第12話よろしくお願いします。
「昨日は1日休みになったけどさ、あんなことがあったばかりだったし全然気が休まらなかったよ……ノア君は昨日何してた?」
「昼まで寝てそっからはゲームしたり散歩行ったり……いやぁ〜久しぶりにゆっくり羽を伸ばせたねぇ」
「めちゃくちゃ楽しんでるね!?なんでそんないつも通りでいられたの!?怖くなかったの?」
「んなことはないさ。俺もおまえも結構マジで死んでたかもしれないしな?まぁ〜だからこそさ、体を休めたり気持ちを落ち着かせるって意味でも普段通りの1日を送ったってワケよ」
ヴィラン連合によるUSJ襲撃の翌日、雄英は臨時休校となった。
デックンは昨日の今日って感じで全然落ち着かなかったらしいが対して俺はというと、せっかくできた休日だしとそれはもう堪能し尽くした。夕方頃に千年公から晩飯のおつかいに駆り出されたり、その途中で会った近所の人達に大丈夫だったかなどと声をかけられまくったりと散々な目にもあったけど。
俺の知らぬ間に雄英に合格していたことはご近所さん達に知れ渡っていたらしい、心配してくれんのはありがたかったが声をかけてくる人が多すぎてさすがにちょっと疲れた……。
そんなこんなでゆっくりと平穏な1日を過し気持ちを切り替えまた今日から雄英での忙しい日々に身を投じていく。
教室に入ると予想以上にクラスのやつらは元気だった、あの襲撃事件はテレビでも大きく報道され自分達の姿もちょっと映っていたとはしゃいだり。
俺とデックンが負傷して保健室に運ばれてる時に撮られていたらしく俺達は映らなかったらしい。いいなぁ〜俺もちょっとくらい映りたかった。
そろそろホームルームの時間だけどそういや今日はどうするんだろ、担任の相澤先生はおとといの襲撃で大ケガしてるしなぁ……。
そんなことを頭の中でぼーっと考えていると教室のドアが開かれる音がした。
「おはよう……。」
「「「「「相澤先生復帰はええぇえ!!!」」」」」
全身を包帯でぐるぐる巻きにされミイラ男のようになった相澤先生の登場に教室中に俺達の声が響き渡った。
いやいや、そんな状態で来るかよ普通。明らかにもうしばらく入院してなきゃいけないやつだろあれ……。
素晴らしいプロ根性に軽く引きつつある俺達をよそに相澤先生は普段通り教壇に立った。
「俺の安否はどうでもいい。なによりまだ戦いは終わってねぇ……」
「戦い?」
「まさか……!」
「まだヴィランがあぁあ!!」
神妙な面持ち……をしてそう言っているであろう相澤先生に俺達は身を固くしごくりと唾を飲む。
クラス全員の視線が集まる中、先生はゆっくりと口を開いた。
「雄英体育祭が迫ってる……!」
「「「「「クソ学校っぽいのキタアァアア!!!」」」」」
本日2度目、俺達の絶叫が教室中に響き渡った。
雄英体育祭。
現在の日本においてオリンピック以上に人々が熱狂するイベント。全国に生中継され国内でも特に盛り上がるビックイベントの1つだ。
ヴィランに襲撃されたばかりなのに大丈夫なのかと声を上げるやつもいたがあえて開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すためでもあるらしい、警備も例年の5倍に強化もしているんだとか。
それにヴィランごときで中止していい催しではないと先生は言った。
体育祭は一般の人はもちろんだが、プロのヒーロー達もスカウト目的で見る。雄英体育祭はプロに自らの存在をアピールする大きなチャンスだ。3回しかないこの機会、ヒーローを志す者として絶対に外せない……!
「あんなことはあったけどテンション上がるなぁオイ!」
「活躍して目立ちゃあプロのドでけぇ1歩が開ける!」
「雄英に入った甲斐があるってもんだぜ!」
「数少ない機会、ものにしない手はない……!」
昼休みになると体育祭に対する期待に意気込むクラスのやつらの声が教室の至るところで聞こえてきた。まだ始まっていないのに既に熱気を感じずにはいられない、とりわけ燃えていたのは意外にも……、
「デク君、三神君、飯田君、が゛ん゛ば゛ろ゛う゛ね゛え゛体゛育゛祭゛……!!」
「か、顔がアレだよ麗日さん!?」
「何があったよ麗日全然うららかじゃないんだけど?」
俺達の前に1文字1文字に濁点をつけているような野太い声で険しい顔をする麗日がやってきた、かと思うとものすごい形相でクラスの他のやつらの前に行き一言。
「み゛ん゛な゛、私゛が゛ん゛ば゛る゛!゛!゛」
そうガッツポーズをして去って行くというのを繰り返していた。
「燃えるのはわかるけどキャラふわふわしすぎじゃね?」
「そ、そうだね……あ!そういえば麗日さんにまだ聞いてなかったな」
今もなお鬼の形相でガッツポーズをし続ける麗日に苦笑しながらデックンがそう呟いた。
「そろそろ食堂に行かなければ昼食の時間がなくなってしまうぞ、早く行こう2人とも!麗日君もさぁ!」
何を?と聞こうした矢先、飯田に声をかけられひとまず食堂に向かうことにした。ま、昼飯食いながら聞けばいいしな。
「ねぇ、麗日さんはどうして雄英に、プロヒーローになろうとしてるの?」
食堂に向かう途中の廊下を4人で歩きながら、いつの間にかいつものうららかな麗日に戻っていた麗日にデックンは問いかけた。
なるほど、聞いてなかったことってこのことだったのか。確かにそうだな。飯田がヒーローを志している理由はこの間聞いたが麗日のは知らない、ちょっと気になるかも。
「え!ええっと、それは〜…………。」
「お金!?お金欲しいからヒーローに?」
「まぁ究極的に言えば……。なんかごめんね不純で!飯田君とか立派な動機なのに、私恥ずかしい……。」
言いづらそうに言葉を濁してものすごい勢いで頭をかきながら答えたその理由に俺達は思わず目を丸くする。
まさか麗日がお金が目的だったとは、ちょっと意外だな。
「なぜ!生活のために目標を掲げることの何が立派じゃないんだ?」
「うん、でも意外だね?」
「うちの実家、建設会社やってるんだけど全然仕事なくて素寒貧なの。
あ、こういうのあんま人に言わんほうがいいんだけど……。」
「「「建設……」」」
「麗日の個性なら許可とりゃコストかかんないじゃね?」
「どんな資材でも浮かせられる、重機いらずだな!」
「でしょぉ!?それ昔父に言ったんだよ!
そしたら……気持ちは嬉しいけど私が夢叶えてくれたほうが何倍も嬉しいわって。
だから私は絶対ヒーローになってお金稼いで、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ……!!」
窓から射す陽の光に照らされながらスカートの裾をぎゅっと握りしめ、力のこもった瞳でまっすぐこちらを見る麗日に一瞬、言葉を失う。
「全ッ然、恥ずかしくなんかねえじゃん、親想いなすごくいい理由だよ。
ヒーロー志す理由なんて人それぞれだろうし、それに善し悪しつけたり比べる必要なんかねぇだろ?」
俺がそう言うと、麗日は少し照れたようにしながらも嬉しそうに笑みを浮かべていた。最初にお金が欲しいからって聞いた時はちょっと意外だったがものすごくまともな理由で感動してるくらいだ、麗日の両親もこんな優しい娘がいて幸せ者だろうな……。
「三神君はさ、どうしてヒーローになりたいの?」
今度は麗日が俺にそう問いかけてきた。
話の流れ的にそうなってもおかしくはないだろう、俺はおもわず「そうだなぁ……」と麗日のように言葉を濁らせた。
「麗日の立派すぎる話の後じゃちょっと見劣りするというか、俺もまぁ親絡みなんだけどさ……。」
「人それぞれだし比べる必要ないって言ったのは三神君じゃん?もしかして三神君も両親に恩返ししたいとか?」
「あっ、麗日さん、それは……」
「ははっ、デックンいいってそんなの。お気遣いどーも」
デックンが慌てたように声を上げるが軽く笑い飛ばして肩をぽんと叩く。そうしてくるりと麗日のほうに向き直り口を開く。
「俺さ両親いないんだよ、今は親戚のじいさんと2人で暮らしてんだ」
「えっ!そうだったの、ご、ごめん三神君!悪いこと言っちゃった……。」
「いいよ気にすんなって、いないつっても多分2人とも生きてるし。
なぁ、連続殺人鬼
突然そんなことを聞かれるとは思っていなかったんだろう、麗日と飯田がそろって首を傾げた。
「突然どうした、もちろん知っているさ。10年ほど前に多くの人を手にかけ逮捕されたヴィランだろ?」
「まだ小さかったけどニュースとかでよくやってから私も覚えてる、えっとそのヴィランが何か関係あるの?」
「それ、俺の父親。やっぱ結構有名だよな」
「「ええぇぇええ!!!!」」
2人の声が廊下に響く。予想通りの反応に俺が苦笑していると飯田がカクカクとロボットみたいな動きをしながら口を開いた。
「失礼、大きな声を出してしまった。その……予想外すぎる返答だったのでな。いろいろと大変だったのではないか、家族がヴィランというのは」
「そりゃもちろん。ガキの頃にいじめられたこともあったしな、俺はな〜んにもしてねぇのによ。まぁ気持ちは分からなくもないけどな、お前らだって関わるのちょっと躊躇いたくなったんじゃない?」
「そんなことないよ?」
いつもような軽い口調で言いながら首を傾げてみると麗日がきょとんとした顔をして言ってきた。
「確かに私もびっくりはした、けどそんなふうには思わないよ。だって悪いのはお父さんであって三神君は何も悪いことしてないし!そんなことで嫌ったりなんかしないよ、三神君がいい人なの私は知ってるもん」
そう笑って言い切ってくれた麗日に賛同するように飯田も力強く首を縦に振っている。そんな2人を見て俺もおもわず口をぽかんと開けていた。
いままでこんなふうに言ってくれた人なんて全然いなかった、おそらくデックンくらいだろう。他の人は知っていても何も言わなかった。明らかによそよそしいと感じるやつもいた。
正直それが正しい対応なのかもしれない、口にはせず当たり障りのない接し方をする方が楽なのだろう。
だからこそ、こうやって口に出して伝えてくれる人が目の前にいることがすごく嬉しかった。
自然と頬が緩もうとしているのに気づき、普段の飄々とした自分にはらしくないとそっぽを向いて慌てて隠した。
「……優しいなおまえら、そう言ってもらえるとこっちも助かるよ。ちょっと話が逸れちまったな。
俺がヒーローを目指すのは父親がヴィランだからだ。
凶悪なヴィランってことで悪い意味で世に名前が知れて有名になったせいで俺も嫌な目に遭ったしこれからもそのことで肩身の狭い生き方しなきゃならんのは嫌なんでね。だったらヒーローとしていい意味で父親以上に有名になっちまえばいいって思ったんだ。もちろんオールマイトとかの多くの人を救ける姿に憧れたってのもあるけどな?
ヒーローになって父親を超える。これが俺のヒーローを志す理由だ」
俺がそう告げると飯田がなぜか頭の上で大きな拍手を始めた。
「いい理由じゃないか!恥ずべきことなんかない俺は応援してるぞ!!」
「お、おうわかった、サンキューな。でもちょっとうるさいから静かにしてくれ、ちょいちょい変な目で見られてるから」
廊下をすれ違う生徒達にチラチラ見られているのに気づきすぐさま飯田の腕を降ろさせる。こいつもバカ真面目だったりちょっと変わってるようなとこはあるけどすごくいいやつだよな。
と、飯田の腕を降ろさせようと格闘していると向こうから騒がしい音が聞こえてきた。その音はどんどん近づいてきて俺達の近くでピタリと止まった。
「ハーハッハッハ!緑谷少年と三神少年がいたぁあ!!」
「オ、オールマイト!?どうしたんですか?」
「何か用スか?あと廊下は走っちゃダメですよ」
「あ、ゴメンナサイ……。
2人ともご飯……一緒に食べヨ?」
「オールマイトが怒られとるぅ!そしてオトメやぁ!」
オールマイトの行動に麗日が吹き出す。確かに今の言い方ちょっとカワイイ……気がした。
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「デク君なんだろうね?」
「USJでヴィランにオールマイトが襲われた際に君達2人が飛び出しって行ったと聞いたぞ、2人とも呼ばれていたしそのことじゃないか?
というか君は行かなくてよかったのか三神君」
「多分そんなとこだろうな〜俺はまあ、弁当持ってきてなかったから昼飯抜きになるとこだったし……たまには2人でゆっくり話す機会があってもいいかなって思ってな」
食堂の行列の中、俺はそう言って小さく笑った。
オールマイトからのせっかくのお誘いだったが今回は断っておいた。USJでのこととか俺にも話したいことがあったんだろうがおそらくメインはデックンの話だろう。時期的に体育祭を目前に控え未だに制御のできない個性でどうするか、とかそういう話をしているんだろうし俺がいてもあんまり意味はなさそうだと元々の予定通り飯田達と食堂と飯を食うことにした。
「それにバスの中で蛙水君も言ってたろ、2人の超絶パワーは似ているしオールマイトに気にいられているのかもな。流石だ!」
まぁ、似ているどころか全く同じモノなんですけどね。
……というのは口に出さず飲み込んでおき、「そうかもなー」と適当に相槌を打っておく。
「……ん?」
「どうした?」
「いや、なんでもない。気のせい……だと思う」
話が聞こえたのか列の少し前の方で俺達の方へ視線を向ける一瞬轟と目が会ったがすぐに何事もなかったかのように前を向かれた。
何か気になることでもあったのか?それ以降は特に俺達の話に反応を示すこともなかったし、声はかけずそのまま飯田達と昼飯を食って午後の授業へと臨んだ。
そうして放課後。
「…………なにこれ?」
A組の教室の前に大勢の生徒が押し寄せ出られないという訳のわからん状態になっていた。
「君達!A組に何か用か?」
「んだよ!出れねぇじゃん何しにきたんだよぉ!」
クラスメイトも皆困惑した様子で外の連中を見ている中、1人平然と歩き出すヤツが現れた。
「敵情視察だろザコ、ヴィランの襲撃に耐え抜いた連中だもんな体育祭の前に見ときたいんだろ」
爆豪が悠々と入り口の前に立った。
なるほど敵情視察ね〜それなら確かに合点がいくな。と納得しながら思う。
これ絶対余計なこと言うやつだ、もう既に一言余計だし……。
俺が苦い顔をしている横で峰田も指を差しガタガタと震えている。辺りに緊張が走る中、爆豪が再度口を開いた。
「そんなことしたって意味ねぇからどけ!モブ共……!!」
「お前っ、知らねえやつのこと全部モブとか呼ぶのマジでやめろって!余計なヘイト集めてどうすんだよ!!」
コイツやっぱりいらん事言いやがった!
俺達の悲鳴をガン無視して今も尚連中にガン飛ばしまくる爆豪の言葉に見るからにひねくれてそうなヤツに喧嘩腰で宣戦布告されたり、隣のB組の暑苦しいやつが乱入してきたりととてつもなく険悪なムードが辺りに拡がっていた。
「待てこら爆豪!オメェのせいでヘイト集まりまくってんじゃねぇか!」
ヘイトなんて何処吹く風と言わんばかりに立ち去ろうとする爆豪を切島が呼び止める。まったくだ、このままだと溜まりに溜まったヘイトを俺達が死ぬほど浴びるだけなんですけど。
「関係ねぇよ!上に上がりゃ関係ねぇ……!!」
一言。切島からの問いかけにそう返すと爆豪は何食わぬ顔で教室を後にした。
上に上がれば関係ない、か……。
まぁ実際そうだよな。調子に乗るなとか足元すくわれるとか、色々言われまくってるが結局コイツらよりいい結果を残せば……1番になれば誰も文句を言えねえよな。
別にアイツのことは好きじゃないがこういうとこはすげぇなと素直に思っちまう、ちょっと癪だけど。
「ははっ……あの野郎言ってくれるじゃない。さ、いつまでも睨まれんのはゴメンだしとっとと帰ろうぜ」
「ノア君……帰る前にちょっと寄りたいところがあるんだけどいいかな?」
「……?おう、いいぞ」
寄り道したいと言ったデックンの顔がいつもより険しく見えたことに気になりながらも、俺はうなずきついて行くことにした。
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「これまた意外なとこに来たなぁ、わりと久しぶりだよな?ここに来るの」
「うん、そうだね」
デックンに連れてこられた場所。それは入試前にオールマイトと血の滲むような特訓を行った海浜公園だった。
デックンの特訓を兼ねたゴミ掃除のおかげもあり、始めた頃に比べ砂浜は見違えるほどキレイになっているままだった。
座って話せそうなところを探し腰を下ろすと昼にオールマイトに言われたことを俺に教えてくれた。
「50分前後……かなり短くなっちまったんだな。
そんで体育祭、『僕が来たってことを世に知らしめてほしい』か〜。いいねぇ、とんでもない大役を任されたな」
「うん、でも……あんなことがあった直後で乗りきれないし正直オールマイトに見てもらってるから体育祭で目立つモチベというかそもそも現状こんな感じで目立てるとは思えないし体力テストでも全然だったしそれに……」
「もういいもういい、ネガティブで胃もたれしそう……」
「ネガティブで胃もたれ!?僕そんなに言ってた……?」
俺のぼやきに驚いたような声を上げるデックン。はぁ、とため息をつきながら立ち上がる。
「そんな後ろばっかり向いてどうすんだよ次世代の平和の象徴さんよぉ。こうしてる間にも他のやつらは準備を始めてんぞ?」
「うん、オールマイトからも言われたんだ。常にトップを狙う者とそうでない者、その僅かな気持ちの差は社会にでてから大きく響く……海浜公園でのあの気持ちを忘れないでくれって」
そう言うデックンに背を向け海を眺めて黙り込む。そして少しの間を置きデックンに向き直り口を開いた。
「オールマイトの言う通りだな。みんなそれぞれ理由があってヒーロー目指しててそのために死にものぐるいで体育祭に挑むんだ、俺達もそうだろ?お前が今に満足して留まるってんなら待たない。
俺は先へ行くぞ、お前を置いて上に上がるからな」
「………!」
俺の言葉に驚いたような、はっとしたような顔をするデックン。やがて吹っ切れたような決心したような面持ちで拳を硬く握りしめた。
「バカか、僕は……!
僕もやるよノア君。君に、みんなに置いていかれないように。かっちゃんの言う通りだ、上に上がれば関係ない。うじうじ悩む暇があれば更に上を目指すべきだったんだ……!」
「おうおう、その意気だ。せっかくここに来たんだし久しぶりにやるか!砂浜トレーニング」
「うん!どっちが先に向こうまで行けるか勝負しよう!」
「小学生みてぇなこと言ってるけど乗った!ぜってー負けねえ」
リュックをその辺にぶん投げ、雄叫びを上げながら2人同時に走り出す。
雄英体育祭は2週間後、活躍して目立てればプロヒーローになれる確率がぐっと上がる大舞台。どんな競技があるのかは当日までわからないが海浜公園、家、学校のグラウンド。利用できる全てを用いて当日に備える。
毎日本気でやってると案外2週間なんてのはあっという間に過ぎてしまい、いよいよ体育祭当日の朝を迎えた。
「応援してますよノア。しっかり録画してダビングまでしときますからネ」
「そんなんしなくていいよ恥ずかしい。んじゃ千年公……行ってきます!」
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さすがは雄英体育祭、全国が注目するイベントだけあって熱気が凄まじい。会場への入場ゲートの中でも観客の声などがガヤガヤ聞こえてくる。それだけでさえ自分達が期待され注目されているというのが嫌というほど分かり皆が顔を強ばらせていた。
『Hey!刮目しろオーディエンス!群れマスメディア!今年もお前らが大好きな高校生達の青春暴れ馬……雄英体育祭が始まりエビバディ!アーユーレデイー?』
プレゼントマイクの実況が響き渡りそれにより会場のボルテージも跳ね上がる。観客達の叫びうるさすぎるくらいに耳に入ってきた。
「うおお……いよいよだな」
「私、緊張してきたよ……」
「しゃあっ!やってるぜ!!」
「人、人、人、人…ダメだ緊張しずきて吐きそう」
「みんなぁ!きちんと並んで列を崩さず入場するんだ!」
入場直前とあって皆口々に声を上げ浮き足立つ。
「え〜こちら雄英体育祭は選手入場ゲートに来ております、皆緊張したご様子です!先程クラス1の実力者にオールマイトがどうとか喧嘩吹っかけられた緑谷選手〜、今オールマイトに何か伝えたいことはありますでしょうか?」
「了解、オールマイト……!ですかね」
「はいありがとうございます。以上、現場からでした〜」
「…ってなに言わせてるのさノア君!?」
マイクに見立て向けていた右腕をデックンに勢いよく下げられる。
「緊張ほぐそうかな〜ってな!どうだい少しは肩の力抜けたか?」
「そりゃ少しは抜けたけど、こんな時でも君緊張してないの!?」
「してないけど?
……デックン、今の気持ち忘れなんよ」
ぽん、とデックンの肩をたたいて前に出る。
それぞれの想いを胸に雄英体育祭が始まる──!
「おい誰だ今ふざけたインタビューしてたの!」
「せっかく緊張感高めたのに台無しじゃねぇか!」
「ぜったい三神でしょー!雰囲気壊すなよぉー!」
「なんだよ!みんなガチガチだったしちょっと緊張ほぐそうとしただけじゃねぇか!……痛っ!」
なぜかクラスのやつらにめちゃくちゃやいやい言われどつかれました。
なんでだよちくしょう……。
「みんなぁー!!静粛に!本番直前だぞ!!」
読んでいただきありがとうございました!
最後の所は主人公がクラスの人達の前でも飄々としてるとこを書きたくてやつてみました(^^;
こんな感じで体育祭編始めていきまーす。
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m