死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 まだ完成してない状態で昼間に投稿してしましました……。その時に読んでいた方は申し訳ありません……。


Kの覚悟/呪われし記憶

 

 本部から送られてきた深淵の竜宮の各ブロックの障壁やパージスイッチの場所を脳裏に浮かべながら進むアクセルに、イクシード達が追随する。

 

 

「それにしても、なんかおかしくねぇか? 入り組んでいるとはいえ、こんなに追いつけないなんてよ」

「いい加減、追いついてもいいのだが……」

 

 

 しかし、彼らは未だにキャロル達に追いつく事は叶わないでいた。キャロル達と違って、自分達は現在進行形で本部からのサポートを受けているというのに、これはどういう事だろうか。

 

 

「キャロル達の居場所は?」

『そこから左に曲がって、上に直進してください。そこにいますッ!』

「ここは手分けして動いた方がいいだろう。マリア」

「えぇ。私達はこっちから行くわ」

「では、俺はここから行こう」

 

 

 遠回りにはなるが、それでキャロル達を挟撃する為にイクシードとマリア、アクセルがそれぞれ別方向に走っていく。残されたクリス、トリガードーパントは先程友里から伝えられた道順に沿って行動する事となった。

 

 

 

 

「―――それにしても解せんな……。この動き、まるでこちらがどう行動するのかが見えているような……」

 

 

 モニターに映し出された、W達を表す点が散開していく様子を眺めながら、弦十郎は顎に手を当てる。

 

 

「……ッ! 敵反応、進路を変更ッ! こちらのメンバー達との距離を放していきますッ!」

「アルカ・ノイズ反応増加ッ! こちらの進行を阻むように配置されていますッ!」

「ねぇ、弦十郎君。これって……」

 

 

 オペレーター達の報告に嫌な予感を感じたフィーネが声をかけると、「うむ」と呻くように弦十郎が小さく答えた。

 

 

「やはり、敵はこちらの動きを把握しているな」

「……ッ! まさか、本部へのハッキング……?」

「そんなのあり得ないわ。この私が設計したセキュリティよ? 正攻法じゃまず突破できないはずないわ。不正なアクセスがあればすぐにファイアウォールが発動するわ」

「だけど、現に向こうはこっちがどうするかわかってるんですよね? これってどういう事ですか……?」

 

 

 難しい話はわからないが、非常にまずい状況だという事は理解できた響に、フィーネは爪を噛む。

 

 

「純粋にシステムに介入しているわけじゃない……かといって通信を傍受されている様子もない……。これはいったい……。……まさか」

 

 

 蛇のような瞳が動き、モニターを凝視していたエルフナインを捉える。フィーネの射抜くような視線に気付いたのか、エルフナインは咄嗟に首を横に振る。

 

 

「ち、違いますッ! ボクはなにも……ボクじゃありませんッ!」

『いいや、お前だよ―――エルフナイン』

 

 

 その時、否定するエルフナインの気持ちを嘲笑うかのように、この場にいる者達全員の鼓膜に、その少女の声が響いた。

 

 驚く一同の前に、エルフナインの体からキャロルが出てくる。本物ではない。半分透けているように見えているため、幻影に近いものだろう。

 

 

「……キャロル? そんな、ボクが……?」

『あぁ。だが、お前が自分を責める必要は無い。なにしろ、お前自身が自分が仕込まれた毒であると把握していなかったんだからな。オレがお前の目を、耳を、感覚器官の全てを一方的にジャックしていたのだからな』

「ボクの感覚器官が、勝手に……」

 

 

 淡々と告げられる事実に、エルフナインはショックを受ける。次第に顔が青白くなっていくエルフナインを見て、キャロルは続ける。

 

 

『同じ素体から造られた、ホムンクルス躯体だからこそ出来る事だ』

「……ッ! お願いですッ! ボクを拘束してくださいッ! 誰も接触できないよう、独房にでも閉じ込めて……いいえ。キャロルの企みを知らしめ、ライダーシステムを持ち出す( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )という、ボクの目的は既に果たされています……。だから、いっそ―――」

「……エルフナインちゃん」

 

 

 目を細めた響が近づいてくる。自分も知らなかったとはいえ、それでもS.O.N.G.の内部情報をリークし続けてしまっていたという事実を突きつけられ、エルフナインに怒りを感じているのか。それでも自分はなにも言えないと思いながらも、響から来るであろう罵倒を悔恨の気持ちと共に待っていると―――

 

 

「……よかったぁ~ッ! エルフナインちゃんが敵じゃなくてッ! ですよね? 師匠」

「あぁ。迂闊だったな、まさか種明かしをしてくれるとは」

「……え?」

 

 

 自分の想像とは正反対の反応を見せた響達に、エルフナインは思わず呆気に取られてしまった。幻影のキャロルも僅かに眉を動かした程度だが、その瞳には明らかな驚愕が宿っていた。

 

 

「あの、ボクはここの情報を、キャロルに教えていたんですよ……?」

「貴女にその意思があったなら容赦しなかったけど、知らなかったんでしょう? なら、それでいいのよ。知らず知らずのうちに(キャロル)に利用されていた……それで決着よ」

「フィーネさん……」

「君の目的は、キャロルの企みを止める事。そいつを最後まで見届ける事ッ! 装者達への通信手段をパターンβに変更ッ! 表示も最小限に変更しろッ!」

「わかりましたッ! 通信手段をパターンβに変更ッ!」

 

 

 エルフナインが硬直している間にも、着々と準備が整えられていく。それを横目に、弦十郎はエルフナインにニッと笑ってみせた。

 

 

「と、こんなところだ。S.O.N.G.にだって、それなりのやり方が用意されている。だからここにいろ。敵に覗き見されようとも、構うものかッ!」

「は、はいッ!」

 

 

 そんな会話を交わす彼らを見ていたキャロルは、自分が想像したような事にならなかった事に不満そうに舌打ちし、そのまま消えていってしまった。

 

 

 

 

 ―――エルフナインを通してキャロルがこちらの内部情報を入手していたという報告を聞いたW達は誰もが驚いたが、エルフナインが欠片の悪意も無かった状態でS.O.N.G.に助けを求めた事を聞くと、キャロルに内部情報を知られてしまっている事などお構いなしに安堵した。

 

 

『事情がわかればこっちのものねッ!』

『暗号の解読パターンを変更。マリア、この先にはアルカ・ノイズがいる。油断はするな』

『もちろんよッ!』

『こちらも戦闘を開始する』

 

 

 通信越しに上げられる報告を聞いていると、クリス達の前にもアルカ・ノイズの姿が見えてきた。それなりの数だが、今の彼らの敵ではない。

 

 

「こちらも肉眼で確認した。クリス、好きに暴れろ」

「ったりめぇだッ! このまま一気に追いついてやるッ!」

 

 

 トリガーマグナムから光弾が、クリスのハンドガンから銃弾が放たれ、次々とアルカ・ノイズを消滅させていく。アルカ・ノイズの大群を前にしても決して足を止めずに進んでいくと、その奥にキャロル達の姿を捉えた。

 

 

「見つけたぞッ!」

「追いつかれたか。だが、既にシャトー完成に必要な最後のパーツの代わりは入手している。レイア、オートスコアラーとしての務めを果たせ」

「お任せを。派手に果たしてみせましょう」

「我々も残りましょう。黒芭様」

「オウヨ。ココデ潰ス」

 

 

 レイア、デスドーパント、ファイタードーパントがクリス達と対峙し、その間にキャロルはテレポートジェムを砕き、彼女とウェルの足元に陣が形成される。

 

 

「待ちやがれッ!」

「派手に妨害」

 

 

 今にも消えてしまいそうなキャロル目掛けてクリスが引き金を引こうとするが、その寸前にレイアが投擲したコインがハンドガンの照準をズレさせ、発砲された弾丸はあらぬ方向へ飛んでいった。その間にキャロル達は消えてしまった。

 

 

「逃がしたか……。ならば」

「こいつらを倒すッ!」

「俺ラガソウ簡単ニ負ケルト思ウナヨッ!」

 

 

 飛び上がったファイタードーパントが機銃に変形させた両腕から放たれた弾丸を躱し、クリスとトリガードーパントが同時に弾を撃ち出す。クリスの二丁拳銃から放たれた弾丸はレイアとデスドーパントに、トリガードーパントの光弾はファイタードーパントに向かうが、彼らはそれを容易く回避し、レイアはコイン、デスドーパントは人魂型の火球、ファイタードーパントは機銃で反撃する。それさえ飛び退いて避けたクリス達だが、今度はレイアがコインを連結させたトンファーを持ってクリスに襲い掛かり、デスドーパントも鎌でトリガードーパントに攻撃を仕掛ける。

 

 クリスは咄嗟に『闘士』の記憶を引き出す。両手に握られていた二丁拳銃がガントンファーに切り替わり、レイアの攻撃を受け止める。受け止めた影響で僅かに動きが鈍ったレイアの腹を蹴り飛ばし、ガントンファーの銃口から無数の弾丸を撃ち出すが、それはレイアが弾いたコインによって相殺されてしまった。

 

 一方、トリガードーパントはデスドーパントの振るう鎌の刃を片腕で受け流し、トリガーマグナムを発砲する。がら空きの背中に至近距離からの光弾が直撃し、火花と共に吹き飛ばされるデスドーパントだが、着地して振り向くと同時に鎌を投擲してくる。

 

 上半身と下半身を両断するかと思える勢いで迫り来るそれを転がるように紙一重で躱したトリガードーパントが銃口をデスドーパントに向けるが、唐突に感じた殺気に圧され、ほぼ無意識にそこから飛び退く。次の瞬間には彼の頭部があった場所に、ファイタードーパントがデスドーパントが投擲した鎌を振り下ろしていた。あと一歩遅ければ頭を串刺しにされていたところだっただろう。

 

 起き上がりざまに光弾でファイタードーパントを吹き飛ばすが、彼は吹き飛ばされながらも鎌を放り投げており、それをジャンプして受け取ったデスドーパントが、光弾を撃ったばかりのトリガードーパントの背を斬りつける。

 

 背中に切り裂かれた痛みを感じて小さな呻き声を漏らしたトリガードーパントの態勢が崩れ、そこを今度はファイタードーパントの機銃から撃ち出された弾丸が襲う。

 

 

「ぐあああああッ!」

「賢ッ!」

 

 

 全身から火花を散らして吹き飛ばされたトリガードーパントが倒れ、それを見かねたクリスがレイアが蹴り飛ばし、その反動を利用してトリガードーパントの隣に降り立つ。

 

 

「おいッ! 大丈夫かッ!?」

「あ、あぁ……。……ッ!?」

 

 

 クリスに助け起こされるトリガードーパントだが、デスドーパントとファイタードーパントの奥にいるレイアが両腕を広げ、その先に二枚の巨大なコインを出現させるのを見た。

 

 

「危ないッ!」

「えッ!?」

「はあぁッ!」

 

 

 トリガードーパントが咄嗟にクリスを押し飛ばした刹那、レイアが投擲した巨大なコインがトリガードーパントを挟み込んだ。

 

 

「が、は……ッ」

「あ、あぁ……ッ! け、賢ッ!」

 

 

 コインが消滅し、そこから現れた彼は、あまりのダメージに体内からT2トリガーメモリが排出されてしまい、ドーパント態ではなくなってしまっていた。

 

 

「な、なにやってんだよッ! あたしなんかを庇いやがってッ!」

「ぐ、ぅ……。俺は、NEVERだ……。この程度では、死なない……」

「そんな問題じゃねぇよッ! クソッ!」

「滂沱の暇があれば歌えッ!」

「は……ッ!?」

 

 

 悪態を吐くクリスに背後からトンファーを手にレイアが攻撃を仕掛けてくるが、無理矢理体を動かした賢が太ももに巻いたホルスターから拳銃を取り出し、クリスの背後に見える、トンファーを持った右手首を狙い撃ちする。

 

 ノイズまでとはいかないが、ドーパントにはある程度通用するよう加工された弾丸がレイアの手首に直撃し、レイアは僅かに顔を顰めて舌打ち混じりに彼らから距離を取った。

 

 

「賢……」

「自分を、責めるな……クリスッ!」

 

 

 叱りつけるように叫んだ賢に、クリスの体が強張る。

 

 

「一人で全部解決できると思うな……ッ! 『あたしなんか』とか言うな……ッ! 自分自身を、過小評価するな……ッ!」

 

 

 所々から血を流し、今にも崩れ落ちてしまいそうだというのに、賢の瞳には今も熱い炎が宿っており、その視線は変わらずクリスを捉えている。

 

 

「クリス……。お前は、お前だ。雪音クリスという一人の人間だ。そして、あの少女達の先輩だろうッ!?」

「……ッ!」

「彼女達は、お前が先輩でいてくれる事を願っている……。特別な事なんて、なに一つ求めていないんだ……」

 

 

 後輩が先輩を慕うのは当然。自分は先輩だからと、無理に力む必要などないのだ。ただ、クリスはクリスのままでいるだけで、彼女達の先輩になれるのだから。

 

 

「……そっか」

 

 

 賢の言葉に、クリスは今まで背負っていた重圧がすっと消えていくのを感じた。

 

 

「あたしみたいのでも、先輩やれるんだな……。あたしは、あたしのままで、あいつらの先輩になれるんだな……ッ!」

 

 

 調と切歌(かのじょたち)が先を行くのなら、自分は自分のままで、そのさらに先に行く。それが、先輩として彼女達の目標になれるのなら―――

 

 

「……ありがとよ、賢。お前のお陰で吹っ切れたッ!」

 

 

 ニッと不敵な笑みを浮かべたクリスは、賢に背を向けてレイア達を見据える。

 

 

「あたしはもう、迷わねぇッ!」

 

 

 瞬間、T2トリガーメモリから眩い蒼い光が放たれた。その輝きはクリスの体に吸い込まれたかと思うと、彼女の武装をアズゥティラール・イチイバルのものへ変化させる。しかし、変化はそれだけに留まらず、ツインテールにまとめていた髪の毛は解け、左肩には無かったダメージを軽減するマントが装備される。

 

 

『フォニックゲインの上昇を確認……。覚醒したようね、クリス』

 

 

 通信越しにフィーネの声が聞こえる。神獣鏡(シェンショウジン)を纏った未来と戦った響、迷っていたクリスに居場所があると伝えた翼と同じように、クリスは遂に己が身に宿るガイアメモリの力を覚醒させたのだ。

 

 

「まだだ、まだ終わらねぇよッ!」

 

 

 しかし、それでクリスは止まらない。胸のマイクユニットを手に取り、叫ぶ。

 

 

「イグナイトモジュール―――抜剣ッ!」

 

 

 放り投げたマイクユニットが刺さり、凄まじい激情がクリスを呑み込もうとする。だが、この衝動を一度体験しているクリスにとって、こんなものは最早障害たりえない。

 

 

「あたしは、あいつらの先を行くぞッ! あたしはぁッ! あいつらの、先輩だからなァッッ!!」

 

 

 叫んだ瞬間、クリスの全身を漆黒のオーラが包み込み、その身を邪悪で禍々しいものへと変貌させた。

 

 ガイアメモリの力を纏ったシンフォギアに、イグナイトモジュールの重ね掛け。後にこの姿は、フィーネによってこう名付けられる事となる。

 

 その名も―――ガイアイグナイト。呪われし地球の記憶を操る、シンフォギアの新たな戦闘形態であるッッ!!

 




 
 ガイアイグナイト……安直過ぎましたかね……?

 次回は反撃開始ですッ!
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