今年最初の更新(2話連続投稿)です!
第13話よろしくお願いします。
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!
どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?
ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!
ヒーロー科!!1年A組だろぉぉ!?!?』
俺達の入場をプレゼントマイクの実況が高らかに煽り会場からは大歓声が沸きあがる。
わざわざ見回さずとも観客の視線が360度、全方位から俺達に集中しているのがよくわかった。
「うわぁ〜これまたずいぶんと持ち上げてくれるねぇ。……他のクラスからの視線が痛いけど」
想像以上の盛り上がりをみせそれだけ俺達に期待や注目が寄せさられていることに高揚感をおぼえる反面、次いで入場してきた他のクラスからの刺々しい視線に思わず苦笑いを浮かべた。
別に俺らは他クラスといがみ合うつもりはないんだけどなぁ……周りが勝手に持ち上げて騒いでるだけなのに、こっちだってここまでとは予想してなかったっての。
全クラスの整列が終わり、開会式が始まる。正面のステージに主審を務める先生が立ったのだが会場中が、特に男たちが鼻の下を伸ばしざわつきはじめた。
「ミッドナイト先生なんちゅう格好だぁ……!」
「さすが18禁ヒーロー……!」
「18禁なのに高校にいるってなかなかに矛盾してるよなぁ〜」
体のラインが丸わかりなとんでもないコスチュームを身にまとい会場中の男たちの視線を釘付けにするなか、高らかに声を上げる。
「選手宣誓!選手代表……爆豪勝己!!」
呼ばれたその名前に辺りがどよめく。
そりゃ当然だ、普通こういうのってもっと真面目なやつがやるイメージあるもん。それをあの爆豪がやるってんだからみんなびっくりだわ。
「え、かっちゃんなの……!?」
「アイツ一応入試1位通過だったからなぁー」
「ハァ〜……ヒーロー科の入試な?」
瀬呂の言葉に皆がなるほどとうなずいていると、わざわざこちらに聞こえるように大きなため息をついて普通科の生徒が睨んできた。
「んなこと言われなくても知ってるっての〜。普通科のヤツがいちゃもんつけてきたけど嫉妬かなあれ?」
「ちょっ、やめろ三神煽るなって!お前までヘイト集めてどうすんだよ」
瀬呂が慌てたように俺の口を塞ごうとするがそれを軽く払いのけ口を開く。
「いいだろ別に。ヘイトは爆豪がこれでもかってくらいに集めて絶賛大炎上中だし、いまさら俺の一言二言で変わりゃしねぇよ」
半笑いでいちゃもんつけてきたヤツを見ながらそう言うといまだにこちらを睨んでいた。
「ほらな?さっきと同じ顔でこっち見てんじゃん」
「それはお前が喧嘩ふっかけるようなこと言ったからだよ!」
あら、そうなの?こういうのを失言っていうのかしら。言葉って難しいね!
そんなことをしていると爆豪が気だるげにマイクの前に立ち息を吸う。
これから何を言うんだとA組のやつらが固唾を呑んで見守る。
「せんせー、俺が1位になる。
せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」
「「「「「言うと思ったあぁああ!!」」」」」
非難轟々のなか、顔を真っ青にするA組の面々。やっぱり俺の一言じゃ何も変わらないじゃないか。それどころかいままで以上に大炎上だ。
「やっぱり自信満々だねアイツは。というかデックン、何か爆豪が変わった気がするのは気のせいか?いや、今も昔も変わらず最悪な口の悪さなんだけどさ」
ふと思ったことを訊ねてみる。案の定、俺の予想は正しかったらしく首を縦に振られる。
「うん、自信……とは少し違うかな。以前のかっちゃんなら笑って言ってた。自分を追い込んでるんだ……!」
「なるほどね、それはいいけどせめて俺らを巻き込まないでほしいんだが」
「あはは……それもかっちゃんらしいけどね」
自分を追い込むためにクラスの20人を巻き込むとはどこまでも勝手なヤツめ。まぁここまで他の科から対抗心剥き出しにされちゃあ俺達もやるしかないと案外テンション上がるってもんだけどな。
「第一種目、今年はこれ!……障害物競走!!」
爆豪への大ブーイングを落ち着かせるとすぐにミッドナイト先生が第一種目の説明に入る。
ルールはいたってシンプル、全てのクラスが入り乱れスタジアムの外周約4kmのコースを障害物を突破し戻ってくること。
しかし自由さが売り文句の我らが雄英、コースさえ守れば何をしたっていいらしい。
つまり個性を使おうが他のやつを妨害しようが何でもありってことだ。
俺の個性はこういう時にいろいろできて汎用性がある。相性は悪くなさそうだしなんなら有利になるかもしれない。ぶっちゃけ他の連中の個性による妨害さえ警戒すればいいとこ狙えそうだ。
先生の指示のもと、ゲートの前に移動し位置につく。
辺りには始まりの合図を今か今かと待つ張りつめた空気が流れている。
「スタート!!!」
そんな緊張の漂う空気のなか、とうとうスタートの声が響き渡り戦いの火蓋が切って落とされた。
「さ、どう追い抜こうかな〜…………!?」
すぐにゲートの先のトンネルになだれ込んだ先頭集団に続きそこに差し掛かったその瞬間、後方から僅かに冷ややかな風が吹き抜けた気がして目を見開いて悟る。
これはあれだ、USJ襲撃の際に間近で体験したことのある自分ではなく敵へ向けられた攻撃。
それがいま自分達に向けらている、そう悟りすぐに進行方向を僅かに変更する。
既にごった返しているトンネル、その壁に向かって個性を発動させながら全力で飛びついた。
反射を使い壁を蹴り反対側の壁に飛びつく。そしたらまた反射を使い反対側へ飛びつく。
テンポよくジグザグに壁を蹴って進んでいるがこれは見た目以上に簡単なことじゃない。反対側の壁に手や足がつくタイミング、そしてそこから下に落ちるまでの僅かな時間に適切な勢いと角度をつけて反射を発動させ弾かなきゃいけない。これを何度もやるのはなかなかに神経を使う。
俺の予想は当たっていたようで壁を蹴り進む頃には地面は一気に凍りつき身動きがとれなくなる連中が大量にいた。
「はははっ!ったく、初っ端から容赦ねぇな轟のやつ!」
地面だけでなく壁にまで歩みを伸ばす氷に追いつかれる前にトンネルを通過した俺は、渋滞に巻き込まることもなくかなり上位まで登りつめていたらしい。
「甘いですわ轟さん!」
「そううまく行かせねェ……半分野郎!!!」
八百万や爆豪をはじめとしたA組連中はもちろん、他のクラスのやつら数十人といったところか、スタート直後だというのにかなりの数が身動き取れずリタイア寸前になっていた。
氷結を躱したやつらが1位の背中を追う中、轟も含めた全員が足を停めざるを得ない第一関門が目の前に現れた。
「さぁ、いきなり障害物だ!まずは手始め……
第一関門、ロボインフェルノ!!」
入試の時にデックンがぶっ飛ばした大きな大きな0ポイントヴィラン。ソイツが今度は大量に現れ道を塞いでいた。あの巨体が複数いて目をギラギラと紅く光らせているもんだから圧迫感てやつがすごい、1度は見たことのあるはずのヒーロー科のやつらでさえ顔を強ばらせる。
皆が足を止めるなか先頭の轟が1人動きだす。その場で姿勢を低くして地面に氷を張ると、腕をなぎ払いそれを仮想ヴィランに向け撃ち放った。
その氷は一瞬のうちに仮想ヴィランを呑み込み動きを止めてしまう。瞬きするほどの僅かな時間での出来事に目を奪われるなか1人走り出す轟。
立ち止まってる場合じゃないと我に返りすぐに後を追い仮想ヴィランの足の間をくぐろうとする。
……ん、ちょっと待てよ、気のせいか?
と、そこであることに気づいてしまった。頭上で凍りつき動きを止めた仮想ヴィランを見上げながら走るスピードを落とし呟く。
「あれ、コイツなんか……グラグラ揺れてね…………?」
後ろであれこれ騒いでいる連中に気づいた轟が一瞬振り返って言う。
「やめとけ!不安定な体勢で凍らした……倒れるぞ」
目の前でバラバラとパーツが外れ崩れゆく仮想ヴィランを眺めながらぴくぴくと顔を引きつらせる。
「そんな大事ことはもっと早く言ってください…………」
崩れ落ちる仮想ヴィランに呑み込まれながら俺はがっくりと肩を落とした。
「第一関門を一抜けしたのは1A轟焦凍だぁあ!!」
「おい!いま誰か下敷になったぞ!」
「死んだんじゃねえか!?」
「なんだよこの体育祭、死人が出るのか!?」
「「死ぬかぁぁあ!轟の野郎わざと倒れるタイミングで……俺でなきゃ死んでたぞ!!」」
大きな土煙が立ちこめた後、大騒ぎになるなかで崩れた仮想ヴィランの体を突き抜けその上に立つと全く同じことを言うやつと目が合い、あれ?と声を上げる。
「切島……」 「三神……」
「「お前も潰されてたのか」」
「1A三神、切島潰されてたァ!?ウケる!!」
プレゼントマイクの実況がキンキンと響く。そんなデカい声で言うなよ、恥ずかしいじゃねえかチクショウ。
と、頭をかいているとガシャーン!派手な音を立てて仮想ヴィランの体を突き破って現れるヤツがもう1人。
「A組のヤロウはホントに嫌なヤツばっかりだよなァ!俺でなきゃ死んでたぞ!!」
「あァー!B組の鉄哲も潰されてたァ!ウケる!!」
コイツこないだ爆豪に絡んでたB組のやつか、というか見た感じその個性って……。
「ぶははは!切島おまっ、個性ダダ被りじゃねぇか!ウケる!」
「るせえ!ただでさえ地味なのになんでっ!チクショウ!」
倒れたロボの上を走りながらプレゼントマイクのマネをしてそんなことを言ってみる。切島的にはなかなかにショックだったらしく、目から光るものが一筋流れていた。
それにしてもほんと轟にはしてやられたな。潰されるすんでのところで凍っていない所を透過してすり抜けたからなんとかなったもののほんと俺や切島達じゃなかったら死んでたじゃないか……?
まぁとりあえず迂闊だった俺も悪い、次からはもう少し慎重に進もう。
「オイオイ第一関門チョロいってよォ!んじゃ第二関門はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!
ザ・フォール!」
第一関門を抜けしばらく走ると底の見えない切り立った崖が目の前に広がった。至る所にロープが張られていてそれを渡れということか。
「さっきのロボといいこの崖といい、どっから金出てきていつの間にこんなん作ってんだよ」
こんな大掛かりなものをポンポン出してくる雄英の財政事情、割りと本気で気になるなぁ。
まぁ、そんなことはさておきだ。この第二関門人によっちゃあ結構な難所になるのかもしれないが俺は楽勝だな。
ロープが張ってあるしちょっと大げさな綱渡りをするってことなんだろうけどそんな必要は全くない、ふふっと小さく笑いながら俺はなんの迷いもなく歩きだした。
「さぁオマエら必死こいて這いずりなァ……ってなんだありゃ!?1A三神何事もなく空中を歩いてるぞぉ!?」
あれれ、なんか俺名指しされちゃってるじゃん、照れる〜〜……
てのは冗談で余裕の笑みを浮かべ宙を歩く。まぁ余裕なのは顔だけなんだけどね。
入学試験の時と同様に空気を踏みつけてそこからさらに歩いているわけなんだがこれも結構コントロールが難しい。
1歩を踏み出すにはその度に1度踏み出す足の『選択』を解除して前に出してから同じ高さのところでもう一度個性を発動させなければいけない。片足の発動はそのままにしてそれをするのは今の俺には難しい。気を抜くと両足共に個性を解除してうっかり落ちるなんてこともありえる。
本当は空中も走っていきたいんだが仕方ない、これも要練習だな。
歩いて進んでいたせいで、俺がここを抜ける頃には爆豪とか個性で空中をビュンビュン移動していたりした連中には抜かれちまったがまだまだ上位には残ってそうだ、逆転のチャンスは全然ある。
崖を渡り終えコースを走る、その最中プレゼントマイクのやかましい声が響く。
「さぁ最終関門!その実態は……一面地雷原!!地雷の位置はよく見りゃ分かるようになってんぞォ!目と足酷使しろ〜!!」
なるほど、今度は地雷ですか。ほんと高校生の体育祭とは思えない障害物ばっかり用意してくれるじゃないの。
俺がそこに着く頃には既に何人かがその餌食となり宙を舞っていた。
実況でも言っていたが地雷といっても競技用の物で威力はたいしたことないけど音と見た目が派手になっていた。
「たしかに地雷があるとこは色が違うしよく見りゃわかるなぁ〜……つっても真面目に避けるのはめんどくさいし時間かかるよな、よしっ」
その場でぴょんと両足飛びをして宙に浮く。さっきの綱渡り同様に空中歩行で行くほうが楽だし早い、ここもこの作戦でいこう。
他のやつらが冷汗かいて下を向きゆっくり進むなか、俺は1人すたすたと道のど真ん中を歩く。その最中前方で轟と爆豪が足の引っ張り合いを始めだした。
他のやつらもラストスパートと言わんばかりに多少無茶にでも地雷を突破し進んでくる。先を越してくるやつもちらほらと現れだしさすがに焦りに顔を強ばらせる。
こんなとこで楽な安全策ばっか取るわけにはいかねぇか。俺も腹を括り個性を1度解除し地面に降りる、こっちもラストスパートといこうじゃないか。
深呼吸をして全力で走り出す。
「〜っっっ!なかなかの爆風……だけどいける!!」
ラストスパートと称し俺の取った策、それはわざと地雷を爆発させそれが爆発した直後に透過を発動し無効化するのを繰り返すというもの。
透過はすり抜けるものを見たりして存在を認識してからじゃないと使えない。踏んだ直後の衝撃や爆風を感じて透過しているから一瞬仰け反ったりスピードが落ちたり硬直はあるが空中歩行よりはよっぽど速い。判断が遅れたら他の連中同様吹き飛んで宙を舞うことになるから失敗すりゃ一気に抜かれる。神経をすり減らして足も頭もフル稼働させ先頭の2人の背を追う。
周りのやつらを地雷でバンバンぶっ飛ばしながらついに轟達の背中に追いつく。そんなことには気づかず2人は足の引っ張り合いを続けている。いまならいける、2人とも吹き飛ばして1位に躍り出ることができる……!
そう思ったその時、
「偶然か故意か!?A組緑谷、爆風で猛追!!!!」
空から突然デックンが現れ数十メートル先へと飛び去り1位に躍り出た。轟も爆発もさすがにマズイと争いをやめデックンを追う。
俺も置いていかれてたまるかと轟の張った氷の道を走り3人を追う。
「おいおい、お前らを抜くのがデックンだけだと思うなよ?」
「……三神か、やっぱり後続に道作ることになっちまったか」
「てめぇも邪魔しようとしてんじゃねぇノア!!」
1位に躍り出たデックンだったが着地のことは考えてなかったのか既に失速しあとは地面に落ちるだけといったところだ。
ほんととんでもないことばっかやってくれるよなデックン、でも悪いけど先に行かせてもらうぜ。
デックンを追い抜き数メートル前を駆ける2人だけを標的にし手を伸ばす、触れて反射を使えばバランス崩して転倒させられるはずだ。
そう思っていたのにバランス崩してコケて地面に膝をついていたのは自分だった。いや、それは轟と爆豪も同じか。
状況が飲み込めず真っ白になる頭をブンブン振りすぐに立ち上がる。
少しの間を置き理解する、そして前を行く1人の男を見て思わず口元が緩む。
「ったく!毎度毎度やってくれるじゃねぇか!デックン!!」
最終関門を抜け残すはスタジアムまでの一本道。俺、轟、爆豪がほぼ横並びになりデックンを追いかけていた。デックンを除く俺たち3人は個性を使い全力で1位を奪取しようとする。後ろから迫ってくる気配はまだ感じない、1位は俺達4人の中から決まるとみて間違いないだろう。
スタジアムに戻るトンネル、デックンの背中まで数メートル。
あと少し、あと少しなんだ。全神経を脚へと集中させひた走る。
負けない、負けたくない。いままでこういう勝負でお前に負けたことなんて一度もなかったんだ、負けてたまるか。
死ぬ気で足を動かせ、走れ、あと少しで届くんだ……!
「……っ届けぇぇえええ!!!!」
その背中へ手を伸ばす。それと同時に眩しいくらいの光が射し込んでくる。大歓声がこれでもかというくらい耳を通して身体中に響き渡った。
途端に力が抜けその場にへたり込み、やがて大の字になって寝転ぶ。
目を閉じ大きく息を吸って顔をほころばせる。
「あ〜あ…………負けた」
悔しさを表すそんな言葉と裏腹に俺の心は今日の空と同じように清々しく晴れ澄み渡ったいた。
雄英体育祭第一種目・障害物競走
1位 緑谷 出久
2位 轟 焦凍
3位 三神 乃亜
4位 爆豪 勝己
読んでいただきありがとうございました!
なかなか小説を書く時間が取れず今年も頻繁には更新できないかもしれませんが頑張っていきます。
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m