死神に鎮魂歌を   作:seven74

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 お久しぶりです、seven774です。
 約二年も更新せず、申し訳ございません。並行して投稿していたモンスターハンターとfgoのクロスオーバー作品を優先してしまいました。

 今回から更新再開……といきたいところなのですが、申し訳ございません。今回はあくまで失踪するつもりがないという決意表明であり、この物語を未完で終わらせるつもりが無い事を証明する為でもあります。
 たとえどれだけ時間がかかろうとも、必ずや完結まで執筆するつもりですので、こんな私に期待をかけて下されば幸いです。

 更新までかなり時間が空いてしまったため、前回までのあらすじを記載します。


 ◇ ◇ ◇

 風都での戦いの後、如何なる因果かシンフォギア世界で目覚めた大道克己達NEVER。紆余曲折あり立花響達と出会った彼らは風鳴弦十郎の下、S.O.N.G.の一部隊として活躍。フィーネやドクター・ウェル達との戦いの末、現在はキャロル・マールス・ディーンハイムと、NEVERが元いた世界であるWの世界からやって来た組織『ラメンター』と交戦中。
 F.I.S.の仮面ライダー、イクシードことケアン・ディークスを仲間に加え、シンフォギア装者達が次々と自身と適合したガイアメモリの力を引き出したギア―――ガイアイグナイトを獲得していく。
 道中、ラメンターのドーパント、デス・ドーパントによって蘇った天羽奏とセレナ・カデンツァヴナ・イヴも仲間に加えるも、ラメンターのリーダーである津神真一は、かつてはキャロルを護る騎士であったエルリン・ラインハルトと共に脱走した妹、津神叶を奪還するため、アルケウスメモリの能力でキャロル・マールス・ディーンハイムの意識を乗っ取るのだった……。

 ◇ ◇ ◇

【オリキャラ紹介】
 ・ケアン・ディークス……元F.I.S.所属の研究者であったケアン・ディークスを模したアンドロイド。『進化』の戦士、仮面ライダーイクシードに変身する。

 ・エルリン・ラインハルト……キャロルを護るオートスコアラー達終末の四騎士のリーダーだが、オートスコアラーではない。数百年のコールドスリープを施されていたが、津神真一に体を乗っ取られてしまっていた。現在は彼の妹である叶と共に脱走。

 ・津神真一……『ラメンター』のリーダー。既に肉体は失われており、アルケウスメモリに己の魂を移し、他者の体に乗り移って生き永らえている。

 ・黒芭燈迩……ラメンターのメンバー。元傭兵であり、ファイター・ドーパントに変身していた。アクセルとの戦いに敗北し消滅。

 ・シアン・ゴールディス……ラメンターのメンバーであり執事。デス・ドーパントの変身者であり、死者や怪人を蘇らせる能力を持つ。

 ・津神叶……津神真一の妹。既に故人だが、なぜか生きている。人形のように冷たく、感情を感じさせない。現在はエルリンと共に行動中。

 それでは本編、どうぞッ!



Sの目的/遭遇

 

 走る。

 奔る。

 駆ける。

 

 背後から聞こえる、憤怒と憎悪に塗れた叫び声に耳を塞ぎながら、固く閉じた両目から溢れる涙を噛み締める。

 

 怖かった。この前までは別け隔てなく接してくれたはずの人々が、まるで人が変わったように彼女(ボク)達を迫害し出したのが。

 いや、きっと、それに気付いていなかったのは彼女(ボク)だけで、炎に巻かれた父親や、今この体を抱えて走る青年は気付いていたのかもしれない。それほどまでに、かつての彼女(ボク)は、人を信じられる性格だったのだろう。

 でも、あの日常は終わった。唐突に、通り魔に刺されて死んでしまうぐらいには、唐突に。

 かつては笑顔で接してくれた人々は、もういない。今の彼女(ボク)にとって、彼らは既に『ヒト』ではなく、『ヒトの皮を被った怪物』にしか見えなかった。

 愛する父はもういない。咄嗟の判断で自分(かのじよ)を助けてくれた青年に抱えられ、ただ涙を流しながら逃げる。

 

 そうして彼が走り続けて、数秒程。

 体感的には、それぐらいの時間しか経っていない。しかし、青年の高い身体能力が為せる技か、背後から聞こえていたはずの叫び声は聞こえなくなっていた。

 

 

『■■■■……もう、大丈夫だ』

 

 

 頭上からかけられる、優しい声。

 この場が安全である事を教えてくれる彼の言葉に安堵を覚えて、瞼を持ち上げる。

 

 ……綺麗な三日月だ。

 森の中の拓けた場所で見上げたそれは、煌々と輝いて自分(ボク)らを見下ろしている。

 

 

『この先には、お前の父親の旧友がいる。彼なら、お前を護ってくれるはずだ』

 

 

 貴方はどうなるの?

 そう問いかける彼女(ボク)に、彼はなにも答えてくれない。それがどうしてなのかわからず、少しだけ深く聞こうとして……

 

 

『うふふっ、見つけましたわっ♪』

 

 

 ゾッとする程に冷たい、狂ったような声に体が竦んだ。

 

 

『……やっぱりお前か。まだここ(・ ・)にいたのか?』

『当然ですわ。(わたくし)、貴方に会う為にずっと行動していましたのよ? なのに貴方ったら、全然私に会いに来てくださらないから……』

 

 

 青年が睨みつけた暗闇から現れたそれの姿は、わからない(・ ・ ・ ・ ・)。姿も、服装も、なにもかもがわからない。それが、『それ』を実際に見た彼女と、ボクの違いなのかもしれない。それとも、元からそういうものなのだろうか。でも、今のボクでもわかるのは、当時の彼女もまた、ボクと同じように『それ』に強い恐怖心を覚えている事だった。

 

 

『あら、貴女……』

 

 

 その時、『それ』が僅かに身動ぎした。それが、彼女(ボク)に視線を向けてきたのは、嫌でも理解できてしまった。

 

 ……いや、違う。『それ』が見ているのは、彼女じゃない。

 

 

『随分と遠く(・ ・)から見ていらっしゃるのですね。ですが、それは駄目ですわ。だって、それは貴女みたいな出来損ない(・ ・ ・ ・ ・)がするものではありませんもの。ですから……』

 

 

 『それ』が再び身動ぎして、体が恐怖で固まる。

 

 嗚呼、そうか。『それ』が視ていたのは、彼女なんかじゃなくて……

 

 

『さっさと、私と■■■■の世界から出ていけッッ!!』

 

 

 遥か彼方にいるはずの、ボクだったんだ……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ラメンターのドーパント―――ファイタードーパントと、キャロルが従えるオートスコアラーの最後の二機―――レイア・ダラーヒムとファラ・スユーフの撃破というニュースは、この戦況を大きく揺さぶる事となった。これまでの戦闘によってガリィとミカが破壊されているため、これでキャロル陣営は事実上の壊滅状態。彼女と同盟を組んでいるラメンター陣営は、ファイタードーパントの変身者であった黒芭燈迩の死亡により、その一角が崩れた。まだシアン・ゴールディスが変身するデスドーパントと、恐らく今もどこかで生きているであろうラメンターのリーダーである津神真一が変身するアルケウスドーパントがいるが、とにかく、戦況はS.O.N.G.陣営に大きく傾く事となった。

 

 翼がファラ(津神)撃破と同時に救出したシンフォギア装者―――天羽奏も、数日休ませれば完全に回復し、今ではかつてのような快活な笑顔を浮かべて翼と一緒に行動できるようになっている。

 

 現在、S.O.N.G.の潜水艦は物資の搬入の為に港に泊められており、本日一杯は出港しない事から、装者達や克己達は休みを貰った。克己達大人組はなにか手伝える事は無いかと考えていたそうだが、弦十郎直々に「時にはお前達も休んで英気を養え」と言われてしまった以上、それぞれの一日限りの休暇を楽しむ他ないだろう。

 

 

「あら、美味しそうなアイスクリームね。貴女も食べる?」

「あ、はい。戴きます」

 

 

 そしてそれは、この二人も例外ではなかった。

 久しぶりに外へと繰り出したくなったフィーネは、夏の時期に打ってつけなシンプルながらも女性としての魅力を感じさせる服装に身を包んでいる。その傍らで歩くエルフナインも、今日はいつもの白衣は研究室に置き、子どもの体型にも似合うワンピースを着ていた。

 なにも知らなければ母娘のような外見を持つ二人は、チラリと見かけたアイスクリーム店で購入したアイスクリームを片手に、近くにあった公園のベンチに座って休憩していた。

 

 

「うぅ……頭がキンキンします……」

「ふふ、初めてだからって、あんなにがっつくからよ。それにしても、今日は暑いわね……」

 

 

 麦わら帽子の隙間から差し込む日差しや、公園の外で暑そうに襟元を緩めて歩く人々を眺め、フィーネは思わずため息を吐いた。

 しばらく潜水艦内で生活していたからか、いつにも増して暑いと感じる以上、熱中症にならぬよう注意しなければならないだろう。そんな事を考えながら隣を見やれば、なんとかアイスクリームの冷たさから脱出したエルフナインが、持参してきた水筒に入れていたお茶をごくごくと飲んでいた。そういえば、自分は麦わら帽子を被っているのに対し、彼女はなにも被っていないではないか、と今更ながらに気付いた。

 

 

「エルフナイン、それが飲み終わったら、帽子を買いましょうか。熱中症対策はしっかりしないと」

「わかりました」

 

 

 エルフナインが充分に水分補給し終えた後、フィーネはエルフナインの手を取って歩き出す。

 そうして二人が足を運んだ先は、この街でも最も巨大なショッピングモール。その外観に見合う多くの店が揃っており、その中にはもちろん女性用のブティックも存在する。

 

 

「はぁ~……涼しいです……」

「ふふっ、これぞ文明の利器ね」

 

 

 ショッピングモールに入るや否や、内部の温度を下げる為に作動しているクーラーのお陰で、先程までの酷暑などあっという間に忘れてしまう。それがあくまでこの中にいるだけのものだと思うと、些か憂鬱な気分になってしまうが。

 

 

「これなら、他にもなにか買っておいた方がいいかもしれないわね。弦十郎君達にもなにかしらお土産を買っていきましょ」

「そうですね。わかりました」

 

 

 だが、まずはエルフナインの帽子を買うべく、フィーネは彼女を連れて二階へと移動しようとする。

 二階へと続くエスカレーターに差し掛かろうとしたその時、エルフナインの動きが止まった。

 

 

「……? どうしたの?」

「あの……人は……」

 

 

 信じられないものを見ているかのような目で視線を固定させているエルフナインがなにを見ているかが気になり、フィーネがその方角へ視線を動かすと……

 

 

「……ッ!! あの、方は……ッ!」

 

 

 それは、一人の男だった。

 どこかライダースーツに似た服装に身を包んだ、蒼髪の青年。隣にいるゴスロリ調の服を着ている少女は見覚えが無いが、その青年は、フィーネが慕っているとある男の()と瓜二つだったのである。

 彼女達の視線に気付いたのか、その青年も二人を見て固まった。

 

 

「フィーネ……? それに……キャロル?」

「……■■■■様……?」

 

 

 予想だにしなかった出会いに、両者は目を見開くのだった。

 

 そんな彼らから離れた場所で―――

 

 

「……見つけました」

 

 

 髑髏の死神は、冷酷な笑みを浮かべた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「まさか、こうして貴方と一緒に歩くとは思わなかった」

「……あぁ」

 

 

 フィーネ達が青年達と出会う少し前、彼女達とは別の用でショッピングモールに訪れていた者達がいた。

 

 

「なにか欲しいものはあるか、ミーナ」

「いきなりショッピングモールに連れてきたと思ったら……そういう事だったんだね。意外だね、克己がそう言ってくれるなんて」

 

 

 男……克己が隣にいる女性、ミーナにそう言われ、自嘲気味に口元を歪めた。

 

 

「死神には似合わないか?」

「そういうわけじゃないわ。なんだか、克己達がこうして、少しでも平和な日常で暮らせているのが嬉しくて」

「……それは俺も常々思っていたところだ」

 

 

 本来ならば、克己達(NEVER)にこのような平穏な時間などあり得ないものだった。

 常に戦場に身を置き、血と硝煙の臭いを纏って敵の命を狩り続ける死神達。戦場から離れても、待っているのは訓練や次の任務の情報整理。それの繰り返しが、かつてのNEVERの日常だった。最後に克己が見た平穏な世界というのは、かつての生まれ故郷であり、自分達が混乱を齎す前の風都だった。

 

 それが今はどうだ。

 仲間達と共にラメンターの手によって蘇ったかと思えば、何の因果か仮面ライダーの存在しない異世界で目覚めた。デスドーパントの呪縛に囚われる事も無く、確固たる意思を持って行動し、ひょんな事からシンフォギア装者やS.O.N.G.と共に世界を救う戦いに身を投じている。

 現にこれまで二度世界を救い、こうしてまた、世界を救おうとしている。

 

 人生などというものはとうに終わり、自分達に在るのは過去と現在(いま)しかないが、それでも、運命とは不思議なものだと思わざるを得ない。

 

 

「……克己、この戦いが終わったら、貴方達はどうするの?」

 

 

 その時、ふと小さく訊ねられ、克己が眉を吊り上げる。

 

 

「どういう意味だ?」

「私達はきっと、この戦いが終わったら元の世界に帰る。正直に言うと、私はあっちの世界に未練なんてものはないけど、翔太郎やフィリップ達は違う。彼らにとって、風都は(まも)るべき場所だから」

 

 

 風都で克己達の真実を知ってほしかった翔太郎達には、既に真実を話した。克己達が完全な悪人でない事を知ってくれた以上、最早ミーナにとっての役割のようなものは終わったも同然だった。

 しかし、それはそれとして自分の生まれ育った世界には愛着がある。この戦いが終われば、自分もきっと元の世界に帰るだろう。

 では、克己達はどうするのだろうか。彼らもまた、自分と同じように帰るのだろうか。そう思って訊ねてみたミーナに対し、克己はスッと目を細めた。

 

 

「帰るつもりはないな」

「それは……」

「自分達が悪人として向こうに認知されているからじゃない。ただ、向こうに戻ってもあるのは再び傭兵として活動する現実だけだ。俺からすれば、それでも別にいいさ。元よりNEVER(おれたち)は戦う為に生まれたからな」

 

 

 ただ―――と、克己は懐から通信端末を取り出す。

 電源ボタンを短く押されてスリープ状態から復帰したロック画面には、自分を含めたNEVERのメンバー達の写真が映っている。

 

 

「俺が思っていた以上に、俺はあの場所が気に入ってるようだ。俺以外の連中も同様に……」

 

 

 それは、NEVERが全員揃っているところに通りがかった切歌が勝手に撮ったものだ。当初は盗撮されたと京水達が怒ったものの、写りやメンバーの配置が素晴らしく嚙み合っていたもので簡単に許してしまった。

 その後、許してもらえた事に気を良くした切歌は克己達にこの写真を送ってきたのだが、克己はその写真をロック画面に設定していた。

 

 それが、昔では絶対にあり得ない光景だったからか、今でも他の写真に変えていない。

 隣で克己が見つめる写真を覗き見たミーナは、一瞬呆けたように目を軽く見開き、そして小さく笑った。

 

 

「克己って、本当に仲間思いだよね」

「そうか?」

「そう。あまり態度には出ないけど」

「……そうか」

 

 

 再び端末をスリープ状態にし、懐にしまう。

 ふと近くにあった時計を見やれば、そろそろ時計の針が三時を指そうとしていた。

 

 

「小腹は空いてるか? なにか奢ってやる」

「それなら―――」

 

 

 丁度気になっているカフェがあったので、そこに連れていってもらおうとしたミーナだが、その言葉は下の階から聞こえてきた爆発音と悲鳴によって遮られた。

 

 瞬時に表情が引き締まった克己とミーナが吹き抜けから下の階を見下ろすと、そこには我先にと逃げ惑う人々の姿と、次にそれを追うように続々とやってくるアルカノイズの軍団があった。

 

 

「ミーナ、お前は避難しろ。ここは俺に」

「わかった。無理はしないで」

「あいつら相手に無理はないさ」

 

 

 ミーナと頷き合い、克己は吹き抜けから飛び降りる。

 取り出したロストドライバーを腰に装着し、着地。直後に受け身を取り、両足から全身に走る着地時の痛みを受け流すと同時にガイアメモリを取り出す。

 

 

エターナル!

「変身ッ!」

エターナル!

 

 

 全身に純白の鎧を装備した後、蒼い風と共に漆黒のマントを羽織ったエターナルが、近くにいた男性を襲おうとしていたアルカノイズを蹴り飛ばす。

 仮面ライダーの脚力で繰り出された一撃を受けたアルカノイズはそれだけでその身を炭素に変えて消滅させる。

 

 

「さっさと逃げろ」

「あ、あぁ……ありがとう!」

 

 

 茫然としていた男性を助け起こし、彼が逃げていくのを確認した後、手元に出現させたエターナルエッジを構えて走り出す。

 エターナルの存在に気付いたアルカノイズ達が次々に迫ってくるが、彼らなどエターナルにとっては敵ではない。巧みにナイフを振るい、徒手空拳でアルカノイズ達を蹴散らしていく。

 

 

「―――大道君ッ!」

 

 

 アルカノイズの体を形成していた炭をマントを靡かせて振り払ったエターナルに、遠くから誰かに声をかけられる。

 声が聞こえた方角に視線をやると、そこにはネフシュタンの鎧を身に纏ったフィーネが、エルフナインを庇いながらアルカノイズと交戦していた。

 

 

「フィーネッ! エルフナインもいるのか」

「えぇ、いきなり攻撃されてね。エルフナインは私に任せて。貴方は―――」

 

 

 鞭を駆使し周囲のアルカノイズを纏めて消滅させたフィーネは、そのまま別の方角へ右手で握っていた鞭を向かわせる。すると、なにかが切り裂かれるような音と「ぐっ」と苦痛に呻く声が聞こえてきた。

 

 

「今の鞭が行った方向へ行ってッ! デス・ドーパントがいるわッ!」

「……ッ! わかった」

 

 

 残るラメンターのドーパントの内の一体がここにいる事を教えられたエターナルは、先程フィーネが鞭を向かわせた廊下に出る。

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 そこでエターナルは、仮面の奥で目を見開いた。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 なんとそこには、幼い少女を両腕で抱えた男が、生身で複数のドーパントと交戦していたのだ。しかも劣勢というわけでは決してなく、寧ろ男性の方が押しているように思えるのだ。

 

 男性に襲い掛かっているドーパントは、全部で四体。

 伸ばした五指から白い冷気を放つ、アイスエイジ・ドーパント。その体躯に相応しい豪快な動きで攻撃を仕掛ける、ビースト・ドーパント。粘着性のある粘液で青年の動きを止めようとする、スイーツ・ドーパント。そして、彼らや青年の動きを少し離れた場所で見ながら、青年に攻撃を仕掛けるタイミングを狙う、デス・ドーパント。

 

 

「中々しぶとい……。ですが、いつまでそうしていられますかな?」

「……ッ!」

 

 

 背後から首を刎ねようと振るわれた鎌を間一髪で飛び退いて回避した男だったが、着地した隙を突かれてしまう。

 スイーツ・ドーパントの腕から放たれた粘液が彼の足元を固め、次いでアイスエイジ・ドーパントの冷気が粘液をより強固にする。

 

 

「く、動けない……ッ!」

「その方は我らの計画において最も重要な存在。大人しく返していただけると嬉しいのですが」

 

 

 身動きが取れなくなった青年にドーパント達が迫る。

 万事休すかと思われたその時、デス・ドーパントを飛び越えたエターナルが振り向きざまにエターナルエッジで斬り払った。

 

 

「な……ッ! 仮面ライダーッ!?」

「一対四とは卑怯じゃないか、デス・ドーパント」

「お前は……」

「よく持ちこたえたな。後は俺に任せろ。……ん?」

 

 

 周囲を囲むドーパント達への警戒を怠らずに青年に振り返ったエターナルだったが、彼が抱えている少女に気付いて仮面の奥の眉を顰めた。

 

 

「お前は……津神叶ッ!? なぜここに……」

「今は、気にしないで……白い死神……。来るよ……」

「―――ッ!」

 

 

 自分達を囲んでいたドーパント達が一斉に動き出した事に気付き、エターナルは即座に取り出したT2ガイアメモリをベルトのマキシマムスロットに挿し込んだ。

 

 

サイクロン・マキシマムドライブ!

「フンッ!」

 

 

 翡翠色の突風を纏わせた右足を勢いよく床に叩きつけた直後、エターナル達を覆う形で展開される風のドームが、ドーパント達を吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされたデス・ドーパントが立ち上がった直後、飛び込んできたエターナルに斬りつけられて火花を散らす。その間にも他のドーパント達が青年から少女を奪おうと迫るが、次の瞬間、彼らの動きが止まった。

 

 

「克己ッ!」

 

 

 頭上から聞こえる声。エターナルが顔を上げると、そこには上部から掌をドーパント達に向けているミーナの姿があった。

 

 

「ミーナッ! 避難しろと言ったはずだッ!」

「ごめんなさい。でも、どうしても貴方の助けになりたかったのッ!」

 

 

 ミーナが腕を振るえば、それに引っ張られるようにドーパント達の体が浮かび上がり、デス・ドーパントの方へと投げ飛ばされた。

 

 

「な……ッ!?」

 

 

 まさかドーパント達が自分目掛けて飛んでくるとは思わなかったのか、回避行動を取れなかったデス・ドーパントはそのまま自らが蘇らせた彼らによって弾き飛ばされた。

 さらには、彼らの下敷きとなってしまい身動きが取れにくくなってしまった。

 

 

「ええい、退きなさいッ! 何の為に貴方方を蘇らせたと思うのですッ!」

 

 

 自分に圧し掛かるビースト・ドーパントを押し退けようと藻掻くが、彼らもまた周りにいるドーパント達を押し退けようと必死で思うように退かせない。

 

 

ユニコーン・マキシマムドライブ!

(しまったッ!!)

 

 

 そこへ響く、マキシマムドライブの発動を意味するガイアウィスパー。

 

 

「―――オオオオオオオッ!!」

「く……ッ!」

 

 

 遠くから聞こえてくる雄叫びに圧されるように、デス・ドーパントは全身からエネルギーの炎を噴き上がらせてドーパント達を浮かび上がらせ、速やかに彼らから距離を取った。

 

 

「オラァ―――ッ!!」

 

 

 デス・ドーパントがドーパント達から離れた直後、青白いドリル状のエネルギーを纏ったエターナルの拳がスイーツ・ドーパントの鳩尾に叩き込まれ、そのまま下にいるアイスエイジ・ドーパントとビースト・ドーパントも巻き込んで床に叩きつけた。

 三体分の断末魔と共に爆発が起き、黒煙の奥からスナップをするエターナルが現れた。

 

 

「次はお前だ、デス・ドーパント」

「……はぁ、まさかこう作用(・ ・)するとは」

 

 

 目も当てられないとばかりに額に手を当てたデス・ドーパントは、エターナルから彼の背後にいる少女を見る。

 スイーツ・ドーパントの粘液とアイスエイジ・ドーパントの凍結が消えた事で自由になった青年に抱えられている少女は、感情を感じさせない瞳でデス・ドーパントを見ており、その奥にある意志は窺い知れない。

 

 

「敵に回すと厄介な能力ですね……ここは一旦退くとしましょう」

 

 

 殴りかかってくるエターナルに手元に灯した人魂を放つ。

 エターナルが人魂を斬り裂いた事で小さな爆発が起こるが、その隙にデス・ドーパントはテレポートジェムを砕く。黒煙を突き破ったエターナルが辿り着いた頃には、そこにはデス・ドーパントの姿はなくなっていた―――。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 チフォージュ・シャトー、玉座の間。

 テレポートジェムの光から現れたデス・ドーパント―――シアン・ゴールディスは自らのドーパント化を解除し、玉座に座るキャロル―――否、津神真一に跪いた。

 

 

「申し訳ございません、ご主人様。叶様の奪還に失敗しました」

「…………」

「……ご主人様?」

 

 

 (こうべ)を垂らすシアンが真一の様子を不審に思って声をかけると、真一はゆっくりと瞼を持ち上げた。

 

 

「……あぁ、シアンか。なにか、用か……」

「叶様の奪還に失敗しました。力及ばず、大変申し訳ございません」

「……叶? 叶とは……」

「ご主人様? 叶様は貴方様の妹君です、お忘れになられたのですか……ッ!?」

「叶……妹……ぐ、うゥ……ッ!」

「ご主人様ッ!」

 

 

 突然自らの頭を押さえ苦しみ始めた真一にシアンが駆け寄ろうとした直後、真一の目が大きく見開かれた。

 

 

「貴様―――シアン・ゴールディスッ! よくもオレの腕を斬り落としたなッ!」

「ッ、キャロル・マールス・ディーンハイムッ!」

「キャロル? 違うッ! オレはキャロ……いや、違う、オ、わた、シ? 誰ダ? おレはなんダ……息子は……ち()うッ! あの子は娘はどこだ違う俺のいもおとだッ!」

 

 

 ガクガクと全身を痙攣させる真一の体から、無数の人物が分かたれる。

 それは小さな少年であったり、壮年の男性であったり、そして、今彼が体を乗っ取っている少女のものであったり―――彼がこれまで乗っ取ってきた者達の幻影が、真一の体より離れようとしている。

 

 

「ご主人様ッ!」

「うるさい黙れ鬱陶しいッ! お前達など俺ではない―――俺の邪魔をするなッッッ!!!」

 

 

 無数に混ざり合った声の中、一際大きな男性の叫び声が上がった直後、真一から分かれようとしていた者達の幻影が引きずり込まれた。

 

 大きく息を吐いた真一が、汗まみれの額を拭って顔を上げる。

 

 

「……どうしたシアン、そんな酷い顔をするな……。俺は、俺だ。津神真一だ……」

「ご主人様……」

 

 

 先程の現象を、シアンは知っていた。

 アルケウスメモリによる多重心象の具現。これまで多くの肉体に憑依し、その魂を乗っ取ってきた津神真一は、それを経験する度に自我を喪失していく。先程は、一瞬気を抜いてしまったのだろう。その結果、これまで乗っ取ってきた魂が一気に反乱を起こしたのだ。

 たとえ過去に憑依し、今は離れたものであったとしても、その魂の写しは津神真一の魂に刻まれている。自らを捕えている男の元より逃れようとして起こったのが、先程の現象だ。

 

 もし反乱に屈すれば、瞬く間に自我が崩壊してもおかしくない―――そんな戦いを乗り越えた真一の瞳が、シアンを捉える。

 

 

「叶の奪還に……失敗したそうだな……。大丈夫だ。あの子の能力だとしたら、仕方ない事だ……」

「……はっ」

 

 

 感謝の意と共に頷き、シアンは片膝をつく。

 

 

「必ずだ……必ず取り戻す……。なぜ、わかってくれないんだ……叶……」

 

 

 玉座に背を預け、真一は逃げ出した妹の姿を脳裏に浮かべるのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「先程は助けてくれて、感謝する。俺の名前は、エルリン・ラインハルト。キャロル・マールス・ディーンハイムを護る騎士達の長。この子の名前は……」

「私は……津神叶。ラメンターのリーダー……津神真一の、妹……」

 

 

 ショッピングモールでの戦闘後、S.O.N.G.潜水艦にて。

 司令室に集まった者達の前で頭を下げたエルリンと、彼の傍に立つ叶を見て、切歌は調に耳打ちする。

 

 

「調、あの子、とっても綺麗デス。写真でも思ってましたが、まるでお人形さんみたいデス」

「そうだね。でも、今はそんな事を考えてる場合じゃないよ、切ちゃん」

 

 

 脇腹を小突かれてしゅんとする切歌を他所に、「では」と弦十郎がエルリンを見る。

 

 

「君はキャロル・マールス・ディーンハイムのいるチフォージュ・シャトーから逃げてきた……というわけか? そこの女の子の力を借りて」

「そうだ。こことは別の次元にあるあの城からは、特定の手段を用いなければ出入りできない。この子の力が無ければ、あんなに簡単にこっちの次元に出られなかった」

「津神叶の能力、か」

 

 

 エルリンに頭を撫でられた叶に、フィリップが目を細める。

 

 

「僕らの世界で本棚を使っても、君の能力を閲覧する事は叶わなかった。僕らに助けを求めたのなら、是非その能力について教えてほしい」

「……いいよ。だけど、その前に……私達の願いを聞いて……」

 

 

 フィリップが弦十郎を見ると、彼は「もちろんだ」と答えた。

 それに頷いたエルリンが、弦十郎達に頭を下げる。

 

 

「貴方方に頼みがある。どうか、キャロルの……いや、津神真一の野望の阻止してほしい。奴はこの世界と、死者の世界を融合させようとしているんだ」

 

 

 エルリンから告げられた津神真一の目的に、弦十郎達は目を見開くのだった。

 




 
 次回更新がいつになるか、正直わかりません。また一年以上開いてしまうかもしれませんし、短い期間で更新できるかもしれません。それでも期待をかけて下さるのなら、私は必ず更新してみせますッ!
 自分も、まだこの物語で書きたい話がありますからねッ!

 それではまた次回、お会いしましょうッ!
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