死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 今日からアズレンで新イベント開始でありますな。以前やったボラリスイベの続編ですが、とても楽しいし、新たなアイドル艦船の衣装もよくて眼福でございます。アズレンはガチャ石が手に入りやすいので、課金せずともイベントキャラを簡単に手に入れられるのが嬉しいですねぇ。

 そして、XDUは近々新たなイベントが始まるようですね。今度新しく登場するのは大人になったセレナと子どものままなマリアらしいです。公式が二人のプロフィールを公開しましたが、大人セレナは好物がプリンからプリン体に変わってて、「大人になったんだな……………」と感じざるを得ませんでしたねはい。あとπが大人マリアよりも2センチ大きいッ!

 マリアちゃんはかわいいね。好物のドーナツいっぱいあげるからガングニール纏って頑張ってね。パパ応援しちゃうヨッ!



Kの哀しみ/眠りの幼姫

 

 数日後、ロンドンから帰還した翼とマリアを出迎えてから、S.O.N.G.本部の潜水艦内にて作戦会議が行われる事となった。

 

 以前の予定では、マリアがこの場にいる事は無かったのだが、これにはもちろん訳がある。

 

 数日前の戦いのすぐ後、最早黙ってS.O.N.G.の戦いを見てられぬ、という事でマリアは弦十郎に連絡。S.O.N.G.への転属が決まったのである。

 

 よって、今ここにいるのは国連のいざこざからはある程度解放された身のマリアである。

 

 

「では予定通り、作戦会議といきたいところだが、それより先にすべき事がある」

 

 

 司令室と廊下を繋ぐ扉が開き、そこから数名の男女が入ってくる。翼とマリアは初対面な為、突然出てきた謎の男女に首を傾げる。

 

 

「今回の事件において、我々と協力関係を結ぶ事となった――――――左翔太郎君、フィリップ君、照井竜君、鳴海亜樹子君、そして、ミーナ君だ」

 

 

 弦十郎に紹介された彼らは、面識のある者も含めて改めて自己紹介した。

 

 

「彼らは別世界……………所謂、並行世界の住人達で、本来ならば我々とは相容れぬ存在であったが、事件解決までは共に行動する事となった。仲良くな」

「並行世界? あの、なんですか、それ?」

 

 

 響の問いかけに他の装者達も頷く。それに答えたのはフィリップだ。

 

 

「鏡合わせのように存在する無数の世界の事さ。だけど同一のものじゃなく、こちらとはどこか差異がある世界。僕らは君達とは違う世界の住人なんだよ。目立った違いを挙げるなら、僕達の世界にはシンフォギアやノイズなんてものは存在せず、ドーパントが事件を起こしている、という点かな」

「つまり、貴方達の世界はノイズの脅威が無く、ドーパントが暴れているというものなのね」

「ま、そういう解釈で大丈夫だ」

「でも、大丈夫なんですか?」

「なにがだい?」

 

 

 少し心配な表情で、響がフィリップに問いかける。

 

 

「そっちの世界は今、仮面ライダーがいない状態なんですよね? その時にドーパントが現れたら……………」

「それは俺達も心配しているところだ。……………だが、今すぐ戻ろうにも、俺達には世界を渡り歩く手段が無い」

「? じゃあ、どうやってこっちの世界に来たんだ? あのドーパント共を追って来たんじゃないのか?」

「それについては、少し説明が必要だな」

 

 

 翔太郎の視線に気付いた弦十郎が藤尭に指示を送り、モニターに数枚の写真を表示させる。その中には翼が戦ったデスドーパント、クリス達が戦ったファイタードーパント、そして翔太郎とフィリップが変身したWと戦った異形のドーパントのものもある。

 

 

「彼らは『ラメンター』。あらゆる命に平等を与える事を目標を掲げた組織さ。こちらの世界に来る前から何度か交戦しているから、既に彼らの素性は調べ尽くしてる」

地球(ほし)の本棚か。相変わらず便利だな」

地球(ほし)の本棚? それはいったい……………」

「フィリップ君は地球の記憶全てを閲覧する事ができるんだよ」

「といっても、そこまで万能じゃなくてね。特定の情報を閲覧する為には、それに辿り着く為のキーワードが必要になる。加えて言うと、こちらの世界じゃ本棚に接続できないんだ」

 

 

 首を傾げる者達に、フィリップが自らの推察を披露する。

 

 確かに亜樹子が言った通り、フィリップの脳はある出来事の後に地球と接続し、その全ての記憶(データ)を閲覧する事ができるようになったが、それはあくまで彼らの世界の話( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )。フィリップが繋がったのは彼らの世界の地球であり、こちらの世界の地球ではないのだ。同じ見た目でも、根本的に違えばそれは全くの別物であり、故にフィリップはこちらの世界で地球(ほし)の本棚に接続できないのだ。

 

 

「ドーパント達の情報を既に掴んでおいて助かった。でなければ全く無知のまま、彼らと拳を交える事になってたからね。……………さて、説明に戻るとしよう」

 

 

 フィリップはモニターに視線を移し、説明を再開する。

 

 異形のドーパント――――――ラメンターのリーダー、津神真一が変身する、半身が靄状になっているドーパント。彼が象徴する記憶の名は、『原初力(アルケウス)』。スイスの錬金術師、パラケルススが主張した概念であり、身体と魂を結合する霊的な気体で病因と闘うものとされている。

 

 デスドーパント――――――シアン・ゴールディスが変身する、ボロボロのローブを纏った死神のようなドーパント。記憶はその名の通り『死』。翔太郎達はかつてその名を騙ったドーパントと交戦した事があるらしいが、このドーパントは紛れもなく本物であり、その実力は並々ならぬものだ。リーダーの真一の執事で、彼とは主従関係にある。向こうの世界では、Wやアクセルが倒してきたドーパントを再生怪人として蘇らせ、戦わせていたなどしていた。

 

 ファイタードーパント――――――元傭兵の黒芭燈迩が変身する、ロボットに酷似したドーパント。記憶は『戦闘機』。人型と戦闘機形態の二つの姿を持ち、人型は近遠距離戦闘両方を得意とし、戦闘機形態は遠距離攻撃に特化している。真一との関係は、全ての命に平等を与えるという彼の思想に賛同した友人とされる。数日前にアクセル達と交戦した際は、こちらの世界で同盟を結んだであろう者達にアクセルの戦い方を見せる為に手を抜いていたらしく、実力の半分も出してなかったそうだ。

 

 

「彼らの情報を統合してみたところ、彼らは全員、財団Xの関係者という事がわかっている」

「財団Xだと? 我々の世界にもその組織は存在するが、やはり君達の世界でも……………」

「その口ぶりだと、こっちの世界でも奴らがいるようだな。それも俺達の世界と変わらない、死の商人そのものとして」

 

 

 多くの哀しみを生み出しかねないガイアメモリを、利益の為ならば平気で悪事に利用する彼らに歯噛みする竜だが、彼の怒りはそれだけではない。彼の怒りは、これからフィリップが話すであろう事に対するものでもあるのだ。

 

 

「関係者と言っても、彼らは財団Xの職員として所属していたわけではなく、実験体として扱われていたんだ(・・・・・・・・・・・・・・・)。もちろん、ガイアメモリのね」

「じ、実験体……………ッ!?」

 

 

 衝撃の情報に装者達が驚き、特にF.I.S.の施設で隔離生活を送っていたマリア達は苦虫を嚙み潰したような表情になっている。

 

 

「高性能のガイアメモリは一般販売されているものより高値で取引される分、それに見合うほどの力を使用者に授ける。だが、それが不完全なものだと財団の信頼に関わってくる。ある程度の予測は機械を使えば事足りるが、それでも不明なものは存在する。彼らはその為の実験体として扱われていたのさ」

 

 

 治療薬を開発する会社を例に挙げてみよう。人体に救う病巣を取り除く為に彼らは治療薬を開発するが、いきなり投与などという愚行はしない。開発段階の中で、モルモットを使った実験を行うのだ。そこから導き出された結論を基に、この薬品はどこを改良すべきかを考えていく。そのモルモットが、ラメンターのメンバーに置き換わっただけの話なのだ。

 

 だが、現実はさらに過酷な運命を彼らに与えた。

 

 シアン・ゴールディスを除いたメンバーは、その家族が財団Xの職員であり、彼らによって実験体として扱われていたのだ。彼らからすれば『財団Xの為』という一言で片づけられてしまうが、当の本人達からすれば一口では足りないくらいの文句を叫びたくなる境遇だ。

 

 それを聞いたこの場にいる者達は、自分の家族をモルモット扱いしていた彼らに怒りを露わにした。

 

 

「自分の子どもを実験に使うなんて、許せない……………ッ!」

「その者達に人の心はないのか……………ッ!?」

財団X(あいつら)にとっちゃ、家族もモルモット同然だっていうのかよッ!」

「なによそれ……………レセプターチルドレン(わたしたち)よりも質悪いじゃないッ!」

「許せない……………ッ!」

「酷すぎデスよッ!」

 

 

 装者達がこの場にいる全員の意思を代弁するように叫ぶ。口々に怒りの言葉を吐き出す彼女達だったが、それを克己が「そこまでだ」と一言告げて収める。

 

 

「そいつらの運命に文句を言いたい気持ちもわかる。だが、今は相手の情報を得るのが先だ」

「大道はなんとも思わないのかッ! 人の道を外れた者に、怒りが湧かないのかッ!?」

「死人で傭兵の俺達に訊く事か?」

「……………ッ!」

 

 

 克己の返事に、翼はハッとして黙り込む。

 

 

「俺達は人道を外れた技術で蘇り、多くの命を奪った。お前達がそいつらに対する文句を言い続けるのなら、それは俺達にも言っているようなものだ。それでも言いたければ好きにすればいい」

「だ、大道先生達は――――――」

「『違う』なんて言わせないぞ。俺達もそいつらも、利益を求めて起こした行動だ。違いなんて、なに一つない。それにな、なにを言ったって、ラメンターの連中が実験にされていた過去は無くならないんだ。文句を言う事は許そう。だが、身近にもそういった連中がいる事を忘れるな」

 

 

 その言葉に、誰もが黙り込んでしまう。しばらく彼女達を見つめ、これ以上文句を言う気はないと感じた克己はフィリップに視線を向ける。

 

 

「……………確かに彼の言う通りだ。今更なにを言ったって、彼らが実験台にされていた事実は変わらない。悪事を働いた以上、僕達にはそれを正す責務がある。説明を再開しよう」

 

 

 全員が頷き、フィリップはラメンターのメンバーについての説明を再開する。

 

 

「シアン・ゴールディス、黒芭燈迩両名については簡単に調べがついた。だが、津神真一については大まかな情報しか得られず、そこで検索は終わってしまった」

「なに?」

「津神真一の本は、途中から空欄だらけになった。それどころか、僕達に出会った時の事すらも記載されていなかった。地球(ほし)の本棚は時間を基準に本数やその内容が増えるが、これは今までにない現象だった。彼についての最後の情報は、彼が数年前に心臓病に罹ったところで終わっている。だが、その謎は既に解けている」

 

 

 この世界に来る前に、彼らにまつわる情報は一通り閲覧している。フィリップは、津神真一の本が途中から空欄だらけになった原因を口にする。

 

 

「彼は自らの体から魂を切り離して、他人の体に憑依している。アルケウスとは身体と魂を結合する霊的気体であるという概念だ。他人の体に憑依する事ぐらい、彼にとっては容易い事なんだろう」

 

 

 津神真一の経歴が途中から空欄だらけになったのは、他人に憑依して行動していたから。精神が彼のものであっても、行動を起こしているのは彼が乗っ取った体の本来の持ち主。津神真一の本に経歴が載っていないのも納得だ。

 

 

「だが、なにもメリットだけが存在するとは限らない。憑依先の肉体に慣れるまで、従来の戦闘力は発揮できず、一度憑依した人間にはもう憑依できないというデメリットも存在する」

「俺達は何度かあいつとやり合った経験があるが、今回が一番弱かった。ま、弱いと言ってもそこいらのドーパントよりは強いんだけどな。サイクロンジョーカーじゃ大したダメージを与えられなかったし」

「憑依された人間はどうなるんだ?」

「僕達は一度、彼に憑依された人間から彼を切り離した事がある。憑依された人間から話を聞いてみたところ、意識や憑依されている間の記憶はほぼ無いらしい。あったとしても酷く曖昧なもので、思い出すのも難しいそうだが」

 

 

 そこで説明を区切ってフィリップが藤尭を見て頷くと、藤尭がキーボードを操作する。

 

 モニターに映っているドーパント達の写真が横にスライドし、新たに一枚の写真を表示させる。そこに写っていたのは、エルフナインと同じくらい幼い女の子だ。どこか物憂げな表情の彼女の隣には、アルケウスドーパントに変身する真一の姿がいる。

 

 

「そして、最後の一人……………いや、彼女の場合はメンバーに数えられないかもしれないが、説明しよう。……………津神真一の妹、津神(かなえ)。ラメンターのメンバーがほとんどドーパントに変身する中、彼女だけは変身していない。というより、彼女がガイアメモリを使用している場面に立ち会った事がない。可能な限り経歴を確認しようと地球(ほし)の本棚に接続してみたが、彼女についての情報が記載されているであろうページは全て破かれていた」

 

 

 如何に地球(ほし)の本棚といえども、万能ではない。今回のように中身が全て破かれたように削除されていたり、情報主の都合などで施錠されて閲覧できなかったりするケースも存在するのだ。

 

 

「彼女についての情報を得られたのは、津神真一の情報を閲覧した時に見た家族構成にその名があったからだ。外見的な特徴も一致する。それ以外は『謎』の一言に尽きるが……………一つだけ、気になる事があった」

「気になる事? なんだ、それは?」

 

 

 克己の質問に対するフィリップの答えは、この場にいる者達全員を驚愕させるものだった。

 

 

「僕達の世界でラメンターが事件を起こす前に、彼女は故人となっている( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )。つまり、もうこの世にいないはずの人間なんだ」

 

 

 

 

 ――――――忌城、王室。

 

 玉座に就くキャロルの眼下には、彼女によって創造された終末の四騎士(ナイトクォーターズ)の三機がおり、その一機であるガリィが大量の人間から摂取した『想い出』を、未だに起動していない最後のオートスコアラー――――――ミカに分け与えていた。

 

 結果は成功。大量の人間の命というコストを支払い、遂にミカは起動した。

 

 

「ミカを動かすだけの想い出を集めるのは、存外時間がかかったようだな」

「嫌ですよ、マスター。これでも頑張ったんですよ。なるべく目立たずに事を進めるのは大変だったんですから~」

「まぁ、いいだろう。これでオートスコアラーは全機起動。計画を次の階梯に進める事ができる。……………どうした、ミカ」

 

 

 起動したミカが優れない表情をしている事に気付いたキャロルが声をかけると、ミカは俯いて答える。

 

 

「はぅぅぅぅぅ……………。お腹が空いて、動けないゾ……………」

「……………ガリィ」

「……………あ~、はいはい。ガリィのお仕事ですよね……………」

「ついでに一仕事、こなしてくるといい」

 

 

 ミカは他三機を凌駕する戦闘力の持ち主だが、その代償に燃費がすこぶる悪い。他三機が軽く動く量の想い出を投与しても満足に動く事は叶わず、キャロルはガリィに彼女を動かす為の想い出を採集させているのだが、戦闘可能になるまでにはもう少し時間がかかるだろう。

 

 渋々といった様子でキャロルの命令を受けたガリィは新たな『想い出』を手に入れるべく動き出そうとしたが、その前に主人に進言する。

 

 

「そういえばマスター。エルフナインは連中に保護されたみたいですよ?」

「把握している」

 

 

 主人の返事を受け取った後、ガリィはテレポートジェムを割ってその場から姿を消す。

 

 残されたキャロルが人形達が鎮座する王室で、次はどう行動を起こす予定だったか、と考えていると――――――

 

 

 ――――――~~~♪ ~~~♪

 

 

 どこからか、歌が聞こえてきた。

 

 シンフォギア装者が歌うような、戦の始まりを告げるものではない。歌詞もなく、ただただか細い、か弱い声で音色を奏でている。

 

 この城において、このような歌を口ずさめるのは一人しかいない。

 

 

(……………目覚めたのか)

 

 

 歌声に引き寄せられるように王室を後にしたキャロルは、歌声が響き渡る廊下を渡り、その根源となっている者がいるであろう部屋の前に立つ。

 

 扉を押し開けると同時に歌声も止み、先程まで歌を口ずさんでいた者がこちらを向く。

 

 ゴスロリ調の服に身を包んだ彼女は、一見作り物めいた美しさと愛らしさを兼ね備えており、成人すればさぞや美人になるであろうと思わせられる。だが、そんな事など全て忘れさせてしまうようなものが、彼女にはある。

 

 冷たい瞳だ。まるで熱というものを感じさせず、見るもの全てを凍てつかせんとばかりの目つき。その持ち主が十代前後の女の子なのだから、少し不気味に思えてしまう。

 

 

「……………キャロル・マールス・ディーンハイム」

「オレの名を知っているのか。お前の兄か?」

「そう……………兄様が教えてくれたの。……………でも、私はその前から知ってる( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

「なに……………?」

「私の目は……………特別だから」

 

 

 自分の目元に触れた後、ふっと視線をキャロルから外す。

 

 

「……………兄様は元気?」

「なぜオレに訊く。そんなの、お前が訊けばいい事だろ」

「兄様、誤魔化すの。どんな時だって、『大丈夫』の一点張り……………。でも、その度にいつも、哀しい顔をしてる……………」

 

 

 すっと立ち上がった少女――――――津神叶はゆらりとした動きでキャロルに近寄り、少しだけ彼女をどこまでも深く沈んでいきそうな黒い瞳で見つめた後、問いかけてくる。

 

 

「二人で一人の勇者様……………見た?」

「Wの事か?」

「『W』……………風の街を護る勇者様。赤い勇者様と一緒に、兄様達と戦った人達……………。来てたんだ……………。……………うん、それなら、いいよね……………」

「随分と嬉しそうだな。お前達の敵じゃないのか?」

「ううん、敵じゃないよ……………。だって、私達を殺してくれるんだもん( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )……………」

「殺してくれる……………? どういう事だ?」

 

 

 平然と聞き捨てならない事を聞き、キャロルは耳を疑う。自分達を殺す相手を、なぜ彼女は『敵』と見做していないのか。問いかけてみると、叶は静かに答えてくれた。

 

 

「私も兄様も、もう壊れてるの……………。あの人達だけが、私達を殺し(たすけ)てくれるの……………。可哀想な兄様……………。いっぱい戦って、いっぱい消えていく兄様……………。もう、終わらせてほしいの……………」

「……………ッ!」

 

 

 その目は、子どもがしていい目ではなかった。どこまでも暗く、妖しくも美しい瞳で、自分という個の消滅を意味する『死』を、彼女は望んでいる。

 

 

「……………クソッ!」

 

 

 どこから湧き出たのかわからない怒りが、彼女に悪態を吐かせた。言い知れぬ怒りを宿した拳が壁に叩き付けられるが、返ってくるのは壁を殴りつけた拳に走る激痛のみ。

 

 瞬間、キャロルは背筋が凍るような殺気に襲われ、思わず身を竦ませた。

 

 

「……………お姉ちゃん、逃げて。兄様が来る」

 

 

 叶が言わずとも、巨大な殺意を持った何者かがこの部屋に近づいてくるのが嫌でも感じられ、キャロルは自分が入ってきた扉を開けようとし――――――

 

 

「下がって」

「……………ッ!?」

 

 

 叶の言葉を受けて咄嗟に身を引いた直後、さっきまで彼女の首があった空間を靄状の爪が貫いていた。僅かに開かれた扉の隙間から、アルケウスドーパントの爪が伸びてきたのだ。

 

 

「貴様……………ッ! 叶になにをしたッ!」

 

 

 扉を押し退けて入ってきた怪人――――――アルケウスドーパントがキャロルに対して敵意を剥き出しにする。その身から噴き上げる威圧感はキャロルをしても畏怖させ、無意識に後ずらせる程のものだ。

 

 

「兄様、やめて」

 

 

 叶の声が響き、彼女に視線を移したアルケウスドーパントは妹の体が傷ついていない事を確認し、先程まで放っていた威圧感も、まるでそれが嘘だったと思えてしまうように霧散した。

 

 

「私はお姉ちゃんと話してただけ……………。なにも悪い事はされてないよ……………」

「……………本当だな?」

「……………あぁ、そいつの言葉に嘘はない」

「……………それならいい」

「私は王室に戻る。なにか話があれば来い」

 

 

 無意識に乱れていた呼吸を落ち着かせたキャロルはそう言い残し、部屋から出ていった。

 

 

「……………よかった。殺されなくて」

 

 

 ホッと安堵の息を吐く叶の視線の先には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の姿がある。が、叶が目線をアルケウスドーパントに向けた瞬間、そこにあったキャロルの死体は幻のように消えてしまった。

 

 

「兄様、あのお姉ちゃんは計画に必要なんでしょ……………? なら、殺しちゃ駄目……………」

「……………そっちの俺( ・ ・ ・ ・ ・ )は殺したのか。次からは気をつけないといけないな。後でシアンにラベンダーティーでも淹れてもらうか」

「……………兄様」

「? どうした、叶」

 

 

 先程の殺気が嘘のように消え去り、その姿からは想像もできない優しい声で答える兄に、叶は両腕を伸ばす。

 

 

「抱っこ……………」

「まったく……………赤ん坊の頃から変わらないな、お前は」

「そのままで、いい……………」

 

 

 メモリを抜いて人間の姿になろうとしたところを叶に言われ、アルケウスドーパントの動きが止まる。

 

 

「あ、あぁ……………わかった」

 

 

 ドーパントに変身している時の自分の両手には鋭い爪が生え揃っているので、大切な妹を傷つけないよう気を付けながら、叶を抱え上げる。

 

 

「これでいいか?」

「……………うん」

 

 

 なにも知らない人間から見れば、ところどころが靄状になっている怪物に少女が抱きかかえられているような構図だ。しかし、怪物に彼女を傷つける意思は毛頭ないし、少女も彼に対して恐怖など抱いていない。

 

 

「……………ねぇ、兄様」

「ん?」

「まだ、そこにいる( ・ ・ ・ ・ ・ )?」

「……………あぁ、いるよ」

「ん……………よかった」

 

 

 体は違えど、兄の魂はまだある事に安堵した妹は、自分を抱きしめている怪人の胸に顔を埋め、抱きしめる力を強める。それに応えるように、怪人もまた彼女を抱きしめる力を強め、彼女がまだこの腕の中にいる事の安堵感を得る。

 

 

(この子の為なら、俺はなんだってやってやる……………。たとえ、この魂まで朽ち果てようと……………必ず……………ッ!)

 

 

 亡き妹の温もりに、自らの行動理念を思い出す。

 

 悪魔と罵られようと、いかなる懲罰を受けようと構わない。ただ、この子が幸せになれれば、それだけでいい。

 

 その為に自分を見失い、消えていく事になろうとも、必ず果たしてみせる。

 

 

 ――――――あらゆる命に平等を。あらゆる魂に救いを。

 

 

 ――――――あらゆる者達に、安らぎを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛する家族がなにを想っているのかも知らぬまま、怪物は突き進む――――――

 




 
 フィリップの地球(ほし)の本棚はこのような感じで制限させてもらいました。彼の十八番を取り上げるのは少し惜しいですが、ほら、フィリップって不可解な謎ができれば食いつかずにはいられないほどの知識欲の権化じゃないですか。地球上のものではないとはいえ、フィーネの情報を元にバラルの呪詛を調べられたら今後のストーリー的に堪ったもんじゃないんですよ……………。楽しみにしてた方は申し訳ありません……………。

 次回、まさかの展開ッ! それではまた来週ッ!
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