Phantasy Star Froger's   作:Father Bear

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⑧溶けたアイスクリーム

走る。走る。マグナさんの行動制限解除コード有効時間残り2分弱。いくら広いとはいえ走れば"アレ"にはたどり着くだろう。

私の脚の速さは50m走のタイムで言えば6.4秒。全体の平均タイムが4.8秒くらいなので、私はフォトンによって身体強化を受けている状態でも一般人の少し脚の速い人と同じくらいのスピードしか出ないのだ。

しかし今この状況に於いて、それは些細な問題だ。要は動ければそれで良かった。

 

「ルミちゃん!ここ真っ直ぐなのっ??」

 

"ルミちゃん"と呼ばれた、無線越しの"ルミ"エーラは私に向け同意の意を示してくれた。

いちいち"ルミエーラ"と呼んでいたら堅苦しい気がしてならなかったのだ。なので先ほど試しにルミちゃん呼びを試してみた所、明らか声色が変わった。

馴れ馴れしかったかと思っていたが存外そんな事もなく"ルミちゃん"は受け入れてくれた。

本人が硬い喋り口調なのを裏腹に、こういうのは好きなようだ。

 

『…そう、真っ直ぐ行ったら階段がある。今は3階だから、3階上がって6階まで、上がって』

 

なぜエスカレーターを使わないか?すでに午前0時という深夜帯だ。病院の電力は患者の生命維持装置等、必要最低限の装置の稼働以外は全てシャットダウンされている。なのでこうやって一段飛ばしを繰り返しながら、踏み外さない様に慎重かつスピーディに行かなければならなかった。

マグナさんの活動限界まで残り1分半。

急げ……急げ…………!!!!!

 

『おいフェレーナ!!! 着いたけどよォ、ホントにこれでいいんだよな!?なんかちっぽけ過ぎてよくわっかんねぇんだけどよ』

 

突然大声で通信が入る。ユウキだ。どうやら彼に頼んだ物を

 

「たぶんそれでいいよユウキくん!!あとはそれを溢さず例の場所に持って来て!!」

 

「あいよォ!!!」

 

私達の"救出作戦"は幕を上げた。

 

 

 

 

「はぁぁぁああああぁぁぁぁっっ!!!!!!」

 

私に残された時間は残り2分。

その間、私は彼女らの援護が来るまでこの怪物の猛攻ををしのぎ切らねばならない。

 

私の名前はマグナ。"マグナ・プライム"。

警備会社BabyWraith(ベイビーレイス)の第25番警備大隊隊長である。

元はユウキ、ルミエーラそして私マグナ3人の小規模なチームだったのだが、数年前の【巨躯】戦争の際に大多数の人間が消失し、治安維持の為に私らの様な小規模チームがかき集められた。

そしていつしか会社が成立し、最早アークスの垣根を越えてただの警備員となった。

 

『縺ゥ縺?※繧医♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺』

「これしきィッ!!!!」

 

怪物が突進を仕掛けてくる。それを私は大剣の腹で受け切る。改めて攻撃を受けてみて尋常ではないパワーだ。

戦闘開始から1分にして、10m程後退したろうか。

自分自身、かなり奮戦していると思っていたのだがそうでもないらしい。

正直、下手なダーカーや原生生物よりパワーはある。明らかにこちら側のパワー不足だ。

 

「……ッッ!ならばッ!!!」

 

 

グスラッシュ

 

 

剣を回転させつつカチ上げる。

 

「吸収するならばァッ!!!」

 

攻撃を吸収するのならば、吸収する許容範囲内を越える容量の攻撃を叩き込めばいい。

シンプルな。ひたすらな連撃を。

 

「これを飲みきれるか怪物!!!!!!」

 

天井の高さと自らの身長を考え、1m程の低高度ジャンプ。右から左へ。左から右へ。目にも止まらぬ速さで剣を奮い怪物を翻弄する。しかし…

 

「……余裕そうだな怪物よ……!!」

 

連撃の最中、動きを止めた怪物の顔は歪む事はなく、巨体での吸収を辞める事は無かった。むしろ加速している。

 

『驍ェ鬲斐□縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺√=縺√=縺√=縺√=縺√=縺ゑシ?シ?シ?シ?シ?シ』

 

「何だと??よく聞こえんぞ怪物ッッ!!!」

 

その時だった。

 

『……ナ……ん………グナ……ん!!!』

 

声音識別反応微弱。音の波長から女性の声だ。しかし誰だ。普段ルミエーラの声を聞く機会が多いせいか彼女の音声データはお気に入りマークを付けて保存しているが、これはあまり聞いた事のない波長だ。

 

(…あの状況でルミエーラ以外の女性……………彼女か…!)

 

状況を鑑みるに、現場にいた女性は二人。ルミエーラと"茶髪の少女"。つまりこの声は後者の方になる。

 

『マグナさん!!!聞こえますか、マグナさん!!!!!!』

 

「茶髪娘か、どうした。こっちは今怪物相手にスリリングな状況になっている」

 

『時間、大丈夫ですか!?』

 

行動制限解除コード有効時間残り20秒。これ以上長引くのはマズイ。

 

「残り20秒。余計にスリリングになったぞ茶髪娘」

 

『わかりました!なら、この場所までその子の誘導をお願いできますか!?』

 

地図データを受信。…………なるほど、どうやら手筈が整ったようだな。しかし2分弱でこんな事をよくも思うものだ。

最近の若者の考える事は時として恐ろしい。ルミエーラはたまにキャストである私でさえブルっとくる発言をする。

 

「さぁ、そのまま押せぇ!!!!」

 

反撃開始だ。

 

 

 

 

「ここ……?」

 

『…そう。お望みの品はそちら、ですよお客様』

 

「お客様って……とりあえずありがと!ルミちゃん!」

 

私がルミエーラに通信越しに案内を頼んだのは……

 

「ここが警備室……」

 

警備室だった。監視カメラが数百個もある、なんとも息苦しい空間である。

しかしなぜ警備室なのか?少し前にお世話になったある物を使う為だ。

…"スプリンクラー"。火災を検知して放水を開始する、こういう公の建築物にならどこの天井にもある装置だ。以前は逆境の中光を灯す為に放ったフォトンを叩き落としてくれた憎っきスプリンクラーだったが、今は非常に頼りになる最終兵器である。

この警備室では、そんな最終兵器を強制的に、場所を絞って発動させる事ができるスイッチがある。私の目的はそれだ。

 

『…でも、フェレーナさん。よくスプリンクラーをそんな使い方しますね』

 

「今この状況を打破するには、これしかないと思って………」

 

我ながら、中々にエグい作戦だと思う。これをもし人間にやったら私は確実に死刑囚だろう。

同じ……"人間"に………か………

 

あの怪物。もといあの男の子……。なぜあんな事になっているのだろうか…。

元の身長の約6倍のサイズに肥大した筋肉や脂肪、骨格。分かりきった事ではあるが普通ではない。そもそも勝手にあの子だと決めつけてもいいのだろうか……

 

「………………。」

 

いや違う…私の顔を覗き込んだ、"あの顔"と、

 

『さむいよ…』

 

あの時に見せた、寂しそうな"あの顔"は全くの同じ顔だった。

だからこそ…最期まで見届けなきゃならない。

 

『どうかしましたか?』

 

「ううん………"なんでもない"」

 

 

さて、本題に入るとしよう。まず、"彼ら"がどこにいるのかを確認しなければならない。

 

(ん~と……)

 

複数の液晶パネルに映し出された監視カメラの映像を流し見しながら探す。ザッと見30台くらいはあるだろうか。しかも椅子が1つしかない。つまりここに本来座っている人間は、よっぽど優秀なのだろうと思う。

 

「いた!結構後ろに行っちゃってる……!!」

 

先ほどの場所より10mほど後退していた。マグナの様なパワータイプらしきキャストでもパワー負けするとなるとゾッとする。

 

「マグナさん!マグナさん!!!」

 

とりあえず、彼にコールを寄越してみる事にする。映像を見る限りだとあまり余裕は無さそうではあるが。

 

「マグナさん!!!聞こえますか、マグナさん!!!!!!」

 

すると案外、余裕そうな声でマグナが応答する。

 

『茶髪娘か、どうした。こっちは今怪物相手にスリリングな状況になっている』

 

とりあえず良かった。これなら………

 

(………!!! しまった、そこは……!!)

 

彼らの頭上にスプリンクラーは"無かった"のだ。

マズイ、非常にマズイ事になった。このままではこちらの手筈が全て揃った状態でかつ、何も出来ないまま終わってしまう事になる。

あの子がフォトンの奔流を察知して攻撃しているという性質上、マグナに行動制限がかけられると何もかもご破算だ。

 

「時間、大丈夫ですか!?」

 

20秒、そう彼は答えた。

 

(ど、どうしようどうしよう………!!)

 

私はあの場所周辺の地図情報を、僅かな時間の中でくまなく目を通した。すると、ある文字が私の目の中に入った。

 

"シャワー室"

 

ここしかない。パワー負けしている以上押し返すのはほぼ不可能。ならば、マグナから見てちょうどよく真っ直ぐ後方にあるシャワー室に向かってわざと押される形を使う他無かったのだ。

そして私はもう1人のキーマンに通信をかける。

 

「ユウキくん!?ゴメン!!場所変k……」

 

『テッメェ早く通信取れやボケェ!!!!ずっと暗すぎて、タイミングわっかんねぇだろォが!!!』

 

通信機越しからまたしても激しく怒号が飛び交う。

ルミエーラ、マグナとずっと通信をしていたせいだろう。通信のタイミングが重なり合い彼の通信が遮断されていた様だった。この状態だ、着信履歴など見ている暇など無いので気付けなかった。

しかし、"ずっと真っ黒"という事はとっくの前にスタンバイを終えているという事だろうか。仕事のデキる少年だ。

 

「ごっ、ゴメン!!ユウキくん、そこから右に6m行った所に給水管が枝分かれしてる所があるの!そこに行けるかなっ?」

 

「おう任せろやァッ!!」

 

(あとは私もっ……!!)

 

シャワー室を使わなければならなくなった都合上、警備室にこれ以上居る意味は無くなった。結果的には完全なる無駄足だったが、ここにいたお陰で先ほどの様に全体指揮が出来たのだと考えればまだ気は楽だった。

 

『…フェレーナ、大丈夫。すぐこっちに、戻せるわ』

 

「ルミちゃん!? でも、そんなのどうやって……………うわっっ!?!?」

 

突然自らの身体が青い光を放ちながら半透明になって消えてゆく。これはまさか……!?

 

『短距離用テレバイブ。予め行きたい所に仕込んでおくと、任意のタイミングで瞬時に、一方通行出来る』

 

なお、これは仕事用に改良した物であり、所持者以外からの発動も出来るように改造してあるそうだ。

これは、相方が危なくなったら瞬時に引き返せるようにするいわゆるストッパーの様な役割を果たしているのだろう。と、私は勝手な想像をユウキとルミエーラとで重ねながらしてしまう。

 

『そしてあなたが行く先は…』

 

「……ッ!さっきの廊下!!」

 

左前方に乱暴に開かれた扉がある。恐らくあれがシャワー室だ。さて、ここからは直視でどの個室の給水管に"アレ"を仕込めばいいかを見極めなければならない。

私は全速力でシャワー室前に近付く。

 

「…マグナさん!!状況は!?」

 

「おぉ来たか茶髪娘!残り時間7秒だ!!なんとか出来たのだろう?」

 

「はいっ!!なんとか!!」

 

良かった、と思っている暇はない。

そんなのは後で言えばいい。今は急を要するのだ。

 

「マグナさん!!どこか近くの個室に!!」

 

「了解だ!!!そォらこっちに来い怪物ゥ!」

 

『縺ゥ縺?※繧医♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺』

 

すると勢いよく、1秒もかからない内に個室にすっぽりと、マグナさんとあの子はハマってしまった。

そして先ほどまで着けていたイヤホンマイクを外し"上にいるであろう彼"に向け大声で言った。

 

「ユウキくん!!!!左側、入り口から3番目の個室!!!」

 

「了解だぜこの野郎!!!!」

 

「マグナさん!!!その個室のシャワー開けれますか???」

 

「あぁ任せろ!!!」

 

これでッッ……!!!!待っててね…名前も知らない男の子っ…!!

 

 

 

 

話は数分前に遡る。ユウキとルミエーラ、そして私で固まっていた時だ。

私は"作戦"を、順を追って説明する。

まず、こういう病院に必ずあるハズの"とある薬品"を入手しなければならない事を説明する。

その薬品の名前は"水酸化ナトリウム"水溶液。無味無臭のアルカリ性の液体である。

分かりやすく言えば色んな物を溶かす超強力な液体で、なんでも地球ではこれを用いて死体の処理もしていたらしい。しかしここは病院、こんな事をする訳もなく。本来は薬の調合などで使われている。

それほど強力な液体をどうするか?答えは簡単。ぶちまけるのだ。ただぶちまけるのではない。

 

「「スプリンクラーで……??」」

 

そう。給水管に水酸化ナトリウムを混ぜ、スプリンクラーから噴射しそれを彼にかける。すると彼はフォトンを用いない謎の攻撃に戸惑いながら溶け死ぬ事になる。

しかし、先ほど移動した事によりスプリンクラーは使用不能。急遽シャワーを使う事になったが、水を噴射するという点に関しては同じなのでさほど問題はない。

これが、私の考えた"作戦"。

そして現在に話は戻る。

 

「そ………そんな…………」

 

効いていない。それどころか勢いに拍車を掛けるような結果になってしまった。

 

「ぐあぁぁああぁぁっっ!?!?」

 

「マグナさん!!!」

 

「旦那!!!!!」

 

バカな。そんなハズがない。

ドロドロに醜く溶けた肉を露出させながら、あの子はその豪腕を振りかざしてマグナさんを部屋から吹っ飛ばした。

あの液体をマトモに食らって動ける訳なんてない。掛け方が甘かったのだろうか。

 

「クッ……時間が………」

 

制限時間の7秒、残り時間あと2秒

もうこれ以上の策は練れない。全てマグナの活動猶予ありきだ。

 

「ッ……!!しまっt」

 

「「………!!!!」」

 

バキャッ

 

堅牢なキャストであるマグナの胴体が真っ二つにへし折れた。しかし幸いにも、キャストは頭部を全壊しない限りは生きていられる。

そもそもキャストというものは、そもそも本体となる"脳"はその鋼の体には乗せられていない。別の施設に保管されている"本体となる体"の脳波を送信して、もう1つの体を操っている。

 

「くっ………これではァッ………」

 

ネチャッ ネチャッ と溶けた肉を床に落としながら真っ二つになったマグナさんへ一気に距離を詰める。

制限時間が切れるまで強制的にフォトンを纏った状態にされる。つまり残りの1秒まで、あの子はマグナを追い詰める気なのだ。

先ほどとは逆の腕を、あの子は振り上げた。

 

「マグナさぁぁん!!!!」

 

その時だった。不思議と身体が前へと出ていた。

出会って数分の彼だったが、何故だか"絶対に"死なせてはならないと思った。

走れ、走れ、走れ。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 

しかし、その豪腕がマグナに降りかかる事は無かった。

 

「「「………???」」」

 

止まった。拳が当たるまでわずか5cm程の所で。

 

「…………驕輔≧縲√♀辷カ縺輔s縺倥c縺ェ縺」

 

急に大人しくなった、それが指す意味。

行動制限解除コードの有効時間が切れたのだ。それにより、マグナの纏っていたフォトンが消え失せたのだ。

そしてゆっくりと、ギリギリで留めた腕を下ろしそっぽを向いて廊下を歩く。ヌチャヌチャと気色の悪い音を出しながら。

 

「……助かった……のか??」

 

「……ダメッ!!!行かせちゃダメッ!!!」

 

私はそのまま走った。例え猛行が止まったとはいえ、"私が止まる訳にはいかなかったのだ"。

先ほども言ったかもしれない。あの子は私が助けた命なのだ。だからせめて、私の手で終わらせなければならない。

 

「マグナさんッ!!!武器借ります!!」

 

「茶髪娘!!待て、無理だ戻れ!!!!」

 

無理……無理だ…………イヤ……イヤだ…………!!!

 

「茶髪娘えぇぇぇええ!!!!!」

 

マグナの持っていた、"本来装備すら出来ないハズ"であり、身の丈に合わないソードを手に持ち、構え、後ろから男の子に突撃する。

 

「うわぁあぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

私は、あの子の背中に深々とソードを突き立てた。

 

『縺や?ヲ窶ヲ窶ヲ窶ヲ窶ヲ窶ヲ縺雁ァ峨■繧?s』

 

男の子は軽く腕を上げる。人間で言うところの、夏場で肌に停まった蚊を叩く程度の感じなのだろう。

フォトンに反応する、という性質に囚われ過ぎた。この子は一応"生物だという事に"。肉を持ち骨を持ち言葉を放ち、"顔"を持つ彼を。

生物の本能だ。身の危険が訪れれば排除しようとするのが当然の事。この子はまさに"ソレ"をしようとしている。

 

あぁ、死んだな………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那

 

 

 

「ダメじゃないですか」

 

ラディアント

スティング

 

 

 

暗闇から何者かが前方へ、大きく踏み込みながらあの子に連続攻撃し肉に"二本"の剣を突き立てた。

武器はデュアルブレード、そして攻撃のモーションから察するにあの人物のクラスはエトワール。

 

「ルール違反です。ユージくん。生人を殺すのは」

 

『縺?o縺√≠縺√=縺√=縺ゅ≠縺ゅ≠縺√=縺√=縺√≠縺√≠縺√=縺√=縺ゅ≠縺√=縺√=縺?シ?シ?シ?シ』

 

女性の声だ。聞き覚えがある。だが、"その声には聞き覚えがあるにしてはあまりにも異様かつ、日常的な声だった"。

 

「ごめんなさい。ユージがご迷惑をおかけしました」

 

剣を突き立てたままこちらを向き、被っていたフードが履けその顔が露になる。

その時私は昼間ルミエーラから聞いた話を思い出した。"私そっくりの人物に出会った"という話だ。あの時の私はルミエーラの見た何かしらの夢もしくは幻影であると勝手に思っていた。

 

""「………"わからない"」""

 

彼女の言っていたこの「わからない」という言葉。今だったら私も彼女を疑う事はなくすぐに理解出来たろう。

 

何故なら?それは、この顔が。

 

「大丈夫ですか??」

 

"ユージ"と呼ばれたあの男の子にぶっ刺した剣を支えにぶら下がったまま、窓からの月明かりが照らすその顔が。

 

「フェレーナさん」

 

私と同じ顔だったから。

 

 

 

 

 


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