Phantasy Star Froger's   作:Father Bear

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⑩ 面倒臭さと気遣い

「ラスレニア家の一人娘!ラスレニア・アーリですわ!!!」

 

「「………はぁ???」」

 

そのインパクトは凄まじく、私の我慢ゲージをフルスロットルで突き抜けてしまう程であった。

普段なら苦笑いで済ませるのだが、今回ばかりは完全にダメだ、無理だろう。

 

「……………(ドヤァ)」

 

なんだこの娘は。なんでそんな無言でドヤ顔しているんだ。何でそんなやりきった感を出しているんだ。

 

「いや………そんなの言われてもアンタなんか知らないし」

 

「うん…同じく……」

 

「まぁ~~~!!私を知らないなんて何て世間知らずな方なのかしら!!」

 

なんとなしにノアに同調してしまったがコレで良かったろう。本当に知らないのだから。

しかし、豪勢な服装とその喋り方から察するに彼女は昔のノアと同じ。どこかのお金持ちのご令嬢なのだろう。

ノアが何事もなく、すくすく育っていると今ごろこうなっていたのだろうかと思うと少し笑いそうになってしまった。出来ない訳ではない。ただただ彼女があの喋り方が嫌いなだけなのだ。

最後に聞いたのは例の事件が起きる少し前。姉妹喧嘩をしていると熱くなったノアが貴族口調で私を責め立てた時だ。それがツボに入って笑い過ぎてしまい過呼吸になったのはイイ思い出だ。

話を戻そう。とにかくこの"アーリ"は私達に用でもあるのだろうか。それを確認しなければならなかった。

 

「あの~…ところで私達に何かご用でも………」

 

「あぁ、そうでしたわね。婚約候補の殿方その1のお見舞いに参った帰りに、面白いモノを見付けまして……」

 

そう言うと近くにあった折り畳みの椅子に座り目線を私達に合わし、続けて話した。

 

「………"ダンフォード"。この名字にピンとくる物がありましてね…」

 

「………どういう事?」

 

堪らずノアが反応した。

 

「いえいえ……ただ、ラスレニア家の"天敵"にそんな名があったような気がしまして」

 

「…………………はぁ??」

 

思い当たる節目は無いわけではない。昔、義父さんがとても焦った顔や怒った顔をしていたのを覚えている。普段は"笑顔は彼の代名詞"と言われる様な人だったので余計にだ。

もしかして義父さんは天敵であるラスレニア家に一人抵抗していたのだろうか。今となっては知るよしもない。

 

「あぁ、思い出した。よく初等部で給食の残りを取り合いしてたわね」

 

「そう、そうですわ…………って違いますわ!!!いや間違ってはいませんけど…」

 

「合ってるんだ………」

 

景気のいいノリツッコミを決めてバツの悪そうな顔をするアーリ。余程悔しいのだろうか。

コホン、と咳をし空気を整え再び喋り始めた。

 

「しかしそんな天敵と言えど…"あの事件"については流石の私達も同情の意を示させて頂きますわ。とても苦労をされたでしょう。可哀想に」

 

「……………どうも。というか、何でアンタがここにいるの?豪勢なお家で暖かい飲み物片手にふんぞり返ってなさいよ」

 

「貴女………ッ!!人がせっかく………」

 

おもむろにノアが立ち上がりアーリを見下す形でこう言った。

 

「私達は同情なんかいらない。特にさっきみたいな上っ面だけの言葉なんかね。それに何??まるで私達を哀れみに来たみたいに…」

 

顔を近付け胸ぐらを掴む。

 

「………舐めてんの?」

 

「オイ貴様ッ!!お嬢に何を……」

 

「お待ちなさい!!!!」

 

先ほどまでとは違う凛とした声でノアを抑えようとしたSP二人を止めた。

 

「フッ………確かにその通りですわ。"私達"ラスレニア家は、ダンフォード家滅亡に深く感謝しています。同情の意など嘘ッぱち、むしろどうでもよい程ですわ。」

 

胸ぐらを掴まれたままよくハッキリとあんな事言えるモノだ。余程度胸があるのだろう。

 

「ハァ……せっかく懐かしい名を見て昔を懐かしもうと思いましたのに…残念ですわ」

 

「そんなのこっちから願い下げ。……レーナ、私行くわ」

 

「えっ、あぁうん…。またね」

 

アーリをゆっくりと離した後、ノアはふてくされて外に出て行ってしまった。

………気まずい。とても気まずい。どうしてくれようこの空気。とりあえず謝っておこう。

 

「あの…ごめんなさい。ノアも悪気があった訳じゃなくてその……」

 

「それ以上は結構。養子である貴女をこの抗争に巻き込みたくないのです」

 

"暗黙のルール"。貴族社会に限らず暗黙のルールというものは存在する。今から言うのはその1つ。

『貴族抗争は純粋な血族同士の闘争。異血の者はいかなる場合も決して巻き込んではならない』。義母から聞いた話だ。

彼女もソレをくんで気を遣ってくれたのだろう。

 

「ごめんなさい…」

 

「………まぁいいですわ。申し訳なくってよ、フェレーナさん。お詫びにと言えばなんですが、退院後私の家に遊びに来ていただけませんか?」

 

「えっ……いやでもその…」

 

「来て、頂けますよね??」(ニッコリ)

 

顔をグイッと近付けられて、半ば強制的に家に誘われた。

頷くしかない。このめんどくさい状況を流すにはこれしかない。

それにこの子。真に悪人という訳では無さそうである。さっきの発言もノアが天敵だったからこそ出た発言であり、"無関係"の私には先ほどの様に気を遣ってくれた。

 

「わっ…わかりました。」

 

「ふふっ…お話がわかる方で助かりましたわ。……退院は2日後。ならば、その次の日に来てくださいまし」

 

「は、はい」

 

「ではでは……ごきげんよう」

 

SPを連れて部屋から出ていくアーリ。

まるで嵐の様な女の子だった。余程私が家に行く約束をしたのが嬉しかったのか、廊下から「おほほほほほ!」と特徴的な笑い声が聞こえた。

 

「せっかく来たノアは怒って帰っちゃうし…流されて約束ごとしちゃうし……起きてから退屈しないなぁ…」

 

………しかし、起きてから何か、違和感を感じるのだ。まるで全力で運動したあとの様な疲れ、痛み、倦怠感が私の身体を襲っていた。

昨日激しい運動をしたかと問われればもちろん答えはNOである。そもそも動いたといってもルミエーラの元へ駆けつけた時に動いたくらいで、ここまで疲労が溜まる訳もないのだ。

もしかすると、気絶してしばらく硬直していた身体をいきなり起こしてしまったからではないかと考察してみる。これならば事の説明がつくが、ここでもまた一つ問題が出てきた。

そんな症状昨日出ていないのである。硬直した身体をいきなり叩き起こした反動とも取れるがそれならば動いた直後に出ているハズ。なぜ今になってこんな痛みがするのだろうか。

 

「ダーメだ……なんにも覚えてないや……」

 

すると、またしてもスライドドアのノックされる音を耳にした。「はーい!どうぞ!」と返事をし招き入れる。今度は誰だろうか。

 

「……今の、フェレーナの、知り合い?」

 

「ちっ…違うよぉ!!…ルミエーラ、おはよう」

 

「……ふーん。じゃ、朝の診察済ませ、ちゃうわね」

 

若干の誤解を持たれたまま、担当医ルミエーラに身体を任せ、診察をしてもらった。

すると、あるものが目に入る。

 

「あれ?太ももに包帯…ケガしちゃったの?」

 

「……ッ!……そう、なの。暗い所で作業してた、から。取替用のメスを、落として、ね」

 

しかしよくよく見ると、メスで切ったにしてはかなりの広範囲に包帯が巻かれている事がわかる。それにこの包帯の巻き方。非常に大雑把だ。切ってしまい慌てて巻いたからこうなっているのだろうか。

しかし顔に"冷静"の二文字が叩きつけられている様な彼女だ。少し過ごしただけでも凍りそうな程わかる。そんな事になるだろうか??

 

「へぇ~~…大丈夫なの?」

 

「……えぇ、大丈夫。……"そっちは"?」

 

「………え??」

 

「……なんでも、ないわ」

 

「そっ、そう??ほら!私なら大丈夫だから、ねっ?」

 

突然ルミエーラが奇妙な事を言い出した。"そっちは?"と。まるで何か同じ脅威にでも対面した仲間を心配するような口調だ。

 

「………そこまで、しなくていい。……検診終わり。容態に変化、なし。これなら予定通り、2日後には、退院できそう…」

 

「……2日後、かぁ」

 

どこか釈然としない胸中のまま、私は2日を病院のベッドの上で過ごした。

光も届かぬ無慈悲な暗闇を漂う宇宙時間午前11時。

 

 

 

 

 

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