Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
"私"は、誰?
「"○△●□◆"ァッ!!!」
"私"は、何?
「"○△●□◆"さんっ!!!!」
「しっかりしろよオイ!!!"○△●□◆"!!!!」
"私"は、どこ?
「"○△●□◆"!!!!お前が帰ってくる場所はここなんだ!!!!ソレ以外のどこでもない!!!!」
一人ではない。大勢の剣幕が"私"の脳内を駆け巡ってゆく。誰だ。…誰だ。………誰なんだ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「"○△●□◆"!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
※
私の頭で最初に思考したモノは、何故か私の名前だった。しかし何故だか、ソレが出てくる事は無かった。
「……………さん?次のポーズお願いします」
「あっ…はい、すいません。んっ………」
カメラマンに言葉を掛けられ、ハッと我に返る。そして私に声をかけたカメラマンである彼の、欲するイメージのポージングを取る。
「ふむ…これは中々…さすがだな……」
次々とカメラマンの音はシャッターを切っていく。もう10枚以上は撮っているかもしれない。静かなスタジオの中にシャッターの音が木霊していく。
(何か……夢でも見てたのかな……)
「……はーーい、OKでーす。お疲れ様でした"フェレーナ"さん。またお願いしますぅ」
「はいよろしくお願いします。では、お疲れ様でした~」
「「「「お疲れ様でした」」」」
撮影用の衣装の上にコートを羽織り、スタジオのブ厚い防音扉をゆっくりと押し開けてゆく。今はもう冬の真っ只中。こうでもしていなければ凍え死んでしまう。いや…大袈裟だったかな。
「はぁ………なんだったんだろさっきの……」
私の名前は"フェレーナ・ネクォール"。オラクル船団に数あるファッション雑誌の1つ、"M@star"という学生に人気な雑誌のモデルの仕事で生活している。
「お疲れ様でしたフェレーナさん。今回も上々でしたね」
隣を歩くマネージャーに愛想笑いと相槌を打ってゆく。今回の仕事の結果。次の仕事内容、会食の予定等を家路につく前までに隣で丁寧に喋る。途中から昔の自慢話や愚痴等を喋る様になり、そこからは全く聞いていない。それを私は愛想よく頷き、相槌を打つ。嫌われない様に。
「………それでは……明日はお休みですから、ごゆっくりお休みください」
「あっ、はい。ありがとうございます。マネージャーさんもお休みさない」
そう言って送り出され、私は事務所の外に出た。外はもう真っ暗だ。こういうのを地球では「日が落ちるのが早い」と言うのだったろうか。携帯の時計を見ると、まだ17時であった。
「はぁーーっ………今日も頑張ったね私。早く帰って、ご飯食べて、お風呂入って、ゲームして、寝ないとなぁ~……あ、今日更新のイベントクエストなんだっけ………」
車の行き交う大きな車道の横の歩道を私は進んだ。上を見ればそびえ立つビルの数々が夜の街を明るく照らしていた。この私の横を行き交う車達でさえ例外ではない。そして私の今歩いている歩道も、会社帰りのサラリーマン、学校帰りの学生達で溢れ返っていた。
こうなったのも地球の影響が大きい。今ではこんな賑やかであるが、前まではこの時間になるととても閑静な街だった、のだがある日地球もといトウキョウを見た7番艦ギョーフの当時の艦長は「これだ」と言わんばかりに真似をし始めた…らしい。
幸いにもトウキョウにあるようなビルは揃っていて、再開発する必要もなく。わずか一週間程でそっくりピカピカな街になった。
ちなみにコレで名を上げた艦長であったが、その後マスコミによって不倫が暴露され今では隠居生活を送っているらしい。
(もうすぐ着く………やっと落ち着ける……)
そんな事を思いながら私は自らの住むマンションの前に到達した。駅徒歩5分という立地の良さからここを選んだのだけれど、何故か人がガラガラなのである。
ちゃんとした理由等はちゃんとあるのだが、今は伏せておくことにする。
「ごっはん~♪おっふろ~♪ゲーム~♪」
鼻歌を歌いながら、私はエレベーターに向かった。
※
「もーーーぅ………何でエレベーター壊れちゃってるのよぉ………」
鼻歌を歌って調子こいていたのも束の間、いざボタンを押してみるとこう流れた。
『大変申し訳ありませんが、このエレベーターは故障中です。横の階段からお上がり下さい』
……と。このマンションにはエレベーターが3機あるのだが、どうやら全て壊れてしまったようだった。
「あぁもうっ……私が何したってのよ………」
なので今こうやって、階段で上に登っている。………7階まで……。今日の仕事は徒歩での移動が多かったので、脚に疲労が溜まって今にもつりそうだった。
そうこうしている間にやっと6階まで登ってこれた。もう限界だ。早くもう1階上がってベッドに飛び込みたい。そう思っている時だった。
「………ん?」
下を向いて上がっていたのだが、影で踊り場に誰かいるのが分かった。疲れながらも、『挨拶をしなければ失礼だ』と思い私は上を向いて「こんばんは~」と愛想良く挨拶した。
「……………………。」
「あ、あの~……?」
"彼"は私の方をジッと見つめたまま動かない。彼の印象はこうだった。黒い服を着ていて、男にしては少し長い茶髪で、片目が髪から覗いていた。顔立ちも整っていて、俗に言うイケメンというヤツであった。
しかしいくらイケメンと言えどジッと私を見つめたまま動かないのは怪しいし、何より怖い。もしかしたら不審者かも、と思い少し後ろずさりすると。
「…いや、すまない。今日からここに住む事になったんで、慣れなくて。そしたら下からアンタがいきなり挨拶してくるから、何て返せばいいか分からなくなったんだ。」
「あっ…そうですか…アハハッ…」
そう言い残すと彼は上に登っていった。さっきの発言から察するに、どうやら彼はこのマンションの新しい住人の様だった。
(でも珍しいなぁ…ここに新しい人なんて)
私は新しい住人を心の中で歓迎しつつ、晴れてようやく自室のベッドに飛び込む事が出来たのであった。
※
「ちょっとレーナ…いくらなんでも、外から帰ってきたそのままの格好で寝るなんて無しよ?」
「うぅ~…分かってるわよ、そのくらい……」
いきなり玄関のドアが思い切り開かれ、私の自室に『ドォォォォン』という轟音が響いたので、シェアハウスのルームメイト、"ノア・ダンフォード"が駆けつけてきた。
「よっと…何?今日はそんなに大変だったの?」
ノアは私のベッドの端に腰掛ける。余程私が疲れて見えるのだろう。普段あまりかけてくれない心配の声をかけてくれた。
「うん………だって見て?このスケジュール………」
私はノアにスケジュールのデータをメールでノアに送信した。ノアの腕についているアクセサリーが通知音を鳴らし、青くて小さな淡い光を発する。
「ん~?何々………ってアンタ、これ無理し過ぎなんじゃあない?いくら若くて人気のあるモデルだからって、アンタのマネージャーも酷い人ね。休みなんて2ヶ月ぶりじゃない。しかも明日だけ。」
「ホーント。お仕事は確かに楽しいけど、もっと休み欲しいなぁ」
私は数ある友人関係の中で唯一、ノアにだけは心を許している。何故だかは知らないが、彼女といるととても安心出来るし、何より何より心地がよい。あと彼女は何故か私の事を"レーナ"と呼ぶ。おおよそ、面倒くさいだけなのだろうが。
「ま、無理だけはしないこと。アンタに何かあったら、寂しいんだからね。こんな馬鹿デカイ部屋」
「ふふっ……時々ノアって、お母さんみたいな事言うよね」
「は~~~~???何言ってんの???ほら、さっさと着替えて来なさいよ。もうご飯できてるから」
はーーい、と私は彼女に返した。とりあえず着替えなければと思い、コートをハンガーにかけた。
「お母さん、かぁ」
母は私を産んだその日に死んでしまった…と、聞いている。実際に会ったこともないし、声も、名前すらもわからない。そもそも母に関するデータ全てが、何者かのによって抹消されているのだ。理由なんてわからない。ただ、1つだけ確信している事がある。
"母は何者かに殺された" 、ということだ。何の陰謀があってかは知らない。知ろうとしても、もうデータは無いのだから。ただ、産んでくれてありがとう、だの親孝行はしてみたかったと思う。
ちなみに父親は母親が死んだ直後に姿を眩ましているらしい。自分の妻が死んだというのに、何て薄情な男なのだろうとつくづく思う。娘である私に何の知らせもないという事はまだ生きてはいるようだった。まぁ、だからと言って今さら会いたいとも思わない。一説ではその父親が母を殺したという話もあるくらいだ。
「髪を結んで……これでよし。さ、ご飯ご飯!!!」
両親の事を思いつつ、私はノアが作ってくれた特製ハンバーグを堪能した。
とても美味しかった、という小学科並の感想をここに述べておく事にする。
※
「っん~~~!! 久しぶりの休みよ!!!さぁ~~てそれじゃ……………」
朝の支度を済ませ、私が向かったその先は……
「やっぱ休日と言えばゲームでしょ! うん! それ以外考えらんない!!!」
自室のテレビの前であった。昨日はお風呂に入ったあとそのまま寝てしまい出来なかったが、今日こそはゲーム三昧だ、と起きた時から私の心の中にゲーマー魂が火を吹いていた。
「スイッチ、オン…………」
………そして、電源がついてそのままゲーム開始……なのだが……
【Emergency Call】
スピーカーからけたたましいアラート音を響かせながら、赤い文字がテレビの画面中を占領する。
「……なぁぁぁぁあんでよぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」
「レーナ!!!今の見た!?」
どうやらノアも、携帯端末か何かで今の表示を見たらしい。
「えぇ見たし聞いたわよ!!!!私の休日を破壊する音がねぇ!!!!」
そして私とノアの携帯端末からも、今までに数回しか聞いた事のないような音を鳴らし始めた。
この音は、確か………
『速報です!アークス船団7番艦に、大量のダーカーが……キャァァァァァアアアァァッッ!!!!』
ブシャァァァァァァァアァァァアアァァァァアア!!!!!!
テレビの奥で、中継をしていた若い女性ニュースが首をかっ斬られ殺された。カメラには大量の返り血がベッタリと付き『これは訓練ではない』と、事実上全市民に通達された様なものになった。
「うわぁぁぁぁぁあぁああぁあ!!!!!死にたくない!!!死にたくないぃぃぃぃい!!!!!」
「いやぁぁあぁぁぁああぁぁ!!!!誰か!!!誰かたすk」ブシャァァァァァァァアァァァアアァァァァアアァァアッ
ノアのブレスレットからは、『Code:D』と書かれた赤い文字が浮き出ていた。
「ノア」
「何??」
「"行くよ"」
「………了解。ほら、アンタの武器と防具一式」
「ありがとう」
このマンションは人がガラガラ、という話は昨日したろうか。あの時は、まだ理由までは話していなかった。そう、理由は他でもない。
「…シンクロシステム問題無し。ステルス化開始。装着、完了」
そう、このマンションは…
「フェレーナ・ネクォール。ダーカーを殲滅します。」
一般人は立入禁止の、
いわば"アークスの巣"なのだから。