死神に鎮魂歌を   作:seven74

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禁句にして聖句

「へぇ、あんた、この鎧の出自を知ってんだ?」

「二年前…………私の不始末で奪われたものを忘れるか。なにより、私の不手際で奪われた命を忘れるものかッ!」

 

 

 ネフシュタンの鎧。それは二年前のツヴァイウィングのライブと並行して秘密裏に行われていた起動実験の中心だった、現在二課のアビスに保管されているデュランダルと同じ完全聖遺物。突如として出現したノイズによる惨劇の折に行方不明となっていたはずだが、それが今や、自分の前にある。

 

 

(まさかこうして、ガングニールとネフシュタンの鎧が私の前に揃うとは…………)

 

 

 ネフシュタンの鎧を纏う少女に向けたアームギアを握る力を自然と強める。目の前の少女は自然体であるにも関わらず、その身から迸る威圧感が、彼女が只者ではない事を証明している。

 

 

(だが、その次に気になるのは…………)

 

 

 少女への警戒を緩める事無く、視線を背後にいる二人組の男性へ向ける。

 

 所々に違いこそあるが、彼らが着ているのは間違いなく克己達と同じ服装。という事は、彼らも克己の部下なのだろうか。ではなぜ、彼らはあの少女に付き従い、彼らにとってのリーダーであるはずの克己がいるこちらに敵意を向けているのだろうか。

 

 

「賢、剛三。どうしてお前達がそこにいる」

「こっちにも事情ってもんがあるんだよ。すまねぇな、克己」

「そういうわけだ。だが、我々の目的は殺し合いではなく、そこの少女と、リーダー達の持っているガイアメモリだ」

 

 

 オールバックの男――――――芦原賢の視線が響へと向けられる。

 

 

「響ちゃんとガイアメモリを? いったいどういう事よ」

「そいつの存在が気になるってんで、うちの依頼主が依頼してきたのさ。メモリについても同じだ。お前達の様子を見るに、そっちにも依頼主がいるようだな。だが、依頼主が違えども、慣れ親しんだ連中だ。こっちもあんま騒ぎは起こしたくないしな」

「大人しくその少女とメモリをこちらに渡してくれ。殺し合いはしたくない」

「『断る』と言ったら?」

「…………気は引けるが、実力行使だ」

「話は終わったか? だったら始めるぞ」

 

 

 両手に握った刃の鞭を地面に叩き付け、翼達もそれぞれの得物を構える。

 

 まさに一触即発。どちらかが動き出せば即戦闘が開始すると言っても過言ではない空気が周囲に満ちる中、一人だけその空気に疑問を抱いていた者が彼らの間に割って入ってきた。

 

 

「み、皆さん待ってくださいッ! 相手は人ですよッ!? 話し合いをすればきっと――――――」

「「戦場でなにを馬鹿な事をッ!」」

「ハモったな」

「ハモったわね」

 

 

 見事にネフシュタンの鎧の少女と翼の声が重なり、両者に板挟みにされた響の体を強張らせた。

 

 

「はははッ! 随分と甘い考えだな、今回のターゲットはッ!」

「難易度はイージー…………いや、リーダー達がいるからハードか? だがネフシュタンの鎧も視野に入れるとなると、ノーマルか」

「黙れよお前らッ! さっさと始めるぞッ!」

「やれやれ、せっかちなお嬢さんだ事。ま、言われずともそのつもりだったけどなッ!」

 

 

 ロッドを持った男――――――堂本剛三が懐から『M』の文字が描かれたメモリを取り出し、賢は『T』の文字が描かれたメモリを取り出す。

 

 

『メタル!』

『トリガー!』

 

 

 投げ飛ばされたT2メタルメモリが剛三の背中から、そしてT2トリガーメモリが賢の右の掌から体内に侵入し、彼らの姿を異形のものへと変えていく。

 

 剛三は銀色の体色を持った金属質な体の怪人――――――『メタルドーパント』に変身し、賢は頭部にスコープ状の単眼を持ち、右腕はライフル状に変化した専用武器トリガーマグナムと一体化した青い怪人――――――『トリガードーパント』へ変身した。

 

 

「よぉっし、いくぜぇッ!!」

「ゲームスタート」

 

 

 トリガードーパントがトリガーマグナムから青い光弾を発射するのを合図に、戦闘が始まる。

 

 

「切り刻まれちまいなッ!!」

 

 

 不規則な動きで迫ってくる鞭を紙一重で躱した翼の刀が少女の首へと振るわれるが、少女も攻撃を躱して翼を軽く蹴り飛ばす。一発蹴られただけなのに全身に響くような鈍痛に、開いた口から唾が吐き出される。

 

 

(これが…………完全聖遺物のポテンシャルなのか…………ッ!?)

「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよな。あたしのてっぺんは、まだまだこんなもんじゃねぇぞ?」

 

 

 立ち上がった翼に続けて二本の鞭が襲い掛かるも、それをルナドーパントが両手で弾いた。

 

 

「改めて見ると、貴女いい顔してるじゃない。もっと近くで見せて頂戴ッ!」

 

 

 伸縮自在な両手で拘束しようとするルナドーパントだったが、それを転がって回避した少女が振るった鞭が逆にルナドーパントを拘束した。

 

 体をギチギチと縛り付ける刃の鞭の痛みに、ルナドーパントは翼に忠告すべく声をかける。

 

 

「つ、翼ちゃんッ! こいつ、強いわッ! 特に、縛りがね…………ッ! 嫌いじゃないわぁ…………ッ!!」

「気持ち悪ぃんだよ、オカマ野郎ッ!」

「いってきまあああああああすッ!!」

 

 

 ジャイアントスイングの要領で振り回されたルナドーパントが遠くの茂みへ消えていく。その様子に「あいつ、相変わらずだなぁ…………」と呆れ笑いを浮かべたメタルドーパントは、改めて自分と対峙するヒートドーパントに槌状に変化したメタルシャフトを突き付ける。

 

 

「レイカも大分丸くなったな。子どもを護る為に戦おうとするなんてよ」

「あの子には恩があるのよ。知ってる? 死にかけの体に与えられる食事の快楽。あれはまさしく、天国に行きそうになるような程の快楽よ」

「はっ、知らねぇよッ!」

 

 

 振り下ろされたメタルシャフトを躱したヒートドーパントの連続蹴りがメタルドーパントの胴体に叩き込まれていき、メタルドーパントが数歩後ずさるが、蹴られた箇所を軽く叩いて歩み出す。

 

 

「温ぃなッ! もっと熱くならねぇと、俺は倒せねぇぞッ!」

「相変わらず頑丈な体ね…………。いいわ、その体溶かしてあげるッ!」

 

 

 紅蓮の炎を纏ったヒートドーパントの右足と横薙ぎに振るわれたメタルシャフトが激突し、周囲に衝撃波と火の粉を飛び散らせる。そして、そこから少し離れた場所では後退しながら光弾を放つトリガードーパントを、エターナルローブで光弾を防ぎながらエターナルが追っていた。

 

 

「その程度で俺を倒せると思ってるのか? 俺の部下にしては随分と甘い考えだなッ!」

「相変わらずのチート性能…………。少しは相手の事も考えてくれないか?」

「部下でも今は敵だ。俺がそこまで甘い奴だとでも思ってるのか?」

「いや、それでこそ俺達のリーダーだ。だから…………」

 

 

 エターナルがエターナルエッジで斬りつけようとしたその時、一瞬だけがら空きになった胴体にトリガードーパントの光弾が撃ち込まれた。

 

 

「こちらも、本気でいこう」

 

 

 一瞬だけ見えた死角を突いて攻撃する辺り、流石元SWAT隊員というべきか。火花を散らして後ずさるエターナルに次々と光弾を撃ちながら距離を取っていくトリガードーパント。

 

 

「どんなに固い敵でも、どこかに弱点はある」

「ははは、それでこそ賢だ…………ッ!」

 

 

 着弾した位置を擦り、エターナルエッジを構え直したエターナルは、再びトリガードーパントが放った光弾を切り裂きながら走り出した。

 

 そして、そんな彼らの戦いに、響は拳を握り締めていた。

 

 

(なんで…………、みんな戦ってるの…………? 同じ人間同士なのに、こんな、殺し合いを…………)

 

 

 誰もが本気で相手を殺そうと攻防を繰り広げる中、響だけはひたすらに、彼らの戦いに不満を抱く。

 

 戦場に自分のような気持ちを持つ者はいらない。それは合っているのだろう。

 

 だがそれでも、認められないものは認められなかった。

 

 

「あんたはこいつらの相手でもしてなッ!」

 

 

 その時、鞭を巻き付けた翼を投げ飛ばした少女が一人だけ戦いに参加できていない響を視界に収めが、取り出した不思議な形状をした杖から光が放つ。すると、その光から響を囲むような形でノイズが現れた。

 

 

「え…………ノイズが、操られてる…………? どうしてッ!?」

「それがこの『ソロモンの杖』の力なんだよ。雑魚は雑魚らしく、ノイズとでも戯れてなッ! おっとッ!」

「戦いの最中に余所見とは、よっぽど自信があるようだなッ!」

「当然だろ。このあたしがテメェなんかに負けるかッ!」

 

 

 少女が斬りかかってきた翼の相手を再開し、響は自分を囲むノイズと戦闘を開始しようとした瞬間、茂みから飛び出してきたルナドーパントが響の背後に立つ。

 

 

「なんかピンチみたいだったから、加勢してあげるわッ!」

「助かりますッ!」

 

 

 そして二人は自分達を囲むノイズの集団に攻撃を仕掛けた。

 

 素人ながらもノイズとの戦いに少しは慣れてきている為、少しだけであれば単独で戦わせても問題は然程感じさせるものになっており、その成長に嬉しそうに鼻を鳴らしたルナドーパントだが、二人が自分達を囲むノイズ達を倒した直後、

 

 

「ご苦労さん。ほらほら、まだ後がつかえてるぞ」

 

 

 少女が再びソロモンの杖からノイズを出現させてきた。今度はダチョウのような姿をしたノイズだ。

 

 

「ちょっとッ! 頼んでもないのにおかわりなんて酷いじゃない…………って、あぁッ!」

「嘘ッ!?」

 

 

 驚いている間にダチョウ型ノイズが嘴から噴射した粘性の液体が二人をその場に拘束し、二人は身動きを取ろうにも液体の粘着性が強く、全く動けない。

 

 

「う、動けない…………ッ!」

「ワタシ達をどうするつもりッ!? いやらしい事するつもりでしょッ!? エロ同人みたいにッ! エロ同人みたいにッ!!」

「やかましいんだよテメェはッ! …………ッ!?」

 

 

 拘束されながらも体をくねくねさせて叫ぶルナドーパントに少女が叫び返した途端、逆立ちした状態で横回転しながら迫った翼の剣が少女の鎧を斬りつけ、微かに火花を散らせた。

 

 

「二人にかまけて、私を忘れたかッ!」

「このッ!? お高く留まるなッ!」

 

 

 地面についている翼の手を切り刻もうとした鞭を腕のバネだけで飛び上がって躱すも、それを狙っていた少女のもう一本の鞭が翼の右足に絡まり、地面に叩き付けた。

 

 

「ぐううううッ!」

「のぼせ上がるな人気者。誰も彼もが構ってくれると思ってんじゃねぇッ!」

 

 

 倒れ伏した翼の頭を踏みつける少女。

 

 圧倒的な実力差。この少女は、生身でもネフシュタンの力に振り回されない程の強靭な戦闘能力があるだろう。だがそれでも、翼は戦いを諦める事は選ばない。

 

 

「鎧も仲間も、あんたにゃ過ぎてんじゃないのか?」

「だとしても、諦め切れるかッ!」

 

 

 少女から離れるや否や、上空から大量の剣を急降下させて反撃する。

 

 

「無駄な足掻きをッ!」

 

 

 飛び退いて上空から降り注ぐ剣の雨を躱した少女は、鞭の先にエネルギーを集中させる。

 

 

「喰らいやがれッ!!」

 

 

 翼が着地した瞬間を狙って繰り出された、鞭を振るって超高出力のエネルギー弾を投擲する技――――――『NIRVANA GEDON』が翼に迫る。

 

 

「翼ッ!」

「…………ッ!? 大道ッ!?」

 

 

 だが、トリガードーパントを蹴り飛ばしたエターナルがエネルギー弾の前に立ちはだかり、エターナルローブで防御する。しかし、巨大なエネルギー弾はエターナルローブの防御すら突破しそうな程の威力を誇っており、その恐るべき威力にエターナルは目を見開く。

 

 

「翼ッ! 行けッ!」

「あぁッ!」

 

 

 エターナルの肩を踏み台にジャンプすると同時にエネルギー弾が爆発し、マント越しに襲ってきた衝撃波がエターナルを吹き飛ばした。

 

 

「はああああああッ!!」

「がは…………ッ!」

 

 

 上空から大型化したアームドギアからの一撃、蒼ノ一閃が直撃した少女が大きく吹き飛ばされる。

 

 

「クソ…………ッ! やりやがったなッ!」

「まだだッ!」

 

 

 バックステップで翼の斬撃を躱し、鞭で攻撃を仕掛ける少女。それを掻い潜り、再び肉薄する翼。何度も振るわれる刀を躱し、時に反撃を繰り出していく少女だったが、遂に翼の一撃が鎧に直撃し、背後の木に叩き付けられた。

 

 

「終わりだッ! …………ッ!?」

「そいつはこっちのセリフだッ!」

 

 

 翼が少女にトドメを刺そうと上段斬りの構えを取った瞬間、少女は左手に握っていた鞭の先端に先程翼に撃ったエネルギー弾を生成し、それを叩き付けるように翼に喰らわせた。

 

 

「ぐああああああッ!!」

 

 

 零距離からの超威力のエネルギー弾を受けて吹き飛ばされた翼に少女が近付く。

 

 

「ふん、まるで出来損ない。欠片の聖遺物が完全聖遺物に敵うものか」

「…………確かに、私は出来損ないだ」

「あん?」

「この身を一振りの剣として鍛え上げてきたはずなのに、あの日、私は無様にも生き残ってしまった…………」

 

 

 二年前の惨劇が思い起こされる。護るべき者達を護れず、自分を変えてくれた光さえも喪った。あの日程、自分を恥に思った日は無い。あの日、自分にもっと力があればと、何度悔いた事か。

 

 

「だが、それも今日までの事。奪われたネフシュタンの鎧を取り戻す事で、この汚名を雪がせてもらうッ!」

「そうかい。脱がせるものなら脱がして…………ッ!? なッ、動けない…………ッ!?」

 

 

 立ち上がった翼に鞭を叩き付けようと動かそうとした手が動かず、自身の身に起きた異変に気付いた少女は、自分の影に一本の小刀が刺さっているのが見えた。

 

 相手の影に小刀を刺す事で、その動きを封じる技――――――『影縫い』である。

 

 

「月が出ている内に、決着をつけましょう…………」

 

 

 目の前に立つ翼の覚悟を決めた顔を見て、少女の脳裏に一つの単語が浮かび上がる。

 

 

「…………まさか、歌うのかッ!? 『絶唱』をッ!?」

 

 

 絶唱。装者が持つ攻撃手段の中でも、最大にして最強の威力を誇る技。一度それを歌えば、並の敵など全てが塵と化すその攻撃はしかし、その絶大な威力の代償として装者に想像を絶する反動を与える。反動で受けるダメージは装者の適合係数によって変わるとされているが、それでも絶唱を歌った当人にとっては大ダメージである事に変わりはない。

 

 

「立花響ッ!」

 

 

 拘束され、身動きが取れない状態の響に叫ぶ。

 

 

「防人の生き様…………覚悟を見せてあげるッ! 貴女の胸に焼きつけなさいッ!」

「翼さん…………」

「やらせるかよ…………好きに…………勝手に…………ッ!」

 

 

 影縫いの拘束を解こうと足掻く少女を前に、翼は禁断の聖句を口にし始める。

 

 

「――――――Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl」

「やめろ…………やめろんだ、翼ッ!!」

 

 

 ゆっくりと少女に近付いていく翼に、エターナルが駆け寄る。だが途中でその足は止まり、まさかと思って影を見ると、そこには少女と同じように、自分の影にも小刀が刺さっていた。さらに周りを見てみれば、自分以外の面々も影縫いを使われており、身動きが取れなくなっていた。恐らく、千ノ落涙と同じ要領で上空から人数分の剣を降らせて拘束したのだろう。

 

 

(是が非でも邪魔させないつもりか…………ッ! そこまでしてでも、お前は歌うのか…………ッ!?)

 

 

 止める事なく歩を進めていく翼の背に、何度も絶唱をやめるよう叫ぶ。だが、彼女はそれに対し頷かない。

 

 

(大道。お前は私に、私にとっての『歌』とはなんなのかを思い出させてくれた)

 

 

 ――――――目の前の少女との距離が、気が遠くなるような距離に感じられる。

 

 

(嬉しかった。『歌を歌う』って事が、とても楽しかった事を思い出せて)

 

 

 ――――――父親に褒められた。今の自分が訊けば耳を塞ぎたくなるようなものだったのに、あの時の彼は笑っていて、あの頃の自分も笑っていた。

 

 

(私は悪者だな。折角教えてもらったのに、それを無駄にしようとしている…………)

 

 

 ――――――でも、許してくれ。私はどうしても、護りたいんだ。

 

 

(お父様が愛し、私が愛した『歌』で、みんなを護りたいんだ)

 

 

 遂に、少女の元へ辿り着いた。

 

 凄まじい恐怖だろう。自分が撃ったエネルギー弾の何倍も強力な攻撃を繰り出そうとしている者が、自分の目と鼻の先にいるのだから。

 

 

(さようならだ、大道。私に、歌の楽しさを思い出させてくれて、ありがとう)

 

 

 条件は整った。

 

 聖句(きんく)の詠唱は完了した。

 

 

 

 ――――――瞬間、全てが吹き飛ぶ。

 

 

 

 翼を中心に発生した衝撃波が、周りにいた総てを呑み込む。敵も味方も関係なく、なにもかもを吹き飛ばした衝撃波が止むと、その中心地には巨大なクレーターが出来ていた。

 

 

「つ、翼…………」

 

 

 NEVERの体に感謝すべきか。どれ程の攻撃を受けても耐え抜ける耐久力を備えた肉体を起こしてクレーターに向かう。

 

 

「翼…………ッ! 翼ッ!!」

 

 

 クレーターの中心で倒れていた翼を助け起こし、彼女の体を見て愕然とする。

 

 

「…………ッ!! これが、これが絶唱なのか…………ッ!? こうなる事を知っていながら、お前は歌ったのか…………ッ!?」

 

 

 その時、少し離れた所からドアの開閉音が聞こえ、弦十郎と了子が駆け寄ってくる。

 

 

「無事かッ! 翼ッ!」

 

 

 克己に抱えられた翼に声をかける弦十郎。その声に目が覚めた翼は、大量の血を吐き出しながら口を開く。

 

 

「…………私とて、人類守護の務めを果たす防人…………。こんなところで、折れる剣じゃありません…………」

 

 

 その言葉を最後に、翼の全身から力が抜ける。

 

 

「おい…………、おい、翼…………? 翼ッ!!」

「了子君ッ!!」

「わかってるわよッ!!」

 

 

 了子が救急車の手配を急ぐ中、克己は気を失っている翼に何度も声をかけ続けた。

 




弦十郎「風鳴弦十郎と」
了子「櫻井了子の」
弦&了「「「聖遺物解説コーナー!」」」
弦「シリアスな雰囲気のところ悪いが、ここからは聖遺物の紹介だ。今回紹介する聖遺物はこいつだ!」


《ネフシュタン》


弦「アニメやこの小説本編でも、この聖遺物は『ネフシュタンの鎧』といて扱われているが、このコーナーではその元ネタである『ネフシュタン』について解説させてもらう」
了「ネフシュタンとは、『ヘブライ語聖書』、『旧約聖書』の『民数記』21章4-9に登場する銅像、『青銅の蛇』の英語読みよ。『民数記』では、エジプトを離れたイスラエル人の一行が葦の海の途中までやってきた時に、苦しみに耐えかねてリーダーのモーセに不平を言った結果、神は彼らに罰として毒蛇を与えた。次々と不平を言った人々が死んでいく中、生き残った人々はモーセに謝罪した。その後、モーセは神の言葉に従って青銅で作った蛇を旗ざおの先に掲げた事で、生き残った人々は毒蛇に噛まれても死ななかった、というものよ。一見、ただモーセが自分に逆らった連中を殺しているように見えるけど、これは『贅沢に甘えてはならない』と言ってるんだろうね。贅沢はいいものだけど、苦しみが無くては、それは『贅沢』とは呼べないわ。十の苦しみの中に一の幸せがある。それだけでも、とてもいい事なのよ」
弦「次に聖遺物を紹介するのは大分先になりそうだな。主の『前書きと後書きどうしよう』って悲鳴が聞こえてくるな。それじゃあみんな、次回もよろしくッ!」
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