Phantasy Star Froger's   作:Father Bear

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⑦鳥目線

「ん……んん…??」

 

目が覚めると、いつものマンションの天井……ではなく、どこか見覚えのある白い天井の部屋に寝かされている事に気付く。

かけられた時計を見ると、太陽がある星ならもう夕方の宇宙時間午後5時であった。

そして横を見ると"ノア・ダンフォード様"と書かれた白いネームプレートが置かれていた。

 

「…………………!!」

 

最後に覚えているのは、消えつつある意識の中で、眠りこけるフェレーナと男の子の寝顔だった。私はついホッとしてそのまま気絶した……という事だった。

そしてここにいるという事は、私達は無事救助されたと言うことだろう。

私の予想だとここは艦立病院だろう。昔アークスになりたての頃、ボコボコにされては寝かされをしょっちゅう繰り返していた。

 

「……という事は…フェレーナもここに?」

 

少し、安心した。少しというかかなり。

 

「……………とりあえず、トイレ行こうかしら。よいしょっと……」

 

私は湧いてきた尿意を解消すべく、ベッドを降りトイレに向かう。ベッドを降りた時にわざと大袈裟に動いてみたが、どこにも痛みはない。むしろ前より調子がいい。肩凝りや腰痛など、ストレッチ不足がたたって痛んでいた所もすっかり治っていた。ついでにやっておいてくれたんだろう。

スライドドアを開き、左前方のすぐ目の前にトイレがあるのに気が付いた。ラッキーだ。探す手間が省けた。

 

「良かった、近くd……キャッ……」

 

「うおっ………」

 

私の不注意だった。寝ぼけているのもあるが、左右の確認もせず飛び出して誰かとぶつかってしまった。これが自動車道なら私は轢かれて死んでいたろう。

 

「す、すみません。周りを見ずに私……」

 

「いや、いいんだ。気にしないでくれ。ずっと下を見ててしまってた。気付けなかった僕も悪い」

 

ぶつかった方向を見ると、スラッとして茶髪の男性そこにいた。フェレーナが彼を見たら恐らくこう言うだろう。「イケメンだね!」と。まぁ否定はしない。

パッと見ただけでも顔立ちが整っているのが容易に分かる。私でもイケメンだと思う。

 

「邪魔してすみません。どうぞ、お先に」

 

「は、はい…」

 

しかし、何故だろう。あの男が纏っていた雰囲気はどこか覚えがある。いつ、どこでまでは分からないが。

 

(いや…覚えてる覚えてないというか……)

 

謎の違和感が襲ってくる、宇宙時間午後5時過ぎ。

 

 

 

 

 

少年と肩を組みながら走って早5分。いつもなら余裕だが、今の今まで寝こんでいた私には少々苦であった。正直吐きそうだ。

すると途中で少年はそんな私を見かねてか。適当な部屋のドアを開け、その中に隠れさせた。

 

「オイ、あんた。大丈夫か??」

 

「はぁっ……はぁっ………えっ…う、うん!もっ、もう大丈bゴホゴホッ」

 

「ぜってぇ大丈夫じゃねぇだろソレ。今にも死にそうな奴のする咳だぞソレ」

 

「あっ……アハハーー……あっそうだお礼……えっと…」

 

そういえばこの自分を"味方"だと豪語したこの少年。まだ名前を知らなかった。とりあえず、自己紹介から始めてみようかと試みる。

 

「私はフェレーナ。フェレーナ・ネクォール。あなたの名前は?」

 

「……ハァ??ユ、ユウキ・フォーラルだ」

 

「ありがとうユウキくん!助かったよぉ。まだ"子供"なのに偉いんだねぇ」

 

するとどこかから『ブチッ』と何か破裂するような音が聞こえた。あの子が追って来たのだろうかと思い、私は立ち上がり身構える。

しかしそんな気配はなく、安堵して再びしゃがみ込むと

 

「テメェ次はねぇからなテメェおい」

 

と怒りの形相メーターMAXの如く憤怒の表情を剥き出しにし、こちらを見つめていた。

 

「???????」

 

何かわからないが、私が何か言ってしまった様だ。後で聞いた話だと彼はあの幼い子供の様な見た目からは想像できない"21"歳らしく、とても申し訳ないと思った。

知らない事は罪だとはよく言ったモノだと思う。

 

「…まぁいいや、とりあえずテメェは安全にここから脱出させる。それが俺達の仕事だ」

 

"達"??この少年1人ではない、という事だろうか。

 

「ほ、他にも仲間がいるのっ?」

 

「オイあんまり大声出すんじゃねぇよバレるだろが」

 

見た目の割にはかなり口が悪い。きっと周りの大人達に恵まれず生きてきたのだろう。まだこんな小さいのに、可哀想だ。

 

「……まぁ、いる"ハズ"だ」

 

「ハズ?それってどういう……??」

 

「知らねぇよ。この病院に入ってから通信の類いが全部使えねぇんだ。ったく装備の故障かぁ??」

 

通信不良………どこかで同じ現象があった様な……

 

ヌチャァッ……ヌチャァッ……ヌチャァッ…………

 

「「!!」」

 

外から音がする。どうやらここまで追ってきた様である。ゆっくりと、ゆっくりと。フォースやテクター達の回避動作の様に非常にゆっくりとしたリズムで足取りでこちらに近付く。

 

「……全く、どうやらヤッコさんから出むいてくれたみてぇだ。やってやんぜ!!!」

 

1人で戦うというのか、あんな化け物と。というか待て。

 

「待ってユウキくん!!行動制限が…!」

 

「おら俺ァここだぞ化け物!!!!」

 

刹那、ユウキの身体の周りに蒼い粒子の奔流が出現した。まさかアレは……

 

「食らえクソォォォォォォッ!!!」

 

 

|

トクエーサー

 

 

粒子の奔流もといフォトンを纏い、ダブルセイバーを構え突撃する。ユウキはあろうことかフォトンアーツを使用したのだ。制限がかかった状態で何故そんなに動ける。

そもそも解除コード制限下で動けるのは守護騎士の二人だけなのは業界内ではあまりにも有名な話。知らぬアークスなどいない。そんな常識すら打ち破りこのユウキはフォトンアーツを発動させた。…の、だったが

 

「………ありゃ?」

 

「………え??」

 

先ほど見たものは幻なのか、誠なのか。突然纏っていたフォトンが消え失せる。

 

「うっっっっそだろこんな時に時間切れかよぉぉぉお!?」

 

彼は今"時間切れ"と言った。この行動制限下で戦闘できる"何か"を彼は握っているのだろうか。

そんな事はどうでもいい。

 

ヌチャァッ……ヌチャァッ……ヌチャァッ…………

 

怪物がユウキにゆっくりと近付く。マズイ、このままでは彼が食われてしまう。

 

「ユウキくんっ!!!!!」

 

我慢できなくなり、思わず部屋から飛び出してしまった。

手を伸ばす。助けなければ。早く、助けなければ!!!!

………だがしかし、そんな最悪な予想は大きく外れる事になる。

 

ヌチャァッ……ヌチャァッ……ヌチャァッ…………

 

「「…………???」」

 

ユウキを股の間に通し素通りした。こちらやユウキの方向を見る訳でもなく、攻撃するでもなく。怪物は変わらずゆっくりと歩を進める。

 

「おっ………おぉ~~………な、なんだぁアイツ??」

 

「無視した……????」

 

一見するとこの状況は、"ユウキが攻撃しなかったから何もしなかった"という風に見えるかもしれない。確かにそれなら最初彼が攻撃した時追いかけてきたのに、今は何故かおとなしくなっている説明はある程度つく。

だがそうなると説明がつかない事象が1つある。それは……

 

「なんで………最初遭遇した時、私に近付いたんだろ…」

 

あの怪物は攻撃行動を取っていない私に近付いてきたのだ。

これが謎だ。一体何が違うというのだろう。

 

「オイオイあいつ、俺にビビったのか???逃げて行っちまったぜ?」

 

「そ、そうなの…かな??」

 

「違いないぜ、さぁこうなったら好都合だ。お前をさっさと外へ………」

 

「待って!!"あの子"を放って逃げろっていうの!?」

 

私は不思議と胸に、アークスとしての"正義感"とあの子の命を助けた者としての"責任感"が実感としてあるのを感じた。

だからこそ、私はここから離れる訳にはいかない。あの怪物……"名前も知らない"男の子を見届けなくてはならない。

 

「……ッアァン???」

 

ユウキは"何言ってんのこの女"と言わんばかりの表情で私を睨む。

 

「私もアークスなの。だから残って戦う。あの子は私が救った命だから!」

 

「何言ってんだバカか???テメェに何ができる???武器もない防具もないフォトンも使えねぇ。俺も同じだがよォ、俺らがアイツに出来る事なんてありゃしねぇんだよ!!!」

 

「でっ……でもっ!!!」

 

「なんだったら何か??自殺志望だったら付き合えねぇなぁ!?いいか、フォトンが使えねぇアークスなんてのは翼をもがれた鳥と同じなんだよ!!」

 

彼の言っている事は口の悪さはあれど正しい。

私達には、何も出来ない。

 

「それでも私はっ……!信じてるの!!」

 

ユウキの両腕を左右から掴み、私は彼にこう言った。

いつ教わったかも知らない。気付けば私の中にあったあの言葉を。

 

「どんな事も……いつか終わるって!!!」

 

どんな出来事も、どんな"命"にだって。

 

 

 

 

物陰に潜み、怪物…いや、あの子を観察する。

 

「オイオイ、そりゃぁマジかよオメェ」

 

「……たぶんだけど。でも今までの行動から察するに……」

 

結論から話そう。あの子は恐らくフォトンの流れを探知して、私達の位置を特定していたのだ。

光属性のフォトンを集めて灯りにしていたときも、ユウキがフォトンアーツを放った時も必ず"フォトンが流れていた"。

対して。光を消した時、フォトンアーツが不発に終わった時。この時"フォトンは流れていない"。

私が探していたのはこの差だった。

つまり彼が摂取しているのは人間の肉等ではなく、我々の中に循環するフォトンである。

 

「今から証明してみせる」

 

私は物陰からゆったりとした足取りで、怪物の目の前に立った。

 

「…………当たり」

 

どスルー。先ほどのユウキと同じ様に、気にも留めない様な感じで私の真横を素通りした。

フォトンを感知する。この能力はもう紛れもない事実となった。

 

「なるほど……しかし皮肉なモンだなオイ。俺達を守るフォトンが、まさかアイツを誘き寄せるエサになってとはなぁ」

 

「でもそのフォトンがなきゃ、私達は戦えないよ…」

 

そう。いくらあの子の特性を暴いても、こちらには戦う武器がない。職員などの非戦闘員用のアサルトライフルも、ユーザー認証をしないと使えないシステムになっているらしい。

止める手段がない…………その時だった。

 

 

ブトリック

 

 

あの子の先にある暗闇から颯爽と白い装甲に緑のライトカラーを纏った大型キャストがフォトンアーツを用いあの子に高速接近、肉薄し二連続で刺突した後大きく空中で後転。そのまま着地した。

 

「"マグナプライム"、目標捕捉。遅れてすまないユウキ」

 

「おっせぇんだよ!!!マグナの旦那!!!」

 

「すまない。通信が途絶えてから今まで、ずっとお前を捜索していたのだ」

 

「今の今までぇ!?」

 

マグナと呼ばれた大柄な男性キャストがソードを構え、戦闘体制をとる。会話の内容を察するに、どうやらユウキの仲間の様だった。

 

「………あら…おおきな、お肉の塊ですね」

 

「ル、ルミエーラ!?」

 

驚いた事に、何とルミエーラもそこにいた。

 

「……あ、また勝手に出歩いて。しかも、夜。夜這いでもかけるつもり、だったのかしら?」

 

「い、いや違うからね!!!……というか、そこにいたら危ないよ!!!」

 

そうだ、あの子はフォトンを探知する。

そしてそんな彼の前に、どういう訳かは知らないがフォトンを扱えている二人組。

 

『縺?◆縺√=縺√=縺√=縺√=縺√≠縺ゅ≠縺ゅ≠??シ?シ

縺頑ッ阪&縺√=縺√=縺√=縺√≠繧難シ?シ?シ

縺顔宛縺輔=縺ゅ=縺√=縺√=縺√=縺√≠縺ゅs??シ?シ?シ』

 

マグナとルミエーラの方に向かって走っていった。まるで獲物を見つけた肉食獣のように、新しいおもちゃに興奮する子供の様に。

 

「来たぞ、ルミエーラ!!」

 

「…わかって、る」

 

『縺顔宛縺輔=縺√=縺√=縺√=縺√≠縺ゅs』

 

あの子は右腕に付けられた、アークスが扱うソードの様な形の"何か"をマグナに向かい振り下ろす。

 

「ぐぅうっ……!!こ、このパワーは………!!!」

 

間一髪で受けきった。しかし改めてなんだ、あのパワーは。キャストが押されている。

 

「……隙、あり」

 

すかさずルミエーラがデュアルブレードで脇腹を削ぎ落とす。が、しかし。

 

「……再生、した。キャアッ!!!」

 

巨体から繰り出される蹴りにルミエーラがやられ、廊下の壁に叩きつけられる。かなり痛そうだ。

 

「「ルミエーラ!!!!」」

 

「ぐふっ………だ、大丈夫……ちょっと痛いだけ……」

 

見た所手すりが太ももに深々と突き刺さっている。フォトンを集め光とする事は可能だが、回復テクニックはおろか、この時メイトなどの回復アイテムすら持っていなかった。

傷ついた彼女を私は意識が飛ばない様に呼び止める事しか出来なかった。

 

「貴様ぁぁぁ!!!!!!」

 

マグナがソードを横に凪ぎ払い、あの子を仰け反らせる。

 

「オイ!!!お前達は隠れていろ!!コイツは私がなんとかする!!!」

 

「待てよ旦那!!!アンタ1人で殺ろうってのかその怪物!!!」

 

「あぁ、まだコード解除まで8分ある。それまでにはカタを付ける!!!!」

 

コード解除、というワードで思い出した。

訓練生時代聞いた事がある。行動制限を一定時間解除し、武力による犯罪根絶を行う特殊部隊がいるという噂話を。まさか実現する団体だったとは。

そして今まさに彼らは、それを実行しているのだろう。

 

「しかし……なんなのだこの怪物は……まるで、私のフォトンが喰われているような……」

 

「まさか……攻撃に使われたフォトンも、体表から吸収しているの……??」

 

それは予想外だった。なるほど、通りで攻撃があまり効いていない訳だ。

つまりこういう話になる。私達は武器を手に入れはしたものの、その武器は敵に全くの不向きであった。まるで空高く飛ぶ鳥に対して剣で戦う様に。

だが、8分持ちこたえてくれるのならば。こちらにも策がある。上手く行くかは分からない。が、やってみるしかない。フォトンを全く用いない、あの子の救い方を。

 

「……ッ!マグナさん!!」

 

「なんでッ……!しょう………かぁッ!!!」

 

剣の交りあう音の中で、私は大きな声で彼に叫んだ。

 

「8分、任せてもいいですか!?!?」

 

「あぁ、私に任せ………ろぉぉぉおおお!!!!」

 

「あぁもうクソ……任せたぜ旦那!!!」

 

「………おね……がい…………」

 

ありがとうございます。そう心の中で叫び私はルミエーラを担ぎ、戦うマグナを尻目にユウキと廊下を走った。

 

 

 

 

ルミエーラの太ももから慎重に手すりを抜き、大量出血しないうちに包帯で縛る。ここは病院という事もあり、幸いにも医療器具は揃っていたので大事には至らなかった。

 

「うんしょ………縛り方、これで合ってる??」

 

「…えぇ、合ってる。上手、ね」

 

「なんか端から聞いたら変な風に聞こえんだが……で?どーすんだよフェレーナさんよ」

 

「うん……じゃあまず…」

 

私は順を追って説明した。なるべくわかりやすく、簡潔に。

 

「…確かに、お前の言ってる事がマジで出来んなら野郎はブッ殺せる。だけどよ、残りあと3分しかねぇんだぜ???」

 

「………大丈夫。"ソレ"がある所なら、私が案内できる」

 

「………マジかよ」

 

「良かった……後は、マグナさんに協力を仰がないとだね。この作戦は、マグナさんの動きが重要になってくるから」

 

「だな。だけどよ俺の携帯ブッ壊れて使えねぇんだけど……」

 

「……私の携帯を、使って。たぶん、大丈夫」

 

ルミエーラは既に、番号を入力済みの携帯をユウキに渡す。この連携に慣れた感じ、この人達は長い間一緒に戦っているのだろう。

 

「あぁ悪ィ。…………あぁ旦那か、こっちは大丈夫だ。そんで折り入って相談があるんだけどよ。あぁ…内容はだな………」

 

待っててね、名前も知らない男の子。必ず救ってみせるから………

私、言ったよね……どんな事もいつか終わるって。

 

「OK。協力してくれるとさ」

 

「うん、ありがとうユウキくん。よぅし…じゃあ行くよ!!」

 

大丈夫だから。必ずまた、お姉ちゃんが助けに行くからね。

 

 

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