Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
『縺ェ縺√=縺√=縺ゅs縺ァ縺吶?縺峨♂縺峨♂縺峨♂縺翫♀縺』
「「…………は?」」
まだ昼間の太陽光が差し込み、館内を明るく照らす廊下に佇む"アーリ"だった肉塊は、まだ声の面影を残しつつ低音な声で私たちに語りかけた。
私、フェレーナ・ネクォールは入院中突然表れた貴族(?)の女の子、ラスレニア・アーリの館に招待され、後日行く事になる。
しかし、館内でアーリが謎の"変異"を遂げて怪物へと変貌。今へと至る。"アーリ"の原型は保てているものの、表面的に見ればもはや別人であった。
「嘘……でしょ…」
もう外は夕方頃だろうか。橙色の光が窓"だった"モノの隙間から差し込み、私の顔を照らした。
ふと周りを見てみると、現役貴族の住まう館としてはあまりにも破滅が進んでいるのを見て、私は唖然とした。
豪華に色や装飾があしらわれていた絨毯や、ソレと同等価値だったと見えるカーテンなど。それはもはや見る影も無くなるほどに腐食が進んでいた。
「縺ゥ縺?@縺ヲ窶ヲ窶ヲ縺ァ縺吶?窶ヲ窶ヲ窶ヲ?」
「チッ……!!! レーナ!!!」
「キャアァッ!?!?!?」
私はノアから強引に突き飛ばされ、床へ倒れた。そしてノアは壁に飾ってあった短剣を手に取り、Phのカタナの要領で攻撃を仕掛ける。
「アァァァァアアリィィィィイイイィィ!!!!」
鞘から抜かれた銀色の刃は、水平にアーリの右腕を捉えた。
「驕輔≧窶ヲ窶ヲ?√d繧√※窶ヲ窶ヲ繧?a縺ヲ繧亥?霈ゥ窶ヲ??シ?シ?シ」
しかし、刃がアーリの右腕を斬り飛ばす事は無かった。そのグロテスクな見た目の反面、硬質化した皮膚がノアの一撃を受け止めた。
それと同時に、金属がかち合ったかの様な鈍い衝突音が長い廊下に響き渡る。
「……硬い……ッ!!! まるで、ガウォンダの盾みたいな……ッ……」
「ノア!!! まだ来るよ!!!」
アーリの左腕が攻撃体勢へと入った事を察した私は、ノアにその事を伝える。
それを聞いたノアは瞬時に、鞘で右半身を防御する。しかし若干遅かったのか、少し頭にかすってしまう。
「ッッカ"ァ……!?」
「ノ、ノアァァッ!!!」
ノアは立つこともままならず膝から崩れ落ちる。恐らく激しく脳を揺らされた事による"脳震盪"だろう。
そして、そのままアーリだった物は再び左腕を大きく上に挙げて、ノアを叩き潰そうとする。
コレが当たればノアは間違いなくミンチにされるだろう。
しかし、その攻撃がノアに届くことはなかった。何故か?それは私にも分からない。だが現に、アーリの左腕はノアの頭まで約5㎝の所でその動きを止めたのだ。
それと同時にノアも脳震盪から回復する。もはや奇跡のタイミングと言えるだろう。
「ッ…!?」
ノアは自らが気を失っていることに気付いたのか、目の前の現状に困惑していた。
それはそうだ。目を覚ませば目前に殺意の塊が差し向けられているのだから。
「何…?? ふざけてんのォ??? このアバズレェ!!!」
ノアは攻撃を目の前で止められている事に気が付くと、自分が馬鹿にされていると勘違いしたのか激昂した。
恐らく、生物としての尊厳すら危うい存在にそうされたからではない。“アーリだった物にそうされた”からである。
「舐めてくれてさ…殺るならかかってこい!!! アタシがぶっ殺す手本を見せてやる!!!」
「ノアッ!!! 落ち着いて!!!」
ノアがもはや噴火した火山の様であった。よほどアーリにこういう事をされるのが嫌いだったのだろう。バックステップで、ある程度の距離を置き再び短剣を構える。
すると、私たち2人はある異変に気が付く。アーリがそれっきり動かなくなったのだ。
「「…??」」
ただただ困惑するしかなかった。見たこともない現象に襲われるや、直ぐにそれが収束の色を見せ始めたのだから。
すると、アーリだった肉塊から唸り声が聞こえる。聞いていると、とても苦しそうな物に聞こえる。それどころか、先ほどまで攻撃しながらではあったが意味不明なことを喋っていたのに対し。今はところどころ聞き取れる言葉になっている。
『縺ェ縺√=縺√=…“先輩”…縺ァ縺吶?縺峨♂縺峨…“フェレーナ”…峨♂縺翫♀縺』
「「 !!!!! 」」
聞こえた。小さく、か細くではあるものの。聞こえた。自分たちの名前を呼ぶ声を。
「なぁに…?? アーリちゃん…私を、呼んでいるの???」
「待て、レーナ!!! まだそいつに近づいたらダメだ!!!」
そうは言うものの、アーリはそこから動き出すことはなかった。まるで観光地に展示してある偉人像のごとく、ジッとしている。
そして私はいつの間にか、ノアよりも前に歩き出てきていた。理由は分からない。だけれども、身体が何かを成そうとしたのは感じることができた。
「ねぇ…お願い、応えて!!! もう一度、私達の名前を…呼んで…アーリちゃん!!!」
その時だった、私の瞳が芯から熱くなっていくのを感じた。ソレは痛いほど私の眼球を熱し、脳に痛みが行き渡るほど私を犯していく。
「ッア…!?」
「レーナ!? チィッ!!!」
私の異変に気が付いたノアが無理矢理抱き抱え、アーリから引き剝がす。
熱い。目の奥が沸騰しているみたいに。
痛い。眼球に電撃が走ったみたいに。
苦しい。まるで肺にフタがかかったみたいに。
焼ける。脳の神経が溶けるみたいに。
しかし何故だろう。いつだったか忘れたが"どこか"で味わった様な気がする。
「うグッ……!!! ッアぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「レーナ!! フェレーナ!!!! 」
近くに居るハズのノアの声が遠く感じる。しかしそれどころか
「痛いッ……!!あぁぁああぁぁっ……!!!」
ノアの声が頭の中をつんざく。
「チッ………どうすれば……!」
すると、アーリの脚が前に出る。ミシミシと床を粉砕する力強くゆったりとした足取りで、私たちに近付く。
『繝輔ぉ繝ャ繝シ繝翫&繧薙?∝、ァ荳亥、ォ縺ァ縺吶°?』
刹那、アーリの肥大化していない方の腕がノアの首根っこを掴む。その衝撃からか、ノアは抱えていた私を離してしまう。
「ガッ……!このッ……はな……せぇぇえっ!!」
『蜈郁シゥ窶ヲ窶ヲ?√#繧√s縺ェ縺輔>??シ∽ス薙′蜍晄焔縺ォ窶ヲ??シ』
ノアの耳には、自らの背骨が軋む音が聞こえているのだろう。アーリはその手を離すことはなく、ノアを空中に持ち上げる。
しかし、ノアは片手に握り締めた短剣を反撃のために振りかざすでもなく。ただただ、その手に握り締めていた。まるで攻撃することを躊躇しているかの様に。
「ノア……!イヤだ……ノア、ノアぁぁぁぁあっ!!!」
放り出された私は、自らを襲う苦痛に耐えながら声を上げる。私に残された唯一の家族を救う為。必死に這いずり、涙を流しながらアーリの脚へしがみつく。
「もう……!もう止めて!!!アーリちゃん!!大丈夫……大丈夫だから!!!私たちが助けてあげるからぁ!!!!」
しかし、悲痛なその叫びはアーリの耳に届くことなく。ボールを蹴飛ばすかの様に蹴り払われ、背中から壁に衝突した。
「ッがぁっ…………」
「フェ…レ……ナァ…………!!!」
『豁「縺セ縺」縺ヲ窶ヲ窶ヲ??シ√♀鬘倥>縺?縺九i窶ヲ??シ?シ』
その時だった。
「豁「縺セ繧」
己の意思とは関係なく、強制的に声帯が鳴らされた。しかも、明らかにヒト語とは思えない様な言葉を喋らされた。この音は、先ほどから暴徒と化したアーリが喋っている言葉とそっくりであった。
(な、何…!? なんでッ……!)
『縺銀?ヲ霄ォ菴薙′蜍輔°縺帙∪縺帙s繧鞘?ヲ?』
すると、どういうことか。アーリの動きが今度こそピタリと止まった。先ほど私が言った(?)謎の言葉のせいだろうか。
「ガハっ……!……ゴホッ、ゴホッ!!」
そして力が緩まった事により、アーリの手からノアが放り出される。
「ノアっ!大丈夫?ノア!!」
「はーーっ……はーーっ………な、なんとか……レーナは、もう平気?」
「え…?わ、私は………」
そういえば、私を襲っていたあの苦痛がいつの間にか無くなっていた。
顔や頭、身体の様々な所を触ってみたが特に異常は無い。健康体そのものだった。
「私は大丈夫…!それより今は!!」
今は、アーリから離れなくては。
「ノアっ!立てる!?」
「もう大丈夫…!逃げるよフェレーナ!!!」
私たちはこうして、この地獄とも思える空間をさ迷うことになった。
そしていつの間にか、窓から覗く日射しは橙色ではなく、紫色に変わった異常空間では、情景以外にも異常な事が起きている事を。この時の私たちは知るよしも無かった。
※
「ハァァッ!!!!」
『縺弱c縺√=縺√=縺√=縺ゅ≠縺ゅ≠??シ?シ?シ』
グロテスクな見た目へと変貌した警備員の股下から胸にかけて大太刀を浴びせ、身体に収められていた臓物が傷口から全て流れ出た。そんな光景を、俺は返り血を浴びながら見ていた。命絶えるその瞬間まで気を抜かない様に。
暴徒と化した屋敷の警備員たちは、俺『セツナ』と相棒の「シルヴァ」を見るなりいきなり襲いかかって来たが、それを俺達は難なく斬り捨てた。元々雇っていた警備員はかなり居たので、数こそ多かったものの。大したことは無かった。今斬ったので最後だろう。エントランスは、ゾンビ達の死体(?)で埋め尽くされていた。
俺の背中を守ってくれていたシルヴァがドッと疲れた様に床に座り込む。そして達人とも言えるスピードで片手に持った拳銃を太もものホルダーにしまい、もう片方のナイフも太もものホルダーにしまい込んだ。
俺もそれに習い、ずっと握っていた大太刀を鞘へ収めた。
「ハァーーーッ…疲れたぁ~……絶対明日筋肉痛だよぉ……」
「ならマッサージを忘れるな。少しはマシになる。……というよりお前、その手足は人工筋肉…義手義足の様な物だろう。筋肉痛の心配をする必要があったのか?」
「手足じゃなくって背中だよ背中ぁ。胴部分はまだ生だからさぁ」
「なるほどな………さて、ハーフキャストの痛覚がどういうものか少し理解出来たところで。状況の確認といこうか」
良く晴れた昼間の頃だ。俺は庭で不審者が入ってこないか警らしていたところ、突如邸内から発砲音がした。それを俺は"非常事態が起きている"と思い窓をぶち割り、邸内へ強引に侵入。
しかし、"何も起きていなかった"。いつも通り静かな邸内だった。状況を確認するためにシルヴァがいる監視部屋へと向かった。だがそこにシルヴァはおらず、テーブル下の拳銃とナイフが無くなった状態でもぬけの殻になっていた。俺はそこで監視カメラの映像を見てみる事にした。そうすればシルヴァに聞くまでもなく屋敷全体を見渡す事など容易だったからだ。しかし、全ての画面に映し出されたのは砂嵐だけだった。俺は訳がわからなかった。
こうなったら肉眼で書くにするしかないと思った俺は、監視部屋から出た。するとそこには、変わり果てた屋敷の内装と、ゾンビの様な外見へと変貌しエントランスを占領した警備員たちだ。
「…………まぁ、大体わかったよ。話の最初に出てきた発砲音ってのは十中八九わたしので間違いないよ。でも……私の部屋……」
「監視部屋だ」
「か……監視部屋の外に出たら屋敷の風景が変わってたり、ゾンビが居たってのはヤバ過ぎでしょ……まるでゲームとかマンガの話みたい」
「俺も同感だ。コレは明らかな異常事態と言わざるを得ないだろう」
「ってか………私たち自分の身を守るので頭いっぱいだったけど……よく考えたらアーリちゃんマズくない??あの子戦闘力はほぼ皆無なんだからさ」
「そうだな……うっかりしていた。この屋敷の警備員はこのエントランスにいる全員だけではない。他にもいるハズだ。探しに行くぞ」
もう手遅れかもしれんが……悪い事を考えるのは止めておこう。縁起でもない。
「無事かなぁ、アーリちゃん……」
「無事だろうさ。あの方は口だけは達者に思われがちだが、どんな事があってもどんな時も生き延びてきた。俺たちはその背中に牽かれて、足場と背中を護っていくと決めた」
それはお前も同じだろう、という風にシルヴァの顔をチラりと見た。
「まぁ……そうなんだケドさ……ゴメン、変な事言った」
そうして、俺と相棒は屋敷のさらに深部へと脚を踏み入れた。
その時だった。
「うるさいッッ!!!!!!」
アーリお嬢ではない。聞きなれない女の声が上の階から響いた。
※
「ふーーーーっ……ふーーーーっ……」
「はーーーっ……はーーーっ………」
あれからどれだけ走ったろうか。私とノアは長い間走り続け、ようやく階段へと続く廊下の曲がり角に着いた。
「ったく……長すぎるったりゃありゃしない……立てる?レーナ」
「も、もうちょっと待って…!し、深呼吸しないと……し、死んじゃうからぁっ……」
スーーー………ハァ………という風に深い呼吸を繰り返す。
「それにしても…あのアーリの姿といい、この屋敷といい…一体どうなってるの…?まるでこの世の物じゃないような……」
「わかんない……屋敷に入った時はアーリちゃんもお屋敷も普通だったのに…」
「とりあえず、降りて外に出よう。逃げなきゃ」
先に少し降りたノアが、私に手を差し出す。何故だろうか。こういう時のノアの手のひらは、とても優しく…とても頼もしく感じる。
「そうだねノア…………けど、アーリちゃんはどうなるの?」
だが、そんな頼もしい家族はさておき。やはり気になるのはアーリのことだった。
「……知らないよ。あんなの」
「知らないって………そんなのって……そんなの無いよ!!だってあの子は、ノアのこと"先輩"って呼んで慕ってたんだよ!少ししか話してない私でも分かる。確かに上から目線で高圧的かもしれない。けど、そんな物怖じしないあの子が敬意を持ってノアに接して………」
「うるさいッッ!!!!!!」
ノアは私の目を見つめながら、そう大声で言った。彼女が口を悪くすることはあっても、大声を出す事は今まで片手で数えても指が余るくらいだ。
「アンタに何が分かるの!!! アイツとロクに話したことも無いクセに!!!!」
「分かんないよ!でも……でも!」
私は、ノアに向かってとある違和感を打ち明けた。
「なんで…なんでノアは、首を締められた時に反撃しなかったの?」
ノアが首を締められていた時、確かにノアの両手は空いていた。一瞬だけ抵抗したが、力の差で諦めたあの両手。片手には短剣が握られていた。あの状態からならアーリの胴体を斬りつけられたハズなのだ。確実に。だがしかし、ノアはそれをしなかった。
「そ…ソレは……攻撃しても、刃が通らないんじゃどうしようも……」
「違う…ノアは"アーリを攻撃したくなかった"んだよ。いつもの力押しで正面から突っ走るゴリラみたいなノアなら、お構い無しにアーリを傷つけたと思うよ。でもさっきはそれをしなかった…なんで?」
「ッッ…!言わせとけばフェレーナ…!!」
その時だった。
「お~っと。お二人さん、お取り込み中申し訳ないんだけどさ~~」
「現在、本館は俺達が異常事態宣言を発令している。要は危ないんだ。俺達の言葉が分かるようならそこを動くな。動けば………」
「斬る」「撃つ」
階段の下から、私たちと同年代くらいの女の子と男の子が姿を見せた。女の子の方は銀髪をツインテールでまとめていて、ちっちゃくて可愛らしかった。男の子の方は口元を隠す大きなマスクと右目を隠す眼帯のせいで顔はよく見えない。が、さながらサムライといった雰囲気は少し怖かった。
そしてその二人は私達にこう告げた。"動くな"と。どういうことだろうか…
「…誰?アンタら」
「ちょいちょい、アタシら別に喋べんなとは言ってないけどさぁ。あんまり舐めてると頭ブチ抜くよ??」
「ヒィッ……」
「待てシルヴァ。そう易々と敵を作るものじゃない。オイ貴様ら、先ほども言ったと思うが、本館は異常事態宣言発令中だ。そして、貴様らはこの屋敷の関係者でもない。何か説得力のある発言をしなければ、貴様らを今回の主犯と見なし拘束する。何か、本館に用事が?」
「セツナさぁ……それアタシより脅しキツくない???敵作ってんのアンタじゃない大丈夫???」
と。言った彼らの発言から、私とノアは互いに目を見合せ、こう確信した。"この屋敷の関係者"であると。
私は、私たち二人の身の潔白を証明するため、なるべく大きな声で誠意を持って話してみることにした。
「ま、ままま待ってください!私たち決して怪しい者じゃ……」
それをノアが私の口を抑え静止させる。そして小声でこう言った。『それ怪しいヤツが言うセリフ』と。少しムカっと来たが、何となくその意味が理解できてしまったので、敢えて反論はしなかった。
ぜひ後で覚えていて欲しいものだ。
「……私たち、アーリに呼ばれてここに来たの。それで、中に入ったらこの有り様だったって訳。……納得してくれた??」
「ハァ~~~~~???信用できないわよ、そんなの。端から見たらアンタたち盗人よ盗人。それか、ここの警備員全員の仇だよ!!!」
私の代わりにノアが弁明したが、興奮気味な銀髪ツインテの子の耳には届いていないようだった。しかしそれを聞いた黒髪のサムライっぽい人が目を見開き、少し焦った様な素振りを見せたが、すぐにノアに向かってこう言った。
「………失礼、名前は伺っておりましたが、お顔までは存じ上げませんでした。非常事態故、ご無礼をお許し下さい、ノア・ダンフォート様。フェレーナ・ダンフォート様」
「………ヘッ!?アンタ、"ダンフォート"ってアンタまさか!!!」
すると、今度はその発言を聞いたツインテのちっちゃい子が、顔を真っ青にした。
「いやお客サマかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
「あれぇ……私、ダンフォート名義なんだ……」
※
「ホンッッッッッットゴメンなさい悪気は無かったんです許してくださいクビにはなりたくないんですお願いしますぅぅぅぅぅぅうう!!」
どうやら"ダンフォートご一行"という肩書きで当日の私たちは通っていたらしく、その単語を聞いた瞬間銀髪ツインテの子…シルヴァは血相を変えて足元に飛び付いて土下座で謝り始めた。床がミシミシ言っているようだが大丈夫だろうか。アーリの一歩一歩並みの力を首で再現しているのはそれは人間としてどうなのだろうかと心配になるくらい大丈夫だろうか。
ちなみに、この黒髪のサムライっぽい人はセツナというらしい。
「う、ううん!大丈夫だよ。知らなかったら無理ないよ!」
「いやそうも行かないんスよ……自分ここじゃヒキニートみたいな扱い受けてて印象も悪いから…こんなのバレたらマジでクビなんスよ!!!」
「ソレ、あんたが悪いんじゃない?」
「お前が悪い」
「ウグッッ…!」
今度は土下座の上から腰を押さえつけられた様に倒れ込む。なんだか、見ていて楽しい子だ。
「まぁ、そんなシルヴァの懺悔大会はさておき…」
勝手に大会にすんな!!!……というシルヴァの目線がセツナに向いている。
「あなた方は何故こんなところに?お嬢の案内があったはずです。ここは関係者以外立ち入り禁止の区域なのですが……」
「そっ、そうッスよ!お嬢の部屋は2階。あの人がついてたらこんな所には来ないはずッスよ??」
「え……!?」
思いもよらぬ情報に、思わず声が出てしまった。確かに長い階段だとは思っていたが、そんなハズはない。その証拠に、階段の途中にある踊り場を悪くは見ていない。踊り場が最悪無くとも、折り返した記憶はあるハズだ。しかしそれがない。
「私たち、そのアーリお嬢様に着いてきたのだけど」
「では………そのお嬢様は何処へ?」
「そっ………それは…………」
言うべきか、言わないべきか。
そしてその躊躇を取っ払ったのは、隣にいるノアだった。
「死んだよ…………たぶん」
「なっ……!お、お客サマとはいえ、その発言は見過ごせn……」
「待てシルヴァ……"たぶん"?今あなたは"たぶん"と仰いましたね。お嬢が死亡したのを確認した上で"たぶん"と仰ったのですか?」
「……よく…分からない……」
ノアはうつむき、言葉を紡いでいく。
「アイツ……この先の廊下に案内してその後…その、ゲームとか映画に出てくる"ゾンビ"みたいになって襲ってきたの」
「「!!!」」
アーリが"ゾンビ"になった、という話を聞いた直後。二人の顔色が明らかに変わったのが分かった。
「お、お客サマ?今、アーリって言いました?アーリが、ゾンビみたいに…って…………」
「えぇ…言ったケド…」
「………分かった。ありがとう………」
今のやり取りで全て察した。この二人は、アーリの側近もしくは、それに近しく親しい仲なのだろう。でなければ、二人してこんな"悲しい"顔は見せない。
「ならば……俺達がやるべきことはただ1つだ」
「……そうだねセツナ」
「え、えぇっと……??」
私が訳が分からなそうな顔をすると、セツナとシルヴァは例の"4階"へと脚を踏み入れた。
「ちょっ……そっちは危ないよっ!」
「分かっているッ!!!」
セツナが叫ぶ。まるで怒りと悲しみに身を任せるように。
「私たち……いや、俺たちに課せられた任務はただ1つ。主を護り、この屋敷を守ること……俺たちは、今から任務を遂行する」
「任務って、あなた達の主…アーリちゃんはもう…!」
「二度言わせるな……分かっている…………ッッ!!!貴様たちの話が確かなら、お嬢は死んだのだろう。だがしかし、誇り高きラスレニア家の家紋に泥を着ける訳にはいかん。だからせめて、俺たち二人でゾンビ化したお嬢を葬る。最後まで立派に戦った悲劇の女君主、という風な逸話を残すためにもな」
「けど………だけど!!!」
彼女は、まだ生きているかもしれない。私は大声でそう言いたかった。だけど言い出せなかった。
私はアーリを助けたい。助けたいのは山々だ。だけど、彼ら二人を止められるほどの効力があるとは思えなかった。彼らの心はもう、アーリを"殺す"こと以外考えていなさそうだから。
「…行くぞ、シルヴァ」
「うん……早く、楽にさせてあげなきゃね…きっとあの子は今も苦しんでる」
待って……待ってよ………!
二人の姿は、廊下の奥に行くにつれ見えなくなっていった
※
「でェ???今日からバイトするお屋敷ってぇのはココでいいんだよな、ルミエーラ?」
「うん……合っている、と…思うわ、ユウキ」
病院のバイトを辞め、私とユウキはマグナ司令に頂いたメモ紙を頼りに、新しいバイト先であるラスレニア邸に到着した…のだが、ここである1つの問題が発生した。
「合っている…って言われてもよぉ。誰もいねぇじゃねぇか。電気の1つも点いてやがらねぇ。まぁ、さすがに豪邸ってだけあって内装は豪華だな……高そうな絵に高そうなシャンデリア。さらには高そうな熊のじゅうt…………クマァッ!?」
「大きな声、出さない…で」
ユウキが大声で説明した通り、私たち以外誰もいない。こういう豪邸なら、メイドや執事が出て来て中まで案内するというのが定説なのだが。あれは本の中だけなのだろうか。もしくは、インターホンでもあったろうか。それは失礼なことをしてしまった。
「ねぇ、ユウキ…一旦、戻って…みない?」
「ハァ?なんでだよ。ココなんだろ新しい所って」
「そう…なんだけど……何か、イヤな予感がする…わ」
「オッ、オイオイ…ビビらそうとすんなよ……」
だがしかし、本当に誰もいない。私たち二人で割りと大きな声で話しているつもりなのだが、誰も出てこない………というより最初から誰もいないのではないかというくらい人の気配がない。
「ん?オイ、ルミエーラ。これ見てみろよ」
「??」
そこにあったのは、『足跡』だった。サイズや靴底の形から考えるに恐らく成人男性。しかも2人。床に落ちているホコリを堂々と踏みつけて進んでいる。
「まさか……誰もいねぇ隙にドロボーでも入ったんじゃ…?」
「他の可能性、も…考慮すべきだと思うけど…今はそれしか思い浮かばないわ、ね…」
「とりあえず、マグマグに連絡してみようぜ。あと警察な」
「そうn「それは困るな」
刹那……屋敷のどこからかは分からないが、声が邸内に響いた。若い、男の声が
「「!?!?」」
「今、騒ぎになられちゃ困る。取り込み中でね」
今度はハッキリした。エントランス中央の大きな階段から声が……というより、あちら側から姿を見せてくれた。
「誰……ッ!?」
「テメェ!!!さてはドロボーだろ!!!怪し過ぎんぜ!!!」
ユウキが背中からダブルセイバーを取り出し、構える。
「一応、この屋敷にゃ"警備"で来たんでね!お前をとっちめてやるぜ!!!」
「待って、ユウキ…!」
しかし、もう静止の声は届かなかった。
「オラァァァァァァァアアア!!!!!」
階段へ走り出し、そのまま青年の方に斬りかかる。しかし。
「見えている」
「なァッ!?コイツ、手で受けやがったぁ…!?」
「このまま降参して帰ってくれると、嬉しいんだが」
「ンな訳ねぇだろ…………ッッ!!!」
(なっ……えっ…!?!?こ、コイツの手から武器が離れねぇ!?どんな握力してんだコノぉっ…!!!)
「チィッ…!!!」
ユウキは身の危険を察知したのか、武器を青年に掴ませて、その武器を足場にして後ろに大ジャンプした。
「ユウキ…!大丈夫…?」
「正直…ヤベーよ。なんだアイツ…!!」
「フンッ…………」
青年は武器を放り捨て、その場を去ろうとする。そして、その時こんな事を口にした。
「僕は…世界という"マシン"を動かす"ギア"でなければならない……そうじゃなきゃ……僕は……僕が…………」
その言葉が、後に大いなる意味を持つことになるとは…私ルミエーラとユウキは知るよしもなかった。