」

 

 

 まだLiNKERが完成していない以上、適合係数の低い二人を戦わせられない。

 

 ここにいる装者で動けるのは響とクリスだけなので、現場に急行する二人の後姿に、調と切歌は不満げに頬を膨らませるのだった。

 

 

 

 

 ――――――ライブの余韻に浸る事すら許されずに二人組の黒服の男達が『警護』という名の監視につき、それに不快な気持ちを抱きながら、マリアは様々な衣装を着たマネキン人形が無数に並べられている廊下を歩いていくと、ふと違和感を感じた。

 

 

「風……………? 誰かいるのッ!?」

 

 

 この密閉された空間で、吹くはずが無い風が吹いた。すぐさま臨戦態勢を整えたマリアと黒服達に、どこからか女性の声が聞こえてくる。

 

 

「司法取引と情報操作によって仕立て上げられたフロンティア事変の汚れた英雄、マリア・カデンツァヴナ・イヴ……………」

「何者だッ!」

 

 

 正体不明の声にマリアが問いかけると、それに答えるように一際強い風が吹いた。

 

 ここに置かれているのは、先述した通り様々な衣装を着せられたマネキンの数々。だが、その中で唯一、誰も配置していない( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )存在(・・)がいた。

 

 物音を立てる事無く動いた女性が、一番距離が近い黒服の前に降り立ち、後頭部を手を掴んで勢いよく引き寄せる。

 

 不意打ちを受けた事に黒服が気付くも、時すでに遅し。女性は間髪入れずに、彼の唇を奪い取った。

 

 

「ん、んんんッ!?」 

 

 

 突然の口づけに男が困惑しながらも抜け出そうとするが、女性はまるで捕らえた獲物を絞め殺す蛇のように、彼の体に足を絡めて逃げられないようにする。

 

 茫然とするマリアともう一人の黒服の目の前で、女性に口づけされた男が崩れ落ちる。その瞳に、命の光は宿っていない。

 

 

「や、やめろッ!」

 

 

 黒服が懐から取り出した拳銃が火を噴く。

 

 音速の勢いで対象を貫くべく撃ち出された無数の弾丸を前に、女性は物怖じせずにスカートを翻す。

 

 すると彼女を護るかのように緑色の風が吹き荒れ、撃ち出された銃弾の動きを操作。一つ残らず黒服に返し、絶命させた。

 

 あっという間に二人のボディーガードを殺害した女性はフラメンコを彷彿とさせる優雅な動きでポーズを決める。

 

 

「……………纏うべきシンフォギアを持たぬお前に、用はない」

 

 

 女性はどこか無機質な声でそう言い放ち、大剣を手にマリアに斬りかかった。

 

 

 

 

『――――――付近一帯の避難はほぼ完了。だが、マンションに多数の生体反応を確認している』

 

 

 既に克己、京水、レイカが乗り込んでいたヘリコプターに搭乗していた響とクリスは、火災現場に向かっている間、弦十郎から状況報告を受ける。

 

 

「まさか、人が?」

『防火壁の向こうに閉じ込められているようだ。さらに気になるのは、被害状況が依然四時の方向に拡大しているという事だ』

「赤猫が暴れていやがるのかッ!?」

 

 

 普通、火災とは発生源を中心に周囲を広がっていくものだ。それが一つの方向にのみ進んでいるのには、なにか意味があるのだろうか。

 

 

『響君は克己君と救命活動に、クリス君は京水君とレイカ君と一緒に被害状況の確認に当たってもらうッ!』

「了解ですッ!」

「……………任せたぞ」

「任されたッ!」

「克己ちゃん、頑張ってねッ!」

「任せろ」

 

 

 扉を開き、響はペンダントを、克己はT2エターナルメモリを片手に飛び降りる。

 

 

「――――――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失へのカウントダウン)

「変身ッ!」

エターナル!

 

 

 響は慣れ親しんだ聖詠を歌い、全身に神槍ガングニールのシンフォギアを纏う。克己は『永遠』の記憶の力をその身に纏い、エターナルへと変身する。

 

 

「――――――一点突破の決意の右手」

 

 

 胸の内から湧き上がる想いを言葉に乗せて、天井を蹴り砕いて響がマンション内に侵入。続けてエターナルも彼女が開けた穴からマンション内に侵入した。

 

 

「響、お前は先に行け。俺はここの火を消してから向かう」

「はいッ!」

 

 

 響が友里のナビゲーションの下動き出し、エターナルはこの状況で最適なメモリを選出し、それを起動させる。

 

 

ウェザー・マキシマムドライブ!

 

 

 マキシマムスロットにT2ウェザーメモリを挿し込んだエターナルがパチンッと指を鳴らすと、マンションの上空に雨雲が発生し、外部から消火活動を始め、さらに自分の周りにも雨雲を発生させ、スプリンクラーでも補え切れない炎を消火し始めた。

 

 

 

 

「――――――やはり、シンフォギアを持たない者ではこの程度……………。歌を聴く意味も必要もありませんわ」

 

 

 つまらなそうに言う女性――――――ファラ・スユーフによって繰り出される斬撃を掻い潜るマリア。ファラの剣術はこの場にはいない翼にも匹敵、もしくはそれを上回るのではないか、と思えるほど冴え渡っており、一瞬でも気を抜けば即あの世行きだ。

 

 だが、それなりに戦いの心得はあると自負しているマリア。ただ追い詰められているだけでは終わらない。

 

 

「はぁッ!」

 

 

 上段から振り下ろされた大剣を紙一重で躱し、ファラに延髄蹴りを繰り出した。

 

 素人が見てもわかるほどのクリーンヒット。常人ならば気絶、あるいは脳震盪を起こすレベルの一撃を受けたファラだが、なんと両目を一回転( ・ ・ ・ )させただけに留まり、首を動かしただけでマリアを頭上へ打ち上げた。

 

 

「――――――しまったッ!?」

 

 

 自由落下で落ちてくるマリアの背に、掲げられた大剣の切っ先が向けられる。

 

 このままなにもせずにいれば、マリアは大剣によって串刺しにされてしまう。回避行動を取れる猶予など無いし、防御したところで貫かれる結末は変わらない。

 

 まさしく、絶体絶命。マリアの命もここまでか、と思われた――――――その時だった。

 

 蒼き軌跡を描いて振るわれた剣が大剣を弾き、同時にマリアを何者かが抱えてファラから距離を取った。

 

 

「翼ッ!?」

「友の危難を前にして、鞘走らずにはいられようかッ!」

「……………待ち焦がれていましたわ」

 

 

 翼の参戦に、ようやく引きずり出した、と妖しい笑みをたたえる。

 

 

「貴様は何者だッ!」

 

 

 剣を構え、いつでも斬りかかれる態勢の翼を前に、ファラは構えにしては大袈裟に思えるポーズを取って答える。

 

 

自動人形(オートスコアラー)

「オートスコアラー……………?」

 

 

 聞きなれない単語に首を傾げる翼に、ファラが切っ先を向ける。

 

 

「貴女の歌を聴きに来ましたのよ」

 

 

 大剣を手に襲い掛かってくるファラを、翼は剣を以て迎え撃った。

 

 

 

 

『――――――響ちゃん、左手90度の壁を打ち抜いて迂回路を作ってッ!』

「はいッ!」

 

 

 友里の指示に従って響が壁をぶち抜くと、そこにはハンカチを手元に当てて煙を吸い込まないようにしている住人達がいた。

 

 

「見つけたッ! 皆さん、避難経路はこっちですッ!」

 

 

 響の案内に従い、人々は次々と避難していく。

 

 誰もがどこかから聞こえる歌声に希望を持ち、諦めずに待ち続けていたのだろう。その顔は『もう大丈夫だ』と安心しているようだ。

 

 

『響ちゃん、生体反応ラストワンッ! そこより直進した先の突き当りよッ!』

「了解ですッ!」

 

 

 燃え盛る中、どこかからひんやりとした空気が頬をくすぐり、振り向く。そこには、自分達が侵入した階での消火活動を終えた、雨雲を従えたエターナルがいた。

 

 

「克己先生ッ! ここにいる人達はあそこから避難させたので、そっちお願いしますッ!」

「響は?」

「まだ救うべき命がありますッ!」

「そうか。ならば絶対に救え。どれもこれも、お前が護るべき命だ」

「はいッ!」

 

 

 笑顔を絶やさず、響はエターナルが雨雲から降らせた雨水で勢いが弱まった炎の中を突っ切っていく。

 

 最後の一人はすぐに見つかった。雨で弱まっているが、それでも未だ燃え続ける火炎の中、階段の隅に蹲っている少年だ。

 

 

「ママ……………」

 

 

 はぐれたであろう母親を求めて倒れかけた少年を抱え上げる。

 

 

「絶対に――――――助けてみせるッ! だから、生きるのを諦めないでッ!」

 

 

 この胸に刻まれた、自分の命を救ってくれた少女の言葉を叫ぶと、二人を押し潰そうと天井が崩れ落ちてくる。

 

 だが、そんなのは撃槍(ガングニール)の前には飴細工に等しい。

 

 足のバネを使って跳躍。降り注ぐ瓦礫も、その先にある天井さえも容易く貫き、響は一気に天井から真夜中の空へと脱出するのだった。

 

 

 

 

「――――――風鳴る刃……………輪を結び、火翼を以て、斬り候」

 

 

 二本の刀の柄を合わせ、脚部のアーマーに備え付けられているスラスターを噴射。双刃刀から紅蓮の炎が噴き上げ、一気にファラとの距離を縮める。

 

 

 

「――――――月よ、煌めけッ!」

 

 

風輪火斬・月煌

 

 

 業火の斬撃を受けたファラがボックスが積み上げられた場所まで吹き飛び、そのままボックスの下敷きになってしまった。

 

 

「やりすぎだッ! 人を相手に……………」

「やりすぎなものか。……………手合わせしてわかった」

 

 

 交わした剣戟。常人ではあり得ない身体能力に、先程の技の手応え。それらを視野に入れて考えれば、自ずと答えが出る。

 

 

「こいつはどうしようもなく――――――化け物だッ!」

 

 

 ボックスが吹き飛び、そこから無傷の怪物(ファラ)が立ち上がった。

 

 

 

 

「――――――うちの子がまだ見つからないんですッ! まだ救助されてないんです……………ッ!」

 

 

 救急隊員に泣きながらまだ救出されていないであろう子どもの事を話す女性を見つけた響は、抱えた子どもを彼らに託す。

 

 

「お願いしますッ!」

「航ちゃんッ!」

「煙をたくさん吸い込んでいますッ! 早く病院へッ!」

 

 

 頑張って耐えてはいたが、この少年は煙を吸い込みすぎている。急いで治療しなければ、気道や肺が熱傷し呼吸困難に陥ってしまう。

 

 

「ご協力、感謝しますッ!」

 

 

 響に感謝を述べ、救急隊員はすぐさま少年と母親を乗せた救急車を走らせていく。

 

 これで一先ず安心だ、と一息吐きかけるも、まだ火事は収まっていない。

 

 今もあのマンションの中で、克己が消火活動に当たっている。T2ヒートメモリの力を宿し、火炎を吸収する能力を持つエルナンディ・ガングニールを装着すれば、彼の手助けができるかもしれない。

 

 思い立ったら即行動とばかりに動き出そうとした矢先、響はゲートの上に立つ少女を見た。

 

 

 

 

 ――――――その姿は、現代の文化に慣れ親しんだ者達からすれば異様に見えよう。

 

 御伽噺(おとぎばなし)に登場する魔女が被るようなとんがり帽子に、身の丈には少々不釣り合いなローブ。だが、幼い見た目とは裏腹に、立ち姿からは大人の余裕というものが見て取れる事から、逆にそのローブこそ彼女に相応しき衣装のよう思える。

 

 マンションを覆う業火を見つめる少女――――――キャロル・マールス・ディーンハイムの脳裏に、数百年前の記憶が蘇る。

 

 

『それが神の奇跡でないのなら、人の身に過ぎた、悪魔の智慧だッ!』

『裁きをッ! 浄罪の炎でイザークの穢れを清めよッ!』

 

 

 理不尽な憎悪が、無実の男を責め立てる。

 

 理不尽な恐怖が、誠実であった男を悪魔に仕立て上げる。

 

 理不尽な祈りが、同じ人間を焼き尽くす。

 

 そこに、一切の邪悪は存在しない。それどころか、この惨劇が『正義』の名の下に引き起こされたものなのだから、人という種族はどこまでも愚かだと思わざるを得ない。

 

 しかし、男は――――――イザークはそれを憎まない。それどころか、全てを受け入れてみせようと言わんばかりに微笑んですらいた。

 

 だが、それが人々を恐怖に駆らせた。

 

 罵倒は、祈りは、留まる事を知らずに周囲を埋め尽くしていく。

 

 

『パパッ! パパッ! パパッ!』

 

 

 遠き日の自分が叫ぶ。自分を取り巻く炎の中、泣き叫ぶ娘を見つけた(イザーク)は、痛みを感じさせない優しい声で言った。

 

 

『キャロル……………生きて、もっと世界を識るんだ』

 

 

 それは、(かれ)(かのじょ)に託した命題。(かのじょ)(かれ)から託された課題。

 

 次々と薪の数が増え、イザークを業火の蛇が呑み込んでいく。

 

 

『パパッ! パパああああああああッッ!!』

『キャロルッ!』

 

 

 夜闇を照らす炎に叫ぶキャロルを、青年が抱えて走り出す。

 

 彼が消えれば、次は自分達の番だ。悪魔に魂を売った男の血を引く少女と、その居候だった青年。特に青年に至っては、『奴こそがイザークを悪の道に引きずり込んだ悪魔だ』と、謂れのない罪を着せられてしまうだろう。

 

 背後から聞こえる怒号を振り切り、遠き日の二人は真夜中の道を走り続けた。

 

 

「パパ……………。……………消えてしまえばいい記憶」

「ならば思い出さない方がいい。誰にも、辛い記憶というものは存在する」

 

 

 突然かけられた声に視線だけ動かす。

 

 いつの間にいたのか、隣には禍々しい相貌を持つ怪人が立っていた。

 

 

「お前の最終目的は我々と似通っている。お前が崩れ落ちてしまえば、あの城( ・ ・ ・ )を動かせる者がいなくなってしまう。それだけは避けなければならない」

「……………うるさい。その声で喋るな」

 

 

 視界の端でも己の存在を誇示し続ける炎にも勝る憤怒を言葉に乗せる。

 

 こことは異なる、だがソロモンの杖を使用して開く事ができるとされる宝物庫とも違う世界からやって来た、と語る彼は、あろう事か最後の騎士の体を奪い取った。キャロルにとっては父親と同じくらい大切な人物だ。いきなり彼の体を奪われて、なにも思わないわけがない。

 

 彼らが来なければ、今自分の隣に立っていたのは、あの男だったはずなのに、なぜこのような事になってしまったのか。

 

 キャロルは信じてもいない神に「なぜだッ!」と叫びたくなる気持ちを抑え、この場から去ろうとする。

 

 

「そんなところにいたら危ないよッ!」

 

 

 そんなキャロルに、下部から声がかけられる。響だ。

 

 

「……………ッ! ドーパントッ!?」

 

 

 キャロルと共に振り向いたドーパントの存在に気付いた響が、すぐに胸のペンダントを握り締める。

 

 NEVERの誰とも違う、正体不明のドーパントを前に警戒しながら、響はキャロルを見る。

 

 傍に両親の姿は無い事から、はぐれてしまったのだろうか。いや、考えたくはないが、傍らに立つドーパントに殺されてしまった、という仮説も立てられる。

 

 

「待っててッ! 今助けるか――――――」

「――――――黙れッ!」

 

 

 今すぐにでも聖詠を歌いかけた響だったが、それより先にキャロルが右手を広げると同時、そこに円形に描かれたなにかから突風が吹き荒れる。

 

 

「うわあああッ!? え、えぇ……………?」

 

 

 慌てて飛び退き、直撃こそ免れたものの、突風が着弾した地面は見事に穿たれている。

 

 もし回避が遅れたら、という考えよりも、響はなぜ自分は攻撃されたのか、という考えに重りを置いた。

 

 

『敵だッ! 敵の襲撃だッ! そっちはどうなってるッ!?』

「敵……………?」

 

 

 酷く焦った声色でクリスが聞き捨てならない報告をしてくる。

 

 『敵』と言うからには、また新たな組織が活動を開始したという事だろうか。となると、今自分を見下ろす形で立つ少女やドーパントは、もしかして――――――

 

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術が、世界を壊し、『万象黙示録』を完成させる」

「世界を……………壊す?」

「オレが奇跡を殺すと言っているッ!」

 

 

 見上げた先に立つキャロルは、先程突風を発生させた円の中心に描かれていたものと同じ紋章を掌に出現させ、再び響に向けた。

 

 複数出現した円に次々と同じ紋章が刻まれ、一つに重なる。さらに周辺に無数の小さな紋章を作り出す。

 

 眩い輝きの後、何本もの風槍が響を貫こうと殺到し――――――

 

 

「……………ッ!? なにッ!?」

 

 

 突如響の前に飛び出したなにかによって阻まれた。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

 どこか幼いながらも大人びた、優し気な声。茫然とする響の前には、まるで最初からそこにいたかのように、文房具のグリップで髪を留めた、一人の青年が立っていた。

 

 

「よくやった、フィリップッ!」

 

 

 次にやって来たのは、黒い帽子を被った青年。彼がフィリップと呼ばれた男の隣に立つと、フィリップはキャロルの傍らにいるドーパントを睨みつける。

 

 

「どうやら君の勘が当たったようだね、翔太郎」

「災いあるところにドーパントあり、だからな。ようやく見つけたぜ、津神(つがみ)真一(しんいち)ッ!」

「来たか……………仮面ライダー( ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

「え? 仮面ライダー?」

 

 

 ドーパントの言葉に首を傾げる。『仮面ライダー』という単語で連想するのは、今も消火活動に当たっている克己と、現在は《深淵の龍宮》に収監されているケアンのみで、目の前の二人の事は全く知らない。

 

 

「どこまでもどこまでも、俺達の邪魔をしてくれる……………。だが、お前達との因縁もここまでだ」

 

 

 怒りに紅の双眸を細めたドーパントが、響達と同じ地に降り立つ。

 

 臨戦態勢を整えたドーパントに、翔太郎と呼ばれた男は懐から一つのバックルを取り出す。

 

 後ろからしか見えないが、ロストドライバーやラックドライバーと酷似したもの。だがそれらと違うのは、メモリを挿入するスロットが二本存在する事だ。

 

 

「半分力貸せよ、相棒」

「あぁ」

 

 

 翔太郎がバックルを腰に当てれば、それはベルトとなって装着される。同時に、フィリップの腰にも同じベルトが巻かれる。

 

 

サイクロン!

ジョーカー!

「「変身ッ!」」

 

 

 フィリップがベルト――――――ダブルドライバーに装填したサイクロンメモリが翔太郎のダブルドライバーに転送され、翔太郎は手慣れた動きでジョーカーメモリを装填する。

 

 

サイクロンジョーカー!

「わ、わわわッ!」

 

 

 フィリップが糸の切れた操り人形の如く崩れ落ち、慌てて響が受け止める。

 

 瞬間、風が吹き荒ぶ。

 

 それはキャロルが振るう暴風とは違う、全てを護り抜く決意の風。あらゆる敵を打ち砕き、風の都を守護し続けた、英雄の意志の表れ。

 

 

 ――――――緑のライダー? 否。

 

 

 ――――――黒のライダー? 否。

 

 

 ――――――否。断じて否ッ!

 

 

 彼らを、彼を、一色で統一する事など出来ようかッ!

 

 そこに立つのは、緑でも黒でもない――――――二人で一人の仮面ライダーッ!

 

 

 

「――――――さぁ、お前の罪を数えろッ!」

 

 

 

 仮面ライダーW――――――ここに参上ッ!

 




 
 仮面ライダーダブル、参上ッ! フィリップは少年よりは大人に近い、と判断したので青年と表記しましたが、やはり『魔少年』と言われているので、少年と書いた方がよかったでしょうかね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。