明けましておめでとうございますッ! 今年もよろしくお願いしますッ!
アルカ・ノイズを斬り伏せたマリアは、自分の首元へ迫ってくる短剣を防ぎ、セレナを蹴り飛ばす。そこへすかさずガリィの氷塊が飛んでくるが、それをバックジャンプで回避し、ガリィ目掛けて蛇腹剣の如く剣を振りかざす。
空を裂きながら襲い来る刃を軽い身のこなしで避けたガリィが左手に術式を展開し、激流を発射してくる。
「くぅ……………ッ!」
「さっさと歌ったらどうなの~? ハズレ装者ッ!」
あくどい笑みと共に挑発するように言うガリィを強く睨みつけ、マリアはすぐに起き上がる。
「マリアさんッ!」
「マリアッ!」
「強く、強くあらねば……………ッ! おおおおおおおッ!」
足元の砂を蹴散らして駆け出したマリアが攻撃を繰り出すが――――――
「てんで弱すぎるッ!」
「ぐあッ!」
それを容易く受け流したガリィのカウンターを受けて吹き飛ばされたマリアに、今度はセレナが飛びかかってくる。右手に握られていた短剣を投擲すると、短剣は一本から三本に分裂してマリアを切り刻もうとするが、マリアは咄嗟に身を翻して短剣を避ける。
「……………やはり」
やはり、根性論でどうにかできるほど、彼女達は甘くない。それほどの実力差が自分達にはあり、このまま戦ってもいずれこちらの体力が尽きてしまうのは明白だった。
だが、自分にはこの状況さえ覆せる力がある。
「……………その力、弱いあんたに使いこなせるの?」
「……………ッ!?」
マイクユニットを取り外そうとしたところにかけられた言葉に、マリアの動きが止まる。
そうだ。私はまだ弱いままだ。自分がなにに負けたのかわからぬまま、自分にとっての『強さ』がなにかをわからぬまま、この力を使えば、自分は再びあの闇に呑み込まれてしまうだろう。
どうしたら強くなれる――――――そう思った刹那、先程のエルフナインとの会話が思い浮かぶ。
『それは……………マリアさんがボクに教えてくれたじゃないですか』
エルフナインの言葉が何度も脳内に反復し、そこへ今の彼女の声が響く。
「マリアさんッ! 大事なのは、
「……………ッ!」
その時、マリアは思い出した。サーブを上手く打てずに落ち込んでいたエルフナインに、自分が告げた言葉を。
『弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つ事だから』
――――――あぁ、そうか。
「答えなんて、とっくに見つけていたのね」
「ん……………?」
どこか雰囲気が変わったマリアを訝し気に見つめるガリィ。
「弱くても、自分らしくある事。……………それが『強さ』。エルフナインは戦えない身でありながら、危険を顧みずに勇気をもって行動を起こし、私達に希望を届けてくれたッ!」
「……………へぇ」
マリアの言葉に、ガリィが笑う。気付いたのだ。今自分の前に立っているのは、先程までのマリア・カデンツァヴナ・イヴではない、と。
「エルフナイン――――――そこで聴いていてほしいッ! 君の勇気に応える歌だッ!」
覚悟は決まった。今こそ、魔剣を引き抜く時。
「イグナイトモジュール――――――抜剣ッ!」
一度は自身を闇に呑み込んだ暴虐の針が、マリアの胸に突き刺さる。そこを起点に心の奥底に封じ込められていた邪悪な意思が増幅され、全身を漆黒のオーラで覆いつくす。
「ぐ、うぅ……………ッ! らしく、ある事が……………強さであるなら……………ッ!」
狼狽える度に現実から目を背け、虚構に縋りついていた昨日までの自分――――――今まで押し殺そうと思っていたそれもまた、『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』という人間に他ならない。
ならば、それを受け入れよう。弱い自分も許容した上で――――――私は強くなるッ!
「私は弱いまま、この呪いに叛逆してみせるッ!」
新たな一歩を踏み出す決意を叫んだマリアに呼応するように、ダインスレイフの呪いが彼女の戦装束を変貌させていく。
邪悪な力に染め上げられながらも、その輝きに一片の曇りなし。漆黒の刃を振るう、弱きままに戦う
「マリアさんの自我が……………」
「暴走を、抑え込んだ……………ッ!」
遂にマリアは、ダインスレイフの呪いを制御した。
「弱さが強さだなんて――――――頓智を利かせすぎだってッ!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
ガリィとセレナが同時に動き出す。今までのマリアなら間違いなく防ぎ切れない威力を以て攻撃してくる二人に対して、マリアは――――――
「遅いッ!」
――――――回避もせず、そのまま迎撃を行って二人を吹き飛ばした。
「な……………ッ!? ……………そうだよッ! これだよこれぇッ! ガリィが一番乗りッ!」
想定外の行動に出たマリアの攻撃を受けた二人は即座に態勢を立て直し、セレナは今まで通りに、ガリィは凶悪な笑い声をあげた。
「――――――真の強さとはなにか? 探し彷徨う」
弱いままで強くあり続ける事を決めた意志のままに旋律を奏で、ガリィとセレナの猛攻を防ぎつつ、的確な一撃を叩き込んでいく。殴り飛ばされたガリィが氷剣を装備して襲い来るが、マリアはそれを装束と同様黒く染まった短剣で迎撃し、背後からのセレナの攻撃は新たに取り出した短剣で防ぐ。
「それでこそイグナイトッ! 万物を破壊する、呪いの旋律ッ! これを待ってたんだよッ!」
――――――ふざけるな。この力の源が呪いの魔剣であろうと、私が振るうのは、命を救う輝きの歌ッ!
――――――お前に負けるほど、私の歌は柔じゃないッ!
ガリィとセレナの二人を相手にしても全く引けを取らずを二人を弾き飛ばし、飛び上がると同時に両手に持った短剣を投擲。これを回避したガリィは激流で、セレナは短剣を投擲して上空のマリアを攻撃するが、マリアは体を捻って両方の攻撃を紙一重で避け、着地するや否やセレナに接近し、腹部に拳を捻じ込んだ。
「ガァ……………ッ!?」
殴り飛ばされたセレナだったが、まるで殴られた痛みを感じていないかのように即座に立ち上がり、二本の短剣を放り投げる。それは主の意思のままに自由自在に動き回り、マリアを切り裂こうと殺到する。
『DARK FAIRIAL†TRICK』
殺到する二本の短剣を前に、マリアは剣を両手で握る。すると、剣から無数の刃状のエネルギーが射出され、マリアに襲い掛かろうとした短剣を撃ち落し、さらにセレナにも数弾着弾して後ずらせる。最後にマリアは拳を握り締め、勢いよく地面に叩き付ける。
『GLITTER†FLOOD』
拳から一直線に走った衝撃波が直撃し、吹っ飛ばされたセレナは壁に叩き付けられ、崩れ落ちると同時に武装が解除された。
「凄いパワー……………。これが、イグナイトッ!」
「マリアさんッ! 来ますッ!」
凍えるような殺気に飛び退いたマリアの足元に氷の刃が突き刺さり、氷剣を手にガリィが迫る。マリアの短剣とガリィの氷剣が激突し、凄まじい剣戟が繰り広げられる。
「チィ……………ッ!」
何度目かの衝突の末、砕かれた氷剣に舌打ちし、一旦距離を取ろうとガリィがマリアの体を蹴って離れる。しかし、マリアもそれを許さない。
体を屈め、両足のバネを使って一気にガリィとの距離を詰める。風を切って迫り来る短剣の切っ先を前に、咄嗟にガリィは障壁を展開するが――――――
「な……………ッ!?」
突き立った切っ先を中心に砕け散った障壁に驚愕の声を上げたガリィの顔に、明らかな焦燥が浮かぶ。
明確な隙を見逃すはずも無く、マリアは左腕のアーマーに接続した短剣を大剣状に変形させ、ブースターで突撃する。
「この身は――――――炎となるッ!」
『SERE†NADE』
大剣の斬撃を受けて真っ二つに両断されたガリィは、最期の瞬間でさえ笑っていた。
「一番乗りなんだからあああああああッッ!!」
断末魔の代わりに歓喜の声を上げ、ガリィは爆発の中に消えていった。
「勝ったの……………?」
「……………はい。マリアさんの勝利ですッ!」
エルフナインがマリアの勝利を断言し、それを聞いたマリアは安堵の息を吐く。だが、まだ終わりではない。
「セレナ……………」
倒れているセレナに近づき、また襲い掛かってもすぐに対処できるように警戒しながら体を揺さぶる。
「ん……………う……………」
微かに目を開けたセレナに、先程までの凶暴な意志はない。視界に入った光に目を慣れさせる為に何度か瞬きをした後、心配そうに自分を見つめるマリアを見て、あり得ないとばかりに目を見開く。
「マ、マリア……………姉……………さん……………?」
「……………ッ! セレナ……………ッ! セレナッ!」
「わっ! ね、姉さん……………。苦しいよ……………」
「あ……………。ご、ごめんなさい」
強く抱き締めた妹の若干苦しそうな声を聴き、マリアはすぐに彼女を解放する。
「……………本当に、貴女なのよね? セレナ」
「……………うん。なんで、こんなところにいるのかだったり、姉さんがおっきくなってるのかだったり、わからないところはいっぱいあるけど……………。私は、セレナだよ」
「……………ッ! あ、あぁ……………ッ!」
もう二度と会えないと思っていた妹が本物だと改めて理解し、マリアは再びセレナを抱き締めた。今度はセレナは抵抗せず、またこうして姉に出会えた事に感激して彼女の背中に手を回した。
「マリアさんッ!」
その時、アルカ・ノイズ出現の報せを受けた響達が到着する。だが、周囲にガリィやアルカ・ノイズの姿が無い事に、もしや、と翼が問いかける。
「オートスコアラーを、倒したのか?」
「どうにかこうにかね」
「暁さんッ!? 月読さんッ!?」
「セ、セレナッ!? 調ッ! セレナデスよッ!」
「セレナッ!」
調と切歌がセレナに駆け寄り、セレナを抱き締めた。
「彼女は……………」
「セレナ。私の妹よ。後で色々説明しなきゃね。……………エルフナイン」
「はい?」
「……………教えてくれて、ありがとう。私が、私らしくある為の力を」
「……………はいッ!」
マリアの感謝に、エルフナインは満面の笑みを以て答えた。
「――――――お疲れ様、ガリィ」
同胞の死を目の当たりにしたファラが、先程まで響達がいた施設の屋上でそう呟いた。
彼女の死は決して無駄ではない。彼女がアルカ・ノイズを召喚してくれたおかげで不安要素の装者達や仮面ライダー達はこの施設から離れ、その隙を突いてファラは目的を果たす事が出来た。
「貴方にも感謝を。黒芭燈迩」
「万象黙示録完成の為だ。いくらでも協力するさ」
ドーパントに変身しないまま職員を手際よく気絶させていた燈迩がひらひらと手を振る。
「お前も頑張れよな。こんなところで終わるわけにはいかないだろ?」
「えぇ、もちろん。我々の目的は、果たされなければならないのだから」
そう答えたファラに、燈迩はニヤリと笑った。
「――――――本当にいいんですか?」
「君達も女の子だ。男の僕が持つのは当然だろう?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
日も暮れた頃。海辺で花火で遊んでいたS.O.N.G.メンバーも空腹になったという事で、昼間と同じようにコンビニ買い出しジャンケンを行い、敗北した響と、彼女の付き添いで同行を申し出た未来、そしてフィリップがコンビニから出てきた。フィリップの手には、先程彼女達が買った商品が詰められたコンビニ袋がある。
「S.O.N.G.には世話になっているからね。君達がいなかったら、僕らは今頃どうなっていたか……………」
「あはは。なんだか、初めて京水さんとレイカさんと会った時を思い出します」
「それは興味深い。その時の彼らはどういった様子だったんだい?」
「それはですね――――――」
響は未来と共に、公園で食料を恵んでくれる人を待っていた京水とレイカの事を話す。おにぎりを渡すととても感謝してくれて、その後にノイズに襲われた時も、自分や子どもを護る為に戦ってくれた事などを説明すると、フィリップは少し驚いた様子を見せた。
「恩返しとはいえ、まさかそこまでしてくれるなんてね。僕らはミーナから話を聞くまでは、ずっと彼らをテロリストだと思っていたからね」
「テロリスト……………。でも、こっちの世界に来てからは、五人とも私達と一緒に戦ってくれたんですよ。助けてもらった時もありますッ!」
「へぇ。帰りがてら色々聞かせてくれるかい。彼らの事を」
「はいッ! えっとですね――――――」
響がNEVERについて話そうとした、その時――――――
「……………あれ? 未来ちゃん?」
「え? あ……………」
声をかけられた未来が視線を向けると、そこにはコンビニの制服を着た男性がいた。
「どしたの? 未来――――――」
未来の視線の先を追った響は、その男を見て絶句する。
「ひ、響……………?」
「……………お父……………さん……………」
(響ちゃんの、父親……………?)
フィリップが男に視線を向けた直後、響はいきなり駆け出す。
「あ、響ちゃんッ!」
「響ッ!」
フィリップと未来が声をかけるも、響はなにも答えずに走り去ってしまった。
例のウイルス感染者がまた爆発的に増えてきましたね。新年早々、不穏な気配を感じます。皆さんも感染予防をしっかりと行い、毎日健康に過ごしましょうッ!
先日、長年飼っていたペットを亡くしました。どうやら心臓病に罹っていたらしく、いつ死ぬかわからない状態でいたのですが、検査したその日の夜に旅立ちました。ですが、心臓病で苦しみ続けるよりも、こうしてすぐ逝ってしまう方がよかったのかもしれません。大切な家族が苦しむ姿なんて、見たくありませんから……。
年明け早々に辛い出来事が起こりましたが、私、これをあまり哀しんではいないのです。
思い入れが無い、というわけではありません。むしろ可愛がっていました。犬は私が産まれてからずっと、傍にいた動物ですから。
これでペットを見送るのは三度目になります。ですがその度に、私は彼らとの再会を約束するのです。大切な家族が旅立つのは哀しいですが、それはあの世に移っただけの事。命ある者である以上、私もいつかはそちらに行くのでしょう。その時には、また彼らと遊びたいと考えているのです。だから、ですかね。いつの日か、私と彼らはまた会えるから、私は深い哀しみを抱かないんです。
モチベーションは下がりましたが、数日すれば立ち直ると思いますので、更新頻度は変わりません。
『子どもが生まれたら犬を飼いなさい』。私も最近知ったイギリスの諺ですが、これほど素晴らしいものはないと思っています。
それでは皆様。今年一年、よろしくお願いいたします。