死神に鎮魂歌を   作:seven74

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遠きP/男達の契約

 

 アクセルがファイタードーパントと交戦し始めた頃、ガングニールを纏った響とファングジョーカーに変身したフィリップは、共同構内に出現したミカと戦っていた。

 

 

「せぇいッ!」

「わぁおッ! 凄い威力だゾッ! だけど、今日はお前達の相手をしてる場合じゃないんだゾッ!」

「悪いけど、君達の都合に付き合っていられる程、僕らは甘くない」

ショルダーファング!

 

 

 空を切り裂いて迫るショルダーセイバーを前に、響を蹴り飛ばしたミカはカーボンロッドを射出。ショルダーセイバーの軌道を逸らし、さらに撃ち出したカーボンロッドでWを攻撃する。

 

 

『こんなもの、効かねぇぜッ!』

 

 

 翔太郎の声と共に振るわれた拳がカーボンロッドを打ち砕き、態勢を立て直した響と一緒にミカへ攻撃を仕掛ける。対するミカも新たに生成したカーボンロッドを手に迎撃し、二人の拳と打ち合う。

 

 

「同時攻撃……………中々いいぞッ!」

「せいッ!」

 

 

 響の渾身の一撃が叩き込まれ、カーボンロッドが砕ける。がら空きになったミカの胴体に今度はWが追撃を仕掛けようとするが――――――

 

 

「燃えるがいいゾッ!」

「…………ッ! 響ちゃんッ!」

「え? うわぁッ!?」

 

 

 自分達に向けられた掌の奥から赤い輝きを見たWが咄嗟に身を翻して響を庇った瞬間、ミカの掌から火炎が放射された。吹き飛ばされた二人だが、Wが庇ってくれたお陰で肌が露出している響に火傷は無く、代わりに超至近距離から火炎放射を受けたWの体が若干焦げていた。

 

 

『あっつッ! 今の季節考えてくれねぇのかよッ!』

「向こうにその気はないよ。気にしてたら余計質が悪いけどね」

「あ、ありがとうございます、フィリップさん」

「なに。君も女の子だ。君を火傷させたりしたら、亜樹ちゃんに大目玉を喰らいそうだったからね」

「あらら、失敗しちゃったゾ。でも、まだ倒れてなくて嬉しいゾッ!」

 

 

 一瞬残念そうに肩を落としたが、次の瞬間には気持ちを切り替えたミカの両掌から火炎が放たれる。先程は片手での火炎放射だったが、今度は両手。その熱量も速度も倍になっており、二人を焼き尽くそうと迫るが――――――

 

 

「そうは、させないッ!」

 

 

 突如として現れた二つの巨大な丸鋸が、灼熱の業火を阻む。調だ。

 

 

「「調ちゃんッ!?」」

「切ちゃんッ!」

「任されたデスッ!」

「な…………ッ!?」

 

 

 調の声に応え、同じく響達に追いついた切歌の鎌がミカに迫り、ミカは咄嗟に飛び退いて回避する。

 

 

「シュルシャガナとイガリマ…………。これは少し、いや、かなり分が悪いゾ」

 

 

 響とWでさえ互角だったのに、調と切歌まで到着したとなると、如何に戦闘特化型のオートスコアラーとして設計されたミカといえど敗北は免れられない。

 

 

「預けるゾ。次会う時は、ちゃんと歌ってもらうゾ~」

 

 

 去り際にそう言い残し、ミカはテレポートジェムを砕いて姿を消した。

 

 

 

 

「――――――オラオラドウシタァッ! ソンナモンカ、仮面ライダーッ!」

 

 

 間隔を開けずに次々と撃ち出される銃弾を走りながら回避し、アクセルはエンジンブレードをファイタードーパント目掛けて投擲する。寸分違わず一直線に向かってくるエンジンブレードをファイタードーパントが剣で弾き飛ばすと、そちらに意識を向けた影響で僅かに銃弾を撃ち続ける右腕の動きが一瞬鈍る。

 

 

「今だッ! とうッ!」

 

 

 その隙を突き、ジャンプしたアクセルはファイタードーパントに弾かれたエンジンブレードを手に取ると、重力に引き寄せられるままそれを振り下ろし、ファイタードーパントを切り裂いた。

 

 火花を散らせるファイタードーパントが怯み、その間にアクセルはエンジンメモリをエンジンブレードのメモリスロットに挿し込む。

 

 

エンジン・マキシマムドライブ!

「ハァ――――――ッ!」

 

 

 立ち上がりざまに斬り上げ、間髪入れずに振り下ろし、最後に遠心力を加えた一閃を繰り出すと、ファイタードーパントの体に赤い『A』の文字が浮かび上がる。

 

 

ダイナミックエース

 

 

 超威力の必殺技を受けて吹き飛ばされたファイタードーパントが壁に叩き付けられ、ずるずると地面に落ちる。

 

 

(これでまだ解除されないのか…………)

 

 

 しかし、ファイタードーパントの変身が解ける様子は見えない。より強力な一撃を加えなければ、彼は倒せないのだろう。トライアルを使おうかと考えた瞬間、アクセルに緑色の竜巻が襲い掛かってきた。

 

 

「な…………ッ!? ぐぁッ!」

 

 

 防御が間に合わず、竜巻に吹き飛ばされたアクセルが起き上がると、そこには剣を振り抜いた状態のファラが立っていた。

 

 

「道草は良くないわ、黒芭」

「……ハッ! ソノ言葉遣イ、オ前ガ使ウト気持チ悪イナ( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 

 斬りつけられた場所を擦りながら立ち上がったファイタードーパントはファラと共にテレポートジェムを砕き、瞬時に姿を消す。

 

 

「……………? なんだ、今の違和感は……………」

 

 

 追撃はないだろう、と判断したアクセルは変身を解除するが、先程の二人の会話に感じた違和感に首を傾げるのだった。

 

 

 

 

「――――――おっとり刀で駆けつけたが……………」

「間に合わなければ意味がねぇよなぁ…………」

 

 

 その後、遅れて克己を始めとしたメンバー達が到着したが、既に事件を起こしたミカとファイタードーパントは撤退しており、参戦する事は叶わなかった翼とクリスは悔し気に歯噛みする。

 

 

「人形はなにを企てていたのか……………」

「大きく破損した箇所は……………よかった、左程ありませんね」

 

 

 軽く周囲を観察していた緒川の顔が綻ぶ。完全に無傷、というわけではないが、問題になる程破壊されたものはない。

 

 本部に報告しようとしたその時、緒川の目が気になるものを見つけた。

 

 

「これは……………」

 

 

 緒川が見つけたのは、電力メーターだった。そこに表示されているデータを見て、緒川は「まさか」と思うのだった。

 

 

 

 

『――――――ねぇ、エルリン』

 

 

 思い起こされるは、数百年前の記憶。遠い彼方へと消えていった時代の風景。

 

 

『もしも、僕になにかあった時、キャロルを頼めるかい?』

『あん? どうして。子を護るのは、いつだって親だろ?』

 

 

 あらゆる命が寝静まった頃、窓から見える満点の夜空を眺めていた男の視線が向けられる。

 

 いつの時代だって、子を護るのは親の仕事だ。いつか子が巣立つその日まで、彼らを護る責務を背負うのは、いつの時代だって親だ。

 

 それをなぜ、居候の俺に頼むのか。

 

 

『近頃、街の様子がおかしい。僕を見る目が変わってきてるんだ。嫌な予感がするんだよ』

『? だったら、逃げればいいじゃねぇか。錬金術を扱うお前を異端扱いする奴らの住む街なんざ、とっとと出るに限る』

 

 

 なんだったら、以前ここに訪れた女が所属する『結社』とやらに匿ってもらうという手もある。多くの錬金術師を抱え込むあそこなら、自分達も満足な生活を送る事ができるだろう。

 

 最善の手だと思うのに、男は静かに首を横に振った。

 

 

『ここは僕の故郷だ。僕が生まれ育った街なんだ。死ぬのなら、ここがいい』

『……………馬鹿な奴だ。死ぬ事がわかってるのに居座るのか? 遺されるあいつの気持ちを考えてないのか?』

『……………』

 

 

 俺の問いかけに、男は答えない。彼自身、わかっているのだろう。自分が死んで、たった一人の愛娘がなにを思うのか。父親である彼が知らないはずが無い。

 

 

『いいか? 人間ってのは常識外の存在と直面すると豹変する種族だ。たとえ間違っていたとしても、一度お前を邪悪の使徒だと認識すれば、その血を引くあいつだって狩り( ・ ・ )の対象にされるぞ。親子揃って燃やされたいのか?』

『……………ッ! そんな事は――――――』

『あり得ない、とでも言いたいのか? 甘ぇぞ、小僧。テメェは人間の本質を理解していない。テメェの理想は、決して叶う事はない』

 

 

 俯く彼から視線を外し、天上に座する満月を見上げる。あの男( ・ ・ ・ )によって施された呪いは、未来永劫続くだろう。解ける事のない呪いが存在し続ける限り、人類は平和に殺し合う( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 

『まだ年端のいかぬ子どもであろうと、殺ると決めた人間は殺るぞ。悪い事は言わねぇ。とっととここから逃げるぞ』

『……………それでも、僕は――――――』

 

 

 顔を上げた男を見る。その瞳に、怯えの色はない。むしろ、輝いてさえいた。

 

 

『僕は――――――人間を信じている。頼む、■■■■。僕が彼らの標的になっているうちに、あの子を連れて逃げてくれ』

『……………ハッ。ハハ……………ハハハハハハハッ!』

 

 

 滑稽だ。自分の命を惜しまず、我が子が傷つく事を知っていても尚、その身を狂気に駆られた者達に捧げるというのか。あぁ、滑稽だッ!実に、実に愚かしいッ! だが――――――

 

 

『流石、我らが素晴らしき愚息( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )だッ! いいだろうッ! その願い、この■■■■が聞き届けたッ!』

 

 

 それでこそ、愛おしい。

 

 どのみち、『■■■■』という名が出された事で、俺の目標は決定された。

 

 いいだろう、愛しくも愚かな人間よ。傲慢な貴様の願い、この俺が叶えてやる。

 

 

『君があの子にとっての騎士になれる事を願うよ、■■■■』

『言ってくれるな、イザーク。この俺が剣を取るのは、真に護ろうと思った者の為だけだ』

 

 

 その答えの真意を悟ったのか、男――――――イザーク・マールス・ディーンハイムはふっと微笑んだ。

 

 そこで、俺の意識は覚醒へ向かう。

 

 

「……………ここは」

 

 

 知らない天井を見上げ、ゆっくりと体を起こす。

 

 知らない壁。知らない空気。知らない部屋。――――――いったい、どれぐらいの時間が経っているのか。十年か? 百年か? それとも、千年か?

 

 

「……………おはよう。蒼い騎士様」

「……………ッ!」

 

 

 いつの間にそこにいたのか。先程まで自分以外誰もいなかったはずの部屋に、一人の子どもが立っていた。

 

 

「……………お前、何者だ?」

「私は……………津神叶。お願いがあるの、騎士様……………」

 

 

 幽鬼の如く、人間とは思えないような気配を纏うその少女は、氷の冷たさを彷彿とさせる瞳で俺を見る。

 

 

「……………私を、ここから連れ出して」

 

 

 その少女の願いは、どこか哀し気なものだった。

 

 

 

 

「――――――これで~、どやぁ~ッ!」

 

 

 未だ王が帰らぬ王室。ミカが腕を振り上げると、彼女を含めた三体のオートスコアラーの中心に地図のようなものが映し出される。

 

 

「派手にひん剥いたな」

「当然だゾッ! 邪魔が入る前に完了出来てよかったゾッ!」

 

 

 地図の一角、先程ミカがファイタードーパントとアルカ・ノイズを率いて出現した共同構を見たレイアが感心する。キャロルによって創造されたオートスコアラーのうち、ミカは誰よりも子どもに近い性格の持ち主だ。そのぶん、どれほど残酷な手段だろうと躊躇いなく実行する。時折道草を食う時もあるが、やるべき仕事はキチンと果たしたようだ。

 

 これで、万象黙示録の完成はまた一歩――――――

 

 

「ん?」

 

 

 その時、レイアはどこかへ向かおうとしているミカの姿を視界に収めた。レイアと同様、彼女がどこに行くのか気になったのか、ファラが声をかける。

 

 

「どこへ行くの、ミカ? 間もなく想い出のインストールは完了するというのに」

「自分の任務くらいわかってるゾッ! キチンと遂行してやるから、後は好きにさせてほしいゾッ!」

 

 

 そう言ってミカは王室から出ていく。

 

 

「万象黙示録の完成……………それこそがマスターの望み。お前の邪魔はさせないぞ、ミカ」

「あら、どちらへ?」

「地味なのは性分に合わないが、ミカの助太刀だ。可能な限り、派手にやる」

「よくやるわね。妹も連れていったらどうかしら?」

「当然」

 

 

 レイアも退室し、ファラだけが残される。王室に一人佇むファラは、自分の掌を見下ろして何度か握ったり開いたりする。

 

 

「もう少し、だな……………」

 

 

 普段とは異なる口調で呟くファラの視線の先には、炎に捲かれて消えた姫君の玉座があった。

 

 

 

 

「――――――念の為としてLiNKERを貰ったデスが、平和デスねぇ……………」

 

 

 夕方、ふらふらと調と街を練り歩いていた切歌がポツリと零す。

 

 大した傷を負う事無く戦闘を終えたので、二人は軽い身体検査を受ける程度で終わったが、万が一という事を予期したエルフナインが二人にLiNKERを渡したのだ。エルフナインとフィーネの合同作業の下急ピッチで開発されているが、二人専用のLiNKERが完成するまでもう少し時間がかかるらしいので、渡されたのは奏用のものだ。自分達用に調整されていないので体にかかる負荷もそうだが、まず本部にあるLiNKERにも限りがあるので、投与する時は慎重に考えてから決めよう。

 

 最初はそれを使わず、訓練用のLiNKERを使うという考えもあったのだが、オートスコアラーを相手にして訓練用で持ちこたえられるはずが無い。故に、負荷はかかるし在庫も減るが、訓練用よりも大きな効力を有する奏用LiNKERが渡されたのだ。所謂、苦肉の策というものである。

 

 

「平和なのはいい事だよ。このままのんびりできたら――――――」

 

 

 その時、どこからともなく轟いた爆発音が調の言葉を遮った。

 

 

「今の音は……………ッ!?」

「あそこデスッ!」

 

 

 切歌が指差した先には、両手から放ったカーボンロッドで破壊の限りを尽くしているミカの姿があった。その破壊の仕方は、まるで自分達を誘っているようにも思える。

 

 

「アタシ達を焚きつけるつもりデスッ!」

「足手纏いだと、軽く見てるのならッ!」

 

 

 罠の可能性もあるが、それでも目の前で暴れる存在に対抗できる力を持つ二人は、それぞれの想いに応えてくれたシンフォギアを身に纏う。

 

 

「――――――Zeios igalima raizen tron(夜を引き裂く曙光のごとく)

「――――――Various shul shagana tron(純心は突き立つ牙となり)

 

 

 戦装束を装備して飛び出した二人に気付いたミカが無邪気な笑みを浮かべる。

 

 

「思ったよりも早く来たゾッ! 今度こそ決着、つけてやるゾッ!」

「それは――――――」

「こっちのセリフデスッ!」

 

 

 カーボンロッドを構えるミカに、二人の戦姫が挑む。

 

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