Phantasy Star Froger's 作:Father Bear
「フェレーナさん?」
「………………」
フェレーナさんの面影に酷似した謎の人物が突如として目の前に立ち塞がった。
前髪で顔が隠れているが、担当をしているだけあってそこにいるのがフェレーナ本人でない事はすぐに分かった。
「…誰?…ここは、関係者以外立ち入り禁止よ。…迷子なら、待合室まで送ります」
すると、顔を上げる事もなく。そこから動くでもなく。彼女はこう言った。
「私が…誰だったら何だと言うの?」
????
質問の意図がわからない。
私が誰だったら??
「…わからない。でも悪いけど、ここであなたに付き合ってる暇はないの」
「どうして??何故付き合ってくれないの??」
刹那、姿を消す。
「………ッ!?」
最悪だ。武器も防具も装備していない状態で。フェレーナに、"敵"に捕捉された。
どこ、敵はどこn「早く質問に答えてよ」
「~~~ッ……!!!」
一瞬だ。一瞬で敵は私の真後ろに、距離はほぼ0m。
「展………ッ開!!!!」
私はそう言いながらせめて服装をと、戦闘着を展開しながら身体をクルリと回転させ敵に肘打ちを
「………………??」
頭に喰らわせれた"ハズ"だった。腕は頭に"めり込んだまま"そのままスカッとすり抜けて奇妙な静寂を切る音を響かせた。ここで初めて彼女(?)の顔がクッキリと視認する事が出来た。
その顔は………紛れもなく、フェレーナのまんまの顔だった。
「……あなたは、人間?」
「私の存在には何の意味もない。よってその質問にはなんの意味もない」
まばたきすらせず、私の目をただ見つめる。目の輝きはまるで死んでおり、非常に不気味な雰囲気を醸し出していた。
それに先ほどから言っている事がちんぷんかんぷんである。これ以上話しても何の意味も………"意味"?
あれ……………私………"ここで何をしようとしたの"?
「私に接触した事で、あなたの"意味"も消失した」
視界が歪む。膝が砕ける。
「おやすみ」
解除される戦闘着の感触を最後に、私の意識はここで消えた。
※
「えぇ……!?私がそこに……??」
「…うん……確かに、いた……けどその後どうなったか覚えてないの………」
ルミエーラの話を聞いて思わず驚愕した。
彼女の話を聞く限りだと「廊下を歩いていると自分にそっくりな女性がいていきなり気絶させられた」、としか受け取れない。
断っておくがソレは私ではない。本人だからこそ言える真実である。
ルミエーラが部屋を出たのが午後2時。ルミエーラが発見されたのが午後3時過ぎ。簡単な話、事件はその間に起こった事になる。
私はその時間、ギアと名乗った青年がお見舞いに来てくれたので、それの応対をしていた。
「………幽霊……な訳ないよね………」
「………"わからない"」
そこにいるかどうかも分からなかった。と、ルミエーラは続ける。話だけ聞くととても奇妙な話だ。
「…でも、もう1つわからない事があるの」
「なに…?」
ルミエーラは立ち上がり、おもむろにこちらを向きこう言った。
顔は真剣そのものだ。
「…何で貴女は勝手に、出歩いているの??」
「………え?」
「…何で貴女はケガ人なのに、許可なく出歩いているのか、と聞いているんです。さぁ、早く戻りましょう」
深刻な話の最中にそんな事を言うものなので、思わずマンガの様にガックシしてしまった。
「えぇっ…??ちょ、そこはその事で不思議に思ったこと言うんじゃないのっ??」
ルミエーラは無言で私と肩を組み、そのまま強制的に自室に引きずろうとした。そういえば彼女は、私が発見者の悲鳴を聞いてここに来たという事を知らないのだ。
「ちょっ!勝手に出ちゃったのは謝るけど、それはちゃんと理由があるからで………」
「問答無用。上司にバレたら、私はクビになってしまう。お給料がもらえなくなってしまう」
ダメだ、話をまるで聞いていない。
「も~う…………………っ!?」
そんな急激なほんわかムードの最中、急に背筋に凍る様な、とても冷たい視線を感じた。
最初はルミエーラがこちらに視線を送っているのかと思って声をかけてみたが、
「逃げようと口実を作っているなら、無駄。さっさと戻るのよ」
と一点張りである。この反応の通りなら彼女はこの視線の正体ではない。周りを見渡しても人から虫一匹に至るまでそれっぽ影はなく、まるで"幽霊"の様な感じ………
「………まさか、ね」
※
ベッドに強引に寝かされ、晩御飯も食べて、就寝前の検査も終え、後は寝るだけという時間になったいつでも真っ暗闇の宇宙時間午後23時。
……と言ってもいつもなら同居人ノアとゲームをしていた時間だったのだが、この環境下ではそんな贅沢は出来なかった。
そして何より私の不安を煽るのは、ゲームが出来ない事でも、昼間聞いた幽霊モドキの話でもなく。いつも隣にいたノアが居ない事だった。
私が孤児院にいた時……まだ8つくらいの時だった。とても優しかった義母と義父は私は養子としてダンフォード家に招いた。大きな敷地に大きな家。初めて玄関をくぐった時、私はとても怖い思いをしたのを覚えている。格式を重んじる凝った装飾が付けられた家具の1つ1つが、幼い私の心を締め付けた為である。
私は怖くて怖くて。家に入ってから義母に抱っこされてベッドルーム(自室ともいう)に運ばれるまでの間目を開ける事が出来なかった。
義母は「大丈夫、怖かったよね」と私を抱き、あやしてくれた。その時、後から女の子がニッコリと、無邪気な笑顔で私の部屋に入って来たのを覚えている。当時まだ11のノア"お嬢様"である。
彼女は大人しかった私を庭に連れ出しては、お花を編んでアクセサリーや栞を作ったり。ある時は勝手に義父の書斎に入って本をくすみ、それを読んでいる間に寝てしまい、義母に見つかって怒られた事もあった。学校にも通い出し、毎日一緒に登校した。
彼女は初めて会った時から、両親を喪い沈みきった私を実の妹の様に扱ってくれた。私はそれがとても嬉しくて、毎日が楽しかった。
しかしそんな奇跡の様な日常は、突如として崩壊する。
「ダンフォード夫妻殺人事件」。後に"疫病神の贈り物"と言われる事件が発生する。私が13。ノアが15の時である。
犯人は裏口から侵入し、その時ゴミを片付けていた第一発見者である義母を、悲鳴が上げられる前にアークスが使う様な銃剣で射殺。死体はゴミ処理施設で四角く、ミンチにされた状態で発見された。その後銃声を聞き付けた義父が駆けつけ、またしてもあっけなく殺された。義父の死体は頭、胴体、手足がバラバラに切断された状態で冷凍庫に入れられていた。
ちなみに犯人は5年経った今でも捕まっていない。
その時私は学校の宿泊研修。ノアは修学旅行に行っており無事。その事件の事は、事件発生から2日経った時に聞いた。
世間は私達姉妹に深い同情の意を示してくれた。しかしその行為は私達に出来た深い傷に塩を振る結果でしかなかった。
後に何故か、マスコミは私の両親が"両方共死亡している"事から「あの子は疫病神だ」「あの旦那もあんな子どうして引き取ったんスかねぇ」と、まるで汚物でも見るかの様な目で私を見だした。
ある週刊誌が「悲劇の少女フェレーナ・ダンフォードは疫病神だった」等と書かれた記事を掲載した事で、そこからの私に対する世間の目は冷やかになった。
家にいれば石を投げつけられたり、複数人で私に大声で罵倒したりした。それに耐えられなくなり、私とノアは義父と義母、私達姉妹4人で住んでいた家を出る事になった。
しかし、だからといって何か変わる訳でも無かった。むしろ悪化の一途を辿るばかりである。すれ違う人も、私がフェレーナである事を知った瞬間大きく道を譲ったり、携帯端末で私の写真を撮りSNSに掲載する等。没落貴族と化した私達姉妹に同情を向ける者など居なかった。
しかし、それでもノアは私の手を取り、一緒に歩いてくれた。彼女自身もとても辛いだろうに。今にも泣き出しそうな顔で私を、無言で引っ張る。世間から私を護る為に。
「それでも……それでも………!!!」
たとえ帰る場所を失っても、両親を喪っても。涙を浮かべつつ決して泣く事はなく。ただただ引っ張る。
そして、二人のお小遣いと家に残された僅かなお金でやりくりし、私達はそれまでいた"二拾四番艦ダエン"から、先日沈没した"七番艦ギョーフ"へ渡航する便のチケットを購入し、一時的な避難を成功させる事が出来た。
事件発生から僅か三週間の出来事である。
その後二拾四番艦ダエグは私達がギョーフについた一週間後に沈没したらしい。任務に出ていたアークスを除き、乗員は全て死亡した。
「思えば懐かしいなぁ…あの後勢いでアークスになって、色々な事したよね……。私はアークスしながら何故かスカウトされて雑誌のモデルとかになっちゃうし」
疫病神、と罵られた私を。ギョーフの人々は優しく迎えてくれた。ここでは私達に対する認識は全くの逆だった。おかげで何も不安に思う事もなくモデルとしてデビューする事が出来た。
その証拠に、ギョーフではダエンの事をこう言うのが流行語大賞になっていたらしい。"ダ冤罪"、と。
※
そんな昔話を思い返していたら、いつの間にか午前0時になっていた。自分でも思わずビックリするくらい思い耽っていた。
「………じゃあ…今日はちょっと早寝しちゃおうかな……」
深く毛布を被り、襲いかかる眠気を受け入れそのまま眠る。
『………縺頑ッ阪&縺√=縺√=縺√≠縺ゅ≠縺ゅ=縺√=繧�
縺顔宛縺輔=縺√=縺√≠縺ゅ≠縺ゅ=縺ゅ≠縺√s
縺ゥ縺薙♂縺峨♀縺翫♀縺翫♀縺�…………』
ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……
「んんん…………???」
始めは寝ぼけて点滴袋から液体が漏れているのかと思った。しかし点滴など受けていない事を思い出し我に返る。
ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……
水音(?)のような音が一定のリズムで鳴る。
「…………なんなんだろう……」
私は自身にレスタをかけ、一時的に痛みを失くしベッドから降りた。
もうこんな時間だ。バイトの皆さんはお帰りになったろう。いても常駐のアークスでもない年増のナースばかりなので、今なら抜け出して万が一見つかっても捕まる事はないだろう。
「………こっちからかな………」
音を頼りに忍び足で廊下を歩く。もう既に消灯時刻を過ぎている為、非常灯が淡く発光して若干ではあるが先は見える様になっている。
「ルミエーラの言ってた幽霊かな………??怖いけど、ちょっと楽しみかも……」
怖い物見たさによる若干の期待を胸に、廊下を進んだ。
チャプンッ
何か、水溜まりのような所を踏んでしまったようだ。先ほどから鳴っている水音はコレが正体だろうか。
「ん………?でも、それにしては……」
上から水滴は落ちてこない。それどころかまだ音は止まない。
「…なんなんだろう……この水……」
私はこの間のシェルターの事を思い出し、ここにも火災報知器やスプリンクラーの類いがある可能性を考慮し、手のひらの上に光属性のフォトンを丸状に整形した。
そして、そこにあった水らしきものは……
「きっ……」
大量に溜まった"血液"だった。
「きゃぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああああぁぁッッッ!!!!!!!!!!」
思わず悲鳴を上げてしまった。私は完全に腰が抜け、後ろの壁に思い切り肘を当ててしまう。そしてちょうどその壁に埋め込まれた警報装置を偶然押してしまった。
ジリリリリリリリリリリリリリリリィィィィィィィィィィイイイイッッッ!!!!!!!
けたたましいアラート音が鳴る。まずい、これでは職員どころか他の入院してる人まで来てしまう………事はなかった。
「………あれ……?何も騒ぎが起こらない……」
アラート音が止み、淡く光っていた非常灯が一斉に発光。そして、明るくなった事により血溜まりが"続いている事を知る"。
「んえぇぇぇええっ……???」
私はもう立てない。どうしよう、どうしよう、と脳内を駆け巡る。
そして、血溜まりの一番末端を明かりが照らし出す。そこには………
『………縺頑ッ阪&縺√=縺√=縺√≠縺ゅ≠縺ゅ=縺√=繧�
縺顔宛縺輔=縺√=縺√≠縺ゅ≠縺ゅ=縺ゅ≠縺√s
縺ゥ縺薙♂縺峨♀縺翫♀縺翫♀縺�…………』
ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……ヌチャッ……ベチャンッ……
非常に巨大な肉の塊が"歩いていた"。人間の様に二本足で。ゆっくり、ゆっくりと。
「いっ……イヤァァぁぁぁぁあっ…………」
私は声を抑える事が出来なかった。私の目線の先に写る化け物は、声に反応する様にこちらを向いた。
そして、その化け物の全容が視界に入る。
「…え…??」
その化け物には顔が着いていた。人間の様な顔が。
私は、その"顔"を見て思考を止めてしまった。とんでもない奇形だったか?違う。アレは……………
「私が……助……けた………」
あの顔は、あの時の男の子の顔だった。