死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 メリークリスマスッ! こちら側の季節は冬ですが、本編の時間軸は夏です。海水浴シーンを執筆しているだけでも寒くなりましたね、はい。

 思い返してみると、時間が経つのは本当に早いですね。最初にこの作品を投稿したのは今年の三月なんですが、気付いたらもう後一週間で2021年ですよ。このペースで行くと、来年の六~七月には完結するでしょうね。きっとあっという間なのでしょう。最終回まで付き合ってもらえたら幸いです。

 それでは本編どうぞッ!

 文章構成はアンケートの結果、以前のままで進める事になりました。回答、ありがとうございましたッ!


復活のA/銀腕・アガートラーム

 

「はい、イガリマとシュルシャガナ」

 

 

 キャロル達との戦いから数日後、エルフナインと共にミカとガリィに破壊されたイガリマとシュルシャガナを改修したフィーネから、調と切歌はそれぞれのシンフォギアを受け取る。

 

 

「ありがとうデスッ!」

「これでまた戦える」

「機能向上に加え、イグナイトモジュールも組み込んでいます。そして、もちろん――――――」

「復活の、アガートラーム……………」

 

 

 エルフナインから手渡されたアガートラームのペンダントをぎゅっと握り締める。アガートラームもマリアとの再会を喜んでいるのか、どことなく温かさを感じられる。

 

 

「改修ではなくコンバーター部分を新造しました。一度神経パスを通わせているので、身に纏えるはずです」

「セレナのギアをもう一度……………。この輝きで、私は強くなりたい。そして……………」

 

 

 暗黒のシンフォギアを纏った妹の姿を思い浮かべる。

 

 デスドーパントの力によって蘇ったセレナ。あの時はLiNKER無しの無茶な戦闘だったため、途中でギアが切れてしまったが、今度はそうはいかない。

 

 

(セレナから託されたこの力で、あの子の魂にかけられた呪縛を解いてみせる……………ッ!)

「ですが、イグナイトモジュールを使う時は注意してください。響さん達は一度で成功させましたが、それが彼女達の意志が強かったからです。生半可な意思で挑んでは、すぐに暴走してしまいます」

「大丈夫。イグナイトモジュールの怖さは、わかってるつもりだから」

「ダインスレイフの力に負けない為にも、特訓デスッ!」

「それなら、いいところがある。近く、筑波の異端技術研究機構にて、調査結果の受領任務がある。諸君らはそこで、心身の鍛錬に励むといいだろう」

「あそこには海もあるから、せっかくなんだし遊んで来たらどう?」

「おぉ、海デスかッ! 行きたいデスッ!」

 

 

 こうして、装者達はキャロル率いるオートスコアラーや残りのラメンターのメンバーとの戦闘に向けて、特訓する事となった。

 

 

 

 

 

「――――――うしッ! 遊ぶぞお前らッ!」

「おーッ!」

 

 

 掌に拳を当てたボクサーパンツを履いた翔太郎に、亜樹子が腕を振り上げる。

 

 

「僕は行かないって言ったのに……………」

「まだ言ってやがる。弦十郎さんからも言われただろ? 『君も翔太郎君達と遊んでくるといい』って。だったらお言葉に甘えようぜ」

「こうなった以上、諦めろ、フィリップ」

 

 

 嫌々ながらも結局連れて来られる事となってしまったフィリップだが、こうして到着してしまったのなら遊ぶしかないと小さく溜息を吐いた。

 

 先日のアルケウスドーパントとキャロルとの戦いにおいて自分達は辛くも勝利する事が出来たが、フィリップは一つ気がかりな事があった。

 

 マキシマムドライブを受けたにも関わらず、アルケウスドーパントからメモリが排出されなかったのだ。あの後現場を注意深く探ったが、それでもT2アルケウスメモリは発見できず、結局メモリの在り処はわからずじまいに終わってしまった。

 

 だから自分は残って、過去に本棚で調べたT2アルケウスメモリについての情報を思い出して考察を立てていこうと思ったのだが、世話になっているS.O.N.G.を代表する弦十郎から『君も遊んでくればいい』と言われてしまえば断れない。

 

 ちなみに彼らの水着はこちらの世界で購入したものである。響、クリス、翼はプライベート用の水着があるが、彼女達を除いたF.I.S組の装者達はそんなものなど持っていないし、翔太郎、フィリップ、亜樹子、竜に至っては異世界からやって来ているので水着なんて持っているはずもない。克己は体育教師である以上水泳の授業を持っているので水着はあるが、彼以外のNEVER部隊のメンバーは水着を持っていない。故にこちらに来る前にショッピングモールへ寄り、各自で水着を用意したのだ。

 

 

「すみません、ボクの分まで……………」

「いいんだよ、それくらい」

「エルフナインはS.O.N.G.に来てからずっと働きづめだったからな。こうして羽を伸ばすのもいいだろう」

「ま、あそこにいる馬鹿共みたいになるのは御免だけどな」

 

 

 どこか遠い目をするクリスの視線の先には――――――

 

 

「喰らいやがれ京水ィイイイイイイイイッッッ!!!」

「ちょ、剛三ちゃん強すバァッ!」

「お返しよ。ハァ――――――ッ!」

「レイカッ!? ワタシ味方ゲフゥッ!?」

 

 

 賢が上げ、剛三が打ったボールを顔面に受けて倒れた京水に、彼と同じチームを組んで戦う事になったレイカの打ったボールが炸裂する。なんでこんな時まで京水(こいつ)と組まなくちゃならんだ、という怒りがひしひしと伝わってくるサーブである。

 

 

「動きが甘いな、京水。もっと精神を研ぎ澄ませ」

「アドバイスは助かるけど助けてくれないの、克己ちゃんッ!? うわッ!」

「剛三・賢チーム、一点リードだ」

「この、やってくれたわねッ!」

 

 

 NEVERとして蘇った四人の攻防は凄まじい。動きが制限される砂浜の上だろうとお構いなしに強力なサーブを叩き込んでいく。時々ボールが京水に当たる事はあるが、それは彼の運が悪いだけと言っておこう。

 

 

「NEVER……………話には聞いていましたが、やはり凄いですね……………」

「あいつら、完全に()る気で打ち合ってるからな。お互いが信頼できる間柄だからこそってのもあるんだろうが……………」

「まぁ、ちょっと怖いよね。あはは……………。でも、とても楽しそう」

 

 

 いざ戦闘となれば死者蘇生兵士としての実力を遺憾なく発揮する彼らだが、そんな彼らも遊びとなれば肩の力を抜いてリラックスしている。サーブの威力は置いておくとして。

 

 海を見れば翔太郎がフィリップに水をかけ、フィリップもお返しとばかりに翔太郎に反撃している。無理やり連れてこられた彼だが、ちゃんと楽しめているようだ。竜と亜樹子はカップル用の浮き輪に乗ってぷかぷかと浮いている。亜樹子がニコニコしているのを見るに、彼女が竜を誘ったのだろう。

 

 克己達から少し離れた砂浜では、調と切歌が砂で城を作っている。中々完成度が高いが、時々調から指摘を受けている。

 

 

「エルフナインちゃん、行こうッ!」

「は、はいッ!」

「クリスも行こうよ」

「ま、しょうがねぇな」

 

 

 響と未来、そしてクリスとエルフナインも海に走っていき、翼とマリアが残される。

 

 

「砂浜は足腰を鍛えるには最適ね」

「あぁ。特訓に適した場所だな」

 

 

 戦闘時には剣を扱う二人にとって、足腰を鍛える事は必要不可欠な要素である。武器を振るう腕は上半身にあるが、体を支える足がある下半身も大事だ。満足に踏み込めなければ強力な攻撃は繰り出せないのだから。

 

 

 

 

「――――――調査データの受領、完了しました。司令、了子さんは今そちらに?」

『隣にいるが、どうした?』

 

 

 一方、筑波の異端技術研究機構。そこでは職員からナスターシャがフロンティアに遺したデータを受け取った緒川が弦十郎に連絡を取っていた。

 

 

「フロンティアのデータを解析した結果、『フォトスフィア』なるものが構築されました。どうやら地球に関するデータのようですが、彼女ならなにか知っているのでは、と」

 

 

 あくまで呼称ではあるが、研究機構の職員達がデータを解析した事によって構築された、地球儀のようなもの。便宜上、『フォトスフィア』という名がつけられているそれは、実際はもっと巨大なサイズらしい。

 

 

『ごめんなさい。フロンティアから回収したデータ、という情報だけじゃ絞り込めないわ。それに私自身、カストディアン(あの方々)の事を詳しく知っているわけでもないから、あんまり期待はしないで頂戴。それでも出来る限りは努力してみるわ。後で私のパソコンに送ってもらえるかしら』

「わかりました。後で転送します」

 

 

 そう言って、緒川は通信を切った。

 

 

 

 

「――――――おらおらおら~ッ! バッチコーイッ!」

 

 

 場所は戻ってビーチ。剛三・賢チームの勝利に終わったビーチバレーボールは、今度は翼・クリスチーム対マリア・エルフナインチームの対決となっていた。

 

 今はエルフナインがサーブを打つ側になり、その手には大きなボールが乗っている。

 

 

「今度はボクのサービスですね。……………それッ!」

 

 

 勢いよく打つが、ボールはあまり飛ばずに落ちてしまった。

 

 

「あれ? なんでだろう? 強いサーブを打つ為の知識はあるのですが……………実際やってみると全然違うんですね」

「背伸びをして、誰かの真似をしなくても大丈夫。下からこう……………こんな感じに」

 

 

 マリアの指摘を受けてもう一度打ってみるが、また失敗してしまった。

 

 

「はうぅぅぅ……………、すみません……………」

「弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つ事だから」

「……………はい、頑張りますッ!」

 

 

 勇気づけられたエルフナインは、必死に点を取ろうと奮闘し、マリア達も彼女の気概に応えて試合を進めていく。

 

 そして、しばらく経った頃――――――

 

 

「ところで皆さん、お腹が空きません?」

「だが、ここは政府保有のビーチ故……………」

 

 

 普通のビーチなら海の家などがあるだろうが、生憎とここは政府が保有しているビーチだ。海の家どころか、一般人の姿すらない。

 

 

「と、いう事は……………」

「あれしかねぇよな?」

 

 

 これからなにがするか、全員が理解していた。

 

 

『コンビニ買い出しジャンケンポンッ!』

 

 

 

 

「――――――切ちゃん、自分の好きなものばっかり」

 

 

 結果、調と切歌、翼が買い出しに行く事が決まり、コンビニで響達の分の食事も買ったのだが、切歌が自分の好物ばかり買っていた事に調が難色を示した。

 

 

「こういうのを役得と言うのデスッ!」

「フフ……………ん?」

 

 

 そんな二人のやり取りを微笑ましく見ていた翼がなにかに気付く。

 

 

「昨日の台風かな?」

「お社も壊れたってさ」

 

 

 会話する少年達や野次馬達の視線の先にあるのは、なにかによって破壊されたであろう神社の鳥居門。少年の一人の言葉が正しければ、古い神社が台風によって破壊されてしまったという答えに辿り着くが、そう結論付けるのは違うように思える。

 

 

「――――――ふむ、こんなところですか」

 

 

 その時、一人の男性の声が響いた。

 

 その声に聞き覚えのある翼が、その根源がどこにいるのかと視線を彷徨わせる。

 

 

「……………ッ! 貴様はッ!」

 

 

 そして、見つけた。倒壊した神社の影から出てきた、燕尾服を着込んだ男性。姿は違っても、声と雰囲気で理解できる。

 

 

「おや? これはこれは……………、シンフォギア装者のお三方ではありませんか。予定とは少し違いますが、ここで不安要素は消しておくとしましょう」

 

 

 身構える三人に気付いた男――――――シアン・ゴールディスが、懐から一本のメモリを取り出す。

 

 

デス!

 

 

 手袋を外した右手の甲にT2デスメモリが挿入され、青年の姿がボロボロの外套を羽織る死神のものへと変わる。

 

 

「な、なんだこいつはッ!?」

 

 

 突如現れた怪人に、野次馬達が蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。咄嗟に翼達も動き出し、避難誘導を開始する。

 

 

「ここは危険ですッ! そこの方ッ!」

「え、俺?」

 

 

 翼が声をかけられたコンビニの店員が目を見開いて自分を指差す。

 

 

「子ども達を誘導して、安全なところまで――――――」

「冗談じゃないッ! どうして俺がそんな事をッ!」

「な……………ッ!?」

 

 

 翼が呼び止めるよりも早く、男は一目散に逃げだしてしまった。

 

 

「……………仕方ないッ! 暁、月読ッ! 私達だけでやるぞッ!」

「了解ですッ!」

「了解」

 

 

 肌身離さず持ち歩いていたペンダントを握り、三人は聖詠を唱える。

 

 

「――――――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

「――――――Zeios igalima raizen tron(夜を引き裂く曙光のごとく)

「――――――Various shul shagana tron(純心は突き立つ牙となり)

 

 

 死神に砕かれたジェムから出現したアルカ・ノイズを調と切歌に任せ、翼は単身デスドーパントに挑む。

 

 

 

 

「――――――皆さん、特訓しなくて平気なんですか?」

 

 

 翼達がデスドーパントと交戦する数分前、ビーチでは、ずっと遊んでいた響達を見かねたエルフナインがそんな事を口にしていた。

 

 

「真面目だなぁ、エルフナインちゃんは」

「暴走のメカニズムを応用したイグナイトモジュールは、三段階のセーフティに制御される危険な機能でもありますッ! だから、自我を保つ特訓は――――――」

 

 

 楽観的でいる響にイグナイトモジュールの危険性を改めて説明していたその時、突如として海から水柱が立ち昇り、そこから紺色のドレスの少女が現れる。

 

 

「夏の思い出作りは充分かしら?」

「ガリィッ!?」

「んなわけねーだろッ!」

「フィリップッ! 行くぞッ!」

「所長、俺の後ろにッ!」

 

 

 響とクリスがペンダントを握り締め、克己達はガイアメモリを構える。

 

 

「――――――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失へのカウントダウン)

「――――――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

エターナル!

サイクロン!

ジョーカー!

アクセル!

ヒート!

ルナ!

メタル!

トリガー!

 

「「「変身ッ!」」」

「変……………身ッ!」

 

エターナル!

サイクロンジョーカー!

アクセル!

 

 

 ある者は拳を、ある者は刃を、ある者は銃を、とそれぞれの得物を構えた戦士達が動き出す。

 

 

「――――――鉛玉の大バーゲン 馬鹿に付けるナンチャラはねぇ」

 

 

 クリスとトリガードーパントの攻撃がガリィの体をハチの巣にするが、彼女の体はバシャンッと弾ける音と共に弾け飛ぶ。彼女が水を使って作り出した分身だ。

 

 

「……………ッ! 上よッ!」

 

 

 ルナドーパントが叫んだ瞬間、頭上から幾本もの氷槍が降り注ぐ。飛び退いたエターナル達の間に着地すると同時、ガリィは取り出したジェムを放り投げ、大量のアルカ・ノイズを出現させる。

 

 

「マリアさん、亜樹子さんッ! 未来とエルフナインちゃんをお願いしますッ!」

「わかったッ!」

「うんッ!」

 

 

 響の指示を受け、マリアと亜樹子は戦う力を持たない未来とエルフナインを連れて海岸から離れていく。

 

 その間にアルカ・ノイズの駆除をクリスとドーパント達に任せたエターナルは、Wとアクセルと共にガリィを囲んでいた。

 

 

「驚いたな。お前達は主の命令もなく動くのか?」

「さぁ~ねぇ~?」

 

 

 (とぼ)けた様子で答えたガリィは右腕に氷槍を装備し、仮面ライダー達に襲い掛かる――――――と思いきや……………

 

 

「残念だけど、今回はアンタらの相手を務める気はないのよ」

「「「……………ッ!?」」」

 

 

 突然彼らの足元から間欠泉のように水が噴き上げ、咄嗟の事に防御する隙を逃した三人が吹き飛ばされた。

 

 

「やってくれたなッ! む……………ッ!?」

「……………ッ! 消えただと……………?」

 

 

 すぐに態勢を立て直した仮面ライダー達だったが、そこには既にガリィの姿は無かった。

 

 

「あいつ、どこ行きやがった……………?」

『……………翔太郎。もしかしたら僕達は、嵌められたかもしれない』

「あん? ……………ッ! まさかッ!」

 

 

 この場にはアルカ・ノイズの大群が残されているが、アルカ・ノイズだけでこのメンバーを倒せるなど向こうも考えていないだろう。であれば、彼女の狙いはなにか。

 

 

「なるほど、奴の狙いはマリアというわけか」

『照井竜。彼女達の下へ向かってくれるかい? ここは僕達に任せてほしい』

「あぁッ!」

 

 

 アクセルがベルトを外すと、背中のパーツが前輪に、脚部が後輪とマフラーに変形する。

 

 これぞアクセルの形態の一つ――――――バイクフォームである。

 

 

「うえぇッ!? 竜さんがバイクになっちゃったッ!?」

「そんなのありかよッ!?」

 

 

 驚く響とクリスを尻目に、バイクフォームとなったアクセルはマリア達の走っていった方角へと向かった。

 

 

 

 

「――――――はぁ、はぁ、はぁッ!」

「見つけたよ、ハズレ装者ッ!」

 

 

 亜樹子と共に未来とエルフナインを連れてマリアが森の中を走っていると、彼女達の前にガリィが降り立った。

 

 

「ぎょええええッ!? なんでこっちに来たのッ!?」

「三人は下がっててッ!」

「さぁ、いつまでも逃げ回ってないで――――――」

 

 

 三人を護るように立ち塞がったマリアの体を、あわやガリィの氷槍が貫きかけた、その時。

 

 

「――――――Seilien coffin airget-lamh tron(溢れはじめる秘めた熱情)

「な……………ッ!?」

 

 

 眩い輝きに目が眩んだガリィの顔面に、銀色の拳が叩き込まれる。なにも出来ずに殴り飛ばされたガリィが顔を上げ、自分の目の前に立つマリアの姿に驚愕する。

 

 

「銀の……………左腕ッ!?」

 

 

 フィーネとエルフナインの努力によって生まれ変わったアガートラームを構えたマリアの姿が、そこにはあった。彼女の決意が漲った瞳を見て、ガリィは「へぇ?」と口角を釣り上げた。

 

 

「あの時みたく、失望させないでよ?」

「――――――真の強さとはなにか? 探し彷徨う」

 

 

 ガリィが出現させたアルカ・ノイズを、胸の歌を奏でながら斬り捨てていく。特訓用に調合してもらったLiNKERによって適合係数を上げているマリアにとって、アルカ・ノイズなど敵ではないのだ。

 

 

(これなら、行け――――――)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!

「な……………ッ!? ぐぁッ!」

 

 

 雄叫びに振り向いたマリアの視界が大きくブレる。頭部に走る鈍い痛みから、自分が蹴られたと悟った瞬間、マリアは邪悪な気配が一気に自分との距離を縮めてきているのを察知した。

 

 咄嗟に態勢を立て直し、右腕に握っている短剣で自分の首筋を狙ってきた短剣を阻む。

 

 甲高い金属音と共に、少量の火花が散る。その奥にいる、紅の眼で自分を睨みつける少女に歯噛みする。

 

 

「セレナ……………ッ!」

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!

 

 

 マリアの体を蹴って距離を取ったセレナは、マリアのものと同じ短剣を手に唸り声を上げる。最早『獣』としか言いようのない彼女の姿に、マリアは短剣を強く握り締める。

 

 

「セレナ……………。この銀の腕で、貴女を救ってみせるッ!」

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!

 

 

 ここに、白銀と黒銀のアガートラームが激突する――――――

 

 

 

 

「――――――ハァッ!」

「む……………ッ! やはり、中々の威力ですね」

 

 

 受け止めた翼の一撃の重さに、彼女への警戒を強めたデスドーパントが距離を取る。

 

 

「主君を喪いながらも、尚も我々に牙を剥くのか?」

「ご主人様は亡くなっておりませんよ。我々を導くあの御方が、あの程度で終わるとでも?」

「なに……………?」

「あの御方は不死身にして不滅。今も我々を導いて下さっているのです。……………あの御方の理想を阻む者は、誰であろうと排除します。その為であれば――――――」

 

 

 広げた左手に、青い人魂が灯る。

 

 

「――――――手段など、選んでいられないのですよ」

 

 

 放たれた人魂が翼の前に着弾し、徐々に人型の形を取っていく。

 

 

「かつて愛した者と殺し合いなさい。風鳴翼」

「――――――Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

 

 あの夜、デスドーパントと対峙した者はマリアだけではない。あの場には翼もおり、デスドーパントはその際に彼女の心も視ていたのだ。

 

 彼が誰を蘇らせたか、先の聖詠を聴いた翼がわからぬはずがない。

 

 炎が弾け飛び、その奥にいた者の姿が露わになった。

 

 所々に漆黒の紋様が刻まれた朱色の戦装束に、あらゆるものを穿ち尽くす破壊の魔槍。

 

 それは、あのライブ会場で命を懸け、人々を護り抜いた英雄の虚像。二度と飛び立たぬ、双翼の片割れ。

 

 

オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッッッ!!!

 

 

 朱色の片翼――――――天羽奏は、黄泉より羽ばたく




 
 天羽奏復活ッ!(ただし敵) 次回、アガートラームVSアガートラーム、蒼翼VS朱翼ですッ! 今年最後の対決、乞うご期待デスッ!
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