Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
「あぁ??お前がギアだぁ???変なことぬかしやがって…」
私とユウキは、ラスレニア邸に警備員のバイトとして赴いたが。そこは警備員、ましてや使用人の姿もないもぬけの殻状態だった。
そこに突如として現れた謎の青年と、現在交戦状態になっている。
「おかしなこと?おかしくない。コレは変わらない、ギアであることに変わりない」
「…言葉通じてンのかよアイツ」
「わから…ない。でも下手に、手を…出せない」
先ほどの光景、ユウキのダブルセイバーでの一撃を素手で受け止めてしまうような身体能力だ。迂闊にこちらから手を出して返り討ちに遭う可能性が高い。
ならば…
「ユウキ、ガンスラッシュに切り替え…て。私…は、テクニックで応戦…する」
「ヘッ、遠距離攻撃なら近づかなくても済むもんなァ!行くぜオラァ!!!」
むやみやたらに近づくよりかは、反撃されても回避する時間が少しでもある遠距離攻撃の方がこういう場合は得策だ。
「無駄だよ。ギアは固定された」
「意味わっかんねぇことばっか言うなゴラァ!!!これでも食らっとけ!!!」
ユウキが青年に向かって発砲する。普段ダーカーや原生生物などに向かって放たれる弾丸を人間に向けるのは些かな部分はあった。が、今はそんなことは言っていられないだろう。
階段を盾にして銃口を手すりの隙間から覗かせ発射された弾丸は真っ直ぐ青年に向かう。私は自慢ではないが目がいい。普通は捉えられない弾丸の軌道も一目で分かる。あのコースは頭だ。当たれば即死は間違いない。
…はずだった。
「なぁッ…!?」
「うそ…!!」
「ギアが廻る方向は、決して揺るがない」
何と弾丸は、青年の手の中で握り潰されていた。高速回転する弾丸を握り潰すだと???そんなの人間にできることではない…まるで…
「化け…物」
そう表現する他なかった。
「オイオイ、お前からそんな言葉が出てくるたぁ思わなかったぜ。マンガでも読んだか??」
「私は…前から漫画。好き、よ?」
「意外だなオイ。あとやめてくれよそんな純粋に好きそうな瞳を俺に向けるんじゃねぇ。なんか悪いことした気分だぜ」
そんな馬鹿話はさておき。弾丸が握り潰された、これは何よりの衝撃だ。だが、これならどうだろう。
「じゃあ…コレは、どう??」
私は脚に装着したジェットブーツにフォトンを溜めこみ、ソレを…
「バータ!!!!!」
フォトンを媒介して、大気を冷却し 射線上に氷柱を走らせる。氷属性初級技、“バータ”。
いくら弾丸が握り潰された事が信じられないと言っても、そこにはある1つの要因があった。弾丸が“手のひらより小さな実体”を持っていたということ。
しかしテクニックは実体があるようでそうではない。所詮はフォトンが集積して形となっているに過ぎない。
「これなら…?」
「……」
やった。氷に形作られた槍が胴体を貫いた。確かな手応えがある。やはりそういう事だったか。
「なァ…?」
しかし、安堵の感情をつく暇もなくユウキが不穏な声を挙げる。…まさか、そんなハズはない。手応えはあった。確かに氷の槍が青年の胴体を
「ギアは、止まらない」
貫いている。
「……!?」
有り得ない。胴体に図太い氷の槍が突き刺さっているのにも関わらず青年は平然としていた。わからない、わからない。
「アイツ…ほんとに人間かよォ!?」
「ッ…!!ユウキ、逃げ…よう!」
「あぁ、どうやらそれが良さそうだぜ…」
あちらから攻撃されることは無く、こちらからのわずか二発の攻撃を退けられただけであったが私たちは確信した。今はコイツに勝てない。逃げなければ殺されるのはこちらだと、本能で理解した。何かとてつもなく嫌な予感がする。
そして私たちは背中の方にある大きな玄関を開けて脱出を試みた。が、そんな逃亡の念虚しく。
「…!? 開か、ない…!?」
「嘘だろオイィ…!」
「だけど君たち二人の侵入は予想外だった。いわばギアの凹凸に紛れこんだ
ゴミのようなものだ」
「おい、アイツさりげなく俺らの事ディスってねぇか?ゴミって言われた気がすンだけど」
「お、お、お、落ち着い…て。あの人が、私たちの事…を、おディスり遊んだととところで…なななな何にもならない…わ」
「いや落ち着くのはお前だよ。ってかなんで若干お嬢様混じってンだよ」
だが、ゴミとディスられた以上。向こうにとって私たちは邪魔な存在であることに変わりはないのだろう。
口では混乱を装っておいて、脳内は至って平然であった。
「こう…なったら」
「おおい待てよルミエーラ。まさか行くってンじゃねぇだろな。あの奥に」
行くしかない。そう強気で言いたくはあったが、目の前の青年がいる以上何が潜んでいるか分からない。
だから、私は珍しくユウキの目を見ながら少しだけ強気でこう言った。
「行くしか…ない」
「…あぁもう。分かったよ行くよ。てめぇに珍しくそんな顔されちゃ、断れねぇよ」
「…そっちから、来てくれるなら問題はないか。いいよ、おいで」
そう言い残し、青年は二階の奥へと姿を消した。
そして同時に私たちも彼の跡をできるだけ避けるため、“一階”へと脚を踏み込むのだった。
※
「クッ…!!!」
「セツナ!大丈夫??」
俺とシルヴァは、四階の廊下で化け物と化した我らが主人。アーリお嬢と交戦状態にあった。
さすがはお嬢様。というべきなのだろうか。交戦に入って早10分と経つが一向にダメージを負わせてる様には見えない。あの肥大化した左腕が異常に硬いだけならまだしも、意外に素早いのだ。
胴体部分はまだ特に異常が見られなかったことから察するに、アーリお嬢の身体的
変化は二つ。左腕とそもそもの運動能力が強化されているようだった。元々の運動能力の低さなど感じさせない動きだ。
「あぁ、平気だ。あの左腕でしか攻撃してこないお陰か、軌道を見切り易いからな」
…などと虚勢を張ったは良いが、どうにも身体が追い付かなくなっている。普段であればこの程度で疲弊したりはしないのだが。
…やはり、今目の前にいる相手が主だからだろう。余計な力を入れまいと踏ん張っていたのが余計に体力を消耗してしまったようだ。
「良かった…なら、もう一踏ん張り頑張るよ!!ハァァァ!!!」
シルヴァが両手にナイフを持って飛びかかる。アークスが使う技に似たような技があったな。確か名前は……
「食らえぇぇぇぇぇぇ!!」
“ファセットフォリア”。跳躍し目標に初撃を当てた後、目にも留らぬ速さで切り刻む、とかいうツインダガーの技だったか。
「コレで…フィニッシュ!!!」
フォトンを纏った目にも止まらぬ早業でアーリお嬢の左腕を切り刻んでいき、トドメの攻撃が腕の根元を切った。
『逞帙¥窶ヲ縺ゅj縺セ縺帙s繧上=縺√?繝シ繝シ繝シ繝シ??シ?シ?シ』
左腕を丸ごと切断…というわけにも行かなかったが、左腕の硬質化した体表を削り、そこから大量の血液を噴射させた。軟質化に成功したのだろうか。
「セツナぁッ!!!今だよ!!!」
「分かっている!!!!」
俺はここぞとばかりに走り込み、アーリお嬢の内側へと潜りこんだ。そして俺はお嬢の顔を見ることなく、左腕の根元に向かい大太刀を上に向かって全力で振りかぶった。刃にフォトンを纏わせ、肉と骨を上手く斬られる様に。
アークスの技に、こんな名前の物があったろうか。確かソードの…
「ライジング、エッジッ!!!」
だったか。
フォトンを溜めこみ、解放しながら身体を捻り大太刀を上に向かって振り上げる。
『縺?≦縺」窶ヲ縺ゅ=縺√=縺√=縺?シ?シ?シ?シ』
アーリお嬢から悲鳴とも取れる絶叫が聞こえる。そして、先ほどの切り傷からの出血とは比べ物にならない、おびただしい量の血液が“斬り離された胴体と左腕”から噴射していた。
よし、これでアーリお嬢から脅威はほぼ去ったと言っていいだろう。脅威の中の7割はこの左腕だ。これを胴体から斬り離すことができたのは大きい。あとは…
「本体をどうするか、か」
「セツナは、どう?あの子にトドメ刺せる?アタシは、無理だよ…うん、無理」
シルヴァがナイフを持った両手を降ろし、これ以上戦闘の意志が無いことを分かりやすく俺に伝える。
俺だってそうしたい。主に自らの刃を立てるなど、本来ならばしたくはない。だが今はそれをしなければならない。誰かが手を汚さなくてはならないのだ。
「その気持ちは俺にも分からなくもない。だが…これ以上お嬢が苦しんでいるところを見るのも、俺は……望まない」
俺は再び大太刀を構え、丸腰になったアーリお嬢にトドメを刺そうと走り出した。
勝った。俺はそう確信した。
しかし、そこからが本番だとは俺もシルヴァも思いもしなかった。
『縺?$縺??ヲ繧ゅ≧縲√d繧√※縺?▲窶ヲ窶ヲ』
「「!?!?」」
一瞬だった。満身創痍と言ってもいいほどダメージを受けたアーリお嬢が目の前から消えた。俺もシルヴァも予想外だった。
「バカな……お嬢、どこへ!?」
一瞬。その一瞬で場が凍り付いた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
「シルヴァアァァ!!!!!」
シルヴァの細い左腕が食いちぎられている光景が、目の前に広がった。