『選択』 〜ヒーローになるための〜   作:りんごあめ

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9話と続けて投稿したので忘れずに先に9話をごらんください。

第10話よろしくお願いします。


第10話 秘密とピンチ

「ヒーローの学校に入り込んで来るなんてアホすぎるだろ!」

 

切島が声を上げる。確かに、わざわざこんな学校に侵入してくるなんてどうかしてる。なぜヤツらはこんなバカな真似をしてるんだ?

 

「先生!侵入者用のセンサーは?」

 

「もちろんありますが……」

 

八百万の問いに13号が困惑したように答えた。

 

「何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことができるヤツがいるってことだろ。校舎から離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割。バカだがアホじゃねえ。何らかの目的が用意周到に画策された奇襲だ」

 

轟がそう冷静に敵を分析する。

センサーをかいくぐり俺達がいる時間ドンピシャに現れた辺り、轟の言う通り予め計画を立て現れたってことで間違いなさそうだ。確かにやってることはバカだけどただのアホってわけじゃないな。

そう考えるとなおさら不気味に思えてくる。

 

 

 

「13号、避難開始!学校に電話通せ、センサーの対策も頭にあるヴィランだ。電波系のヤツが妨害してる可能性がある。上鳴おまえも個性で連絡試せ……」

 

相澤先生が淡々と指示を出していく。どうやら1人であの集団に迎え撃つつもりらしい、デックンが慌てて問いかける。

 

「先生1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性消すといっても…イレイザーヘッドの戦闘は個性を消してからの敵の捕縛のはず、正面戦闘は……」

 

不安を露に下を向くデックンに先生は静かに言った。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

直後、首元に巻かれた布を展開させ大きく跳躍。一気に階段の下まで飛び降り噴水広場を駆ける。攻撃を仕掛けようとするヴィラン3人の個性を消し一瞬で捕縛しあっという間に無力化する。続けざまに襲いかかるヴィランにも、パンチや蹴りをくらわし次々に捕縛し叩きつけ倒していく。

 

 

「すごい…多対一こそ先生の得意分野だったのか…!」

 

その早業を息を呑み目で追うデックンの肩を叩く。

 

「おい、分析なんてしてる暇ないぞ!早く外に出ようぜ」

「あ…うん、ごめん!」

 

出遅れながらも先に出口へ走った他のやつらに追いつくよう走る。

追いついたかと思うのも束の間、黒いモヤが現れ行く手を阻まれる。

 

「はじめまして、我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして…」

 

ヴィラン連合。

自らをそう名乗った黒いモヤの男は今回の襲撃の目的をあっさりと宣言した。

突如目の前に現れたその男に誰もが身を固くする中、男は話を続ける。

 

「本来ならオールマイトがいらっしゃる筈、なにか変更があったのでしょうか。まぁそれとは関係なく私の役目はこれ……」

 

「「…オラァ!!」」

 

両手を広げながらそう低い声で言う男に切島と爆豪が殴りかかる。

爆破による土煙が立ち込める中、ドヤ顔を決める2人だったが……

 

「危ない危ない、生徒といえど優秀な金の卵……」

 

ゆらゆらと蠢くモヤの中で光る目が妖しく笑う。

息をつく間もなくモヤが大きく拡がり俺達を一瞬にして包み込んでしまった。

 

「私の役目は皆さんを散らし… 嬲り殺す!!!」

「ぐっ、何も見えねぇ……!」

 

視界が黒に染まり強風に身体を押される。流されまいと顔を腕で覆いその場に踏み止まる……が、気付いた時には真っ逆さまに宙を舞っていた。

 

突然のことに頭が追いつかないままなんとか体勢を立て直し空気を踏みつけてそっと地面に着地する。

すぐに辺りを見回して状況の確認をする。

 

「ぐるっと見た感じ、知らない天井……ではないな。ってことはUSJの他の場所にワープさせられたっことだな」

 

さっきと同じ白いドーム型の天井だし先生達の説明から察するにここはUSJの土砂ゾーンってとこか。

 

「おい…」

 

後ろから無愛想な声がし振り向く。

 

「お、轟じゃん。お前もここに飛ばされてたのか」

 

「他のやつらはいねぇのか?」

 

俺の話はガン無視でそう問いかけてくる。仕方ねぇなと苦笑いをしながら頷く。こいつ絶対人付き合いとか苦手なやつだな…。

 

「いないっぽいぜ?多分他のエリアに散り散りに飛ばされたんだろうな。んでどうする、入り口に戻る……か?」

 

そう提案しようとしたところでぞろぞろと足音がしていることに気づく。

なるほど、コイツら岩の陰に隠れて俺達が来るのを待ちかまえていたらしい。俺と轟を中心に大勢のヴィランに取り囲まれていた。

 

「ま、何にせよとりあえず!」

「こいつらを片付ける」

 

まずはうっとうしいヴィランを倒す、それからでも話はできるしな。

お互い正反対の方に飛び出しヴィラン相手に戦闘を開始する。

 

 

「ギャハハハ!真っ正面から突っ込んできやがった、バカなヤツめ!!」

 

ヴィランの1人が下品な笑い声を上げながら走り出す。手にはナイフが握られている、それを突き刺そうと振り上げた。

 

「なんだそのゲームの雑魚キャラみてぇなセリフは。バカは…おまえだ!」

 

「なに?……ごはっ!」

振り下ろされたナイフは俺の身体をすり抜け空を切る。

透過を発動させた俺にはそんなもの当たるわけがない、困惑しているヴィランの顔面を殴り飛ばした。

 

「さぁて、次はどいつだ?」

 

余裕の笑みを浮かべながらシルクハットのつばに触れる。

挑発ともとれる俺の態度にカッとなった2人組が走りだす。1人は鉄パイプ、もう1人はメリケンサックをはめた拳を振り上げ向かってきた。

 

「「ガキが調子乗ってんじゃねぇええ!」」

 

なんの躊躇もない攻撃は先ほど同様空を切り雄叫びだけが虚しく響く。

目を見開いて固まる2人に反射を発動させた蹴りでまとめてなぎ払う。

蹴り飛ばされた2人は白目をむいて気絶していた。よし、いいぞ。俺ちゃんと戦えてる……というか、

 

弱っっいなコイツら!頭数だけそろえて全然大したことないじゃん。

こんな奇襲仕掛けてくるヤツらだからてっきりすごい強いんじゃねぇかと少し身構えてたのにもしかしてただのチンピラの集まりか?

 

 

やれやれとため息をついていると自分の周りが薄暗くなっていることに気づく。上を見上げて慌てて後ろに飛び退く。

 

「ふんんん!!!」

「…!あっぶねぇ!!」

 

「なぁにボーっとしてんだナメてんのかコラァ?」

 

荒々しい鼻息を吹かせながら獣の姿をした男が嗤う。その身長は2メートルを優に超えている。見たところ明らかに異形型だな、こりゃちょっと厄介そうだ。

 

俺は他人の個性はすり抜けられない。だから常時個性を発動しているといってもいい異形型、個性を纏った拳や武器などの攻撃には透過を使えない。つまりこのヴィランはさっきまでのヤツらのように楽には倒せない敵ってワケだ。

 

「わりいわりい、あまりにもお前らが弱すぎて油断してた」

 

「チッ!その余裕こいてヘラヘラ笑ってる顔今すぐグチャグチャにしてやるよ!!」

 

獣のヴィランが突進してくる。鋭く尖った爪をすんでのところで躱す。

一撃でもくらえば簡単に骨が折れてしまいそうな大きな腕を右へ左へと体を反らせ次々に躱していく。

単調すぎる腕の大振りに慣れてきたところでスっと体勢を低くして足払いをかけた。

 

「ぬぅ!?」

 

「…らぁ!!」

 

間抜けな声でよろめいた尻もちをついたところにすかさず脳天めがけてかかと落としを叩き込む。脳天に強烈な一撃をくらったヴィランはそのまま声も上げず地面に倒れ伏した。

まぁ丈夫そうな体してるしこれくらい死にはしないだろう。

 

ふう、息を整えて残ったヴィランの方へ向き直る。にやりと笑みを作り一歩一歩ゆっくりとヴィラン達へと近づく。

その様子を見てヤツらは「ひいい…」と弱々しい声を出す。

 

「お、おい!あいつやられちまったぞ…」

「おお、俺らじゃ太刀打ちできねえって!」

「ガキだからってナメてた…ひい!く、く、くるなああぁ!」

 

じりじりと迫ってくる俺を見てびびり倒すヴィラン達。まったく、これじゃまるで俺がヴィランみてぇじゃねえか……。

ま、だからといって容赦なんてしないけど。仕掛けてきたのはお前らのほうだ。

うっすら笑みを浮かべて拳を握りしめ、ヴィランの懐に飛びこんだ。

 

 

 

 

 

「う〜ん…ミスったなぁ〜ちょっとお話ししようと思ってたのに」

 

 

コスチュームの土埃を手で払いながらため息をつく。

為す術なく俺にやられたヴィラン達はだらんと手足を放り投げ気を失っていた。これじゃ話は聞けそうにない、ちょっとやりすぎたな…。

轟の方に向かっていったヤツらから聞くしかないかな、と振り向いて思わずぎょっとして顔をひきつらせる。

 

「おまえもなかなかえげつないことしてんな…というか俺よりえげつねえぞこりゃ……」

 

轟を襲ったヴィラン達は揃って氷づけにされていた。なんとか脱出しようと試みるヤツや後悔したように顔を青くするヤツ、「痛えぇ」と苦痛に顔を歪ませるヤツ…など反応は様々。大人が揃いも揃って1人の高校生に無力化されるって恥ずかしくないのか?

と心の中で呟いているとちょうどよさそうなヤツを見つけ、歩み寄る。下半身だけを凍らされ体を震わせている細身の男だ。

 

「なぁオマエ、ちょっといいか?」

 

冷や汗をかきながら俺の方に視線を移してきたその男にいつものように軽い口調で問いかける。

 

「数でオールマイトにケンカを売るのかと思いきや、オマエらは俺たち生徒用の駒ってワケだったんだな。あのオールマイトを殺せるってのはどういうこと?その策があるなら教えてくんないか?」

 

「……。」

 

男は何も答えず黙りこくる。おっと、意外にも強情なヤツだったか。それならしょうがない、にこやかな笑みと共に右手を指を揃えすっと顔の高さまで上げる。

 

「よく聞けなおにいさん。俺の個性はこれ」

「……!!!!」

 

そう言いながら躊躇い泣く男の胸元に右腕を突き刺す。刺された男は声にならない声を上げ目を見開く。そんな反応をよそに話を続ける。

 

「大丈夫痛みは無いよ。俺が触れたいと思うもの以外、俺は全てを通過するんだ。だからもしこの手を抜きながら、俺が心臓に触れたい思えば……

刃物で切り裂かなくても、俺はオマエの温かい心臓を抜き盗れるんだよ。

生きたまま心臓盗られるってどんな感じだと思う?

…俺もヒーロー志望だしそんなことしたくねぇのよ、だからさぁ教えてくんない??それとも………

 

オマエも(・・・・)死ぬか?」

 

ひょうひょうとした声でただの脅し文句として出たその言葉。しかしこんなヤツら見逃したってろくなことしない連中だろう。警察に捕まったところで改心するのかも怪しいところだ。

 

 

 

 

 

「くくっ…ははははっ……!」

 

そんなヤツら死んだっていいんじゃないか、とわずかに黒い感情を抱いてしまったその刹那。得体の知れない何かが這い回る感覚に襲われる。空いている片方の手で自分の顔を覆う。その顔は狂気を感じすにはいられない黒い笑みに歪んでいた。その狂気を眼前にし心臓をいつ奪われるかも分からぬ男の顔は恐怖一色に染まり、その顔見てさらに低い笑い声を漏らす。

 

 

アァ、楽シイ……殺シタイ…!!

 

 

男が何か言っている、としか分からないほどになりいよいよ本当に心臓を引き抜かれるのではないかというところで肩にポンと手を置かれハッと我に返る。

 

「…い、……おい!いくぞ。」

 

「っ!………あ、あぁ?おうわかった」

 

「というかそろそろ手離してやれよ、泡吹いて気絶してんぞ」

 

背を向けぶっきらぼうに言う轟に促され顔を動かすと俺が問いかけていた男が白目を剥き震えていた。おっと、と声を出しながら腕を引き抜き自分の胸に手を当てる。

 

周りが見えなくなるこの感覚、何かが這い回る薄気味悪い感覚に顔をしかめる。

入学試験の時に起こったこの異変、理由はわからないが今はもうなんともない。それにこんなところで止まっている余裕はないし今回も考えるのはいったんやめよう、そのうちなんとかなるはずだ。そう自分に言い聞かせ何事もなかったかのように轟の後を追い声をかける。

 

 

 

「んで、これからどうすんだ、どこ向かってんの?」

 

「広場だ」

 

「ふーん、でもいいのか?結構な数いて先生が足止めしてるハズだろ」

 

「だからこそだ、数は多いが本当に危なそうなのは数人程度。他はチンピラの寄せ集めだしなんとかなるだろ」

 

「まあそうだな、俺らで敵の数減らせりゃ先生もちょっとは楽になるか…」

 

 

 

「……。」

「……。」

 

早足に広場を目指すなか沈黙が続く………。その沈黙に耐えられなくなりため息をつきながらとうとう口を開いた。

 

「会話が続かねぇなおい」

 

「……必要か?」

 

「なんか気まずいだろずっと無言て…俺はイヤなんだよ」

 

「……そうか」

 

「そうか…じゃねぇーよ!他になんかねえのかよ。ってかおまえ顔もロクに合わせてくれないじゃん、人と話す時は顔を見て話そうぜ轟君よぉ」

 

「顔を見なくても話せてんだろ、声は聞こえてる」

 

「あぁ、そう。……なんかもういいよ、このままいこう」

 

どうやっても話が続きそうにない、轟と話すのは至難の業のようだ。今回は諦めよう。いつかベラベラ仲良く喋りあえる日が来るかもしれないしなぁ………いや来るか?何年経ってもこいつ変わんない気がするわ…。

 

 

 

 

 

無言で、しかし周囲を警戒しつつ広場を目指し歩みを進める。そんな時、入口から轟音と土煙が立ち込める。その中から一歩一歩強く踏みしめ現れたその人に自然と頬が緩む。きっと散り散りになったクラスのやつらもきっと同じような顔をしているのだろう、そう絶対的な信頼と安心を与えるその人が気圧されそうなるほどの威圧感を放ち仁王立ちしていた。

 

「ふっ、ようやくお出ましか!」

「オールマイト…。」

 

 

 

『もう大丈夫、私が来た……!!!』

 

おなじみのセリフと共に現れたオールマイトだったがその挙動に僅かな違和感を覚えた。

笑顔と共に言うそのセリフ…しかし今回は違う、笑っていない。一瞬、恐怖を感じゾクッと背筋が凍った。

 

圧倒的な存在感を放つオールマイトに土煙や振動の起こっており戦闘中であったはずのUSJ内が一瞬、静寂に包まれる。

 

オールマイトが来てくれたのなら後はもう大丈夫だ、楽観的にそう思いかけたところで自分自身で待ったをかけた。なんとなく何かが引っかかる。なにか嫌な予感がする、頭の中でぐるぐると思考を巡らせるがそれが何なのか思い出すことはできず。

そしてもう一つ気になることがある、轟のことだ。

オールマイトが現れたことに反応こそしたが明らかに安堵している様子ではない、それどころか更に警戒を強めたかのような素振りをみせていた。

 

「なぁおまえなんでそんな早足になってんだよ」

 

「おまえ自分でやったのに聞いてなかったのか?広場にいたやつにオールマイトを殺す役割のやつがいるって言ってたろ。そんなヤツらの前に本人が来ちまったんだ、もしもってことがあんだろ」

 

「へぇ、そんなこと言ってたのか…そりゃたしかに心配かもな」

 

「時間がない、急ぐぞ」

「あぁ、そうだな。時間が……、…!!」

 

轟がボソリとそう呟いたその一言でハッと目を見開く。そうして背中を叩いて走りだす。突然の俺の行動に首を傾げながら隣に並ぶ。

 

「おい、急に走り出してどうした」

 

「いやほんとおまえの言う通りだよ。時間がねえんだよなきっと!」

 

自分の中で引っかかっていたことがわかり、冷や汗を流して僅かに口角を上げる。

本来この授業に最初いるはずだったオールマイトがいなかったこと、そして13号が相澤先生にさりげなく指を3本立てていたこと。

朝の電車でデックンが目を輝かせながらニュースサイトを見せてきた。そこにはオールマイトが朝から何件も事件の解決をしていたというものだった。

そこから考えるに13号の立てていた指はきっと活動限界時間のことだろう、だからここにいなかった。それなのに今こうやって現れたってことは、無理を通しているってことなんだろうオールマイト…。

これを知ってるのはきっと俺ともう1人しかいない、俺達だけなんだ。

 

 

俺とデックンだけが知っている、

 

オールマイトの秘密とピンチを…!!

 

 

入口にはオールマイトの姿は既になく、かわって広場は騒がしくなっていた。オールマイトはもう戦っているってことなんだろう。

 

気づけば体が動いていた。

 

行ったところで俺達に何かできるとは限らない、それでもなにもしないではいられない。

 

焦りを胸に俺は広場までひた走った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

間一髪というところで救けられた僕と蛙水さん、峰田君。僕らは負傷した相澤先生を担ぎ入口を目指している。

後ろからはすごい水しぶきや大きな振動がなり続けていてオールマイトと脳みそヴィランが激しい戦いを繰り広げているのがよく分かる。

 

蛙水さんや峰田君は目を輝かせオールマイトが勝つと信じて疑わない。

 

 

もちろん僕だって信じたい………信じたいけど知ってるんだ。

通学中は毎日リアルタイムのヒーローニュースをみているから。

オールマイトがいないって話の時に13号先生が3本指を立ててたこと。

活動時間のことだ、きっと使いすぎたんだ…!

これを知ってるのは多分僕ともう1人だけ。

 

 

僕とノア君だけが知っている、

 

オールマイトの秘密とピンチを…!!

 

 

バックドロップを決めたはずのオールマイト。しかしヴィランはそれをもろともせず脇腹に指をくい込ませていた。ワイシャツをじわじわと赤に染めながら顔を苦痛に歪ませるオールマイトに僕たちは顔を青くさせる。そして地面には黒いモヤが怪しくうごめいている。

やがてそれは大きく広がりオールマイトを沈めはじめた。

 

「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。

そしてあなたの体が半端に留まった状態でゲートを閉じ…

引きちぎるのが私の役目!!」

 

そうヴィランが高らかに笑った。

 

 

 

 

 

「蛙水さん、相澤先生担ぐの変わって…!」

 

「ケロ?う…うん、いいけどなんで?」

 

相澤先生を蛙水さんに託す。体から先生の重みが消えたその瞬間、

 

気づけば体が動いていた。

 

 

背後からは僕を呼び止めようとする2人の声が聞こえる。それでも僕の足は止まることはなく、よろよろと前に進みやがて走り出していた。

 

嫌だ……嫌だよオールマイト…!

あなたに教えてもらいたいことがまだ、山ほどあるんだ!!

 

「オールマイトオォ!!!」

 

名前を叫びながらがむしゃらに走り手を伸ばす。

こんな終わり絶対に嫌だ。僕しかいないんだ、僕が救けなきゃオールマイトが殺されちゃう。何かできるとは限らないけどやるしかないんだ…!

 

 

 

 

 

 

「……浅はか!」

 

僕の手が届くその前に、黒いモヤが行く手を阻む。

 

 

 

あぁ、ダメだ、終わった。

 

 

やっぱり僕の力じゃ救けることなんてできないんだ……!自分への不甲斐なさ、この状況の理不尽への悔しさに涙をにじませぎゅっと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「どけ邪魔だデクゥゥ!!!」

「っしゃ、確保!!」

 

突然の爆風と爆音に腕で顔を覆う。

 

 

「ありゃ?爆豪なにしてんだこんなことで」

「っるせェ!!テメエこそなにしてんだ邪魔だ殺すぞ!」

 

大きな爆発でモヤを吹き飛ばしかっちゃんが飛び出してくる。

さらにそれに合わせるかのようにノア君も現れモヤのヴィランの首元を掴み2人で地面に叩きつけた。

 

 

「…っ!地面が凍った!?」

 

かっちゃん達の乱入に目を見開いているとあっという間に地面に氷が張らせていき、捕らえられたオールマイトに当たらないギリギリのところまで絶妙なコントロールで脳みそヴィランが凍りついた。

 

「てめえらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

静かに言い放って轟君が息を吐いた。

そしてその隙をついてオールマイトがヴィランの拘束から逃れた。

よかった、無事に逃げられた。ほっと息をつく。

 

 

「おらぁあ!!」

 

 

轟君が辺りを凍らせた直後、今度は切島君がもう1人のヴィランに攻撃を仕掛けようと広場に姿を現した。

 

「あれっ!?クソっ、いいとこで!!」

 

「スカしてンじゃねえぞモヤモブがぁ!!」

 

「平和の象徴はてめえらごときに殺れねぇよ」

 

「ま、そういうこった。無事か?……デックン!」

 

 

 

「ぁ……ノア君、かっちゃん!みんな……!」

 

帽子の傾きを手で直しながら歯をみせて笑うノア君や、不敵な笑みをみせるかっちゃん達におもわず目頭が熱くなるがそれをすぐにゴシゴシと腕で拭う。

 

 

 

オールマイトを救けようとしたのは僕だけじゃなかったんだ…!!

 




読んでいただきありがとうございました!

主人公がヴィランに尋問?してるシーンのセリフはDグレでティキがアレンに言ってるセリフを意識しました。あそこ結構好きなんです(^^;

次でUSJ編終わります、
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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