Phantasy Star Froger's   作:Father Bear

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⑫ 私の気持ち

「おっ、お邪魔しまーーす!!」

 

先ほどまで静寂が保たれていたであろう空間に私の声が木霊し、急に恥ずかしくなった。

 

ラスレニア邸の門をくぐり目の前に広がった光景…それはそれは大層な作りのエントランスだった。

 

目の前には大きな階段があり、暗めの赤を基調とした花柄の壁紙に、これ見よがしに高価そうな家具達が並んでいた。

 

 

「やっぱりすごいね。貴族の家って」

 

 

「まぁアイツだって貴族だし、これくらいはね」

 

 

だが、この家具達の中でも特に目を引いたのは絨毯だった。これがまた珍妙な見た目をしているのだ。

 

 

「……ッ!? キャアッ!!!」

 

 

「なに!?」

 

 

「だっ、大丈夫っ!じゅ…じゅうたん?にビックリしちゃって……」

 

 

「じゅうたん………あぁ、これね」

 

 

茶色く艶やかな毛並み、全長は10mくらいあるであろう巨大な絨毯は、人一人驚かせるには十分な破壊力を持っていた。

しかし驚いたのはソコではない。本来絨毯に着いているハズのない"あるモノ"が着いていた。

 

 

「まさか………"動物の顔"が着いてるなんて思わなくって……さすが貴族……」

 

 

「趣味悪いったらありゃしない……確かコレ、地球のやつよね?似たような敵を向こうで見た」

 

 

「たしか、名前は……」

 

 

少し前に、地球に生息する動物の資料を暇潰しに読んだ事がある。この顔の動物についても当然記述があった。

"ヒグマ"。大きな個体となると体重400kgともなるようだ。しかもこのヒグマ、人里を襲って大勢の死者を出すという事件を起こすほど狂暴であり大変危険なのだとか。

 

 

「お話は、済みまして??」

 

 

「あっ……アーリちゃん!」

 

 

「……どうも」

 

 

「ようこそ、おいでくださいました。お怪我の具合も良好そうで何より、ですわ」

 

 

突然階段の上から声がした。この家の主、ラスレニア・アーリだ。

 

 

「ううん!こちらこそ誘ってくれt…ほら、ノアも…」

 

 

「……………………」

 

 

気にくわない表情でアーリを無言で見つめるノア。

仲の良かった彼女達にこう思わせる"何か"が、この二人にはあるのだろう。

 

「ふっ……まぁ、いいですわ。どうぞ、お上がりになってくださいまし」

 

 

「ほらっ、ノア。行こ?」

 

 

「……わかってる」

 

 

私達は階段を上がり、2階へと上がった。

そして彼女は、その奥へと続く書斎へと私達を招くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人工太陽がオレンジ色に淡く輝く空の下、リムジンから降り、重い門が開けられると私の背中には"重責"と"不安"の両方がのしかかった。

 

病院から帰り、そのまま書斎で仕事をしようとも思っていたが、気分がノリ気でもなく、むしろこのまま自室でふて寝すらしたい気分でもあった。

 

 

「お嬢。失礼ながら、あれで良かったのか?」

 

 

帰ってきたタイミングを見計らっていたのか。門の陰には私のボディーガード筆頭候補である"セツナ"がいた。

 

外観は、高身長。顔立ちも整っており、暗く青掛かった黒髪に黒い眼帯を巻いた隻眼。武器は大型のカタナ……もはやソードとも取れる様な全長の武器をいつも背中に帯刀した青年だ。

 

彼はラスレニア家の縁とかいうモノで"もう1人の少女"と共に幼いながら才能が買われ、私が小さな頃からずっと鍛練を積み重ね。いつしかボディーガード筆頭候補に昇り積めていた。

 

 

「もうお嬢ではありませんわ、セツナ筆頭候補生。これからのラスレニア家は、私が引っ張らなければならないのです。なのでどうしようと私の勝手……貴方の出る幕ではなくってよ」

 

 

「ハッ……出過ぎた真似をしました。ご容赦を」

 

 

「まぁ…いいですわ。確かにその通りです。ダンフォード家は滅んだといえ敵です。生き残りが居たのであればここで踏み潰すのみ」

 

 

「了解…それが、頭主の望みであれば。では、ごゆっくり」

 

 

「えぇ、出迎えご苦労ですわ。あの子にもこの旨を伝えておくんなまし」

 

 

「……意味があるとも思えないが、承知した」

 

 

私がセツナの方向へ視線を向けると、既にそこに彼の姿は無かった。まるで地球のコミックで見た"ニンジャ"のような身のこなしだ。

 

 

「……貴方達も、早く持ち場に戻りなさい。送り迎えご苦労ですわ」

 

 

「「「了解」」」

 

 

私は帰って早々、大きな顔をして自らの部下に説教や指示を飛ばしていた。緊張するったらありゃしない。

 

本当ならこんな事はしたくない。だが"しなければならない"となれば非常に面倒だ。個人に義務づけられた責務なのだから。

 

 

「結局………書斎には行かず自室に……ですか」

 

 

無駄に大きなエントランス。横に長い階段。貴族のお屋敷にしては若干寂しい廊下を伝って、たどり着いたのは結局自室だった。

 

頭では仕事の事でいっぱいなのだが身体だけは正直で、"今すぐ寝る様に"と警告を鳴らしていた。

 

自分で言うのもアレだが無理もない。2週間ほど前からここの警備員兼アークス達の殉職届を寝ずに書いているのだから。

 

 

「……あの人達の殉職届を書いている最中に私が死亡…。あの世でも笑い話にもなりませんわね…」

 

 

 

…………そうだ、せめてアレだけは書かねば。

 

 

 

「フェレーナさんへの……正式な招待状を書かねば…」

 

 

フェレーナ・ダンフォード……いや、今はネクォールと言うべきか。ノア先輩の妹……らしいが、その実彼女は養子である。

 

幼い頃に見た事はあるが、その時に感じた第一印象は「似てないな」という子供染みた正直な感想である。

 

実際に養子と知ったのはダンフォード夫妻殺人事件の際、"死に別れた姉妹"というような見出しで新聞にデカデカと載っていた時だ。

 

そこに何と書かれていたかは………胸糞が悪いので思い出さない事にする。

 

 

「しかし……成長なさったお姿……似ていなさがより強調されていますわね」

 

 

とりあえず私は、フェレーナへの招待状にこう書いた。

 

"改めて、先日はお騒がせして大変申し訳ありませんでした。久方ぶりに会った友人に少しばかり興奮してしまいました。

さて、本題に入らせて頂きます。集合する日にちは伝えましたが、時間を伝えるのを忘れておりました。約束の日であれば何時に来て頂いても構いません。説明不足で申し訳ありません。

あと、良ければノア先輩もどうぞ"……と。

 

 

 

「これで良いでしょう…後はコレを送るだけ……」

 

 

すると突然、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

ボディーガードだろうか……

 

 

「お嬢さm…あぁ……ご頭主!ご頭主のご友人と名乗る女性が、お話がしたいとの事ですが」

 

 

 

………はて、私のご友人と名乗る女性…。

 

 

 

 

「……あぁ、思い出しましたわ。ここへ通しなさい」

 

 

もしかしたら忘れているだけか、初等部や中等部の同級生が通りかかったついでの気まぐれで寄ったかだろう。

 

しかし……こう昔を思い出してみると、嫌な事ばかりフラッシュバックして嫌いなのだ。

一体誰だろう。

 

 

「ご頭主!お連れしました!!」

 

 

「分かりましたわ。どうぞ、お入り下さいまし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから、私の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ歩いたろうか。先頭を歩くアーリの後ろに続く私達だったが、ある違和感がどうしても引っ掛かってしまう。

 

こういうお屋敷の廊下は長い物と相場が決まっているが、それにしたって長すぎる。携帯電話の時計を見ると、歩き始めてもう30分は経過している。

 

 

ボソッ…(ねぇノア……何か変じゃない?)

 

 

ボソッ…(アンタも気付いてた?いくらなんでも長すぎるわ、この廊下)

 

 

良かった。この違和感を感じ取っていたのが私だけでないと知っただけでとても安堵できる。

 

 

ボソッ…(アーリちゃんどうしたんだろう……迷っちゃったのかな?)

 

 

ボソッ…(バカ。いくらあんなでも自分の家の構造くらい分かってるでしょ)

 

 

ボソボソッ…((…………………))

 

 

ここは、声をかけてみるしかないだろう。そう決心した私は、ずっとノアと繋いでいた手を振り払い、前方を歩くアーリの肩に触れた。

 

 

「アーリちゃん、大丈夫?気分が悪いn…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『縺ェ縺√=縺√=縺ゅs縺ァ縺吶?縺峨♂縺峨♂縺峨♂縺翫♀縺』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに、彼女の面影は無かった。

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