Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
「ねぇ、○△□☆◇」
幼い子は問いかける。ーなにー
「ぼくたちって、いつでも、いつまでも。家族だよね」
幼い子の質問の解。ーそうだねー
「そうだよね…ぼくらは…」
幼い子に同調。ーわたしたちはー
ー"かぞく"だからー
「…"かぞく"なんかじゃない」
病院で同じマンションの住民である人々に見舞いを済ませた後、コンビニに寄って晩飯を買い、それを食ってホテルに入り、そのまま就寝。
宇宙時間午前7時に"俺"は悪夢とも言える何かで目を覚ました。
「……………ッ!!」
見知った天井で目を覚ます。が、それと同時に吐き気が俺を襲ってくる。
ここ最近、悪夢をよく見る。前まではこんな事は無かったのに。あれはいつだったか…。
「ゴホッ………ゴホッ………」
吐き気を抑えられなくなって急いでトイレへ向かい、便器の中に昨日食べたコンビニ弁当の具を吐き出す。
気が済むまで、ただ吐き続ける。
「ハァッ………ハァッ………ウッ………」
胃の中身を全て出しきった後、顔を便器から離して顔を洗う為に立ち上がる。
ホテルによくあるユニットバスなので、立ち上がればすぐそこに鏡があった。
しかし、寝起きという事もあって、いきなり嘔吐して大量のエネルギーを消費してしまった様だ。
なのでゆっくりと腰を上げ、鏡に写った自らの顔を凝視する。
「……おはよう、"フェレーナ"」
俺の名前は"ギア"。物事を潤滑に"廻す"ギアでなければならない。
俺の名前はギア。それ以上でも、それ以下でもない。
※
「はぁ……それで?どうすればアイツの家に招待されるなんて事になる訳??」
「私だって断ろうと思ったよ…。でも…その……」
「………勢いに負けた、ってとこ?」
「申し訳ない……」
最終検査が終わり、無事退院したノアと私はその足でアーリの豪邸の前へと足を運んでいた。その大きな門と大きな建物に若干、私達は後ずさった。
そのインパクトは、私が初めてダンフォード家の前に立った昔を思い出すほどである。
「あとレーナ、アンタ時間とか聞いてるの?」
「ううん…それがね」
あのひと悶着の後、「約束の日にちであれば何時に来てもよい」と書かれた手紙が送られてきた。
一流の貴族としての余裕を見せつけているのだろうか。
そしてそこには、"良ければノア先輩と一緒にどうぞ"とも書かれていた。正直コレの理由はよくわからない。
「ふーん……しっかし、アイツここに住んでたんだ」
「えっ?知らなかったの?」
「えぇ、よく遊んでた仲だったんだけどね。…親が互いを敵対視してるって知るまでは」
問題のあの日、ノアと夕食を一緒に食べている時にアーリについて色々聞かせてもらった。
初等部の頃、給食を取りに並んでいて(バイキング形式)、残った唐揚げ1つを巡って大喧嘩をしたことが出会いの始まりだという。当時のノアは6年生。アーリは3年生だった。彼女は昔から度胸はあるのだろう。
…というか私の1つ下なのが驚きだ。
ちなみに私はその時風邪を引いて寝込んでいたので、その話は知らなかった。と、言っても。思春期真っ盛りの彼女が私に素直に話してくれるとも思えなかった。
…とりあえず、アーリに私達が来たことを伝えなければ。
「えぇっと……インターホンってあるかなぁ?」
「さぁ?このデカイ門のどこかに着いてんじゃない?」
ノアはあからさまに興味が無さそうだ。
それも無理はないだろう。ダンフォード家が滅んだとはいえ、元は互いに滅ぼし合いたいと願っていた敵対貴族なのだから。
というか、それを分かっていながら何故彼女はノアを誘ったのだろうか。先ほども言ったが意味がわからない。
すると。
『オォ~~~ホッホッホッ!! 来ましたわね!!』
「……またずいぶんとやかましいチャイムね。レーナ、
もっとゆっくりボタン押しなさいよ」
『違いますわ!!!チャイムじゃありませんアーリですっ!!!』
独特な高笑いが外部スピーカーから出力され、辺り一帯に響き渡る。いい子だとは思うのだが、彼女には近所迷惑という概念はないのだろうか。
…いや、反射的にツッコミを入れたせいでつい大声になっただけかもしれない。
「こっ、こんにちはアーリちゃん!」
『あっ………コホンッ……ごきげんよう、フェレーナさん。今日は来てくださってありがとうございますわ。…ノア先輩も』
ノアは一瞬だけ、アーリに真剣な眼差しを見せつけた。
「しょうもない用事だったらすぐ帰るわよ」
『まぁまぁ……ひとまず、上がってくださいな。それなりのおもてなしをさせて頂きますわ』
そうアーリが言うと、ゴゴゴゴゴと鈍い音を立てながら門が開いていく。
「入れ」という事だろう。
「はぁ……行くよ、レーナ」
と、ノアは私の袖を引っ張り、門の奥に引きずり込む。まるでいつかの私達の様に。
「……………いつかの……」
「レーナ?」
「あっ、ううん。何でもない。行こっ?」
そうして、私達はラスレニア家の門をくぐるのであった。
「ん??アイツらは………?」
※
「え?辞める??」
「……えぇ、お願いします」
「一応、理由を聞かせてもらってもいいかな?」
「………その、お母さんが戻って、きなさいと」
「あぁそう……確かに今大変だもんねぇ。出身はどこなの??」
「……34番艦です」
「結構遠いんだねぇ…よし分かった。旅費は僕が出す。気をつけなよ?」
「……え?いいのです、か?」
「いいんだよ。若い子が苦労するこの世の中、大人がそれをサポートしてやれなくてどうするんだってね」
「………今日まで、お世話に、なりました」
「うん、気をつけて帰るんだよ」
私、ルミエーラ・リュミエーラは今日を持って看護のバイトを辞める事になった。
理由は母親に戻る様に言われたから……ではなく、本当は"本来の仕事"の上司であるマグナに強制召集を受けたからである。
嘘の理由を聞かされて辞められ、旅費まで渡してくれた現場監督には非常に申し訳ないと思う。
他意はない。むしろこの監督の優しさに危うく涙する所だった。
「………さて、とりあえず、報告」
私は駆け足で病院から出ようとした。別に急ぐ理由はない。ただ何故か、昔からの癖なのだ。
階段を降りきり、1階へと着いた。そして今まで一応世話になった職場に礼をして、私は外へと出た。
明るい内に病院の外に出るのはいつぶりだろうか。
「……出るかしら……」
通信を投げてみたが、果たして出るかどうか……
『こちらマグナ。今日までご苦労だったな、ルミエーラ』
「………えぇ。それで、なんで私達が強制召集なんて、受けるの?」
強制召集を受けたのは私だけではない。同部隊のユウキを始めとする全ての工作員が対象である。
『お前も聞いたろう。あの病院で起きた事件の事だ』
事件………あぁ、アレか
「………あの猟奇殺人、事件?」
『そうだ。そしてあの病院の警備担当はどこの会社だ?』
「…………私達」
まさか……
『そうだ。今それに関しての責任追及を受けていてな。責任を取って、お前達を離れさせる事になってしまった。勝手にすまない』
「…………いいえ。悪いのはマグナじゃ、ないわ。ちゃんと仕事出来なかった、私達の、責任」
しかし私達が離れたという事は、今度はどこかの会社があの病院を見なければならないという事だ。
一体どこだろう。
「…………あの、私達の後釜、は?」
『それが、"墨付き部隊"が警備業務を交代してくれる様だ。現在、その引き継ぎ作業をしている』
"墨付き部隊"。私達の様な小さい警備会社や傭兵会社などで通る通称だ。
正式名称は"特殊テロ対策支援部第1機動大隊"。無論こんな長ったらしい名前が定着する訳もなく。その部隊がエリート隊員だけで構成されている事から、"お墨付き"という言葉から取って、墨付き部隊と呼ばれている。
「………そう」
しかし特に表だった悪い話が出る雰囲気でもなく、むしろ「やってくれるなら譲る」と言わせてしまう程だった。
この場合でも例外ではない。
『そこでだ、そんなお前達に仕事をやろうと思う』
「…………????」
『今度は病院ではなく、名のあるお屋敷の警備に就いてもらう。専属の警備員がいるらしいが、最近の騒動で相当の人材が消えてしまったらしい』
「………そんな所に、私達みたいな会社が、就けるの?」
『就ける』
直後、そのお屋敷についての情報が送られてくる。
その情報を見て私はすぐに、マグナがここに"就ける"と言った意味を納得してしまった。
「………了解、すぐに向かうわ。ここから、近い、し」
『ありがとう。既にユウキをあちらに送っている。行き方等の詳細は彼から聞いてくれ。通信終わり。健闘を祈る』
私は"駆け足"でお屋敷へ…………
"ラスレニア"邸へと向かった。