Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
俺の名前は「セツナ」。
名字は無い。既に棄てている。今の立場において家名など邪魔以外の何物でもない。
今の俺に必要なのは主人を"護"る力。それさえあれば何もいらない。
「そうだ……俺は………」
いかんいかん。余計な事を考えて仕事に支障をきたす訳にはいかない。
とりあえず俺は主人の「ラスレニア・アーリ」の命令に添い、近頃来る来客の応対について同僚の少女に相談をしに行かなければならない。
しかし意外なモノだ、彼女が"嘘"を付くとはな。
以前の主人であれば、敵と見なした者は即刻排除する姿勢を見せていた。が、今回はそれが見受けられなかった。
ノアと言ったろうか。彼女の濃青色の瞳には、何か強い意志の様な物を感じた。
何故知っているか?…………聞くな。
「……………む?」
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……
「あーっ!もうっ!!」
次の行動を起こそうと階段を上がったその先から、軽快な電子音と抑える気のない少女の声が聞こえてくる。
階段を上がって2階の手前に彼女の自室兼、この施設全ての監視カメラやセンサーの情報が集中する中央管理室がある。
女性1人だけというのもあるのか。そこはあまりにも広く、複数の同時展開されたモニターに囲まれ圧迫された空間となっている。照明も着いていない。この方がモニターを見やすいのだろう。
窓すらついておらず、数日換気扇を動かし忘れると簡単に完全密室殺人事件完成である。
そしてそんな管理室から、"苛立つ少女の声"と"キーボードか何かのボタンを叩く音"。考えられる事はただ1つ。
「………シルヴァ、また仕事をサボってゲームか」
「げッ…………ってなぁんだ、セツナじゃん。どうしたの??」
堂々とサボりを決めていた彼女の名は"シルヴィ"。現代では珍しい、ヒューマンとキャストのハーフである。
頭や胴体は普通の人間通り生身であるが、手足は完全にキャストパーツのソレに置き換わっている。
髪の色は銀髪。瞳は紫。体格は非常に小柄だ。服装は基本的にパーカーと短パンのみだ。
本人は皮肉混じりに自らの身体の事をこう言う。"ダルマ人形"と。
ちなみに彼女には家名がない。あえて付けるならばラスレニア・シルヴィという所だろうか。
そんな彼女の屋敷内の表向きの役職は監視員。しかし傍ら、その裏では金融機関や財政に関わる機密事項を盗み見するブラックハッカーとして暗躍している。ちなみにこの事は主人さえも知らない。知っているのは俺とシルヴァのみだ。
「なんだ、ではない。職務怠慢だ。すぐにそのゲームを閉じろ」
「えー…せっかく良いところまで行ってんだから邪魔しないでよー。ちゃんと見てるからさー」
「そういう訳にもいかんのだ、早くしろ。さもなくば……………斬る」
するとシルヴァは焦りに焦った表情でゲーム機の電源を落とし、最終的には泣きそうな顔でこちらを見てきた。
そんな表情をされるといざ斬ろうにも斬りづらい。元より、斬るつもりは毛頭ないが。
「わぁーーー!!!わかった!!わかったってばっ!!それだけはヤメテ!!!」
「……本当だろうな」
「本当本当!!ほっ、ホラ!電源も抜いたしこれでもう………いいから刀しまってよぉ!!!」
そう言われ刀を鞘に納める。全く………腕はよいのだがどうしてこう残念なのだろうか。
そして、座っていた
「はぁ………んで?? セツナが用事も無しに私の部屋に来る訳もないし、何か用事があったんじゃないの?」
「あぁ…実は………」
俺は事の経緯を全て話した。
主人がかつての天敵を屋敷へ招待したこと。そして、彼女らへの対応の事を。
シルヴィは、先ほどのすっとんきょうな表情がまるで嘘であるかの様な真剣な顔で俺の話を聞いてくれた。
「なぁるほどねぇ……でもソレって本当に言ってんの?? 滅亡した敵なんて相手するだけ無駄でしょ。権限だって最早無いんだし」
「だがそれが頭領の意志だ」
「……頭領の意志、ね」
シルヴィは少し悲しそうな表情でこちらを見つめた。
「一族の長って難しいね。自分を殺して、部下達の士気を伺わなきゃならないんだから」
回転イスをモニターの方に向け、話を続ける。
「久しぶりに再開した友達だよ?? そんな物騒なするわけ無いじゃん」
………わかっている。わかっているとも
「………話はこれで終いだ。サボるんじゃないぞ」
「わかってるって~」
俺はシルヴィの部屋を出て、館内の見回りへと向かった。最初は頭領の自室へと続く道でも見て回ろうか。
「それにしても……」
"頭領としての立場"を生かし"自らの幼き立場"を殺す。あの若さでソレを背負ってしまうにはあまりにも酷の様な気もする。歳で言うと俺よりも下なのだ。
「……臨機応変に対応するしかない、のだろうか」
そう心に留め、主人の自室へと歩いた。
※
「………変」
目がどうにかなりそうな程暗いこの部屋で、沢山のモニターを見つめる私"シルヴィ"は、モニターに写った異変に頭を使わされていた。
それは先ほど、セツナが来て話をしたあの一瞬で起こったのだ。
カメラが動かない。それどころか映像すらも止まった。まるで時間でも止められたみたいに。
「施設内のコンピューターをハッキングしての妨害は…………無し。それだったらゲーム中でも気付いてる。なら、カメラ本体に直接ジャミングしてるのかも。でも………これ………」
これを裏付ける証拠もない上に、決定的な疑問が私の脳内を混乱させた。
それは、この妨害はほぼ同タイミング行われたという事だ。
複数人での同時攻撃とも考えたが、それは考えられない。屋敷内の監視カメラはそれぞれがそれぞれの死角をカバーできる様な位置に設置してある。さらにサーモグラフィー付きの。故に複数人は考えられない。
ならば単独行動と思ったが、1人で全てのカメラをハッキングするのはほぼ不可能である。有線接続システムであるが故に、カメラ1つ1つに仕掛けを施し、それを実行せねばならない。そんな事をしていればすぐに見つかってしまうだろう。
なら一体、何が起きた。
「屋敷内のシステムは生きてる………チッ……目を潰しに来たって事?」
とりあえず先にセツナに連絡を繋がねばならないと直感的に感じた私は、携帯電話を開きセツナへとコールした。
(出て………お願い…………)
しかし、その願いが届く事はなかった。
ある程度予想はしていたが、無線も妨害されている。こうなればやむを得ないだろう。
私はキーボードを操作して、屋敷外にも聞こえそうな程大きなアラームを鳴らした。
それを聞いてか、階段下辺りから騒ぎ声が大きくなった。おそらく下の警備員も気付いていなかったのだろう。無理もない、屋敷の目が潰されたのだから。
「カメラと無線が使えない以上、私も動いて探すしかないよね」
私は机下に隠していた銃とナイフを手に、廊下へと掛け出た。
その時だった。
『鬆ュ鬆倥r螳医l縺?∞縺?∴縺』
「ぎっ、ぎゃああぁぁぁぁあ!?ぞ、ゾンビッ!?」
扉を出てすぐ目の前に、ゲーム画面で何度も見たであろう。ゾンビらしき影が立っていた。
『萓オ蜈・閠?匱隕九s繧薙s繧』
そのゾンビは私を見つけるや否や、奇声を上げながら私へと走ってきた。私の考えが正しければこれは……
「あっぶない!!!」
これは攻撃だ。
私は自身の小柄な体格を生かし、走った勢いで飛び付いてきたゾンビをかわす。
そして、そのまま"ゾンビを天井へ蹴りあげた"。
『縺?$縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺!!』
私は冷静に、ホルスターから拳銃を抜き、スライドを引いて薬室へ弾を装填する。そのまま……
「死ねぇッ!!」
トリガーを引き、激しい発砲音が廊下に木霊する。ゾンビの頭部に3発叩き込んでやった。
「……死んだ?いや、ゾンビに死んだってのはおかしいのかな……まぁいいか」
天井へ叩きつけたゾンビが落下してくる。顔は見るに堪えないほど破壊されていて、我ながら吐き気がした。
体長は寝そべった状態で約4m。青緑色の体表もドロドロに溶けていて気味が悪い。
そして、体表に埋もれてしまってよく見えないが"警備員が着用していた服"らしき破片が見えた。この瞬間、私は全てを察した。
「めんどくさいなぁ……アーリちゃんとセツナへの説明どうしよっかな……」
私はおもむろに、ゾンビの頭部にヒールを突き刺しこう言った。
「…どう?人生の救済が美幼女の生足蹴り上げ&銃弾ってのは」
私はこのキャストの脚全体を生足に見立て問いたてた。質問が帰ってくる事はないだろうが。せめてもの救済になった事を祈る。
「………どういたしまして」
私はそのまま階段を飛び降り、大量のゾンビが蔓延るエントランスへと向かった。