Phantasy Star Froger's   作:Father Bear

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②ダーカー撃退戦(前編)

「フェレーナ・ネクォール。ダーカーを殲滅します。」

 

まだ朝日が建物のガラスに反射してキラキラと輝いていた朝方、突如ヤツ等はやってきた。

 

「よっ……!」

 

私は自室のベランダから飛び降りた。目の前で一般人が殺されているのだ。昨日、私の隣をすれ違ったかもしれない人々が。階段などと悠長な事を言っていられない。

 

「フェレーナ!!はぁ………面倒くさい………」

 

フェレーナに続いて、ノアも装備を装着し終える。

 

「ノア・ダンフォード…。出撃る!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!!!」

 

ジャキィィィィィィィィィインッッ!!!!!!

 

着地に合わせ、私はデュアルブレードを市民を襲っていたダーカーに思い切り叩きつけた。あの高さからの攻撃だ。ひとたまりもない。

 

『『『ギィィィィィィィィィィィィィィィィィイイッッ!?!?』』』

 

仲間の一匹が殺され、動揺しているかの様な鳴き声が聞こえた。まぁ恐らく……彼らにはそんな意識は無いので、『新しいエサが来た!殺せ!』としか思っていないのであろう。

 

「あと二匹…!!!食らえフォイエ!!………あれ?」

 

テクニックが出ない、そんなハズがない。まさか行動制限?いや馬鹿な。船内がこんな事になっているというのに行動制限をかけられたままなんていうのはあり得ない。何かトラブルが起こっているハズ。

 

「レーナ!どうやら、大規模な通信障害のせいで私達の通信機器や行動制限解除コードが全部封じられているみたい。」

 

「そんな………。何で………」

 

「さっき言った2つは、旗艦の一番艦"フェオ"を介して私達に送られてくる。だけど、そのフェオがやられたのか…もしくはこのギョーフに致命的なダメージが加わったのかもしれない」

 

「そんな……じゃあ私達は……」

 

ハッキリ言って、状況は最悪だった。こんな状況では武器や防具もなんの役にも立たないガラクタだ。

「……って危ない!!よいしょ…………っと!!!!」

 

『ギギィッ!?』

 

『シャーー!?!?』

 

私は地面に突き刺さったデュアルブレードを引っこ抜き、残りの二匹に向かってブン投げた。いつもならテクニック等を使って遠距離攻撃を行うけれど、こう制限がかかっているのでは脳筋まがいの戦法しか取れない。

というか……何で制限がかかった状態で装備を装着出来たのだろう……。

 

「わからない……。ただ、さっきみたいに攻撃出来たり高所から飛び降りても無傷ってのは、武器や防具を使えてるって証拠。中途半端に制限が解除された状態なのかもね」

 

「確かに……言われてみれば……さっきのダーカー、倒した感触がいつもと同じだった。テクニックが使えないのは残念だけど…」

 

「……というか、アンタなんで"エトワールなのにテクニックが使える"の?反則じゃない?」

 

「それは…………まぁ、私が天才だからじゃない?」

 

「………チッ」

 

何か聞こえた気がするけど、聞かなかった事にしておこう。私は優しいからね。

 

 

 

 

「フォトンが使えないと……ハァッ……ハァッ……ここまで厳しいのね…ゲホッゲホッ……!」

 

戦闘開始から約2時間、私のノアの体力は限界に近かった。自分達がどれほどフォトンに依存していたか見に染みて伝わってくる。

そもそも相手をしているのはナベリウスの原生生物でもなくリリーパの機甲種でもなく、ダーカーなのだ。

普段はフォトンを使ってダーカー因子を中和する事で超最低限の汚染で済ませる事が出来ていた私達アークスだが、今はその能力を完全に絶ち切られている為、洗浄がまるで出来ていない。

 

「……とりあえず、私達に出来る事は全部やった。住民の避難誘導やその護衛。追撃。殲滅」

 

「そう……だね……ゲホッ……」

 

だがしかし、救えなかった命もあった。この状況下では仕方ない…と言えば不謹慎だろうか。私達には今どうする事もできない。キャパオーバーだ。

途中で避難シェルターが無いだの人数の限界だという声もあったが、心底くたばれと思ってしまった。

 

「……救護隊も全滅したんだっけ」

 

「えぇ…あそこはフォースやテクターとかの、フォトンに完全依存した天才達が集まった部隊よ。近接格闘戦じゃ勝ち目はないでしょうね」

 

「そっか…じゃあ私達は自力で帰るしかないんだ…」

 

そうなると困るのは、もう私達が戦闘不能という事実であった。武器も防具もフォトンを少量しか纏っていなかったせいかボロボロ。戦闘服だって所々焼け焦げたり、避難誘導している最中に浴びた返り血がついてしまっている。見てくれは完全に歴戦の勇者さながらの格好だった。

 

「でも悪い事だけじゃないよノア」

 

「………?」

 

私が突然すっとんきょうな事を言うので、ノアはそれに負けないくらいなすっとんきょうな反応を返す。

 

「見て、この顔や身体のケガ。これでもうしばらく休みが続くわ!」

 

「はぁ…………アンタ馬鹿?」

 

ノアが私におもむろに背を向けこう言う。

 

「休みが延びると何があるか、分かる?」

 

素直に分からない。なんだろう……

 

「…わかんない」

 

「知らないの?」

 

ノアがズッと顔を寄せてくる。

 

「アークス稼業が始まるのよ」

 

とたんに笑いが込み上げてくる。こんな状況で私達は何を言っているのだろうか。でもお陰で暗い空気が吹っ飛んだ。やはりノアといるととても安心出来る。

 

「とりあえずレーナ、移動するわよ」

 

「うん……ヤツらにバレない様に…」

 

ノアに肩を貸してもらい立ち上がった、その時だった。私は最悪な状況を目にする。

 

「おかあ"ぁぁぁぁぁぁあさぁぁあ"ん!!!!おとう"さぁぁぁぁぁぁぁああぁああ"ん!!!!」

 

頭は吹っ飛ばされ、内臓が抉り出され貪り尽くされ惨殺された母親と父親らしき亡骸に抱きつき号泣したまま動かない少年と、その背後に。

 

『ギシャァァァァァァァァアアアアァァァ!!!!!!』

 

ダーカー。最悪だ。

 

「………ッ!!!」

 

「フェレーナ……!?馬鹿、何を…!」

 

戦闘不能ながらも、何をすればいいかは分かっていた。私は肩を貸してくれたノアを振り払い、全力で少年に駆け寄った。

 

『ギギィッ!!!!ギィィィィィィィィィィィィィィィィィイイッッ!!!』

 

「間に合ってぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

『キシャァァァアッ!?』

間一髪だった。私は少年を抱き抱え、ダーカーから少し距離を取った所に着地した。髪の先端が若干刈り取られてしまったがそんな事を気にしている余裕などない。ある訳がない。

 

「ボク!?大丈夫!?」

 

「グスンッ……おねーちゃん誰??」

 

私はついカッとなって少年に問い詰めた。「大丈夫って聞いてるの!!!!」と。

 

「だ、大丈夫……」

 

私はどこか少年を連れて身を隠す所が無いかをすぐに調べた。すると…

 

「アレは……避難シェルター!?しかもあそこは……」

 

「フェレーナ!!こっちの相手は私がする!!アンタはその子連れて早くあのシェルターに!!!!!!」

 

「分かってる!!!!!!ボク、走れる!?!?」

 

「う、うん!」

 

「強い子ね、行くよ!!!」

 

私が目線を向けたその先には、"本来あったハズの避難シェルター"があった。

本来あそこは大勢の避難民を収用するための小型円柱系の移動式シェルター(トウキョウで言う地下鉄の様な物)だったのだが、大規模な通信障害の影響か、シグナル反応を私達が受け取れていなかったのだ。しかもこのシェルター、コンクリートの亀裂からすっぽりと出て来てしまっている。いわば剥き出し。しかし頑丈なシェルターである事は間違いない。

ここに避難すればまず間違いなく助かるだろう。だがしかし……………

 

「ッつぁぁぁあっ!!!」

 

「…!! ノア!!!」

 

「構うな!!!いいから行って!!!!」

 

私達を庇って一人傷付くノアを尻目に、私と少年は壊れたシェルター内に飛び込んだ。

 

 

 

「観測役、状況は?」

 

「現在、七番艦ギョーフはダーカー因子によって構成されたネット、通称ファンジによって艦そのものが拘束されています。そしてこちらからの通信を一切受信しません。こちらからも、恐らくあちらからも通信は完全に遮断されている模様です」

 

「避難民は?」

 

「脱出シェルターによって、民間人のおおよそ6割が脱出完了。残りの4割は死亡したものと思われます」

 

オペレーター達が淡々と状況を報告していく。人でありながら、まるで人の心がない様であった。

だがしかし、そうでもしなければこの果てしない航海などやっていけないのであろう。強い女達だ、と心から尊敬の意を評す。

 

「それで、隊長。どうしますか?」

 

「たかがファンジ…されどファンジ。艦全体を包み込む程の質量だ。破壊など…」

 

その時だった。

 

バリィィィィィィィィィン!!!!!!

 

"真空空間にすら響く"程の轟音を響かせ、超大型住居ポッドの隔離窓ごとぶち破って、何かがファンジを破壊したのだ。

その瞬間、脳が揺れる感覚を覚えた。

 

「ぐぅっ………!!!ああぁぁぁあっ……!!!!」

 

「なっ……!謎のエネルギー波が、隔離窓、及びファンジを貫通!!!」

 

バカな、あり得ない。行動制限下でどうしてそのような攻撃が出来ようか。

 

「本部が隠した新兵器か!?」

 

「そんな情報、どこにもありません!!船内の映像、出します!!!!」

 

そうオペレーターに言われ、"俺"はモニターに写し出された艦内の様子を見て唖然とした。

思わず声が出てしまった。何を見たか??

 

「「「「何も無い!?」」」」

 

拍子抜けする様な光景だった。

開けられた穴の直径はおよそ40m。放たれた攻撃から察するに、超巨大なラ・グランツの様な攻撃なのは容易に把握できた。なのにだ。それらしき痕跡が何一つとしてない。

兵器なら兵器で、置かれた跡だとか銃創の様なモノが残るハズ。

 

「本当に……これを……人が……?」

 

俺は、モニターに写し出された破壊の痕跡を見て思わず絶望した。

コレを、同じ人がやった。とは…認める事が出来なかった。

 

「化け物……か」

 

悪魔か天使か。その後艦内をくまなく捜索隊が確認したが、ダーカーどころか、赤子1人生存者は確認出来なかった。

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